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時代が生んだリアルなファンタジー小説 2006年1月のベストおすすめ文庫
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      博士の愛した数式
著者:小川洋子
新潮文庫
解説:藤原正彦
定価:438円+税 
ISBN4-10-121523-5
2003年7月新書刊   2005年12月文庫刊
       
<心打つ静けさ、やさしさ>

 28という数字が生み出したファンタジー。作者のするどい着眼点がかくも静謐な
密度の高い作品を生み出すものか。作者の力量を思い知らされた作品。ともかく
読んで、この静かなファンタジーにたっぷりとつかってください。じんわりと暖まって
きます。


<冒頭>
 1
 彼のことを、私と息子は博士と呼んだ。そして博士は息子を、ルートと呼んだ。息
子の頭のてっぺんが、ルート記号のように平らだったからだ。
「おお、なかなかこれは、賢い心が詰まっていそうだ」
 髪がくしゃくしゃになるのも構わず頭を撫で回しながら、博士は言った。友だちに
かわかわれるのを嫌がり、いつも帽子を被っていた息子は、警戒して首をすくめた。
   
<出版社のコピー>
 「ぼくの記憶は80分しかもたない」博士の背広の袖には、そう書かれた古びたメモが留められていた - 記憶力を失った博士にとって、私は常に”新しい”家政婦。博士は”初対面”の私に、靴のサイズや誕生日を尋ねた。数字が博士の言葉だった。やがて私の10歳の息子が加わり、ぎこちない日々は驚きと歓びに満ちたものに変わった。あまりに悲しく暖かい、軌跡の愛の物語。第1回本屋大賞受賞。
<おすすめ度>
☆☆☆☆☆