2013年10月号

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秋が順調にやってきそうです。
過ごしやすくなりつつあります。
過ごしやすい気候の中、
心の感動は映画館で!!

 

今月の映画

 オリンピックが来て台風も来た8/26~9/25の31日間に出逢った映画は28本
今月の旧作は2本のみ。
 相変わらず洋高邦低とは言え、日本映画の充実度は結構高い。
やっと大人の映画が揃いました。
さすがに芸術の秋!

<日本映画>

日本の悲劇 
夏の終り 
共喰い 
タイムスクープハンター
許されざる者
謎解きはディナーの後で 
ハメルーン 
凶悪
ベニシアさんの四季の庭
(古)ユリイカ 

 

<外国映画>

楽園からの旅人 
マン・オブ・スティール 
ジンジャーの朝
オン・ザ・ロード 
サイド・エフェクト 
大統領の料理人
スーサイド・ショップ
アップサイドダウン 重力の恋人
悪いやつら
わたしはロランス 
わたしが愛した大統領 
ウルヴァリンSamurai
黒いスーツの男 
ポルトガル,ここに誕生す ギマランイス歴史地区
エリジウム 
怪盗グル―のミニオン危機一発 
ウォーム・ボディーズ

 

 

 

Ⅰ 今月のベストスリー

①-1 日本の悲劇
 小林政広監督の新作は、家の中から一歩も出ないカメラ、ほとんど動かないカメラで捉えられる家族のあり方、4人(父、母、息子、嫁)のみの登場人物で、現在の日本の悲劇をとらえている。


①-2 共喰い
 昨年の田中慎也の芥川賞小説の映画化。下関に暮らす17歳の主人公は、父親の血をひく自分を恐れている。本能のままに生きる父と、しぶとくやり過ごしながら生きる女たち。

 

②-1 凶悪
 新潮45という雑誌の記者によるドキュメンタリーの映画化。
死刑囚からの手紙による事件の幕開きから、凄い話が冷静に描かれる。

 

②-2 夏の終り
 瀬戸内惹著の原作を映画化、二人の男の間を揺れ動く女性の心と体を、落ち着いた画面の中に描き上げる、熊切和嘉監督作品。

 

③ エリジウム
 ニール・ブロムカンプは前作「第9地区」で注目を集めた。なんだか安っぽい感じながら、実はしっかりしたSFであった前作同様、物語はしっかりした描写で支えられ、面白い。

 

 

 他に面白い作品もたくさん、好きな映画を選んでご覧ください。


◎マン・オブ・スティール:スーパンマンの新作は、題名にその名前を出さず、スーパーマンの出自から紐解くストーリー。

 

◎ジンジャーの朝:二人の女の子の友情が、大人になることで違うものになって いく。サリー・ポッターが細かい描写で少女の感情を微妙に描く。

 

◎オン・ザ・ロード:アメリカビートニクの作家、ジャック・ケルアックの『路 上』をブラジルの映画作家、ウォルター・サレスが映画化。アメリカ大陸を何度も横断する、いや放浪するあの感じが後のピッピーにつな がったんだろう。

 

◎サイド・エフェクト:副作用の副作用とちょいと入り組んだ内容のミステリー ですが、ソダーバーグ監督の映画作りは最後まで冷静というか、ちょっと冷たいというか。

 

◎大統領の料理人:南極フランス基地から始まる映画は女性シェフの活躍を描いて口当たりのいい出来上がり、勿論おいしそうな料理とともに。

 

スーサイド・ショップ:フランス映画で、アニメで、ミュージカルで、3Dで、しかもシニックなお話。この何でもあり状態はフランスだからこそ?

 

悪いやつら:韓国は名字の数が少なくて、それぞれの名字が表す家系図があって、家系図の中の上下関係がうるさいとは聞いていたが、この映画はそれを教えて くれる。

 

◎わたしはロランス:妻ある男性が性同一性障害で女性でありたいとする物語。妻はなかなか受け入れられないが…。24歳のカナダ人監督、グサヴィエ・ドラ ン監督の美的映画。

 

◎許されざる者:イーストウッドのアカデミー作品賞を北海道に移して映画化し たのは李相日監督、完成された画面、力の入った俳優陣の演技など見どころは多い。

これで感情移入ができる人物がいれば完璧だったなあ、私にとっては。

 

 

 

Ⅱ 今月の懐かしい声

 

☆ケヴィン・コスナー

 あのケヴィン・コスナーをこの欄に登場させてよいのか?勿論、最盛期に比べて日本に来る映画は減ったし、小粒化している。それでも、3年前には「カンパニー・メン」、10年前には「ワイルド・レンジ」 があった。だから、この欄にどうかと思ったが…。
 新しいスーパーマンもの「マン・オブ・スティール」では、クラーク・ケントの 父親役を演じている。子供のケントが“父さんの息子でいちゃだめ?”と聞くと、“You are my son.”と答えるコスナーの声が何とも懐かしい。この部分、予告編でも見ることができ、何度も聞きいってしまった。この丸みを帯びた声がこの役にぴったりでした。ちなみにクリプトン星の父親を演じたのはラッセル・クロウ、これにも時代を感じました。

 

 

 

 

Ⅲ 今月のつぶやき

 

●映画館の音響設備は素晴らしいが、画面に人物が登場していないのに、その音だけで人物の動きを分からせてしまう「日本の悲劇」にはこの音響設備 は必須。

 

●副作用「サイドエフェクト」はソダ―バーグ最後の劇映画。クリント・イースト ウッドのように、年を取るほど熟成し、しかも高齢になった今も創作し続ける人がいるかと思えば、26歳でカンヌ映画祭パルム・ドールを受賞した人は、50歳で劇映画から引退。この後、実は「恋するリベラ―チェ」が公開されるが、この作品アメリカではテレビで公開されているので純粋劇映画と呼べるか否か。通常TVの賞とされるアメリカのエミー賞を受賞している。

 

●「スーサイド・ショップ」はフランスの小説が原作。それをミュージカル仕立ての3Dアニメにしたのはパトリス・ルコント(「髪結 いの亭主」など)。ミュージカルにも、アニメにも関係なかった監督が何故という気もする。3Dの効果がどこにあったのだろうか?

 

●「アップサイドダウン 重力の恋人」も「エリジウム」も富める者と貧しい者が 上下に分かれた世界。アメリカは貧富の差が開いているのだろうか? 日本はどうか?

 

●今月一番興味深かった映画は「わたしの愛した大統領」かもしれない。先月はフランス人はこんなんだったのだったが、今月はルーズベルトはこんな んだったのか!アメリカではなくイギリスの製作だからここまで作られたという感じ。 

 

●「ポルトガルここに誕生す ギマランイス歴史地区」は4篇からなるオムニバス 映画、凄い監督たちが作っている。フィンランドのアキ・カウリスマキ、スペインの ビクトル・エリセにポルトガルのペドロ・コスタとマノエル・ド・オリヴェイラ(104歳です)の4人。オリヴェイラ作品は少し観光的だが、あとは何故ギマランイスという感じ。それでも、ビクトル・エリセ(ミツバチのささやき)の映画を何十年ぶりに見 られたのは嬉しい。

 

●ゾンビ映画の新しい方向? 言ってみれば心の問題で人間に戻るみたいな 「ウォーム・ボディーズ」、バリエーションありすぎ? 吸血鬼映画も多様化しているが。

 

 

 

 

 

今月のトピックス:秋のアラカルト

Ⅰ シネスイッチ

 

 先月書いた「クロワッサンで朝食を」は銀座にあるシネスイッチで上映されていた。先週の金曜日(9/20)、久しぶりに振休などという休みになりシネスイッチに出 かけた。「ベニシアさんの四季の庭」を見るためだったが、切符売り場は長蛇の列で見ることはできなかった。
12:15の回の20分くらい前だったが、既に次の次の回16:45が満席にならんとしていた。

 3~4年前からNHK-BSで時々「猫のしっぽ、カエルの手」を見ていた。京都大原の古民家に住むイギリス人ベニシアさんの暮らしぶりを伝える、なんだかのんびり気持ちのいい番組だった。それが今回映画になったのである。一部にはファンがいるだろうから混むかもしれないと思ったのだが、レディースデイを失念していた。シネスイッチはレディースデイが金曜日とは先月書いたとおりだ。実はシネスイッチは全国で初めてレディースデイを設けた映画館だ。金曜日にしていたのである。多分金曜日の夜は仕事の終わった後見に来てくれるかもしれないという考えから だったろう。
 その後、全国の多くの映画館がレディースデイを水曜日1000円にしたのだが、パイオニアは金曜日を変えず、料金も900円を続けている。前身は銀座文化という映画館だった。洋画の旧作を上映していて、その頃から好きだった映画館だ。今もいかにも手作り感のある映画館。お客様の状態は大丈夫かと客席を映画館のスタッフが良く見回りしている。昔、映画館にはそれぞれ番組に特徴があり、男性アクションは日比谷映画(今は無い)、女性ものはみゆき座(前の)という のが有名だった。最近のシネスイッチの番組、混み方を見ていると女性もの映画館と呼べそうだ。女性が安心して見に来る映画館と言えようか。

 

 

 

Ⅱ 席番号の問題

 

 丸の内ピカデリーに「許されざる者」を見に行った。オンライン予約で取った席に座ろうとすると、右側に1席空けて座っていたおばさん二人連れから声をかけられた。“もう一つ向こうですよ”と断定的な調子。おばさん達は4人連れで後二人が来るらしい。そうは言われてもこちらは間違えずに席に座ろうとしたという自信がある。で、またかと思ったのである。映画館の座席表示は、例えばM18の前や後に?マークがついているものが多い。この?マークは→の変わりで、勿論とがった方がその席となる。これを見抜けない人が多い。席を間違える人の90%はこの?印が原因ではないか。それにしてもおばさんの自信は凄い。きちんと説明申し上げたのに“すみません”の一言もなかった。

 

 

 

Ⅲ 映画館への時間割

 

 渋谷にあるユーロスペースに「日本の悲劇」を見に行ったのは9/1(日)だった。普通の日は大人1700円、シニア1200円と普通の大人に優しく、高齢者に厳しい映 画館。それがこの日は月1回の映画の日、一日だったので1000円だった。ラッキーとユーロスペース1の中に入ると、ほぼ満席。その日の予定は11:00~「日本の悲劇」(渋谷)、13:45~「夏の終り」(豊 洲)だった。「日本の悲劇」の次の回は13:10だから、15分前には終わるとして12:55、50分あれば渋谷→豊洲の移動+昼食は可能だろうと、「夏の終り」はオンライン予約して出かけた。

 「日本の悲劇」は何故か予告編の上映なく本編から始まった。これは時間を稼げる、さらにラッキーと見終わる(12:41)と、突然後ろから大きな声が聞こえてきた。綾戸智恵さんの、あの関西弁丸出しの威勢のいい声である。この日、終了後にトークショーが予定されていたのである。しかも+小林監督+司会者の3人体制の豪華版。

 

 いやー、面白かった。声の量から言えば綾戸6:司会者3:監督1くらいか。映画同様、口数少なめの監督だった。押し押し、乗り乗り、しかも有益なトークショウが終わった時13:08になっていた。やばいと、すれ違った監督と握手するのも遠慮して地下鉄駅に急いだ。豊洲駅に着いたのは13:34になっていた。中華レストラン「珉珉」に急いだ、何しろ速いレストランだから。注文をしてすぐトイレ、返って席に着いたら料理が出てきた。超速い!13:45には映画館の席に座っていた。(食べるのも速い。)このレストラン、豊洲で2本見る時、間の時間が25分でも普通に食事できる。いつもお世話になっている。こんなレストランが各地にあるといいのだが。何時もぴちぴちの時間割で映画館に向かう身にはありがたい。

 

 


今月はここまで。

次は、もうじき年末かと感じる10/25にお送りします。


                        - 神谷二三夫 -


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