2005年 5月号back

 

 ゴールデンウィークが近づいてきました。GWとも略されるお休み週間の名前は、映画界で付けられたものです。映画が唯一の娯楽で観客数がずっと右上がりだった頃、休みの多いこの時期に観客が増えるので、映画関係者が自分たちにとって「黄金週間」と言い出したのが始まりと何かで読みました。その後一時期、11月の頭を「シルバーウィーク」と言いましたが、これは定着しませんでした。多分これも映画界から出てきたと思うのですが、11月のお休みは特別に多くはなくGWとあわせSWを売り込もうとした興行主の魂胆見え見えです。

 

 今年のGWは旅行業界的に言えばロング向きとなる良いパターン、かなり休みの多いまさにゴールデンウィーク。今回はGW中に1回でも映画館に出かけていただくためのご案内です。1000円の5/1も日曜日です。

 

●まずは4月のベストスリーです。

 

① 海を飛ぶ夢
 実話から作られた尊厳死をテーマにした映画、スペインでは彼の死を巡ってまだ裁判が係争中と聞きます。寝たきりで28年、自分の意思では死ねない(生きられない)主人公と、彼を取り囲む人々の物語。スペインの片田舎に住む一家、あくまで愚鈍に「死ぬな」と言う兄がリアル。父親、兄嫁、甥のあり方が胸に残る。寝たきりのラモンを演じるハビエル・バルデムが驚異的。元々目鼻立ちは大きいラテン顔ですが、顔、特に目の演技だけで諦め、怒り、慈愛、孤独・・・の感情、生活が画面ごとに伝わります。33歳でこの傑作を物したアメナーバル監督も凄い。女弁護士のあり方が、作品を大きくしています。


② コーラス
 小学5年生の時、音楽の先生から強制的に参加させられたのが選抜合唱団だった。5、6年と夏休みにも練習させられたのだから、大会は秋だったのだろうか?30名くらいで男子は確か3~4名のみ、練習がいやでいやで。大会の時、前田先生の腕が震えていたのを覚えている。パートはボーイソプラノ・・・この映画の舞台は1949年1月15日から始まる。私の生まれた2日後だ。社会全体が貧しい時代、少年たちの迷い方もナイーブだった。普通の音楽教師マチューに見出される、ボーイソプラノのピエール、少年たちの成長が静かに描かれる。製作はジャック・ペラン(「家族日誌」)、「ニューシネマパラダイス」と同じく出演している彼の回想から始まるが、あの映画よりずっと静かで良い。昔、日本の映画雑誌のインタビューに貴誌も読んで(見て)いますと答えていたペラン。本当に映画ファンだったんだなあと思う。

 

③ ベルンの奇蹟
 1954年のドイツ、エッセンが舞台。11歳の少年マティアスはサッカー好きの少年、泥ボールの草サッカーでは女の子(カローラ)に勝てない。ある日ソ連の捕虜収容所から父親が帰ってくる。心がゆがんだ父親と家族の再生の物語。ドイツの戦後復興と、1954年スイスで開かれたワールドカップをシンクロさせながら、父と子、家族のあり方を描く。東ドイツに行ってしまう兄ブルーノの言葉が衝撃的。「あそこは平等で、自由に物が言えて希望がある」これは「パッチギ」で在日の少年が北朝鮮について言うのと同じ。今見ている我々はその言葉の苦味を知っている。工業都市エッセンの暗い空と、ツーン湖、シュピーツなど如何にものスイス的風景の対比もきれいに出ている。

 


他に「バッド・エデュケーション」もあり、今月は圧倒的にヨーロッパです。

 

●日本映画では、「真夜中の弥次さん喜多さん」「阿修羅城の瞳」ともになかなか賑やかに面白がらせてくれます。


●未見の作品では、「ハイド・アンド・シーク」「Shall we Dance?」のアメリカ映画があります。「Shall we・・・」は予告編では気恥ずかしいのですが、本編はどうなんでしょう。何せ、R・ギアがダンスを習うのですから。


●その他
コーヒー&シガレッツ・・・落語好きにお勧め(○)


コンスタンティン・・・鬼(悪魔)退治だったら阿修羅城くらい明るくして欲しい(×)


インファナル・アフェアⅢ・・・ちょっと作りすぎの完結編(△)


サマリア・・・韓国は日本に近い、社会的にもある面近づいている(○)

 

 

良いゴールデンウィークをお過ごしください。


                         - 神谷二三夫 -


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