
2025年7月号 平坦な映画館
2025年7月号 平坦な映画館
今年は梅雨がないのかと思いきや、
ここにきてやってきた雨の日々、
そしていつも通りの蒸し暑さ。
そんな中いつも通りに快適なのは、
そう、映画館!
5/26~6/25のはっきりしない天気が多かった31日間に出会った作品は49本、
邦/洋画は10/39と先月に続き洋画の圧勝となった。
その原因も先月と同様の旧作の多さで、0/15となっている。
今月のベストスリー
1 国宝
吉田修一が3年間歌舞伎の世界を取材し書いた小説からの映画化。物語の枠組みがしっかりしていて、飽きることがない。歌舞伎という特殊な世界に、有名歌舞伎役者によって引き入れられた男の物語。芸と血というこの世界の2大要素を正面切って描いている。監督の李相日はチェン・カイコーの「さらば、わが愛/覇王別姫」に魅せられたとどこかで書いていたが、白塗りでの古典劇と関連した物語という意味ではよく似た作品といえる。脚本の奥寺佐渡子(「サマー・ウォーズ」など)、カメラのソフィアン・エル・ファニ(「アデル、ブルーは熱い色」など)、美術監督の種田陽平(「キル・ビル」など)の実力派スタッフの力に加え、吉沢亮をはじめ、俳優陣の演技も素晴らしかった。
2 フロントライン
2020年2月、横浜に停泊していたダイヤモンド・プリンセス号を我々は心配しながら見つめていた。まだ名もなかったウィルスが広がりを見せ始めていた。あれから5年、あの時のコロナが人間世界に与えた様々な変化が今ならよく分かる。あの時いかにコロナに対処しようとしていたかを描くのがこの映画だ。DMAT(ディーマト)という医療従事者のボランティアグループが、厚労省の担当者といかに協力し、さらにテレビ等のメディアがいかに動いていたかを見せてくれる。変にあおることもなく、結構冷静に描いたのは関根光才監督、企画・脚本・プロデュースは増本淳。
3 罪人たち
先月39歳になったライアン・クーグラー監督は今までに「クリード チャンプを継ぐ男」やブラックパンサーシリーズを監督・脚本してきた。5作目の監督・脚本・製作となるこの作品でも、力強い映画作りを見せている。ヴァンパイア・ホラーの枠を超えて人間としての生き方にまで迫る作品。