2005年 8月号back


 日本の少子化問題は依然加速しているようで、出生率は記録更新を続けています。大きく言えば産める環境が整備されていないためということでしょうか。環境など整備されていなくても産んでしまうというエネルギーも、昔に比べれば薄いように感じます。産んでしまえば何とかなるさ・・・

 

 少子化問題に最初に影響を受けたのは教育産業でしょうか?団塊世代に合わせて作られた学校、塾などが、学生、生徒数の不足に悩みだしたのはいつごろからでしょうか?

 

 いずれにしろ統計を見ていればしばらく前からこの結果は見えていたはず。騒がれていた割には有効な対策は殆ど取られてこなかった。数字が好きな割には、長いレンジで対策が取られてこなかった、日本の悪い部分の象徴のようでもあり、これではまるで改革改革と口先だけで殆ど・・・・

 

 映画美学校で知ったことの中で一番驚いたのは映画界における少子化問題でした。

 

 映画についていろんな人と話をして、いつも言われるのは「若いときはよく見たんだ・・・」。確かに、人生で一番多感な中学生から高校生にかけて、音楽、文学、美術などと共に映画も一番見られるのはよく分かる。暗闇の中で一人映画を見るのもひそかなる楽しみでした。(昔、映画館に行くことは悪いことでした。私の高校は映画鑑賞届けがありました。)

 

 映画界の少子化問題は絶対数の減少ではなく、最近の子供たちが映画を見なくなっていることです。今の10代は20代よりも映画を見ない、20代が年間6.36回見るのに対して、10代は4.24回というのです。さらに映画に対する興味も薄いというのです。映像がこれほどあふれている現代なのに何故?感受性の鋭い、一番純粋な年代なのになぜ?一つには、小さい頃から映画といえばアニメ(ドラえもんなど)しか見ず、実写の映画に対する興味が育っていないというのです。ヴァーチャルなものが全てという怖い状況が現実化しつつあるんですね。

 

 将来の映画観客が危ない。映画業界もこれに気付いていて、7月から新しいキャンペーンを始めました。”映画館に行こう!第2弾、高校生友情プライス”がそれ。高校生が3人以上なら一人1000円というもの。確かに高校生にとって1500円は高い。これを1000円で見られるようにしようというアイディアです。昔のような2,3番館、名画座もなく安い映画館がない。2006年6月30日までの1年間のトライアル、どうぞご利用ください・・・お送りしている中に高校生はいなかった・・・

 

 ”映画館に行こう!第1弾”はご存知”夫婦50割引”。
6/30で終わる筈だったところ、1年間延長、2006年6月30日までとなりました。一部の方には朗報です。

 

 

6/26-7/25の間に見た17本のベストスリーは次の通り。

 

① いつか読書する日
 牛乳配達をするのがいい。毎朝同じ時間に配達する。待っていてすぐ飲んでくれる人がいる。その音を聞いている病床の人もいる。坂の多い町を50歳の女が走って牛乳を配る。芯の強い、凛とした姿勢で生きています。

 

② フライ、ダディ、フライ FLY,DADDY,FLY
 気恥ずかしくなるような、ダメおやじ→信頼できるお父さんの図式を、すっきり見せてくれます。あまりもダサいスポーツウェアのおやじを、在日高校生が鍛えます。「GO」の原作者で直木賞の金城一紀が、今回は原作、脚本を引き受けてます。高校生軍団とおじさん集団もなかなか。

 

③ ライフ・イズ・ミラクル
 92年のボスニア・ヘルツェゴビナだというのに、こんなにおおらかで奇妙な力にあふれている。戦争がひたひた近づいてきたのに、失恋したロバが主人公の映画なんていいんだろうか?ジャムつきパンを両端から人間と食べ競争する猫とか・・・不思議で豊かな世界。

 

番外:スターウォーズ エピソードⅢ シスの復讐
久しぶりに楽しめるスターウォーズでした。

 

 今月は久しぶりに日本映画ががんばりました。しかし、今回ベストの「いつか読書する日」は1年も前に完成していたとか。上映先が確定していないのに作ってしまった監督も無謀ですが、今、出口のない(上映する場所がない)日本映画が増えているという。映画は上映されて初めて完結するもの。やっと生まれた「いつか読書する日」、見てやってください。ユーロスペースで、当日1700円、前売り1400円です。

 

                         - 神谷二三夫 -


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