2008年 4月号back

 4月は新しい年度の始まり。
 私も新年度にあわせ、転居、転職となりました。明後日が引っ越し、4/1が新入社員、いえ、四月バカではありません、マジ!と、超忙しいのですが、皆様には映画館で心の平和をと願っております。


 

今月の映画

  2/26~3/25に出会えた映画は20本、超忙しい中でもやることはやる気構えです。日本映画が寂しいです。すいません、「連合赤軍 あさま山荘への道程」を見に行っている時間がありませんでした。

<日本映画>

奈緒子
明日への遺言 
接吻

 

<外国映画>

きみのためなら千回でも 
ジャンパー 
ライラの冒険 黄金の羅針盤
牡牛座 レーニンの肖像 
バンテージポイント 
スルース
4ヶ月,3週と2日 
ペネロピ 
胡同の理髪師 
魔法にかけられて
トゥヤーの結婚 
アメリカを売った男 
ダージリン特急
ノーカントリー 
プライスレス素敵な恋の見つけ方 
燃えよピンポン
マイ・ブルーベリー・ナイツ

 

 

 

Ⅰ 今月のベストスリー

 

①ノーカントリー
 テキサスの荒野の中での麻薬取引、そこから始まる乾いた暴力の連鎖、まるでロボットのように決められたことを遂行していく殺人者。いやいやながらその事件を追う保安官はラスト近く引退してしまう。追う者、追われる者が一度もまみえることなく静かな緊迫劇は終焉を迎える。

 

②4ヶ月、3週と2日
 かつて共産圏という体制があった。勿論、今も共産圏はあるわけだが、随分状況は変わった。あの頃、誰もが感じていた窮屈感・閉塞感を、これほどじっと見つめた映画はない。息苦しくてもじっと見つめるカメラに感動する。ルーマニア映画です。

 

*今月は3位が2本あります。どちらも元気をくれる女性の映画です。

 

③トゥヤーの結婚
 生きていくことでさえきびしい条件の内モンゴルの遊牧民。井戸を掘るために負傷し身体が不自由になった夫を、離婚し、再婚してでも助けて生きようとするトゥヤーの生き方は、誰にも文句は言えない。割り切っていても涙する、その涙が切ない。

 

③ペネロピ
 親の因果が子に報いというか、5代前の因果が・・・。豚になったお姫様が王子様のキスで・・・という、まるでディズニーのお話なのに、現代のペネロピはさすがに自立。この話を書き上げた脚本が上手い。主演のクリスティーナ・リッチも、助演で製作も兼ねるリース・ウィザースプーンも快調。

 

次点:胡同の理髪師
北京の旧市街・胡同に住む93歳の理髪師の日常を、ゆっくり淡々とカメラは追っている。生きていてほっとする。

 


次の作品もぜひ見てください。


奈緒子:じっくり青春映画、走りながら変わる。
明日への遺言:映画的に破綻しても訴えたいことがある。
魔法にかけられて:本家ディズニーが自らパロディー、う~む、面白い。
接吻:自分と合う人を見つけてしまうことの幸せ。
アメリカを売った男:20年に渡ってスパイを働いた男の実話、女FBI捜査官が見事。

 

 

 

Ⅱ 今月の懐かしい人

 

アンジェリカ・ヒューストン
 ダージリン急行で旅行する3兄弟が訪ねる母親を演じているアンジェリカ・ヒューストン、あの女王顔というか、ぶっちょう面が懐かしい。


 



今月のトピックス:テレビ局の映画 

 

Ⅰ テレビ局の映画

 

 私の映画への目覚めは早くない、中学生だったから。淀川さんが編集長をしていた「映画の友」に出会ったからだったし。貧しい中学生には映画館に行くお金はそれほどなく、もっぱらTVで見られる映画を追っていた。フレッド・アステアとジンジャー・ロジャースのコンビに魅せられたのも、土曜日深夜、一人で見ていたテレビの映画劇場でだった。だから、TVには感謝してもしきれない。
 元々団塊世代はTVの登場と共に育ったという、真の意味でのテレビっ子でもあったのだし。今や時代は変わろうとしていて、長らくメディアの頂点にあったTVは、その地位がインターネットに脅かされようとしている。つい、驕れるものは久しからずという言葉が浮かぶ。本当に、驕っていますよね、TV局は。

ひょっとしてやばい状況なのでは。

 

 昨年の日本映画興行成績ベスト10のうち、TV局が主として製作した映画はその半分以上を占める。いや、昨年だけの状況ではない。ここ数年こうした状況が続いてきた。日本映画がある種の活気を取り戻し、2年前興行成績で外国映画に勝ったのも、TV局制作の作品があったからこそである。映画会社はTV局に頭が上がらないのだろう。

 

 驕れるものは独りよがりで勝手な行動に走る。なにせ、誰の意見を聞く必要もなく、自分の思うようにすることに自信満々なのだから。

 

 昨年の興行収入トップは「HERO」だった。フジテレビがTV番組から製作したものだ。驚いたことに登場人物の名前と顔があの大画面で紹介される。日本映画では前代未聞なのでは。いや、世界的にみても珍しいのでは。TVで番組に馴染んだ人たちに安心感を与えるためでしょうか?

 

 9位に入っている「アンフェア」など、TV番組を見ていないと人物の関係がよく分からない。見ている人はTVの続きを見ていてワクワクなのだろう。

 

 分かりやすく、まるで居間で横になっておやつを食べながら見ても分かるくらいに平明で、見る者に深く考えさせることなどもってのほか。約2時間、見ている間楽しめればそれでいい。楽しくなければ・・・、映画はTVではないのだが。

 映画館でTV番組を見せられて嬉しいのか否かは分からない。TVで流される映画宣伝の量の多さで話題作と勘違いし、話題作は見ておかなければとなるのだろう。で、見た人は安心するのだろうが、暫くすれば、”TVと同じじゃん・・だったらTVで見るか”となるのでは。

 TV局製作作品が総て悪いわけではない、当然ながら。ただ、基本的に分かりやすさだけを追求する映画作りが、映画の面白さを教えてくれ、引き続いて映画を見ていこうとする映画好きを育ててくれるのか。TV局にとっては視聴率だけが大事、自局の番組に視聴者を引き止めておきたい。正しい企業行動ではある。

 

 「バンテージポイント」でTVのレポーターが、自分の感じたことを話そうとすると、シガニー・ウィーバーが演じるディレクターorデスクが台本通りにと叱責する。
 今やTVは予定通りに番組が進まないとまずいメディアになってしまった。
あるがままを伝えるとして登場したTVのはずなのに。見る側の我々が選択をする。
 映画館で楽しめる映画を皆様にお勧めしていきたい。勿論、それがTV局の作品であっても。

 

 

 

Ⅱ 

 

TOHOシネマ10周年フィルムについて書こうと思っておりましたが、
引越し準備で逼迫しましたので、来月ということで。


                         - 神谷二三夫 -


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