2012年 新春特別号back

 あけましておめでとうございます。

 初日の出は拝めなかった今年の年明けですが、風もなく、寒さもほどほど、穏やかな元旦になりました。ひょっとして、1月号の末尾で“大晦日に…”の言葉に、昨日来ないのは何故とお思いの方もいらっしゃるかも。実際に読者のお二人の方から大みそかの夜にメールをいただきました。そこには特別催促の言葉はなかったのですが、その意を汲みとるべきですよね。
申し訳ございません。


 私が、“元旦に…”とすべきところを“大晦日”としてしまったのです。毎年、大晦日の夜、その年の自分のベストテンを決め、元旦にメールをお送りしていました。最近ときどき感じる、ひょっとしてボケッ?の一つかもしれません。
送信キーを押してすぐ気がついたのですが後の祭り。というわけで、本日、元旦にお送りしています。

 実は、2日ほど前からメールの送信ができなくなりました。着信はできているので原因がよくわかりませんが、これで、今日お送りしないと信用を失うばかり。それで、急きょGMAILでお送りしています。実は何年か前に登録したGMAILのパスワードが思い出せず、しかもその間にメールアドレスが変わっているので、元のGMAILアドレスにたどり着けず、新しくアカウントを作ってしまいました。無事にメールが届きますように。


 

2011年間ベスト10

 

 大変な年、2011年に観た映画の本数は344本になりました。昨年同様、古い映画が多く含まれています。78本が旧作、266本が今年封切りされた映画です。2011年の全封切り本数は知りませんが、ここ数年は700本強なので、同じくらいと考えれば約1/3を見たことになりました。
 なお、下のベストテンには、映画祭で見た映画や試写会で見た後封切りされなかった映画は含まれていません。

<日本映画>

 1. 冷たい熱帯魚
 2. サウダーヂ
 3. マイ・バック・ページ
 4. エンディングノート
 5. 一枚のハガキ
 6. 監督失格
 7. 大鹿村騒動記
 8. ハラがこれなんで
 9. コクリコ坂から
10. 探偵はBARにいる


 映画は常に社会の状況を反映している。しばらく前の事件からヒントを得て作られたといわれる「冷たい熱帯魚」には、人間が持っている熱い情念を、それがどんなに軽いものでも、熱さを持って描かれている。思いが秘められている分、まるで熱の塊のように我々に訴える力を持っている。
 園子温監督は「恋の罪」という、これまた事件を思い出させる映画が今年もう1本あったが、もうじき公開される「ヒミズ」を含め、今、これほどに熱いものを持って人間の姿を赤裸々に描く監督はいない。

 甲府を舞台に地方都市の持つ出口のない閉鎖性と、そこで生きる様々な人を描いた「サウダーヂ」は、希望を見出せない終末を迎えるが、不思議に見ている我々には力を与えてくれる。監督をはじめ作り手がそのことに絶望していないためだろうか?

 「エンディングノート」、「監督失格」の2本のドキュメンタリーはともにごく私的な記録である。父親と家族の話であり、主演女優と監督との記録である。ともに、私的映画の枠を超えて、我々に感動を与えてくれる映画だった。
それは、それぞれの中心人物にどれだけ迫っていたか、我々にその人たちの生きている姿をどれだけ見せることに成功していたかによっている。
 この2本のほかに「Peace」という、これまた義父家族に密着したドキュメンタリーがありドキュメンタリーの一つのあり方を強く印象付けた年だった。

 60~70年代の揺れ動いた社会をジャーナリストの姿を通して描いた「マイ・バック・ページ」、戦争に翻弄された市井の人々を監督自身の思いを込めて描いた「一枚のハガキ」、共にその時代の姿、状況を我々の伝えてくれる。

 震災にあった2011年という年にあって、観ている間も含め楽しさを与えてくれた7~10位の4本。
 本来の映画の楽しみはこんな風に気分を明るくしてくれる、ウキウキ、ワクワクさせてくれる映画に出会うことかもしれないと思わせてくれる。大人たちのドタバタ喜劇「大鹿村騒動記」、新しいのんびりペースのあったか喜劇「ハラがこれなんで」、日本が未来に向かっていた戦後社会の明るさを感じさせてくれる「コクリコ坂から」、プログラムピクチャーの楽しげな雰囲気を持った「探偵はBARにいる」。こんな映画がもっと、もっと増えて、映画を見る人がます、ます増えることを祈りたい。

 

 

<外国映画>


 1. 英国王のスピーチ
 2. ゴーストライター
 3. 無言歌
 4. パレルモシューティング
 5. 蜂蜜
 6. サラの鍵
 7. ソーシャル・ネットワーク
 8. ビューティフル
 9. トゥルー・グリット
10. ザ・ファイター

 

 

 英国王室は数々の傑作映画に題材を提供してきたが、今年もまたジョージ6世という新しい主人公を教えてくれた。吃音というハンディキャップを負いながら、国王という務めをいかにこなしていくか、そこに登場する型破りな吃音矯正教師とのヒューマンドラマが我々を感動させる。それにしてもああいう教師を存在させるイギリス社会は面白い。

 無駄のない語り口、その巧さに思わず引き込まれる「ゴーストライター」、
ポランスキーはやはり映画の分かっている監督なんですね。

 中国の1950年後半、ゴビ砂漠の矯正収容所の姿をまるでドキュメンタリーのように描く「無言歌」は、国、その権力者が人々に課してしまう過酷な運命と、その体制が示す無慈悲な姿を見せてくれる。
 国が示す姿勢という意味では、フランスという国がユダヤ人に示した1942年の事件を、現代に絡めて描く「サラの鍵」も同じように我々に警告を与えてくれる。

 トルコの監督セミフ・カブランオールの描くユスフ三部作の最新作「蜂蜜」ハリウッドやヨーロッパの映画と違う世界を見せてくれる。6歳の男の子を取り囲む緑深い自然、言葉少なく語られる静かで情感豊かな映画だった。ハリウッドの力が落ちているとはいえ、新しいカリスマの負の部分さえ描いていた「ソーシャル・ネットワーク」や、西部劇というジャンルが持つ豊かさを感じさせてくれた「トゥルー・グリット」、現実にこうした人物が存在するアメリカという国の面白さを教えてくれた「ザ・ファイター」など、それぞれに力強いドラマを見せてくれた。

 昨年史上最高の興行収入を上げた映画界は、今年震災の影響等もあり、前年比8割くらいの成績ともいわれる。大きな自然の力の前では、娯楽に時間を割くことはできないのは当然だろう。もちろん、徐々に回復はしたのだろうが、思うほど元に戻っていないとも言われているようだ。

 今年は大きな出来事がなく、安心して映画などを楽しめるようになってほしいと心から願います。

 今年1本目の映画「friends もののけ島のナキ」の主題歌がMISIAの歌う「Smile」で、その後見に行った「善き人」のスバル座で休憩時間に流れていたのがナット・キング・コールの「Smile」、今年は微笑むことができる良い年になりそうだ!(2本とも面白い映画です。オススメです。)

今年も皆さんが楽しい映画に出会えるように願っています。

 

 

PS: 
メール発信ができない理由がわかりました。

 プロバイダーに問い合わせたら回答が来て、大量のSPAMメール攻撃を受けていて、メールの送受信が不安定になっているというのです。そういえば、送信ができなくなる2日くらい前には受信が約1.5日止まりました。

 ということで、今回GMAILで発信しました。もし何かメールをいただく際はもともとのメールアドレスfkamiya@pct.nmbbm.jp で構いませんが、もし返事がほしい場合は現在お送りしているこのアドレス fkamiya60@gmail.comのほうでもよいです。


                         - 神谷二三夫 -


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