2014年 1月号back

 いつだってやってきますよ、年末は。
新年を迎えるための大忙し、変わることはありません。
そんな時、ほっと一息映画館。

 

元旦も1日なので1000円になります。


 

今月の映画

 11/26~12/25のクリスマスまでの30日間に出逢った映画は29本、
先月に比べると作品内容は随分充実、
面白い作品がわんさかです。
お正月も続映という作品もあります、長いお休み、映画もお楽しみください。

<日本映画>

四十九日のレシピー 
もらとりあむタマ子 
利休にたずねよ 
楽隊のうさぎ
武士の献立
祭の馬 
永遠の0
(古)宗方姉妹
生きてはみたけれど小津安二郎伝 
東京暮色 
風の中の牝鶏 
小津と語る

 

<外国映画>

遥かなる勝利へ 
ウォール・フラワー 
キャプテン・フィリップス 
ザ・コール緊急通信指令室
グリフィン家のウエディングノート 
母の身終い 
ミッドナイト・ガイズ
REDリターンズ
47Ronin 
シャンボンの背中 
ゼロ・グラビティ 
鑑定人と顔の無い依頼人
おじいちゃんの里帰り 
少女は自転車に乗って 
リヴ&イングマール ある愛の風景
オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ 
ブリングリング

 

 

 

Ⅰ 今月のベストスリー

 

①-1 ゼロ・グラビティ
 宇宙の暗闇に漂っていく怖さ、音の無い世界、重力の無い世界のあり様をこれほど精密に描いてくれたことに感動。今見ておくことに意義があるエポックメイキングな作品。

 

①-2 永遠の0
 百田尚樹の原作が良いのだろうと感じさせる映画も素晴らしい出来。あわてたところも無く、じっくり感動させてくれる。俳優陣もそれぞれによく、夏八木勲さんの遺作としても記憶される。

 

②-1 母の身終い
 淡々とした描写で語られる母と息子の日常、しかし、母は不治の病にかかり自らの終末を決めてしまう。その内容ゆえに心に残る作品。

 

②-2 利休にたずねよ
 美は私が決めることという利休の思いが描かれる。ラスト近く、青春時の思いが丁寧に描かれ、説明されてしまうのは残念。物事には謎があり、そのことが美しい場合もあるのだから。

 

③-1 ザ・コール
 緊急通信指令室ロサンゼルス警察の緊急通信室、市民からの連絡が絶えない。そこにかかってきた事件に巻き込まれた女性からの2件の電話。たるみ無し、すっきり緊張感のある筋運び、ハル・ベリーも美しい。

 

③-2 鑑定人と顔の無い依頼人
 楽しくだまされました。あそこまでだますのには、それなりの付き合い、準備が必要です。それにしても、人生あまり入れ込むと危ないのかも。

 

③-3 おじいちゃんの里帰り
 トルコ系ドイツ人問題は最近では極右系組織からの排斥が報道されますが、元々はドイツ自らお願いして来てもらった関係。その移民感謝祭の様子がメルケル首相の画像と共に映された時には感心しました。

 

 

 

今月は面白い作品が沢山ありました。

 

遥かなる勝利へ:ニキータ・ミハルコフ監督は基本的に恋愛にしか興味のない人だと思いますね。この作品でも、家に帰ってきた後の変な関係の方が面白い。

 

ウォール・フラワー:高校に入学して初めて登校する時、それまで入院していたりした主人公を心配して家族が声をかけるが、いじめられるのが当たり前というスタンス。この辺りから始まってずっと若者に即して描かれる久しぶりの青春映画。

 

キャプテン・フィリップス:2009年の海賊事件をドキュメンタリータッチで描く。どっちの方向へ進んでしまうのか、ドキドキしながら見ました。

 

ミッドナイト・ガイズ:28年ぶりに娑婆に出た主人公を迎えたのは、昔の仲間。初老の男たちの最後の花道。肩肘張らないで、筋を通しに出かけていく。

 

シャンボンの背中:普通の生活の中での大人の恋情、その切なさを淡々と描き、最後の苦みまでと渋い映画。音楽があの人への思いと共に体に染み込む。

 

楽隊のうさぎ:全然さえないというより、初めてだからそれが当たり前の中学1年生の男子の姿を誇張なく描く。ゆっくり、時に飛び跳ねる成長。

 

少女は自転車に乗って:サウジアラビア初の女性監督ハイファ・アル=マンスールのデビュー作は、車の運転、肌の露出など女性の禁止事項や一夫多妻の現実などをしっかり描きだす。それにしてもサウジアラビアは法律で映画館が禁止されているという。何んという国だ!!

 

武士の献立:家計簿に続き加賀藩の武士シリーズ第2弾は包丁侍。気楽に楽しめる平均点映画、その意味では昔風。

 

 

 

 

Ⅱ 今月の懐かしい人

 

☆ジュリアナ・マルグリーズ
 「ミッドナイト・ガイズ」でアラン・アーキン扮するハーシュの娘ニーナを演じたジュリアナ・マルグリーズはTVドラマ「ER緊急救命室」で看護婦キャロルを演じていた。スピード感や、実況中継のようなドラマ作りがTVドラマの新しい方向を示した「ER」は、日本では1996年からNHKで放映された。医師、看護士などの集団ドラマの中で、ジョージ・クルーニー扮するロスの紆余曲折ある恋人がキャロル、ジュリアナが目力強く演じていた。アメリカでは1994年から放映されており、これで注目されたクルーニーが映画に出始めたの1996年、日本での放映が始まった頃は映画でも注目され始めていた。ロスとキャロルという濃い顔カップルは結構目立っていた。ジュリアナは映画にも少し出たが、基本の舞台はTVだった。久しぶりに彼女を見た「ミッドナイト・ガイズ」の役は女医だった。医療関係者のイメージがアメリカでも強いのか?

 

「ミッドナイト・ガイズ」には、アル・パチーノ、クリストファー・ウォーケン、アラン・アーキンという懐かし3人も出ています。

 

 

 

 

Ⅲ 今月のつぶやき


●「四十九日のレシピー」はいい話ではあるが、もうちょっと軽めに描くと良かったかも。そんな中、二階堂ふみ扮する若い女性がコメディリリーフの役割を果たしていた。彼女、「地獄でなぜ悪い」をはじめ、最近目立ってます。

 

●ソマリア沖の海賊がニュースで話題になったのは2000年代後半だったろうか?2009年の事件を描く「キャプテン・フィリップス」は事件の生々しさを伝えてくれる。海賊行為が始められたのにはいろいろな要因があるだろうが、根本には貧しさがある。そのあたりの背景も垣間見られる映画でした。

 

●ここまでやるかという位下ネタで攻めてきたのが「グリフィン家のウェディングノート」、コロンビアからの実の母の扱い方にしてもちょっとあざとい感じ、この手の映画、昔はもっとスマートに作られていたような気がする。

 

●やはり受けなかった「47Ronin」ですが、忠臣蔵の世界があそこまで作り変えられると、爽快感あり。基本線は大きく踏み外してはいないのでもう少し楽しまれても良かったかも。

 

●リヴ・ウルマンは名優ですが、ちょっと私には重いですね。「リヴ&イングマールある愛の風景」はおばさんの一人語りのような印象。

 

●吸血鬼映画もここまで来たか…確かに、今や変な人の血を飲むと、変なものに汚染されていて危険になる可能性があるから大変だよね。ジム・ジャームッシュが吸血鬼映画「オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライブ」を作るとは!彼らしい吸血鬼映画とも言えるが、本来合わない体質では?それにしても、この日本題名はどうにかならないのだろうか?

 

●ロサンゼルス富裕層の子供達の倫理感はどうなっているのか?と思わせる「ブリングリング」。ハリウッドセレブの邸宅に泥棒に入っていた彼らの作品(実話)を作ったのはソフィア・コッポラ。彼女らしく思想性のない現象映画のような趣。



 



今月のトピックス:決算報告&ETC  

 

Ⅰ 決算報告

 

 昨年は例外的に新年特別号でお伝えした年間決算報告、今年は元に戻ってこの1月号でお届けします。

 会計年度は、2012/12/26~2013/12/25の1年間、今年は次のようになりました。


         期間: 2012/12/26 ~ 2013/12/25
        支出額: 302,400円
       映画本数: 353本
     1本当たり金額: 857円

 

 昨年より1本当たり金額は4円下がりました。4年前に800円台になってから、ここ3年は860円前後になっています。シニア料金は、基本的には1000円ですが、ユーロスペースの1200円、岩波ホールの1500円というのもあります。
これらの料金で映画館に入っていますが、何故857円で見ているかの理由は次の通りです。


①各映画館チェーンのポイントサービスの利用
 現在私が利用しているのは、ユナイテッドシネマ、TOHOシネマズ、ユーロスペースの3つ。前の2つは6ポイント(1回の利用で1ポイント)で、ユーロは8ポイントで1回フリーです。TOHOシネマズは+マイレージシステム(観賞時間)があり、6000マイルになれば1ヶ月間オールフリーです。

 

②前売り券の利用
 シニア料金利用の1000円の人は前売り券を買う機会はほとんどありません。ただし、岩波ホールはシニア1500円ですので、前売り券料金と同じです。この前売り券を1450円で買っています。

 

③株主優待券を使用
 東宝の株を持っていて、月1枚の無料券をもらっています。


来年も1円でも安くを目指します。

 

 

 

 

Ⅱ 宮崎駿監督

 

 岡田斗司夫の著書“「風立ちぬ」を語る”が出版された。
「風立ちぬ」は宮崎駿監督の最後の作品、何故監督は遺作で子供向けではない作品を創ったのか?岡田は宮崎は自分の作りたいものを創ったという説を披歴している。子供ではない主人公を中心に据えたのは当然のこと。宮崎駿はアニメーターとして天才であり…など、新鮮な観点から宮崎監督と、その作品を分析している。

 そんな中で監督と息子、宮崎吾朗との関係に大きな部分が割かれている。岡田によれば、宮崎駿監督は吾朗が「ゲド戦記」でデビューするのに、徹底的に反対し、息子の力量をくそみそにけなしたというのです。自分がずっとやりたかった「ゲド戦記」を何故息子が作るのか?その時期、宮崎監督は体力的に無理という問題があったのですが。

 

 アニメの大天才は他の誰よりも絵が描けてしまいます。そのため、ジブリスタジオの若手が描いた絵も、気に入らなければ描き直してしまうという最悪のことをしてしまう。そのため、ジブリでは若手が育たない、若手つぶしで有名なんだそうです。クリエーターとしてはそうしたわがままな部分があって当然でしょうね。


それにしても、その作品が子供向けのためか単純に優しいと思われがちな宮崎監督の知らなかった姿が多く見られて新鮮でした。

 

 

 

 

Ⅲ W座

 

 今月はステファヌ・ブリエ監督の2作品を見た。
「母の身終い」は重いテーマを静かに見つめながら、母と息子の言葉にならない感情を見せてくれた。「シャンボンの背中」は妻と息子との現実の生活に、恋するという感情が敗れていく様を心やさしく見つめてくれた。最近、ちょっと上り調子のフランス映画界でも期待の監督の一人。

 

 「シャンボンの背中」は「W座からの招待状」で観賞、無料で見ることができました。W座はWOWOWで放映されている映画の番組。WOWOWは見られないので知りませんでしたが、脚本家の小山薫堂とイラストレーターの安西水丸の二人が案内する番組らしい。
 今やシネコンが多くの部分を占める日本の映画館の中で、どんどん窮地に追い込まれている単館系映画館の雰囲気をTVで目指すのがW座というのです。

「W座からの招待状」は全国の単館系映画館をサポートしたいと、今回の「シャンボンの背中」は全国5か所の映画館で無料上映するというもの。(正確には東京を最後に上映は全て終わりました。)
 なかなかうれしいアイディアですし、今回のように重要な作品が上映されるのは貴重ですが一つだけ改善してほしいことが。上映の前と後ろに二人のお話が上映されるのですが、前の上映だけでもやめてほしい。
 それ以外は全てOK、これからも宜しく。

 

 

Ⅳ 今年の映画館の作法

 

 「永遠の0」をユナイテッドシネマ豊洲に見に行った時渡されたものがある。“ご観賞マナー向上キャンペーン実施中”のちらし。下記の行為は、他のお客様のご迷惑になりますので、おやめ下さい というもの。

上映中の携帯電話の使用、メールのチェック他店で購入した飲食物のお持ち込み、上映中のおしゃべり、前の座席を足でけったり、座席に足を乗せること、お子様が大きな声を出したり、劇場内を走り回ったりすること、迷惑行為(痴漢、暴力、騒音等)

 

 今日見に行った「ブリングリング」で声を出してしまった。通路を挟んで右隣に座った女性2人組、予告編上映中からずっと話っぱなし、しかも一人は声が通る。それが、映画が始まっても続いていたので「やめてください」の一言。

宜しくお願いします。

 

 

今月はここまで。

次は新年特別号を元旦にお届けします。




                         - 神谷二三夫 -


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