2016年 3月号back

今年の冬は寒暖の繰り返しが続いている。
冬日の翌日は夏日のようなイメージで推移してきた。
それでも、三寒四温、春がゆっくり近づいてきている様子。
どんどん心地よい季節がやってくる。
一足お先に心地良い、勿論それは映画館で!

 

 

 

今月の映画

 

 1/26~2/25、真冬の31日間に出会った映画は29本、名作ねらい目の新春第2弾を含め多くの作品が封切られました。
 「ある取り調べ」は昨年6月13日に封切りされている(今月のトピックス参照)ので正確には新作と言えないが、監督自らが東京凱旋ロードショーと言っていたので、新作と勘定すれば今月は旧作は1本もなし。
 なお、「恋人たち」はこれも昨年の封切りですが、キネマ旬報のベスト表彰式・上映会で再見しました。

 



<日本映画>

信長協奏曲 
俳優 亀岡拓次 
恋人たち(再見) 
マンガ肉と僕
ある取り調べ 
牡蠣工場

 

 

<外国映画>

クリムゾン・ピーク
  (Crimson Peak)、 
エージェント・ウルトラ
  (American Ultra)
ブラック・スキャンダル
  (Black Mass) 
白鯨との闘い
  (In The Heart of TheSea)
サウルの息子
  (Saul Fia / Son of Saul) 
ドリームホーム 99%を操る男たち
  (99Homes) 
ニューヨーク眺めのいい部屋売ります
  (5 Flights Up) 
オデッセイ
  (TheMartian)
最愛の子
  (親愛的 / Dearest) 
ザ・ガンマン
  (The Gunman) 
99分,世界美味めぐり
  (Foodies)
不屈の男アンブロークン
  (Unbroken) 
殺されたミンジュ
  (One on One) 
キャロル
  (Carol)
愛しき人生のつくりかた
  (Les Souvenirs / Memories)
ディーパンの闘い
  (Dheepan)
ロパートキナ 孤高の白鳥
  (Ouliana Lopatkina,Une Etoile Russe /      UlyanaLopatkina:A Russian Star)
シーズンズ 2万年の地球旅行
  (Les Saisons / Seasons)
スティーブ・ジョブズ
  (Steve Jobs)
クーパー家の晩餐会
  (Love The Coopers) 
ドラゴン・ブレイド
  (Dragon Blade)
SHERLOCK/シャーロック 忌まわしき花嫁
  (Sherlock:The Abominable Bride)
X-ミッション
  (Point Break)

 

 

 

 

 

Ⅰ 今月のベストスリー

 


① キャロル
 パトリシア・ハイスミス(太陽がいっぱい)がクレア・モーガン名義で発表した「The Price of Salt」を原作に、トッド・ヘインズが映画化、彼の「エデンより彼方へ」と同じく50年代のアメリカを舞台にしている。アメリカがすべてのことに自信を持っていた時代、しかしその裏では幾多の摩擦があった時代。
二人の女性の間で揺れ動く恋愛感情を細やかな描写で描き上げた佳作。

 

② オデッセイ
 一人火星に取り残された宇宙飛行士、食糧は約1か月分のみ、次にロケットが来るのは3年先、彼はいかに生き延びるのか。これはその方法論を殆ど科学映画のように描き出しながら、生きるという希望に疑問もなく向かっていく映画です。船長が残していたディスコ・ミュージックが妙に似合う映画にしたリドリー・スコットは凄い。

 

③-1 サウルの息子
 アウシュヴィッツ収容所でナチの手先としてユダヤ人遺体の処理をする<ゾンダーコマンド>として働くユダヤ人を描く衝撃作。ハンガリーの新鋭監督ネメシュ・ラースローの作品だ。収容所内の様子を殆どドキュメンタリーのように描いている。基本的には感情を表さずに。自分の息子をユダヤ教に則って葬ってやろうとする男の物語。

 

③-2 ある取り調べ
 精神障害のある27歳の息子と妻を殺したとして自ら電話自首してきた犯人と、それを取り調べる刑事のやり取りだけをじっくり描いた映画。出来事を映像で表すことをせず、会話の中で状況を知らせるという映画だ。物語の持つ強さだけで人を感動させる。観る人の中にイメージを膨らませる。

 

 

 

今月は総ての作品が見て損はないと言いたいくらいの出来です。ぜひご覧ください。

 

 

●エージェント・ウルトラ:人間改造をしてある合図を契機に秘密兵器としての能力が覚醒するなんて、そのままソ連のスパイ作戦そのもの。行うのCIAという逆転をはじめ、醒めたアメリカ喜劇。


●ブラック・スキャンダル:「クレイジー・ハート」「ファーナス/訣別の朝」と渋めの作品を作ってきたスコット・クーパー監督の新作は、FBI捜査官を演じたジョエル・エドガートンが今一つ弱めで、ジョニー・デップに対抗できるものになっていないのが残念。


●白鯨との闘い:メルヴィルが取材に来ていたナンタケット島を基地とするクジラ漁の物語。クジラを探して1年以上の航海、小さな船でのクジラとの闘いなど興味深い。山本一力さんの「ジョンマン」と同じ時代の話だろう。


●ドリームホーム 99%を操る男たち:アメリカの住宅産業を書いた脚本家はイランのアミール・ナデリ、監督ラミン・バーラニは両親がイランからの移民、製作会社の一つはアブダビにありと、なぜか中東系が絡んでいます。アメリカの厳しい現実が描かれます。


●ニューヨーク眺めのいい部屋売ります:イーストリバーの川向うブルックリンは確かにマンハッタンのスカイラインが眺められていいですね。住宅売買にエージェントが絡み多くの人が見に来るのが驚き。


●最愛の子:これちょっと微妙ではあります(受け取った母親が名前を変えたのは? とか)が、一人っ子政策の中国がいかに歪んでいるかがよく分かります。


●ザ・ガンマン:ショーン・ペン主演のアクションもの。舞台はアフリカのコンゴ。今や私企業化している軍隊にいた主人公、8年後に訪れたコンゴで命を狙われる…。リーアム・ニーソンを中年アクションスターにしたピエール・モレル監督の新作です。


●俳優 亀岡拓次:悪くはない出来ですが、もう少しストレートに面白くても良かったかと。多分、そんなに単純に普通のものにするのはできなかったんでしょう横浜聡子監督は。


●不屈の男 アンブロークン:上映中止問題で有名になったアンジェリーナ・ジョリー監督作。よくできている。悠然としたペースですが、もう少しスピードがあっても良かったかも。


●殺されたミンジュ:キム・ギドク監督の新作は、ミンジュは最初にちょっと出てきてすぐ殺され、あとは理由も分からず人々の暴力が拡大するばかり。人間が持つ根源的暴力性、やはりギドクです。


●愛しき人生のつくりかた:パリに住む3世代家族の物語は、楽しめます。語り手は息子ですが、面白さの中心は父親です。郵便局を退職してやることの無くなった父親はうろうろ、きょろきょろ。モンマルトルのホテルの主人として登場するジャン=ポール・ルーヴ監督、ひょうひょうとしてます。


●ロパートキナ 孤高の白鳥:サンクトペテルブルクのマリンスキー・バレエのプリンシパルを20年にわたって務めるロパートキナの踊りは流石です。上手い人の踊りはどんなに速い動きでも、まるで止まってでもいるかのようにきれいに型が見えるのです。


●スティーブ・ジョブズ:相当変わった人ですよね。彼の周りにいてうれしい人はそうはいないのでは。特に娘に対するほぼ子供のような対応はう~む。3回の商品発表会だけを描く映画は方法的には面白い。


●クーパー家の晩餐会:40~50年代のクリスマスものであれば心温まるお話が中心でしたが、今はそれぞれの持つ問題が中心というとおかしいですが、ま、最後はまとまります。


●SHARLOCK/シャーロック 忌まわしき花嫁:19世紀末~20世紀初頭のホームズと現代のホームズが交互に現れ、しかも登場者たちは観客者に向けても話しかける。TV特別番組を日本では映画館で。


●牡蠣工場(かきこうば):想田和弘監督の新作は岡山県牛窓で牡蠣養殖業を営む家族を中心に、中国から来た研修生や、高齢者中心に行う牡蠣むき作業を描く。

 

 

 

 

Ⅱ 今月のつぶやき

 

●タイムワープものは色々あるが、こんなに勝手にやっていいの?と思ったのは「信長協奏曲」。原作の漫画はどうなのだろう。少なくともSF的ではないと思う。作者の都合で時が動く。


●日本語題名がちょっと違うんではない?と感じたのは「ブラック・スキャンダル」。ジョニー・デップの悪役ぶりが怖いとはいえ、スキャンダル的要素は希薄。伝統的ギャングもの?


●住宅ローンが行き詰った時も誰もが法廷に訴えるんだなあと感心した「ドリームホーム」、住宅からの撤去に警察と業者が一緒に来るのも凄い。


●アウシュビッツのリアルを描いた「サウルの息子」はよく作ったという気持ちが強い。言葉で知るより、映像で知る方が印象に残るのは明白だ。


●連れてこられた時子供は泣き叫んだに違いないのに、母親になる人は何も気づかなかったと言うのはいかにもおかしい「最愛の子」。母親も確信犯ですよね。別の名前も付けるわけだし。これが受け入れられ、この母親にも同情がわくというのは不思議な気がする。


●捕虜になった外国人兵士は日本の収容所の中でどんな風に扱われていたかを教えてくれる「不屈の男 アンブロークン」。日本では意識して調べなければ知ることはできない状況だ。いかにも異常な渡辺伍長以外はどんな風だったのか知りたいところ。


●白鳥がいかにバレエにとって難しく、大事なものだったかを思い知らされる「ロパートキナ孤高の白鳥」。彼女の繊細な踊りに感動する。体の動きを100%コントロールできるからこその技。


●スリランカの反政府運動で国を脱出せざるを得なくなった難民、家族をよそおってフランスへ。パリ郊外の公団住宅のような住居、そこで繰り広げられる生活を守るための「ディーパンの闘い」。本来なら共感できる作品だと思うのだが、今一つ入り込めないのは作る側に当事者意識が、感じられないからだ。ラストでイギリスのタクシードライバーになっているのには何?という感じ。


●漫画ではなく小説だったんですね「マンが肉と僕」の原作は。映画は妙に端正っぽい作りで、若い女性監督にしては珍しいとも思ったが、アンジェリーナ・ジョリーだってその線だったな。この映画、男と女どっちの立場になって描いているのでしょうか?言ってみれば女に翻弄された男の物語ではありますが、もひとつ男がしっかりしていない。それが若い男そのもののありようではありますが。


●分厚い自伝を出したジャッキー・チェン、久しぶりの新作「ドラゴン・ブレード」が公開中。映画に出始めて45年、今もなお主役を務めるジャッキーに感心。観客も私と同年代が多かった。二人のハリウッドスタ―(ジョン・キューザック、エイドリアン・ブロディ)を迎えて、ローマ帝国とシルクロードの接点での攻防を描く。それにしてもジャッキーは良い人っぽい。昔から香港映画には脚本がないなどと言われた。今作のような歴史劇で脚本がないとは思われないが、雰囲気的にはないのではと思わせる、ちょっぴりふらふらしているから。

 


 

 



今月のトピックス:最近のアメリカ映画  


Ⅰ 充実の2月 最近のアメリカ映画

 

 例年、新春第2弾は見所の多い作品が並ぶものだが、今年は特に良い作品が多かった。作品群は上に書いたとおりだが、その中心はアメリカ映画だ。日本ではアメリカ映画の大作がなんだか馬鹿にされているようになってから久しい。
世界的な大ヒット作も日本では今一つの成績という状態は今までにもお伝えしてきた。確かに、ヒット作の続編が多くなり、CG多使用画面の同じような映画に、またかという印象を持った人も多くいたことだろう。それが、最近の多くの作品では品質がぐっとアップしたように思えるのだ。

 

 この見せよう会通信の1~3月号のベストスリーにもアメリカ映画が多く入っている。


1月号 ①黄金のアデーレ 名画の帰還 ③007スペクター
2月号 ①-1スター・ウォーズ/フォースの帰還  

    ①-2ブリッジ・オブ・スパイ ①-3ザ・ウォーク
3月号 ①キャロル ②オデッセイ


 今アメリカの大作はアメコミ(マーベルコミックやDCコミック)から作られたり、地球が滅びる大ディザスター映画になることが多い。今年もこの傾向が変わるわけではない。3月には「スーパーマンVSバットマン」やアベンジャーズ系の作品もやってくるし、ディザスター映画も出番を待っている。ハリウッドは100年以上の歴史を持ち、その間映画の中心地として君臨してきた。


 長い年月の間には黄金時代もあれば、どん底の時期もあった。幾多の名作、広いジャンルの作品群など歴史の持つ強みも多い。作品のつくり方がシステムとして確立、商売としての映画産業が長い間栄えてきた。映画会社自体の変遷は激しいが、その切磋琢磨が逆に産業としての強さを支えてきた。ハリウッドの強さは、作り手たちを世界各地から連れてきてしまうところにある。東欧からの移民たちが多く活躍してきた初期の頃から、民族・国籍にこだわらない。


 今月の作品で監督を見てみれば次のようになる。


 キャロル:トッド・ヘインズ(アメリカ、55歳)
 オデッセイ:リドリー・スコット(イギリス、78歳)
 エージェント・ウルトラ:ニマ・ヌリザデ

          (ロンドン生まれイラン人、39歳)

 ブラック・スキャンダル:スコット・クーパー(アメリカ、45歳)
 白鯨との闘い:ロン:ハワード(アメリカ、61歳)
 ドリームホーム:ラミン・バーラニ(イラン系アメリカ人、39歳)
 ニューヨーク眺めのいい部屋売ります:

          リチャード・ロンクレイン(イギリス、69歳)
 ザ・ガンマン:ピエール・モレル(フランス、51歳)
 不屈の男アンブロークン:アンジェリーナ・ジョリー(アメリカ、40歳)
 スティーブ・ジョブズ:ダニー・ボイル(イギリス、59歳)
 クーパー家の晩餐会:ジェシー・ネルソン(たぶんアメリカ、年齢不詳)
 X-ミッション:エリクソン・コア(アメリカ、40代)

 

  30代の若手から80才に届こうとする超ベテランまで幅広い年代、才能のある、或いは情熱のある人に任せる体制、当たりそうなものにはどん欲に食らいつく活動屋精神と、多くの映画的偉人を輩出してきたハリウッドに対する尊敬の念などなど、今のアメリカ映画はこうした要素が混ざり合って、上手い方向に進んでいるように感じられる。

 

 

 

Ⅱ 「ある取り調べ」に関連して


 時間的に他に見る作品がなかったという一番消極的な動機で「ある取り調べ」という映画を見た。何の知識もなかった作品で、ユーロスペースのサイトから作品の内容を知り、まあ、面白いかもしれない程度の気持ちで見に行ったのだ。
 2/14 10:30~12:10 渋谷ユーロスペースにて見たのだが、2/13~19の1週間、朝10:30からの1回だけといういわゆるモーニングロードショーという形だ。


 今や、作られる映画が多くなり映画を公開できるのは厳しい状況が続いている。映画館はシネコンが90%近くを占めることになり、宣伝力もなく地味な映画は公開できる場所がどんどん減っているのである。そのため、1日1回上映のモーニングまたはナイトorレイトロードショーという形が多くなっている。こうした形はシネコンでも結構行われているが、違いは何らかの売りがある作品となるだろうか。宣伝する資金があれば“売り”を作れるし、有名スターや人気漫画原作も売りだ。しかしそうした特徴のない作品は、シネコン以外の映画館で朝、夜に顔見世するしかない。そのため、ロードショー館でありながらモーニング、日中、レイトと1日3作品を回すことも。


 そんな気持ちで見た「ある取り調べ」は面白い作品だった。観る価値は大いにある。


  監督:村橋明郎、 脚本:中西良太
  出演:佐藤B作、中西良太、斉藤陽一郎 

    (他には護衛警官役の人など数人だけ、ほぼ3人だけの出演)


 これらの名前の中で知っているのは佐藤B作だけだった。3人は出ずっぱりで取り調べる側と調べられる側に分かれてのせりふ劇だ。その日、映画を見に来た人は30人弱というところだったろうか。


 映画は長いエンドロールもなくすっきり終わったのだが、誰もが退出しないでいたら、監督が挨拶のためのそのそと舞台へ出てきた、映画館の誰かが連れてくるわけでもなく。他の人もそうだろうが、私もサイトの中に監督挨拶ありと書かれていたのは覚えていた。
後で調べて61才と分かったが村橋監督は普通のおじさんだ。話もぼそぼそよりはしっかりしているが、立て板に水という感じではない。「昨年6月、えーと新宿のローマ字の映画館、そう、K’sシネマで2週間のモーニングをし、その後全国8か所を回り、今回東京の凱旋モーニングとなりました。」
えーっ、昨年封切っていたの?
「今日はもう一人来てもらっています。佐藤B作さんです」
私の斜め後ろの席から立っていくのがB作さんだった。
「今日でこの映画を見るのは3回目です。久しぶりに見ました。」

 

 映画は2日間で撮ったという。俳優の出る部分は。何度も挟まれる雨の降る風景は別だ。雨は映画には写りにくいもの。黒澤明は「七人の侍」の時、墨汁を混ぜた雨を降らせたというが…などの話があった。


 今、映画はやりようによっては少ない人数、日数、資金で作ることができる。この映画の最初の脚本では息子や妻も出てくるようになっていたが、どんどん削っていった。最近の映画は誰でも分かりやすいようにと説明過多になっている場合が多く、見る人の想像力に訴えることをしなくなっている。と、なかなかいい話をしてくれた。
 2/26の最後の日まで毎日あいさつに来ますとも言っていた。


 映画は公開して人に見てもらって初めて映画になる。公開しないならば家族ムービーと同じになる、作品にはならない。いろんなことを考えさせてくれる映画だった。

 

 

 

 

Ⅲ キネマ旬報ベスト・テン 第1位映画鑑賞会と表彰式

 

 2月13日(土)久しぶりにキネ旬のイベントに文京シビックホール(立派です)に出かけた。
 今年の1位は、日本映画「恋人たち」、外国映画「マッドマックス 怒りのデスロード」、文化映画「沖縄 うりずんの雨」だが、3本とも見ていて私的に納得できるのは文化映画だけだった。

 他の2作品は納得いかない部分も多く、それを確かめるため、とりあえず「恋人たち」と表彰式だけを見に行った。「恋人たち」はやはり初めから篠原篤の演技になじめなかった。違和感がある。


 表彰式には監督賞の橋口亮輔監督、製作会社松竹ブロードキャスティングのプロデューサー、新人賞の篠原篤も来ていて受賞の挨拶を聞いて状況はよく分かったのだが、どうも私には演技の素人ぽさが感じられて、どの主人公にも感情移入はできなかった。
 同じように素人を使った映画では「ハッピーアワー」の4人の女性の方が、まだましだ。素人たちの持つパーソナリティに当て書きをした脚本とも聞いたが、なんだかよくあるパターン演技というか、ああした人物に合わせた演技というか、そんなことばかり感じてしまったのだ。

 

 主演男優賞の二宮和也目当てに若い女性が多く来ていた。いつもと違う参加層だった。売っているチケットではないので、キネマ旬報の抽選に申し込んだのだろうか?
 どんな契機であれ、若い人が映画を見に来てくれればよいとも思うが、そこからちょっとでも映画を好きになってくれればいいのだが。

 

 

 


Ⅳ アカデミー賞予想→変更

 

 キネマ旬報のベストテン会より1回少ないアメリカの第88回アカデミー賞授賞式は、現地時間2/28(土)の夜行われる。
 今年の受賞予測は難しいと言われる。封切り前の作品を我々より多く見ている評論家の方々が言うのだから確かだろう。今日現在、ノミネート作品の内私の見た作品数は次の通り。

 

  作品賞:9本中4本     監督賞:5本中1本
  主演男優賞:5本中2本   主演女優賞:5本中1本
  助演男優賞:5本中2本   助演女優賞:5本中2本

 

見た本数は35%ですから厳しいです。殆ど賭けですね。
ということで、予想を次のように変更しました。


作品賞:マネー・ショート 華麗なる大逆転 
      → スポットライト 世紀のスクープ

 

監督賞:アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ

    (レヴェナント 蘇えりし者)

      → アダム・マッケイ(マネー・ショート 華麗なる大逆転)

 

主演男優賞:マイケル・ファスベンダー(スティーブ・ジョブズ)

      → レオナルド・ディカプリオ(レヴェナント 蘇えりし者)

 

主演女優賞:ケイト・ブランシェット(キャロル)

      → シャーロット・ランプリング(さざなみ)

 

助演男優賞:マーク・ライランス(ブリッジ・オブ・スパイ) 変更なし

 

助演女優賞:ルーニー・マーラー(キャロル)

       → アリシア・ヴィキャンデル(リリーのすべて)

 

 

日本時間で4日後の結果、期待しましょう(何を?)。

 

 

 

 

 

今月号はここまで。
次号は春真盛りの年度末、3/25にお送りします。

 


                         - 神谷二三夫 -


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