2018年 7月号back

梅雨が東京では今週にも開けるのか、
或いは、どこかにまだ梅雨前線が停滞しているのか?
雨あり、曇りあり、晴れもありの人生ですが、
停滞しがちな時は、そう、映画館へ!

 

 

 

 

 

今月の映画

 

5/26~6/25の梅雨入りを含む31日間に出会った作品は49本、
邦洋画共に新作を多く見ました。力のある、楽しめる作品が多くありました。
外国映画には外国人監督による日本が舞台のアニメ、外国資本製作の日本人監督のドキュメンタリー2本があり、日本映画にはフランスの女優が出演、国際化が進んでいます。
旧作は日本映画で9本、映画祭(EUフィルムデーズ)で外国映画を6本見ています。

 


 



<日本映画>

友罪 
恋は雨上がりのように 
妻よ薔薇のように 家族はつらいよⅢ 
GODZILLA決戦機動増殖都市 
海を駆ける 
万引き家族 
家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。 終わった人 
羊と鋼の森 
毎日がアルツハイマー ザ・ファイナル(試写) 
Vision 
空飛ぶタイヤ 
美しさと哀しみと(古) 
乾いた花(古) 
嵐(古) 
好人好日(古) 
逆噴射家族(古) 
喜劇 女は度胸(古) 
赤い鳥逃げた? 鉄砲玉の美学(古) 
竜馬暗殺(古)

 

 

<外国映画>

ゲティ家の身代金
  (All The Money in The World) 
男と女,モントーク岬で
  (Ruckker Nach Montauk / Return to Montauk) 
犬ヶ島
  (Isle of Dogs) 
ダリダ あまい囁き
  (Dalida) 
ファントム・スレッド
  (Phantom Thread)
レディ・バード
  (Lady Bird) 
いつだってやめられる 10人の怒れる教授たち
  (Smetto Quando Voglio:Masterclass

/ I Can Quit Whenever I Want 2:Masterclass) 
デッドプール2
  (Deadpool 2) 
30年後の同窓会
  (Last Flag Flying) 
軍中楽園
  (軍中楽園 / Paradise in Service) 
国家主義の誘惑
  (Japon,La Tentation Nationaliste)(試写) 
ビューティフル・デイ
  (You were Never Really Here) 
それから
  (The Day After) 
ザ・ビッグハウス
  (The Big House) 
ルイ14世の死
  (La Mort de Louis XIV / The Death of Louis XIV) 
夜の浜辺でひとり
  (On The Beach at Night Alone) 
ゲッベルスと私
  (A German Life)
Alone/アローン
  (Mine)、
メイズ・ランナー 最期の迷宮
  (Maze Runner The Death Cure) 
母という名の女
  (Las Hijas de Abril / (April’s Daughter) 
告白小説,その結末
  (D’apes une Histoire Vraie

   / Based on A True Story) 
女と男の観覧車
  (Wonder Wheel)
ソラリスの著者(映画祭)
  (Autor Solaris)
寄せ集め(映画祭)
  (Przekladaniec / Layer Cake) 
裏面(映画祭)
  (Rewers / Reverse) 
ホース・マネー(映画祭)
  (Caval Dinheiro / Horse Maney) 
アイランド(映画祭)
  (The Island) 
フェイス・ダウン(映画祭)
  (Face Down) 
ラスティ・ボーイズ~ビバ老後!~(映画祭)
  (Rusty Boys)

 

 

 

Ⅰ 今月のベストスリー

 

 

①-1 犬ヶ島
日本が舞台のアニメを作ったのはアメリカのウェス・アンダーソン、黒澤明の影響が多々見られるが、「七人の侍」の音楽がそのまま使われていたのにはびっくり。主人公アタリの父親は三船敏郎だしね。犬が隔離されるというストーリー、犬は英語のみを話すという設定、ストップモーション・アニメで描かれる総ての場面に日本への愛が感じられる作品だ。

 

①-2 ビューティフル・デイ
最近では最も怖い映画だった。主人公は元軍人、殺しを厭わない冷徹な人探しのプロで殺しの場面もかなりあるが、直接的な描写は殆どない。常に次に来る場面への恐怖が見る方に生まれる。緊張感が切れることがない。監督・脚本はリン・ラムジー、6年前の「少年は残酷な弓を射る」以来の4作目。主演ホアキン・フェニックス力演。

 

②-1 友罪
14歳の犯罪で人々の記憶にある神戸連続児童殺傷事件に着想を得た薬丸武の原作を映画化。実際の事件を描くことではなく、更に原作からも人物設定などを一部変更しての映画化となった。監督・脚本は今や何を描いても人物造形に深みを見せる瀬々敬久、罪を犯した後も生き続けていく人間に迫っている。

 

②-2 万引き家族
カンヌ映画祭パルムドール受賞と公開時期がマッチし、今年の日本映画実写作品では今のところ一番の大ヒット、うれしい限り。それにしても5歳の女の子が虐待死という事件まで起きてしまい、哀しい偶然も。この映画でも女の子は救われていないのが哀しい。映画は随分抑えられた作り、是枝監督作品の中でも暗いトーンという感じだ。

 

③-1 レディ・バード
カリフォルニアの田舎町のように描かれているサクラメントは人口40万人の州都。田舎町から脱出して輝かしい未来を目指したい17歳の主人公が本音で描かれる映画を作ったのはグレタ・ガーウィッグ、彼女の自伝的な作品だ。

 

③-2 30年後の同窓会
アメリカは多くの戦争をしてきた。第2次大戦後もずっと戦ってきたと言える。ベトナムで一緒に戦った二人の仲間を主人公が訪ねるのは、イラク戦争で亡くなった息子の遺体を受け取るのに同行を依頼するため。「6才のボクが、大人になるまで。」のリチャード・リンクレーター監督がダリル・ポニクサンの原作を映画化。ポニクサンの小説では70年代に「さらば冬のカモメ」が映画化されているが、ちょっと似た肌触り。

 

おすすめ作品は他にも沢山、お楽しみください。

 

 


ゲティ家の身代金:原題は“世界中のお金”ですが、それくらいの資産家ポール・ゲティの孫がローマで誘拐され、耳を切り落とされたという実話の映画化。流石リドリー・スコット、ケヴィン・スペイシーのゲティ役で完成していたが彼のセクハラ疑惑で公開できず、突如クリストファー・プラマーで作り直してここまでの作品に。プラマーの方が適役、うまい。

 

男と女、モントーク岬で:まさに大人の恋愛を描き、しかも必ずしも良い方向になるとは限らず、男の勝手さもそのままに描写。「ブリキの太鼓」のフォルカー・シュレンドルフの新作は、あくまで静かに落ち着いた作り。

 

海を駆ける:1980年生まれの深田晃司監督の新作。インドネシア、バンダ・アチェを舞台に海からやってきた謎の男によって不思議な現象が…。ほとんど喋らないディーン・フジオカが主演。深田監督は映画美学校の出身、専攻は違うが私も同校で少し勉強した。

 

ファントム・スレッド:ポール・トーマス・アンダーソン監督の新作は1950年代のロンドンで仕立て屋を営む男が主人公。仕立て屋とはいえ女性のドレスをデザインし、完成させる。彼の美学ははっきりしていて、そこから外れるものは許さない。美しい作品ではあるが、後半の泥仕合(?)は彼の美学から言えばあり得ない。

 

軍中楽園:1969年、台湾と中国が砲弾を撃ち合っていた台湾の金門島(中国本土から2㎞強しか離れていない)で、軍中楽園と呼ばれた娼館を舞台に描かれる人間模様。

 

国家主義の誘惑:フランス発のドキュメンタリーは、渡辺謙一監督による右傾化している日本の現状についてのドキュメンタリー。スイス、アメリカ、フランス、日本の学者等へのインタビューを交え描かれる。54分と短い作品。7/28から東中野ポレポレで公開。

 

毎日がアルツハイマー ザ・ファイナル:このシリーズの三作目。初作は徘徊するお母さん、世話をする娘である監督(関口祐加)ともに明るい性格が面白く楽しめた。2作目を見逃していたら、方向が少し変わっていたらしく、3作目は死について取り組む監督自身が中心になっていた。それでも明るい部分は変わらない。7/14から東中野ポレポレで公開。

 

ザ・ビッグハウス:観察映画を作り続ける想田和弘監督の8作目はぐっとスケールアップ、アメリカ最大のアメフトスタジアム、通称“ザ・ビッグハウス”を写しきる。ミシガン大学が誇るウルヴァリンズの本拠地。試合を撮るのではなく、試合のある時のスタジアムの観客、楽団、厨房、救急体制、裏方等のみを言葉もなく見せてくれるが、面白く楽しめた。

 

空飛ぶタイヤ:池井戸潤の小説で初の映画化。トラックの脱輪事故を発端に整備不良を疑われた中小運送会社の社長を中心に、言ってみれば中小と財閥系大手資本の戦い。日本映画では殆ど絶滅危惧種のような、久しぶりの社会派作品ともいえる。

 

ゲッベルスと私:最後の2年間ゲッベルスの秘書をしていた女性のインタビューを中心に描かれるドキュメンタリー。103歳になるというが、その記憶力に驚く。発言内容も印象深いが、顔面に刻まれたしわの圧倒的な存在感には感動さえ覚える。

 

母という名の女:「父の秘密」「ある終焉」と厳しい現実を突きつけてきたミッシェル・フランコの新作は今回もきつい結末だ。イニャリトゥ、デル・トロ、キュアロンに次ぐ現代メキシコの監督と言えるか。

 

告白小説、その結末:84歳のロマン・ポランスキーが「毛皮のヴィーナス」に続き、現在の妻エマニュエル・セニエを主役にした新作。映画作りはさすがに上手いが、内容には今一つはっきりしない点が残る。

 

女と男の観覧車:82歳のウディ・アレンの新作はいつも通り自身の脚本によっているが、後半などほぼテネシー・ウィリアムズになっていて怖い。ケイト・ウィンスレットの重さもあって、「インテリア」以来の暗さかも。軽く、明るくする工夫もかなりされているが。ヴィットリオ・ストラーロの撮影はさすがだが、人物には必ず影があるのも陰影深くしている。

 

 

 


Ⅱ 今月の旧作

 

竜馬暗殺」が圧倒的に面白かった。歴史上の人物坂本龍馬を、現在の人物に生き返らせている黒木和雄の1974年作品。明治時代の写真を見ると、黒と白の間に微妙なせめぎあいがあり、黒がはみ出していたりするが、その感じを出すためにかあえて16ミリフィルムで撮影し、まるで当時のドキュメンタリーのような効果を出した。画面が荒れているのである。黒く、暗く、見えない画面の中で、人物が躍動する。人物造形も面白く、原田芳雄、石橋蓮司、松田優作、中川梨絵が絡み合う。こんなに躍動する映画を久しぶりに見た。

 

 

 

 

Ⅲ 今月の映画祭&トークショー

 

国立映画アーカイブ(今月ントピックス参照)の「EUフィルムデーズ」映画祭で見た映画で気になった作品、およびトークショーは次の通り。

 

ソラリスの著者:スタニスワフ・レムについての54分のドキュメンタリー、彼のインタビュー映像を始め、このポーランド人作家を手際よく紹介、監督はボリス・ランコシュ。


寄せ集め:レムのラジオドラマを原作にアンジェイ・ワイダが35分の劇映画にしたもの。


裏面:「ソラリスの著者」のランコシュ監督が2009年に作った喜劇。スターリンイズムに支配されていた頃のポーランドを冷静に皮肉を込めて描いている。
ランコシュ監督が上映後に登壇した。45歳の若い監督。「裏面」は世界各地で上映されていてうれしいとのことだ。確かにこの作品は非常によくできている。

 

ホース・マネー:ポルトガルのペドロ・コスタ監督作品は2年前に日本でも公開されている。見逃していた。圧倒的な存在感で描かれる移民たちについてのドキュメンタリー。
上映後、作家小野正嗣によるトークがあり、ストーリーを追わず詩のように感じてくださいとの話がありました。

 

ラスティ・ボーイズ~ビバ老後!~:珍しやルクセンブルクの映画、老人ホームをめぐるコメディだが、うらやましいのは老人ホームの逼迫感はゼロ、いつでも入居できる点。

 

 

 

 

 

Ⅳ  今月の惹句(じゃっく)

 

5/26~6/25の間に封切りされた作品の惹句の中から、今月はおかしかったものを2つ。

 

この夏は“熱く”なる― (涼しい映画館でお楽しみください)オンリー・ザ・ブレイブ
山火事の消火を描いた作品。暑い季節に熱い作品ということで、後ろのかっこ内に笑う。


日本よ、運命の餃子で勝利せよキスできる餃子
惹句も題名もなんのこっちゃ感満載。内容が想像つきません!

 

 

 

 

 

Ⅴ 今月のつぶやき


●ジャン・ポール・ゲティが中近東から石油を安く買い付け巨大な資産をなしたのは有名だが、金持ちは吝嗇家の例にもれずと教えてくれる「ゲティ家の身代金」。しかしゲティには多くの人がお世話になっている。色々な写真で©Gettyとあるのは、ポール・ゲティの孫で、誘拐されたジョン・ポール・ゲティ三世ではないマーク・ゲティがジョナサン・グレインとゲッティ イメージズという写真画像代理店を創業したため。

 

●アキレス腱断裂のため主人公が短距離走の選手を諦めかけたのが「恋は雨上がりのように」だ。手術後の傷を見せたくないという気持ちは、両足共に手術した私にはよく分かる。短パン、素足にサンダルで階段を上る時、後ろの人はぎょっとするのではと心配する。

 

●60年代シャンソンをよく聞いていたが、ダリダは聞いたことがなかった。「ダリダ あまい囁き」を見てその訳が分かった。60年代前半、彼女のヒット曲は他人のカバー曲ばかりだったのだ。その後はオリジナルもヒットしたようだが。

 

●ダニエル・デイ=ルイスの引退作と言われる「ファントム・スレッド」だが、Wikipediaには、『実生活でも今後はファッションデザイナーとしての活動を始めるつもりだという』とある。役になりきるため入魂するのが特徴と言われる彼だが、本当でしょうかね?

 

●インド映画バーフバリは初めから2部作として作成され、1作目は次に続くとして終る。「いつだってやめられる 10人の怒れる教授たち」をみていたら、この「いつだって…」シリーズも初めから3作と決められていたようで、これは1、2、3の順番にみないとだめだよなと実感した次第。単独でも楽しめるようになってはいるが。

 

●初作もこんなに楽屋落ちが多かったっけ?と思ったは「デッドプール2」。何せタイトル画面からふざけまくり。ここまで徹底していれば立派。

 

●確かにスポーツジムは高齢者の溜まり場になっている現在ですが、「終わった人」には原作者の内館牧子さんがその一人として3回も登場というのは、ちょっと出過ぎか?

 

●不倫宣言から、破局説、引越し報道と色々話題のホン・サンス監督と女優キム・ミニのカップルの作品が今4本連続上映されている。今までに「それから」「夜の浜辺でひとり」が封切りされた。ほとんど二人の会話からなる作品で、日常の会話のような肌触りで心地よく見られるのだが、飽きてしまうのは私が鈍感なせいか?

 

●やはり河瀨直美監督には、できれば他の人の原作からの映画化を考えてほしい。ご自分のアイディアはあまりに分かり難い。ジュリエット・ビノッシュまで出演している「Vision」もその例に漏れない。あまりに高尚過ぎるのか?人の意見は聞きそうにもないか?

 

●「君の名前で僕を呼んで」のヒットによって急遽公開されたのか?2016年の作品「Alone/アローン」はアーミー・ハマーが主演だが製作にもかかわっている。地雷の上に足を乗せてしまった兵士の救助隊が到着するまでの52時間を様々な工夫で見せてくれる。

 

 

 

 



今月のトピックス:国立映画アーカイブ


Ⅰ 国立映画アーカイブ(NFAJ)


従来フィルムセンターと呼ばれていた東京国立近代美術館の一部が国立映画アーカイブとして独立、日本で6番目の国立美術館になったことは今までにもお伝えした。新しい組織としてほぼ3カ月、今月一番多く通った映画上映場所となったので、改めて紹介します。

4月、NFAJの新しいホームページを見ていたら、「映画の教室」として「時代から観る日本アニメーション」として5~7月にかけて5回の講座が開かれるとあった。その内容にも興味はあったのだが、チケットの前売り券が発売されることが目を引いた。
フィルムセンター時代にはなかったシステムだ。当時(と言っても4か月前までだが)は早めに行って並ぶしかなかったのである。これは忙しい労働者にはなかなかつらいものだった。作品によって30~60分前くらいに行き、1階ホール奥のベンチにできている列の最後に並ぶのだ。ある程度通うと満席になることはそれ程多くないと分かるのだが、何せ常連の高齢者群もいて遅く行って満員になったらどうしようと心配した。

 

フィルムセンター時代も料金は一般520円、高校・大学生・シニア310円で、これはNFAJになっても変更はなかった。シニアである私は310円で見せてもらえるのだ。それが前売り券まで発売されるとはと感心したのである。
前売り券を買えるのはチケットぴあ等だが、手数料108円が必要になる。310円に対し手数料108円は凄い比率だが実数は低い。4/17の前売り券発売日に「映画の教室」5回分を買いに行った。(「映画の教室」は7/04の最終回を残すのみ。上映されたのはいずれも短編アニメで、この通信には入れていない。)

さらに当日の受付方も変更された。開館と同時に、その日の総ての上映会の番号入り整理券が発行される。上映30分前からその番号順にチケット購入が可能になる。開館は通常11:00、但し時に変更もあるのでサイト

 

http://www.nfaj.go.jp/

 

でカレンダーをチェックすると安心。

フィルムセンター時代に始まった「EUフィルムデーズ」は今年で16回目を迎えた。EU加盟28か国の新作・旧作を合わせての映画祭。今年で言えば25か国からの29本、内13本は日本初公開となる。これらもすべて520円、310円なのである。ヨーロッパの旅行に関わっていたのでこの映画祭のことは知っていたが、今までは殆ど行けていなかった。今年は6回参加することができた。

 

 

 

 

 

Ⅱ ソラリスの著者 


ソラリスと言えば1972年のソ連映画「惑星ソラリス」が有名、アンドレイ・タルコフスキー監督の作品だ。SF作品で、未来の街を表すために東京の首都高速道路を撮影して使用したことでも有名。後年「ストーカー」「ノスタルジア」等になると、何故か心地良い眠りに誘われるのが待ち遠しかったタルコフスキー作品だが、当時のハリウッド製SF映画とは違って人肌の暖かさを感じさせる「惑星ソラリス」は眠らずに見た。その後2002年にはハリウッドでも再映画化された。

原作は「ソラリスの陽のもとに」として、1972年当時の日本でも翻訳されていたスタニスフ・レムのSF小説だ。当時この小説はロシア語から翻訳されていて、原作者はロシア人とずっと思ってきた。
SFには詳しくないので、今回「EUフィルムデーズ」で見た「ソラリスの著者」で、原作者はポーランド人、名前もスタニスフ・レムが正しいという事をはじめて知った。Wikipediaを見ると、2004年にポーランド語からの直訳が「ソラリス」として国書刊行会から刊行されたとある。
文化は色々な形で入ってくるんですね。

 

 

 

 

 

Ⅲ 100歳の脚本家


人生100年時代も夢ではない状況になりつつある現在、100歳の脚本家がいても不思議ではない。しかし、あの橋本忍が100歳になり、しかも次の映画の構想も披露したなどと聞けば、頑張ってほしいと応援したくなる。(朝日新聞5.29声欄)
書いてみたシナリオを伊丹万作に送り、伊丹の唯一の脚本家の弟子となり、サラリーマンとして働きながら書いた芥川龍之介の短編「藪の中」をシナリオにしていたものを黒澤明から長編にするよう依頼され、他の短編「羅生門」を加えて「羅生門」の脚本を書いた。伝説として十分な逸話の後、サラリーマンを辞めて上京し脚本家を専業とするようになる。黒澤組の脚本家集団の一人として、「生きる」「七人の侍」などを生み出す。10年間の黒沢組を離れた後も名作、傑作を書き続けた。「白い巨塔」「砂の器」八甲田山」などを生み出した。TVドラマとして話題になった「私は貝になりたい」も書き下ろしている。

 

“100歳の前と後ろで、どんな違いがあるのか知りたくなった。後10年くらいだろうけど、考えてみるつもりだよ”と発言した橋本は、現在は8年前から書き続けている古代の天皇に関する小説「天武の夢」を執筆中、1年以内の完成を目指すという。

 

 

 

 

 

Ⅳ ディズニー


この数年、ディズニーの映画部門は好調を維持している。その要素を探ってみた。


1.アメリカでもディズニーの基本であるアニメーションが好調
日本ではアニメーションのみが好調だが、アメリカでもアニメーションが好調だ。アメリカのアニメーションは成人にも見てもらえるように作られていて、手堅く商売しているという感じ。ディズニーのアニメで考えてみても、幅広い感動を誘う作品が主流になっている。


2.マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)が好調
アベンジャーズ関係を中心にマーベル作品の配給を行っているのがディズニーで、その作品群が好調をキープ。日本では今一つ伸び切れていないが、全世界的には圧倒的な成績。


3.スター・ウォーズが好調
シリーズ作品の世界的成績ではMCUが1位、2位がスター・ウォーズシリーズだ。ディズニーはルーカスフィルムを2012年に買収、この巨大シリーズを手に入れた。2015年以降スピンオフ作品と合わせ毎年作品を公開している

 

このディズニーが21世紀フォックスを買収しようとしている。21世紀フォックスはメディア王ルパート・マードックが持っている会社でその下に20世紀フォックスが属している。ディズニーは更に巨大になろうとしているようだ。昨年末に524億ドルでの買収で合意していた。しかし、今月になりケーブルテレビ最大手コムキャストが650億ドルを提案した。それに対しディズニーは713億ドルに上げて合意したという。コムキャストが再度の提案をするかどうかという状況。映像作品の配信事業に向け争奪戦が繰り広げられている。

 

 

 

 

 

Ⅴ Amazonの映画


今年に入ってAmazon Studiosと画面に現れる作品を見るようになった。記憶にある作品が次の通りだ。
「ワンダーストラック」「30年後の同窓会」「女と男の観覧車」
映像配信ではNetflixも独自作品を作り、しかも配信でのみの商売をしているが、Amazonも独自作品を作り、しかし劇場公開もしているようだ。劇場公開から配信開始までの期間を短くしているのかもしれない。Netflix作品は今のところ映画館で公開されていないので、カンヌ映画祭で昨年問題になった。今年カンヌは映画館公開を条件に入れた。
上のディズニーの動きとも併せ、映像ビジネスは今や配信事業でしのぎを削る状況になっている。

 

 

 

 

今月はここまで。
次は“熱い夏がやってきた”はずの7/25にお送りします。


                         - 神谷二三夫 -


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