2018年 12月号back

なんだか今年は急に冬が来た感じがする。
いつまでも暑い、暖かい日が続くかと思っていて、
ふと気が付くと寒い朝が続くこの頃に。
ミュージカルを見ていたらメロドラマに酔わされた「世紀の楽団」のよう。
様々な急変も経験させてくれるところ、
そう、それは映画館!

 

 

 

 

 

今月の映画

 

10/26~11/25の日産ゴーン事件を含む31日間に出会った作品は55本、
大きな本数になったのには理由があります。
1.映画祭が2つあり、そこで合わせて8本を見た。
2.ミュージカル映画特集があり旧作14本を見た。
3.上記2つにその他の旧作を加えると30本となり、新作の本数25を上回った。

 


 



<日本映画>

旅猫リポート 
ビブリア古書堂の事件手帖 
GODZILLA星を喰う者 
ぼけますから,よろしくお願いします。 
十年 
スマホを落としただけなのに 
鈴木家の嘘 

ど根性ものがたり(旧) 
イチがバチか(旧) 
CUREキュア(旧)(東京国際映画祭) 
剣雲鳴門しぶき(旧) 
銀座化粧(旧)

(映画祭)
<フィルメックス>

夜明け

 

 

<外国映画>

チューリップ・フィーバー 肖像画に秘めた愛
  (Tulip Fever) 
Search/サーチ
  (Searching) 
テルマ
  (Thelma) 
華氏119
  (Fahrenheit 119) 
マイ・プレシャス・リスト
  (Carrie Pilby) 
ニューヨーク,ジャクソンハイツへようこそ
  (In Jackson Heights) 
ヴェノム
  (Venom) 
ライ麦畑で出会ったら
  (Coming Through the Rye) 
アンナ・カレーニナ ヴロンスキーの物語
  (Anna Karenina:Vronsky’s Story) 
ジョニー・イングリッシュ アナログの逆襲
  (Johnny English Strikes Again) 
バグダッド・スキャンダ
  (Backstabbing for Beginners) 
ボヘミアン・ラプソディ
  (Bohemian Rhapsody) 
ボーダーライン ソルジャーズ・デイ
  (Sicario:Day of The Soldado) 
アンクル・ドリュー
  (Uncle Derew) 
マンディ 地獄のロード・ウォリアー
  (Mandy) 
おかえり,ブルゴーニュへ
  (Ce Qui Nous Lie / Back to Burgundy) 
ポリス・ストーリー REBORN
  (机器之血 / Bleeding Steel)


<ミュージカル映画特集/渋谷シネマヴェーラ>

踊る海賊(旧)
  (The Pirate) 
リッスン・ダーリン(旧)
  (Listen Darling) 
美人劇場(旧)
  (Ziegfeld Girl) 
キス・ミー・ケイト(旧)
  (Kiss Me Kate) 
私を野球に連れてって(旧)
  (Take Me Out to the Ball Game) 
グッド・オールド・サマータイム(旧)
  (In the Good Old Summertime) 
ロバータ(旧)
  (Roberta) 
ジーグフェルド・フォーリーズ(旧)
  (Ziegfeld Follies) 
集まれ!仲間たち(旧)
  (The Gang’s All Here) 
フットライト・パレード(旧)
  (Footlight Parade) 
ハリウッド玉手箱(旧)
  (Hollywood Canteen) 
世紀の楽団(旧)
  (Alexander’s Ragtime Band) 
聖林ホテル(旧)
  (Hollywood Hotel) 
突貫勘太(旧)
  (Palmy Days)
まぼろしの市街戦(旧)
  (Le Roi de Cœur) 
M
  (M, byジョゼフ・ロージー) 
狙われた男(旧)
  (Blind Date) 
ソフィーの選択(旧)
  (Sophie’s Choice)

 

(映画祭)
<東京国際>
テルアビブ・オン・ファイア
  (Tel Aviv on Fire) 
彼ら
  (Them) 
ホワイト・クロウ
  (The White Crow) 
トゥ・ダスト
  (To Dust) 

 

<フィルメックス>
名前のない墓
  (Graves Without a Name) 
幸福城市
  (Cities of Last Things)

 

 

 

 

Ⅰ 今月のベストスリー

 

 

①-1 ニューヨーク、ジャクソンハイツへようこそ
ニューヨークでもマンハッタンではなくクイーンズ地区のジャクソンハイツにカメラを据えたフレデリック・ワイズマン監督(88歳)の新作。例によってナレーションなしのカメラが写し取る3時間強のドキュメンタリー。街の多様性、住む人の多様性に感心しながら楽しめる。

 

①-2 銃
中村文則の2002年の同名のデビュー小説を映画化。そのころ既に日本には監視カメラがある程度設置されていたように思うが、映画を見る限りあまりに無自覚かとも思った。偶然手に入れた銃に支配されていく大学生の物語。銃によって自分の力を勘違いし、そこから抜けられなくなる。黒白画面で描かれる闇の深さを描いたのは「百円の恋」の武正晴監督。

 

②-1 チューリップ・フィーバー 肖像画に秘めた愛
17世紀のオランダはチューリップが投機の対象としてどんどん高値に。人の欲望もどんどんと、まあ、フィーバーは経験済みの日本(世代にもよるが)のあの状態に。主人公は修道院育ちの孤児、裕福な中年男との結婚を世話され豊かさを経験するも、家にやってきた肖像画家と愛するように…。こうして変わりゆく主人公の周りの人々、この映画を好きになるのは彼らのその後。きっぱりしている。

 

②-2 バグダッド・スキャンダル
国連を舞台にこんなことが行われていたという事実を初めて知った。フセイン政権下のイラク国民救済のための“石油・食糧交換プログラム”(1996~2003年)では巨額(640億ドル)が動き、一説には200億ドルが流失したと言われる。その事件に巻き込まれたマイケル・スーサン自身の体験を基にした小説から映画化。デンマーク+カナダ+アメリカ製作となっているのはスーサンの父がデンマークの外交官だったからだろう。一人に権限が集中することの危なさは日産ゴーン事件でも実感。

 

③-1  Search/サーチ
コンピューター画面のみで出来上がった映画は27歳のインド系アメリカ人が監督している。映画を見ながらまるでコンピューターを前に自分で操作している時のような時間を感じる。物語を巧みに作り、映画としても十分楽しめる内容だ。

 

③-2 ライ麦畑で出会ったら
脚本・監督・製作の一人三役のジェームズ・サドウィズ監督の実体験に基づいた映画。「ライ麦畑でつかまえて」につかまれた人には全編共感のような映画になった。実体験という事はサリンジャーに実際会ったのかとちょっと驚いた。

 

 

 

他にも見て楽しい作品がたくさん、映画館で待ってます。


テルマ:北欧の映画らしく冷たい印象が残る画面が続く。ヨアキム・トリアー監督はラース・フォン・トリアの親戚という。ラースよりずっとクールな画面に熱い情念を描く。

 

華氏119:お騒がせ男マイケル・ムーアの新作。今回は大統領選挙で、トランプが大統領に選ばれた時期に当たり、選挙前後の両陣営の動きもあり興味深い。本当にトランプは落ちると思われていたんだなという事を教えてくれる。単純にヒトラーと結びつける(ヒトラーの画面にトランプの声を流す)のはどうかという感想も抱いた。

 

マイ・プレシャス・リスト:ニューヨーク・マンハッタンを舞台にした幾多の映画の伝統を引き継いで、元気印で生きる若い女性とその周りを生き生きと描く。IQが高く14歳で大学入学、18歳で卒業の自閉症というあたりがいかにもニューヨークらしい。

 

ヴェノム:スパイダーマンの最大の敵、長く変な舌とギザギザ歯の気持ちの悪い悪役ヴェノムの映画にしては案外すっきり。

 

ぼけますから、よろしくお願いします。:信友直子監督の両親を追ったドキュメンタリーは95歳と87歳の高齢夫婦の日常を追う。認知症が徐々に進む妻を助けるため90歳にして家事を覚え始める夫。温厚な父が厳しい言葉をかけるところは感動した。

 

ボヘミアン・ラプソディ:ロックバンド、クイーンのフレディ・マーキュリーを中心に描く物語。彼の感性から生まれたオペラ的ロックの響き渡る音の広がりが、こんなにも人を感動させるとはと改めて認識させてくれた。

 

ボーダーライン ソルジャーズ・デイ:メキシコからの麻薬密輸入や密入国の問題をリアルに描いて我々を魅了したボーダーラインの続編。内部的な力関係がシャープだった前作に比べると、表面的な派手さは増したが少し大味。それでも、メキシコに取り残される捜査官の生き残る道を厳しく描く。

 

アンクル・ドリュー:ペプシのCMから生まれたバスケ映画は、ストリートバスケットの頂点を目指すストーリーに大法螺が満載、極上のコメディになった。カイリー・アービングが伝説のアンクル・ドリューに扮し、シャキール・オニールやレジ―・ミラー、クリス・ウェバー、さらにリサ・レスリーも出演、バスケファンには必見の作品。

 

鈴木家の嘘:引きこもりの長男が自殺して、母親はショックからか意識不明の寝たきり状態に。目覚めた時その記憶を失っていた母親に家族がついた嘘が引き起こす悲喜劇。この作品でデビューした野尻克己監督の言葉を公式サイトで読むと、お兄さんがいつも居ず、ある時突然亡くなったと書いてある。その前後の心のありようを基に映画にしたようだ。

 

おかえり、ブルゴーニュへ:代々ワインを作ってきた家系の3人の子供たち、父に子供時代からワインを味わう訓練をされて育った(この地方の家では普通のことらしいが)。長男は父の元を離れ世界放浪の旅に出る。10年後父が病に倒れたとの連絡にブルゴーニュに戻ってくる。そこから始まるアラサーの3人兄弟とワイン醸造の話を、ラテン気質のおおらかさで描いたのはセドリック・クラビッシュ監督。画面作りも見せてくれる。

 

ポリス・ストーリー REBORN:育ての親的なレイモンド・チョウが今月亡くなった(今月のトピックス参照)後も、ジャッキー・チェンは元気だ。アクションシーンは余りにカットが早すぎるが、シドニー・オペラハウスの屋上シーンを始め、派手さでは今までで一番かも。時代がいつかも不明(2020年とあるが)だし、ストーリーに分からない部分があっても全部許せてしまう雰囲気。

 

 


Ⅱ 今月の旧作

 

<日本映画>


銀座化粧:成瀬己喜男監督は幾多の夜の女の傑作を作り、田中絹代といえば幾多の夜の女を演じてきた。夜の女といえば基本的に哀しい方向になるし、さらに現実の厳しさも冷静に見つめる成瀬なので、ちょっと身構えてみたのだが…。この作品、成瀬には珍しく最後まで暖かい作品だった。

 

 

 

<外国映画>


渋谷シネマヴェーラでのミュージカル映画特集に通った。今まで「ザッツ・エンターテインメント」シリーズでチラッとだけ見ていた作品群をかなり見ることができた。いずれも楽しむことができたが、特に印象に残ったミュージカル映画は次の通り。


私を野球に連れてって:上から撮影の幾何学模様的振付(この作品にはこの振付はなし)で有名なバスビー・バークレーの監督最終作。プロ野球選手がオフシーズンに舞台のショー(歌と踊り)に出ているというお話自体も飛んでいる。水の女王エスター・ウィリアムズが球団の新オーナー役で登場、ホテルのプールで泳ぐのがご愛敬。


グッド・オールド・サマータイム:4本見たジュディ・ガーランド出演作の中では彼女を最も楽しめた。ルビッチの「桃色の店」のミュージカル版。話が流石だ。バスター・キートンが店のオーナーの甥役で出演、本当に変わらない、飾らない人柄がおかしい。


フットライト・パレード:ギャング役で有名なジェイムズ・ギャグニーが主演、思った以上に踊っているのを確認できる。バスビー・バークレー振付によるミュージカルシーンは後半に偏り過ぎ?


世紀の楽団:原題はAlexander’s Ragtime Bandでジャズのスタンダードナンバーの名前だ。タイロン・パワーがバイオリン弾きでバンドリーダー、アリス・フェイがこの曲の楽譜を持ち込んだ歌手、この二人の関係がいかにもなメロドラマ。しかもよくできている。


集まれ!仲間たちハリウッド玉手箱:1943年と44年に作られた2つの作品は戦争で戦う兵士たちを慰問する目的の作品だ。特に「ハリウッド玉手箱」にはスターがわんさか出演、ジョン・ガーフィールド、ピーター・ローレ、シドニー・グリーンストリートまで出てきたのには驚き。

 

 

 

 

Ⅲ 今月のトークショー

 

10/26 テルアビブ・オン・ファイア 東京国際映画祭コンペ作品 六本木EXシアター
監督サメフ・ゾアビ、俳優ヤニブ・ビトン
驚いたのは、この作品の内容である。パレスチナの女スパイがユダヤ人に扮してイスラエル将校に近づき情報を盗もうとするうち恋におち…という大ヒットしているTV昼メロの撮影現場が舞台。おじさんのつてで現場に入ったパレスチナ人のAD青年が巻き起こすコメディ。ちなみにTV番組のスポンサーは勿論パレスチナ側だ。単純に考えればパレスチナサイドで作られている映画となるのだが。
日本人にはなかなか理解が難しい関係だ。日本に入ってくる情報では、両者の対立は武力、資金力ともに上回るイスラエルがパレスチナに圧力を増しているというもの。日本にやってくる映画でも、例えば2年前に日本公開された「オマールの壁」はどんどん高くなる壁が悲劇の象徴的に描かれていた。
それをコメディにして許されるのか?という疑問が見ている間中湧き上がってくる。観客には、このパレスチナ―イスラエル問題に関心を持っている人も多く来ていて、許されるの?という質問も出ていた。映画はイスラエルでも公開され好評だったという。
監督はイスラエル生まれのパレスチナ人。イスラエルのパスポートを保有している。映画についてはニューヨークで学んだらしい。

 

 

10/27 CURE キュア 東京国際映画祭Japan Now TOHOシネマズ六本木
映画俳優:役所広司特集 / 監督黒沢清 俳優役所広司
「CURE」は1997年の作品。役所広司はこの2年前「Shall We Dance」に主演し、その後「失楽園」「うなぎ」にも出演、映画でも成功していた。黒沢監督は「CURE」を作る際ダメもとで電話で出演を依頼したという。受け入れられ、役所が主演することになった。この作品で単純に正しくもなく、悪くもない人物を演じることで役者としての幅を広げることになった。黒沢監督にとっても「CURE」は国際的なブレイクを果たす作品となった。
黒沢監督は早撮りで映画を作るという。リハーサルもなく、NGも多くないという。比較的長回しのシーンが多いので、俳優にとっては緊張するらしい。

 

 

11/19 名前のない墓 東京フィルメックス TOHOシネマズ日比谷 / リティ・パン監督
カンボジア、クメール・ルージュについての時代を知る人々による発言を追ったドキュメンタリー。力強い映像で虐殺の惨状を訴える。
上映後に監督が登壇して質疑応答があったが、始まりの時間が遅く途中の23:45頃には失礼をしてしまったので総ては聞けなかった。話される内容以上に驚いたのは監督の話しぶり。一つの事柄について細かく話すのだ。聞いていたのは30分弱だが、回答が長いので2人しか質問ができなかったくらいだ。

 

 

11/20 幸福城市 東京フィルメックス 有楽町朝日ホール / ホー・ウィディン監督
渋い中年刑事の物語は、3つの時代に分かれ、青年期、少年期と遡って描かれる。ラストの画面は幼児期が一瞬映る。
1971年マレーシア生まれの監督はニューヨークで映画について学び、今は台湾で活躍中。
今回の映画は35㎜フィルムで撮影されている。そのフィルムはパリのラボで大量に見つかった富士フィルムを使用したとか。全てを均等にはっきり映してしまうデジタルカメラは嫌いという事で、この映画のカメラマンはフランス人、アウトフォーカスも含めしっかりフィルムで撮影してくれたとか。

 

 

11/21 夜明け 東京フィルメックス 有楽町朝日ホール / 広瀬奈々子監督
20代半ばの主人公は川辺で倒れているところを中年のおじさんに救われ、彼の木工所で働くことになる。何ともはっきりしない主人公で見ているこちらがいらいらする。

是枝監督、西川美和監督に助手として付き、2人のプッシュを受けこの作品でデビューした広瀬監督は背が高いボーイッシュな女性だった。3.11の大震災の後、感じるところがあり、はっきり決められない状態の人間を描きたかったとのこと。こちらがいらいらするのも当然か。映画の主人公としてはものすごく難しい人を選んだものだ。観客はどの側から見ていけばいいのかがはっきりしないのだから。

 

 

 

Ⅳ  今月の懐かしい人

 

★ガブリエル・バーン
「マイ・プレシャス・リスト」で主人公の父親を演じるのは、「ユージャル・サスペクト」で元汚職刑事を演じていたガブリエル・バーン。
渋い、地味という言葉がこれほど似合う人はいない。1950年生まれの彼が演技を始めたのは29歳の時、教師をしていた校内で舞台に立つ機会があった時だったという。映画デビューは31歳と結果的に遅いが、その後コンスタントに出演はしているのにあまり印象に残っていない。役によっては地味に埋没してしまうためだろうか?本当は結構色気のある人だと思うが。1988~1999年はエレン・バーキンと結婚していた。
今回は、その色気を活かして(?)再婚する父親役。

 

 

 

Ⅴ 今月の惹句(じゃっく)


10/26~11/25の間に封切りされた作品の惹句の中から、今月は親子問題の4作品。

 

親子愛にほろり、笑って、じんわり心に沁みる感動作が誕生しました。:体操しようよ
娘を殺したのは私でしょうか。:人魚の眠る家
20年以上、母の愛を諦めなかった息子の実話:母さんがどんなに僕を嫌いでも
お互いの“違い”を受け入れて愛する、6組の親子の物語。:いろとりどりの親子

 

3番目の作品はどちらが惹句?と思うくらい題名のインパクトが強い。

 

 

 

 

Ⅵ 今月のつぶやき


●政治的なものはTVや映画などのメディアでほとんど語られることがない日本に比べると、東京国際映画祭で見たイタリアの「彼ら」は、ベルルスコーニ首相の描きっぷりが凄い。忖度などという言葉とは無縁な作品を監督したのはパオロ・ソレンティーノ。

 

●猫映画が増えている。今月見たのは「旅猫リポート」、猫の表所がなかなか楽しめた。猫といえば、猫の映像で有名な動物カメラマン岩合光昭が初めての劇映画「ねことじいちゃん」を監督したようで、現在予告編が流されている。立川志の輔主演、2月22日封切り予定。

 

●笑っていいものかどうか迷ったのが、東京国際映画祭での2本。1本は今月のトークショーで書いた「テルアビブ・オン・ファイア」、もう1本が「トゥ・ダスト」で、敬虔なユダヤ教信者が妻の遺体の腐敗の進行を気にかけ、墓を掘り起こし…という過激さだ。

 

●原作小説は累計680万部と謳われる「ビブリア古書堂の事件手帖」の映画は、本についての薀蓄が楽しめたが、ミステリーとしては今一つ。原作通りなんだろうか?犯人分かりすぎです。劇中劇のロマンスはなかなか良かったんですが。

 

●原作のトルストイの小説はどこまで書かれていたかは覚えていないのだが、「アンナ・カレーニナ ヴロンスキーの物語」は題名通りヴロンスキーのその後の物語だ。映画のはじまりは日露戦争の頃、アンナの息子セルゲイ・カレーニンが軍医として赴いた満州でヴロンスキーに会う場面だ。息子が彼女の行動の裏側を知る物語で、良くできている。

 

●どうしてゴジラをこの作品シリーズの主役にしたのかが最後まで分からなかった「Godzilla 星を喰う者」だった。2万年後の世界というのも飛び過ぎか?

 

 

 



今月のトピックス:今年最後のアラカルト


Ⅰ 東京国際映画祭


10/25~11/03に開催された東京国際映画祭はフランス映画「アマンダ」が最高賞の東京グランプリを獲得して終了した。
11月6日朝日新聞朝刊の文化・文芸欄に石飛徳樹氏が「東京国際映画祭 問われる存在感」とする映画祭に対する評価を寄せている。それによれば、今年の審査委員長であったフィリピンのブリランテ・メンドーサ監督(「ローサは密告された」)が“東京のコンペ作には芸術性と商業性の両方を求められると知った。映画の造り手としてその両立は大変難しい”と述べ、日本からコンペに出品された「愛がなんだ」と「半世界」について“娯楽映画として楽しめるだろうが、国際映画祭のコンペに選ばれる部類ではない”と辛口に語ったという。以前からこうした意見が出ていた(5年前の陳凱歌チェン・カイコー監督)とも書かれている。

今回、コンペ作2本、特別招待作2本、Japan Now1本と5本の作品を見たが、つくづく感じたのはいつもの映画館との観客の違いだった。最近の映画館に比べ、若い人が多いという事だ。若い人は新しい何かを求めてきているのかもしれないと思った。反対に言えば、映画祭に来る高齢者が少ないともいえる。

 

 

 

Ⅱ 天国に召された四人


1.レイモンド・チョウ
香港の映画プロデューサー、レイモンド・チョウが11月2日に91才で亡くなった。
ブルース・リーの「燃えよドラゴン」は日本ではワーナー・ブラザースの配給だったが、日本・韓国以外のアジアはゴールデン・ハーベストが配給していた。そして、ジャッキー・チェンが活躍し始めた頃、その作品もゴールデン・ハーベスト社の製作だったが、その会長がレイモンド・チョウだ。ジャッキーが多くの観客を集め、会社も香港最大の映画会社となり、1982年には「キャノンボール」でハリウッドに進出した。
ゴールデン・ハーベストは現在は映画製作を行っていないらしいが、今も香港やハリウッドで活躍するジャッキーを送り出してくれたことだけでも感謝である。

 

2.フランシス・レイ
画面から“ダバダバダ”が聞こえた時は、新鮮な驚きを感じた。その作曲家フランシス・レイが11月7日に86才で亡くなった。
「男と女」は1966年の作品、それから10年くらいは映画音楽といえばフランシス・レイという状況が続いた。クロード・ルルーシュ監督作品が「パリのめぐり逢い」「白い恋人たち」と続きいずれも映画音楽も大ヒット。1970年にはアメリカ映画に進出「ある愛の詩」という大ヒット作の音楽を担当し、アカデミー賞作曲賞を受賞している。

 

3.スタン・リー
アメリカンコミックスのマーベル名誉会長のスタン・リーが11月12日に亡くなった。95歳だった。マーベルのアメコミ作品の関連で今までにも見せよう会通信でも何度も紹介してきたアメコミ界伝説の人だ。
今やアメリカ映画の大きな部分を占めているアメコミ作品、同じような展開、マンネリ気味といった印象を持たれている日本市場とは違い、世界的には大きな成績を挙げている。あまりに作品が多く食傷気味なのは確かだが、それでもシリーズ毎の差異の出し方や、物語的な工夫はかなり進化していて、製作者の努力が窺える。
競っているDCコミックスがダークサイドを持った作品が目立つのに比べ、マーベルはいかにもアメリカ的な明るさを感じさせてきたのはスタン・リーの影響だろうか?
マーベル映画には必ず姿を見せてきたスタン・リー、今月見た「ヴェノム」ではラストに犬を連れたおじいさん役で台詞もあるという今までで一番目立つ登場だったのは、最後の挨拶に来てくれたのだろうか?

 

4.ウィリアム・ゴールドマン
アメリカの脚本家・小説家・劇作家のウィリアム・ゴールドマンが11月15日に85才で亡くなった。
1960年代後半から1980年にかけて作品を書き続けてくれた。「動く標的」「明日に向かって撃て」「華麗なるヒコーキ野郎」「大統領の陰謀」「マラソンマン」「遠すぎた橋」という傑作群である。アメリカンニューシネマの新しい感覚だけではなく、歴史認識に基づくしっかりしたドラマも得意にしていた。ローレンス・オリヴィエが歯医者を演じた「マラソンマン」の怖さは今も時々思い出す。

多くの映画を楽しませてくれた4人の巨人たち。ご冥福をお祈りします。

 

 

 

 

Ⅲ 流行語大賞


流行語大賞にノミネートされた30語が発表された。個人的には“ボーと生きてんじゃねえよ!”が大賞だが、映画関係では唯一“カメ止め”が候補になっている。カメ止めという略語が使われていたとは知らなかったが、これは勿論「カメラを止めるな!」の略だ。
今年の映画界でこの作品の持つ意味が大きかったのは確か。監督&俳優養成スクール・ENBUゼミナールが2017年に製作、数々の映画賞を受賞、2018年6月に日本で凱旋上映が行われた。東京の2館で始まったこの上映が評判を呼び映画館がどんどん増え、全国で300館を超えることに。250~300万円の製作費ながら、11月には興行収入が30億円を超える超大ヒットとなる。
この映画の成功の基にはアイディアをいかにうまく成長させたかという事があり、今の日本映画に必要なことをきちんと行っているという訳だ。

 

 

 

 

Ⅳ クレイジー・リッチ


先月号の今月のつぶやきで紹介した映画「クレイジー・リッチ」、本物のシンガポールの超富裕層華人は映画の世界を超えるとの大きな記事が11月19日朝日新聞朝刊国際面に出ていた。こうした富裕層は従来目立つことを怖れていたという。冷戦期の東南アジアでは共産勢力が強く、さらに日本占領期には寄付を要求されたこともあったためだが、最近の若い世代はそうした警戒感を持たないようだ。
シンガポール政府はこうした風潮が格差に対する不満を呼び起こし、国の団結に影響すると懸念しているようだ。政府系のシンガポール航空は撮影に協力せず、さらに地元のメディアもこの映画に批判的だとも伝えている。

 

 

 

 

今月はここまで。次はクリスマスにお送りします。

 

 

 


                         - 神谷二三夫 -


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