2019年 8月号back

東京では昨日から突然真夏日、
昨年の猛暑の記憶がよみがえる。
時に悪い記憶で落ち込んだ時、
ホッとさせてくれるのは、そう、映画館!

 

 

 

今月の映画

 

6/26~7/25の参議院選挙を含む30日間に出会った作品は40本、
旧作9本を含んで18本の日本映画、旧作なしで22本の外国映画。
幅広い作品群が揃いました。



<日本映画>

きみと,波にのれたら 
新聞記者 
今日も嫌がらせ弁当 
凪待ち 
ホットギミック ガール・ミーツ・ボーイ 
いちごの唄 
Dinerダイナー
ある町の高い煙突 
天気の子
現代インチキ物語 騙し屋(旧) 
果てしなき欲望(旧) 
最後の切札(旧) 
散歩する霊柩車(旧)  
ある脅迫(旧)
気違い部落(旧) 
狙撃(旧) 
背徳のメス(旧) 
わるいやつら(旧)

 

 

<外国映画>

パピヨン

  (Papillon) 
ニューヨーク 最高の訳あり物件
  (Forget about Nick) 
COLD WAYあの歌,2つの心
  (Zimna Wojna / Cold War) 
スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム
  (Spider-Man:Far From Home) 
ペトラは静かに対峙する
  (Petra) 
家族にサルーテ イスキア島は大騒動
  (A Casa Tutti Bene / There is No Place Like Home)
ゴールデン・リバー
  (The Sisters Brothers) 
Girl/ガール
  (Girl) 
ハッピー・デス・デイ
  (Happy Death Day) 
サマー・フィーリング
  (Ce Sentiment de L’Ete / This Summer Feeling) 
ガラスの城の約束
  (The Glass Castle) 
ワイルド・ライフ
  (Wildlife) 
安市城 グレート・バトル
  (The Great Battle) 
さらば愛しきアウトロー
  (The Old Man & The Gun) 
アイアン・スカイ/第三帝国の逆襲
  (Iron Sky:The Coming Race) 
ハッピー・デス・デイ 2U
  (Happy Death Day 2U) 
トイ・ストーリー4
  (Toy Story4) 
シンク・オア・スイム イチかバチか俺たちの夢
  (Le Grand Bain / Sink or Swim) 
ハッパGoGo~大統領極秘指令

  (Mision No Oficial / Get The Weed) 
マーウェン
  (Welcome to Marwen) 
存在のない子供たち
  (Capharnaum / Capernaum) 
工作 黒金星と呼ばれた男
  (The Spy Gone North)

 

 

 

 

Ⅰ 今月のベストスリー

  (新作だけを対象にしています)

 

① COLD WARあの歌、2つの心
陰影の深い白黒画面で見る者の心に訴えるポーランド映画といえば、1950年代後半から60年代前半にかけて作られた「地下水道」「尼僧ヨアンナ」「水の中のナイフ」などが思い浮かぶ。それらの映画と同じようにこちらの心をわしづかみにする新作は、歌手とピアニストの付いたり離れたりしながらの恋物語が15年間にわたって描かれる。見終わるとすぐあの歌が聞きたくなる88分だった。

 

②-1 新聞記者
東京新聞の望月衣塑子記者の「新聞記者」という新書を原案に、オリジナルドラマを作成し発言するドラマ。企画・製作を担当した川村光庸が中心となり、日本の政治状況に近い設定の中で、新聞記者と官僚の行動を描く政治的映画だ。現政権の“メディアは公平に”などという言葉に絡めとられている今の日本のマスコミ。口だけの政権サイド。これでこの国が良い方向に向かえるとは思えない。日本映画では久しぶりの社会的作品。

 

②-2 存在のない子供たち
レバノンからやってきた女性監督ナディーン・ラバキーの手になる作品は、こちらが怖くなるほどに主人公たちの貧しさを描き出す。自分の生年月日も分からず、学校にも行かず働いている12歳のゼインは、妹が親から結婚を強制されたこと等で家を出て街をさまようのだが…。殆ど救いのない現実が描かれる。

 

②-3 工作 黒金星と呼ばれた男
韓国映画から送られてきた実話に基づく物語は、北朝鮮-韓国間にあったスパイの働きを見せてくれる。長い期間を経て北側高官との間に信頼関係を築く主人公だったが…。1997年の韓国大統領選(金大中が当選する)が大きな影響を与えたというリアル。やはり、緊張感のある韓国の状況がこうした作品を生み出すのだろう。

 

③-1 ペトラは静かに対峙する
母子家庭で育ったペトラが父確認でやってきた彫刻家ジャウメの家で出会う真実は?無表情でジャウメを演じるジョアン・ボテイは77歳にして演技デビュー。この映画のロケ地の所有者で演技経験はなかったらしい。カタルーニャの地で人間関係の深いドラマを見る。

 

③-2 ゴールデン・リバー
1850年、ゴールドラッシュに沸くサンフランシスコを目指す男たちのドラマ。南北戦争前のアメリカ西部を舞台にした西部劇を監督したのはフランスのジャック・オーディアール。殺し屋のシスターズ兄弟を軸に、不思議な方向から感動の結末へ、変わった西部劇だ。

 

 

 

ロードショー作品に面白いものが他にも。映画館で絶賛上映中かも(終わったものもあり)。


◎パピヨン:1973年に公開された同名作のリメイク。アンリ・シャリエールの自伝小説をダルトン・トランボが脚本化、フランクリン・J・シャーフナーが監督したスティーヴ・マックィーン、ダスティン・ホフマン主演作に比べると華やかさには欠けるが、地味にじっくり描いたのはデンマークのマイケル・ノア監督。

 

◎凪待ち:香取慎吾が今までのイメージとは全く違う主人公を演じることで話題になった作品は、白石和彌が監督している。昨年は「孤狼の血」等を監督、今最も熱い監督の一人だ。ギャンブルをやめられず落ちていく男を丁寧に描いている。

 

◎家族にサルーテ イスキア島は大騒動:イスキア島に住む夫婦の金婚式を祝うため集まった子、孫など子供から大人までの 19名が織りなす人間喜劇はいかにもイタリア。

 

◎Girl/ガール:15歳のトランスジェンダーの主人公がバレリーナを目指して、肉体の訓練に明け暮れる。バレーという過酷な芸術に身をささげることの大変さが、LGBT問題をも彼方に押しやるような…、しかしどちらも大変なことではある。

 

◎ハッピー・デス・デイ、ハッピー・デス・デイ 2U:バースデイではなくデスデイを描く1作目と2作目が連続ロードショーされている。ループに落ちた女性が同じ日を繰り返し、その最後は殺されるところで目が覚めるという怪しい路線。アイディア勝負とばかりに考え抜かれた脚本。おススメです。

 

◎サマー・フィーリング:先月紹介した「アマンダと僕」のミカエル・アース監督の2015年の作品。ベルリン、パリ+アヌシー、ニューヨークを舞台に一人の女性の死から始まる人間関係をその地での生活を優先しながら描く。

◎ガラスの城の約束:ニューヨークマガジンの人気コラムニストジャネット・ウォールズの自伝からの映画化。彼女の父は「ガラスの城」を作ろうと子供たちに夢を語り続けてきた。成長して徐々に離れていく子供たちのことを理解せずに。

 

◎ワイルド・ライフ:俳優のポール・ダノの初監督作、彼のパートナーでエリア・カザンの孫であるゾーイ・カザンと共同で脚本を書いている。1960年、14歳のジョーの前で繰り広げられた両親の喧嘩離別は50年代の理想夫婦から60年代の波乱夫婦への過度期でもあった。

 

◎さらば愛しきアウトロー:顔のしわが尋常でない82歳のロバート・レッドフォードが演じるのは、紳士的な銀行強盗だ。誰も傷つけず、丁寧にお願いして頂戴するのだ。これが実話というところがいかにもアメリカ的。

 

◎ハッパGoGo 大統領極秘指令:世界で初めて大麻を公認したのがウルグアイだとは知らなかった。それを基に話を作り上げて主演・脚本・監督したのはデニー・ブレックナー。「世界一貧しい大統領」ホセ・ムヒカも出演。本当の話のように見えてしまうのが凄い。

 

◎天気の子:新海誠監督の新作にはちょっと驚いた。こんなにポップな感じで跳ね回る人だったのかというのが一つ。さらに、内容がそこまで行くかというのが2つ目。特にラストは、東京では29日間連続で雨が降っている日が続いているという今日のニュースがあるにはあるのだが、ちょっと飛びすぎでしょという感じだった。

 

 

 


Ⅱ 今月の旧作

 

9本の日本映画の旧作は特に何かで統一されたものではないが、「現代インチキ物語 騙し屋」「気違い部落」を見ていると、日本の当時の状況を物語と絡めながら描く事にかけては今の日本映画よりうまいと思う。また、「果てしなき欲望」「散歩する霊柩車」をみると、日本人はもっといい加減で、エネルギーに満ちた人々だったかとも感じる。いずれも前回の東京オリンピックの年1964までに製作された映画群。

 

 

 

 

Ⅲ 今月の懐かしい人

 

☆ステファニア・サンドレッリ
「家族にサルーテ イスキア島は大騒動」で金婚式夫妻の妻を演じていたのはステファニア・サンドレッリ、1961年の「イタリア式離婚狂想曲」で17歳のアンジェラを演じた時は実は15才だったようだ。ピエトロ・ジェルミ監督作品以降もベルナルド・ベルトルッチ、エットーレ・スコラなどの名匠に使われてきた。
久しぶりに見たら、ただ者じゃない感に貫禄が加わり堂々たるおばあちゃんぶり。

 

 

 

 

Ⅳ 今月のつぶやき


●“この二人は部分的に私の両親を基にしている。彼らはそれぞれに別のパートナーとくっついたりしながらも、とても激しい関係を結んでいた。”と、監督パヴェウ・パヴリコフスキの言葉がサイトで紹介されていたのが「COLD WARあの歌、2つの心」だ。1957年ポーランド、ワルシャワ生まれの監督は14歳で母に連れられてポーランドを出て、イギリス、ドイツ、イタリアへ渡り、1977年にイギリスに落ち着きロンドンとオックスフォードで文学と哲学を学んだとある。イギリスで映画・映像関係で作品を発表、前作「イーダ」を2013年ポーランドに帰って完成させる。その後ワルシャワに在住している。監督の経歴を知るとこの作品が作られた経緯がよく分かる。

 

●高校生の修学旅行かいと思わず突っ込みたくなる「スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム」だ。ヴェネチア、ベルリン、ロンドンと回っている。ピーター・パーカーが大人になるまでをじっくり描くんだろうか?マーベルは本気かも。

 

●愛知県刈谷市生まれの若い女性監督山戸結希のことは今年の5月号で紹介している。彼女の新作が「ホットギミック ガール・ミーツ・ボーイ」だ。漫画原作からの映画化だ。舞台が豊洲、東雲、渋谷で、この映画を撮っている時、後に朝日新聞の土曜日版に載った写真を撮ったのだなと納得した。新作は若者らしい画面作りがいい時と、そうでもない時が半々かなという出来。

 

●主人公が何度も死ぬ場面に遭遇ずる「ハッピー・デス・デイ」「ハッピー・デス・デイ 2U」は、見てしばらくすると必ず生き返ってくるので安心して見ていられるのが笑える。

 

●これも実話からというので驚くのが「マーウェン」だ。アメリカはつくづく変わった国だ。

 

●Wikipediaによれば、“animation(アニメーション)は、ラテン語で霊魂を意味するanima(アニマ)に由来しており、生命のない動かないものに命を与えて動かすことを意味する”という事で、おもちゃに生命を与えるトイ・ストーリーがアニメで作られたのは必然かもしれない。「トイ・ストーリー4」を見て驚くのは、トイたちの卑屈さである。人間との間に主従関係が歴然とある。~3までの作品もこんな風だったっけ?

 

 

 

 



今月のトピックス:2019年11月


Ⅰ 2019年11月


あと4カ月で「ブレードランナー」の設定時代になる。1982年に公開された時、物語の時代は2019年11月とされたという。Wikipediaによれば、元々は2020年で設定されていたらしい。それがTwenty-Twentyは視力検査で両目とも2.0であることを表す言葉であり、混乱を避けるため2019年に変更されたらしい。設定だけでもこんな変遷があったのだ。公開された当時、映画は大ヒットにはならなかった。アメリカでは2週間前に公開された「E.T.」の半分にも届かず、日本でもハリソン・フォードが「レイダーズ」のようなアクションではないと今一つの成績だった。当時ハリソン・フォード自体もこの作品が好きになれなかったらしい。しょぼくれ感のある役が気に入らなかったのかもしれない。
舞台はロサンゼルスだったが、あれ、日本かなと思われるくらい日本的映像+日本語(リドリー・スコットのロンドンでの家政婦は高尾慶子だった)が流れ、薄汚れた小雨降る町にレプリカントを追う捜査官リック・デッカードが迷路に入り込んでいく。


初めてこの作品を見た時、様々に混乱した印象を受けた。一番驚いたのは、それまでのSF映画といえばチリ一つないピカピカの印象だったのに、この37年後の世界は薄汚れていたことだ。浮かび上がって走る車やレプリカントなど未来を見せてくれる要素はあるものの、古さを感じさせる要素も多く見られたのだ。考えてみれば当たり前のことだと徐々に気付いた。どんな時代設定であれ、古くなる要素は確実に存在するのだから。
初公開当時の評価がこれほど変わり、今やSF作品の金字塔といわれるほどになった作品は、初めは分からないと不評であった「2001年宇宙の旅」と「ブレードランナー」だけだ。

 

2017年には35年ぶりに続編の「ブレードランナー 2049」が公開された。

 

最近2本のブレードランナーについての新書「ブレードランナー証言録」(インターナショナル新書)が発刊された。
2本に脚本家として関わったハンプトン・ファンチャー、「ブレードランナー 2049」に共同脚本家として参加したマイケル・グリーン、続編の公開前に作られた3本の短編映画の1本「ブレードランナー ブラックアウト 2022」を作ったアニメーション監督の渡辺信一郎、作家、映画プロデューサーで「メイキング・オブ・ブレードランナー」という本を書いたポール・M・サモンの4人に対するインタビューをまとめたものだ。
この本が面白く、新たに知ったことも多かった。私自身はブレードランナーマニアではないが、初作の持つ不思議なエネルギーが好きで心に残る作品だと思っている。
少しでも「ブレードランナー」「ブレードランナー 2049」を面白いと感じた方にはお勧めの新書だ。

 

 

 

 

Ⅱ 時代劇編


今月はもう1冊おすすめしたい新書があった。河出新書の「町山智浩・春日太一の日本映画講義 時代劇編」だ。現在の映画ライターでは信頼できる二人だ。若いライターと書こうとして調べたら、町山は57歳なので躊躇、活きの良いライターとしておこう(春日は41歳)。
6章に分けて特定監督、及び特定シリーズを取り上げ、2人が語っていく。時代劇とはいえ、第1章で取り上げている「七人の侍」が1954年に公開された作品だが、それ以外の5章で語られる作品はいずれも60年代以降の作品である。時代劇が隆盛であった50年代の作品は取り上げられていない。その頃時代劇を量産していたのは東映であり、いわゆるチャンバラが多くの観客を集めていた。チャンバラは歌舞伎の動きを取り入れ、型で見せてくれる、いわばきれいな、踊りのような動きからなっていた。
そんなきれいなチャンバラから違う世界へと導いたのが黒澤明だった。「七人の侍」は野武士との闘いが描かれ、きれいごとではない。黒澤はそれをリアルに描くという方向を選ぶ。物語の方向と併せ、力強い映画になった。その後、61年の「用心棒」、62年の「椿三十郎」で黒澤はリアルさに派手さも加え、時代劇の戦いを進化させていく。その後の時代劇は総てその影響を受けた。
この本で取り上げられるのは次の通りだ。
第2章:内田吐夢監督による「宮本武蔵」五部作
第3章:三隈研次監督による「剣」三部作(「斬る」「剣」「剣鬼」)
第4章:「子連れ狼」シリーズ6作品(三隈研次4作品、齋藤武市、黒田義之各1作品)
第5章:黒木和雄監督による2作品(「竜馬暗殺」「浪人街RONINGAI」)
第6章:五社英雄監督による2作品(御用金)「人斬り」)
いずれも作り手の情熱を感じさせてくれる二人の語りだ。私自身は上記の中では「七人の侍」「斬る」「竜馬暗殺」しか見ていないが、読むにつれ全ての作品を見たくなる。中では1961~5年に渡って毎年1本作られた「宮本武蔵」シリーズを通しで見てみたい。5年の間に社会も、映画界も、時代劇も、内田監督も変化していくが、その様が作品から見て取れるらしい。どんな映画であれ作られたその時代を表す何かを見る人に感じさせるのが映画というメディアの不思議なところだ。

 

この二人の語りは近々続編が出る予定だという。「戦争・パニック映画編」という事で、アクション映画であるところは変わりないようだが、楽しみだ。

 

 

 

 

Ⅲ 高畑勲展

 

朝ドラ「なつぞら」は戦後日本の様々をドラマに取り込んでいて楽しめる。物語はアニメーターを目指す女性、奥原なつを主人公に東映動画の創成期から成長期のあたりをモデル に、好きなアニメーションにかける若者たちを描いている。
東映動画にあたるドラマの中の映画会社、東洋動画に色々理屈を言う監督志望の坂場一久という若者がいて、こちらの思い込みではこのモデルは高畑勲ではないだろうか?

 

昨年4月5日に82歳で亡くなった高畑勲の展覧会が東京国立近代美術館で開かれている。「高畑勲展 日本のアニメ―ションに遺したもの」と題された展覧会に行ってきた。平日、開館時間10時の30分前に出かけたら、まだ誰もいなくて切符売り場もオープンしていなかった。大ヒット映画の時の癖がつい出てしまった。勇み足だった。

 

高畑勲は少し後に東映動画に入ってきて、後にジブリを一緒に立ち上げた宮崎駿と違って、自ら絵を描くことはない人だった。だから、絵を見てこれは高畑だとは気づかない。さらに、作品のテーマ、作風もかなり幅が広く、作品を見ただけでは誰の作品か分からない。彼の監督作品で有名なものは、「火垂るの墓」「おもひでぽろぽろ」「平成狸合戦ぽんぽこ」「ホ-ホケキョ となりの山田くん」「かぐや姫の物語」と、てんでんばらばらといった印象だ。最後の作品となった「かぐや姫の物語」は、アニメーターが描いたラフな線が持つ生命力、勢いをそのまま画面に出すという無謀とも思える方法を採用している。それが成功して、稀有な作品が出来上がった。

 

絵を描かない代わりに、彼は精密な表を用意してアニメーションを製作していた。アニメーションは実写作品と違ってすべてをゼロから決めていかなければならない。大げさに言えば1コマ1コマの画面の在り方を決める必要がある。普通の実写映画は1秒に24コマがある。この1コマ1コマの作画に様々な指示を書き込み、見る方の感情の動きまでをも想定してそれに合わせるように表にしていたのには感心した。頭の中にすべてを思い描いていたのだ。
こうした先人のもと、日本のアニメーションは世界で愛されるようになったのだろう。高畑のつくったTVアニメ「アルプスの少女ハイジ」は、これを見て育ったヨーロッパの人も多く、日本製とは思わず見ていた人も多かったらしい。この作品製作の前には現地を訪れて風景や人々の生活など、極力実際のものに近づける努力をしていた。
いつの間にか結構な人が入場していた展覧会を見ながら、アニメーション製作の大変さをも教えてもらった。

 

 

 

 

Ⅳ 映画の世界興収


最近世界の映画興収成績1位が「アバター」から「アベンジャーズ:エンドゲーム」に変わったという情報を知った。そこで「世界歴代興行収入上位の映画一覧」というWikipediaの頁を見てみた。https://ja.wikipedia.org/wiki/世界歴代興行収入上位の映画一覧
改めて驚くのはアベンジャーズ系の圧倒的な強さである。10位までに5本が入っている(「ブラック・パンサー」はアベンジャーズとはついていないが、一員ではあるので加えている)。さらに「スターウォーズ」のルーカスフィルムやアベンジャーズのマーベルも手にいれたディズニーの強さも目を引く。20位までのうち12本がディズニーとなる。20世紀フォックスもディズニーが手に入れたはず(20世紀フォックスという名前は残すらしいが)なので、現在2位の「アバター」や3位の「タイタニック」(こちらは20世紀フォックスとパラマウントの製作)までディズニーになる可能性はある。

 

 

 

 

今月はここまで。
次号はまだ暑いだろうと想像できる8月25日にお送りします。

 


                         - 神谷二三夫 -


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