2019年 12月号back

12月がすぐそこまでやってきました。
知り合いに前年の個人的映画ベスト10を初めて送ったのは2005年の元旦でした。その後暫く、「見せよう会通信」という名前もなく、しかし、毎月その時々の話題を表題にして送っていました。いかに安く映画を見るかなどを伝えていたのです。もちろん自分もまだ一般料金の頃でした。この元旦のメールをこの通信の初号とすれば、来月12月にお送りする1月号が15年目の最終号、1月には16年目の飛び出し号をお送りすることになります。
初号から現在の「見せよう会通信」まで総ての号を見ていただけるサイトがあります。知り合いのサイトに間借りしてというか、アップしてもらっています。
今までの「見せよう会通信」をご覧になりたい方は次のサイトをご覧ください。

http://www.cogito-kobo.net/miseyoukai/cinema_top.html

<~月号>をクリックしていただければ、その月の全文を読むことができます。
URLが面倒な場合は「見せよう会通信」でサーチしてください。

 

 

 

今月の映画

 

10/26~11/25の「桜を見る会」事件が発覚した31日間に出会った作品は53本、邦/洋本数は14/39、新/旧本数は33/20となりました。 
なお東京国際映画祭で上映された新作は邦洋共に新作に換算しています。
旧作が20本と大きな数字になったのは、ひとえにフレッド・アステア特集によります。15本も見に出かけました。
アステアと東京国際映画祭(8本)が全体の本数を押し上げました。



<日本映画>

【新作】
人生をしまう時間(とき)
ヒキタさん!ご懐妊ですよ 
i 新聞記者ドキュメント 
マチネの終わりに 
閉鎖病棟-それぞれの朝- 
NO SMOKING 
ひとよ 
カツベン(試写会) 
決算!忠臣蔵 

<東京国際映画祭>
叫び声

 

【旧作】
恋文
一条さゆり濡れた欲情

 

<東京国際映画祭>
野ゆき山ゆき海べゆき 
異人たちとの夏

 

 

<外国映画>

【新作】
ゴッホとヘレーネの森 クレラー=ミュラー美術館の至宝
  (Van Gogh:Tra Il Grano e Il Cielo /

   Van Gogh-of Wheat Fields and Clouded Skies) 
アダムズ・アップル
  (Adams Aeber / Adam’s Appkes) 
クロール-凶暴領域-
  (Crawl) 
マレフィセント2
  (Maleficent: Mistress of Evil) 
T-34 レジェンド・オブ・ウォー
  (T-34) 
アイリッシュマン
  (The Irishman) 
アンドレア・ボチェッリ 奇跡のテノール
  (La Musica del Silenzio / The Music of Silence)
ターミネーター:ニューフェイト
  (Terminator: Dark Fate) 
永遠の門 ゴッホの見た未来
  (At Eternity’s Date) 
グレタ
  (Greta) 
キューブリックに愛された男
  (S is For Stanley) 
キューブリックに魅せられた男
  (Filmworker) 
第三夫人と髪飾り
  (The Third Wife) 
スペインが呼んでいる
  (The Trip to Spain) 
マイ・フーリッシュ・ハート
  (My Foolish Heart) 
ブライトバーン 恐怖の拡散者
  (Brightburn) 
エンド・オブ・ステイツ
  (Angel has Fallen) 
オーバーエベレスト 陰謀の氷壁
  (Wings Over Everest) 
LORO 欲望のイタリア
  (Loro / Them) 
アナと雪の女王2
  (Frozen2)
ライフ・イットセルフ 未来に続く物語
  (Life Itself)

 

<東京国際映画祭>
ミンダナオ
  (Mindanao) 
戦争のさなかで
  (While at War) 


 

【旧作】
<フレッド・アステア レトロスペクティブ>
空中レビュー時代
  (Flying Down to Rio) 
晴れて今宵は
  (You Were Never Lovelier) 
ブロードウェイのバークレー夫妻
  (The Barkleys of Broadway) 
踊るニューヨーク
  (Broadway Melody of 1940) 
青空に踊る
  (The Sky’s the Limit) 
有頂天時代
  (Swing Time) 
トップ・ハット
  (Top Hat) 
土曜は貴方に
  (Three Little Words) 
踊る騎士(ナイト)
  (A Damsel in Distress) 
カッスル夫妻
  (The Story of Vernon and Irene Castle) 
ヨランダと泥棒
  (Yolanda and the Thief) 
ジーグフェルド・フォリーズ
  (Ziegfeld Follies) 
ロバータ
  (Roberta) 
セカンド・コーラス
  (Second Chorus) 
踊る結婚式
  (You’ll Never Get Rich)

<東京国際映画祭>
パーソナル・ショッパー
  (Personal Shopper) 

 

 

 

 

Ⅰ 今月のベストスリー

  (新作だけを対象にしています)

 

① i 新聞記者ドキュメント 公式サイト http://i-shimbunkisha.jp/
東京新聞の望月衣塑子記者は菅官房長官の記者会見の場で、何度もとことん質問することで有名になった。ジャーナリストであれば国民の知りたいことを質問するのが当然なので、ごく当たり前のはずなのに妙に目立つ状況が日本の現在を表している。彼女を追うドキュメンタリーを作ったのは森達也監督、オウム真理教に密着した「A」や佐村河内守を追った「FAKE」を作ってきた。多くのことを伝えてくれる映画だが、余り構えず単に官房長官会見場における妨害としか思えない注意発言の多さにあきれるだけでもいい。そのことで、色々なことが見えてくる。今月のトークショーも参照。

 

② アイリッシュマン
マーチン・スコセッシの監督、ロバート・デ・ニーロ、ジョー・ペシ、アル・パチーノ、ハーヴェイ・カイテル等出演で描くマフィアものというだけでイメージが浮かんできそうだ。製作も務めるデ・ニーロは40~80代の主人公を演じ切り、ペシは奇妙なしぶとさを、パチーノは力を握った男の狡猾さをうまく出している。Netflixの配信作品なので映画館で見られないかと心配したが、急遽ロードショー公開された。

 

③ カツベン 公式サイト https://www.katsuben.jp/         
周防正行監督の新作は活動写真の時代、無声映画に台詞と物語を加える活動弁士の物語。サイレント(無声映画)からトーキー(発声映画)に変遷する狭間に取り入れられた日本独自のシステム。活動弁士、カツベンがいることによって駄作も名作になる程の活躍。小屋にもぐりこんだ子供時代の主人公から、カツベンで成功する青年時代への成長物語と、映画館同士の争い、やくざの世界などを笑いに乗せて語ってくれる周防監督の5年ぶりの最新作。12月13日封切りです。

面白い作品や奇妙な味の作品を映画館で楽しみましょう。(終わったものもあり)。


ゴッホとヘレーネの森 クレラー=ミュラー美術館の至宝:オランダ、デ・ホーヘ・フェルウェ国立公園内にあるクレラー・ミュラー美術館は日本からの観光ツアーでも訪れることがある美術館。ゴッホ作品を多く集めたヘレン・クレラー・ミュラー夫人とゴッホの足跡を追ったドキュメンタリー。二人は描く人と集める人という関係で、出会うことはなかった。

 

アダムズ・アップル:2005年に作られたデンマーク映画は、仮出所した凶悪なアダムが更生施設として住むことになる教会の牧師イヴァンと奇妙な人々の物語。北欧の厳しい自然環境の中で善悪、聖邪が静かに問われる。

 

クロール-凶暴領域-:フロリダを襲う巨大ハリケーンと名物巨大ワニが暴れまわる緊張感・迫力満点の87分スッキリ映画。台風19号も思い出し緊迫感は一層増した。

 

マレフィセント2:「眠れる森の美女」の悪役、マレフィセントを主人公にしたディズニー作品の第2弾。彼女を主役に据える度量の広さがディズニーの現在を支えているなあと実感させる出来。

 

T‐34 レジェンド・オブ・ウォー:今年ロシアで最大ヒットの戦争映画は、ソ連に侵攻したナチスに捕虜となったソ連戦車の新米指揮官が復讐するお話。戦車の描写(角度とか、接写とか)が素晴らしく圧倒される。製作したのがニキータ・ミハルコフ監督なのも驚き!

 

永遠の門 ゴッホの見た未来:今月2本目のゴッホ関連作品は、ウィレム・デフォーがゴッホを、オスカー・アイザックがゴーギャンを演じている。監督・共同脚本のジュリアン・シュナーベル自身も画家でもあり、この映画の画面もゴッホの視点で描かれた感情にあふれたものが続く。共同脚本はジャン=クロード・カリエールだ。

 

閉鎖病棟 -それぞれの朝-:死刑執行の場面から始まるが死刑囚は死ねず後遺症のため車いす生活になる。彼が収容されている精神病院、そこにいる様々な傷を負った人々の物語は、作家帚木蓬生の原作を平山秀幸が脚本・監督した作品。人を許すことが重要だ。

 

グレタ:1953年生まれのフランス女優イザベル・ユペールは19歳で映画デビューして以来66歳の現在まで活躍、高齢者年齢になるも官能的な役も演じて今や怖いものなし。今回も観客を怖いめに合わせてくれる。監督はニール・ジョーダン。

 

ひとよ:最近好調の白石和彌監督の新作は舞台用に書かれた原作からの映画化。子供たちのためにDVが激しい夫を殺した母と子供たちの15年後の物語。白石監督にしては彼等の関係や、元ヤクザ男性の描き方がちょっとありがち描写になっているのが残念。

 

キューブリックに魅せられた男:スタンリー・キューブリック監督は「2001年宇宙の旅」や「シャイニング」等で有名だ。「2001年…」等を見て監督キューブリックに心酔していた俳優レオン・ヴィターリはオーディションに合格して「バリー・リンデン」に出演後、俳優を辞めキューブリックの映画製作現場に参加、彼のためにどんなことでもすると決意。ヴィターリの滅私奉公ぶりを追ったのがこのドキュメンタリー映画だ。感心して、驚いた。

 

ブライトバーン 恐怖の拡散者:他の惑星からやってきたのか、12歳の息子は両親が思ってもみない行動に出る。ブライトバーンは地名だが、カンザス州には見当たらなかった。スーパーマンの地球の故郷、カンザス州のスモールヴィルも見当たらないのだが。

 

エンド・オブ・ステイツ:米大統領が釣りに出かけたところでの攻撃場面、圧倒的なドローン爆撃で度肝を抜く初めのエピソードから激しい描写が続くエンドシリーズ第3作。大統領をこんな風にして大丈夫だろうかと心配になる。

 

LORO 欲望のイタリア:シルヴィオ・ベルルスコーニといえばイタリアの元首相、通算9年間も首相の座についていたが性的なものも含め様々なスキャンダルで有名だ。彼をモデルにした映画の冒頭には“すべてが事実に即しすべてが恣意的”の言葉が置かれている。ベルルスコーニの名前でスキャンダラスに描かれる物語は余りに性的なものに偏り過ぎか。

 

決算!忠臣蔵:かつて年末恒例といわれた忠臣蔵の物語、今や知らない世代も多くなりこの作品が初めてという観客もいることだろう。今回は今までとは違う観点からいかにも現代風にドライにテンポよく描かれる。知っている世代にはなかなかに新鮮、笑って楽しめた。

 

 

 


Ⅱ 今月の旧作

 

<日本映画>

神代辰巳監督特集の2本と東京国際映画祭での大林宣彦監督特集の2本。
中では大林監督の「異人たちとの夏」が面白かった。大林監督らしいセピア色のベールのかかったような懐かしい物語。バブルがはじける前、日本経済が絶頂期にあった1988年にこうした映画を作るのも大林監督らしい。

 

<外国映画>

渋谷シネマヴェーラでの<フレッド・アステア レトロスペクティブ>で上映された24本の内15本を楽しんだ。特集は11/29迄で、あと2本を見る予定。再見した作品も多い。アステアはジンジャー・ロジャースとのコンビ作が10本あり有名だ。コンビ以外の作品で初めて見た中で面白かったのは次の通り。


土曜は貴方に」:1920年以降に活躍した作詞バート・カルマーと作曲ハリー・ルビーのコンビの伝記映画。アステアはカルマ―を、レッド・スケルトンがルビーを演じている。


踊る結婚式」:アステアはリタ・ヘイワースと2本で共演し踊っている。リタは両親ともにダンサーで、彼女自身12歳から舞台に立ったという。セックスシンボル的人気であったリタだが、この2作では確かに踊っている。(歌は吹き替えのようだが)


シネマヴェーラで3度目の出会いをした「踊るニューヨーク」はやはり傑作だ。エレノア・パウエルとアステアの踊りは、丁々発止、心を躍らせてくれる。年1度は見たい。

 

 

 

 

Ⅲ 今月の懐かしい人

 

☆ライアン・オニール
「キューブリックに魅せられた男」でインタビューに答えている一人がライアン・オニール、「バリー・リンドン」に主演していた彼は、「ある愛の詩」の大ヒットで有名になった。娘のテイタム・オニールと共演した「ペーパームーン」も楽しい映画だった。
2000年以降は慢性白血病、テイタムの自伝で虐待した父と告発され、更に前立腺がんの発症と続いたためか、ちょっとむくんでいた現在78歳のオニールだった。

 


☆ニック・ノルティ
アメリカの大統領を襲われるのから守るシリーズの最新作「エンド・オブ・ステイツ」を見ていたら、主人公のおやじさんが出てきて、ニック・ノルティが汚い格好で演じていたので嬉しくなった。鳴り物入りでの主演作デビューが1977年の「ザ・ディープ」だが、この時すでに36歳だ。その後もアクションものを中心に活躍してきたが、肉体の存在感の他に狂気が垣間見える役も得意とした。「ノースダラス40」や「ケープ・フィアー」等だ。
4年ほど前にもロバート・レッドフォードと共演していたりで、超久しぶりではないが、今回の役柄・扮装が妙に似合っていて紹介したくなってしまった。

 

 

 

 

 

Ⅳ 今月のトークショー&作品感想(東京国際映画祭)


東京国際映画祭では旧作も含め8本見たが、内5本の作品で上映後の質疑応答があった。いずれもTOHOシネマズ六本木にて。


10/30「ミンダナオ」ブリランテ・メンドーサ監督X安藤紘平プログラミングアドバイザー
ムスリムが大半を占めるミンダナオ島、フィリピンでムスリムが多い3つの島の一つだという。その島での政府軍との闘いが続く状況と島に残る伝説を並行して描いている。実写とアニメーションからなる作品だ。


11/02「叫び声」渡辺紘文監督、渡辺雄司音楽担当X矢田部吉彦映画祭ディレクター
栃木県大田原市で映画制作集団大田原愚豚舎を率いる渡辺監督の新作。東京国際映画祭の常連であるらしく、観客の大半は彼の作品を以前に見たことがあるという。濃いモノクロの画面等見るべきところもあるのだが、映画としては全く楽しめなかった。


11/03「野ゆき山ゆき海べゆき」予定していた大林監督が体調不良で不可となり、安藤紘平プログラミングアドバイザーが事前に電話で聞いたお話を披露。
1986年の大林作品は佐藤春夫の自伝的小説を監督の故郷尾道に置き換え、戦争中の子供たちの騒動を描く。仏映画「わんぱく戦争」のような様相も呈している。戦争に対する監督の気持ちが30年以上前から最近作にまで続くものであることを確認できる。


11/04i 新聞記者ドキュメント」望月衣塑子記者、森達也監督X矢田部吉彦映画祭ディレクター
11/15から一般公開も始まったが、少しでも早くと東京国際映画祭のチケット発売日に席を確保した(発売日に完売となったらしい)。作品は期待を上回るものだった。国際映画祭らしく海外からの人も見に来ていて質問もされていた。


森監督の発言で面白かったのは次の通り。
・題名のiがIではないのは、大文字では面白くないと思ったから。
・アニメの場所は当初あの位置ではなかった。
・望月さんが泣くのを撮りたかったが、目薬を差してもらってもうまくいかず諦めた。
・公開まで時間(10日しかない)があるので、編集を少し変えるかもしれない。ええっ?


官房長官会見場における望月記者の質問妨害について、望月記者の発言は次の通り。
・“質問は短く”とかの会見中の注意発声は会見担当者から(いやというほど聞こえる)だが、辺野古に対する地元の人たちの抗議運動の後一時ほぼ無くなったが、暫くして復活した。


11/04「異人たちとの夏」秋吉久美子X安藤紘平プログラミングアドバイザー+大林千茱萸(おおばやしちぐみ、監督の娘)
1988年の大林監督作品。バブルの真っただ中、その波には関係なく監督らしくひと昔前の生活を描く名作だ。ラスト20分くらいは急に激しい描写になるが、そのことについて質問が出た。その時、客席にいた監督の娘さんが舞台に上がって答えてくれた。
この作品は当初ゾンビ映画のような怪奇映画的作品として作ってほしいという依頼があった(この作品、大林監督にしては珍しく松竹からの依頼による仕事)。大林監督チームはその通りには作りたくなく、極力そうした要素を削ることに努め、ぎりぎり最後にあのラストに至ったとのこと。これには結構ビックリ。

 

 

 

 

Ⅴ 今月のつぶやき


●訪問診療をする小堀鷗一郎医師(森鴎外の孫、81歳)を追うドキュメンタリー「人生をしまう時間(とき)」は、昨年NHK-BSで放映されたものにエピソード(主に堀越洋一医師の部分)を加え映画にしたもの。良い医師がいれば自宅で死を迎えるのもいいなと思う。

 

●作家ヒキタクニオの原作からの映画化「ヒキタさん!ご懐妊ですよ」はヒキタ夫婦の妊活を描いたもの。知らない分野でしたが、いや~大変ですね。頑張ってください。

 

●東京国際映画祭で上映された「戦争のさなかで」は、第二次大戦前のスペイン内戦に至る時期を描く。舞台はサラマンカ、スペイン最古のサラマンカ大学の終身総長であったミゲル・デ・ウナムーノとフランコ一派(映画のラスト近くでフランコ総統になる)の抗争を描く。自由にものを言えなくなっていく状況が静かに描かれる。A・アメナーバル監督作品。

 

●1995年にデビューしたアンドレア・ボチェッリは盲目のテノール歌手。「アンドレア・ボチェッリ奇跡のテノール」にはデビューまでの半生が描かれる。最近歌手の伝記やドキュメンタリー作品が多いが、この人まで映画化されるとは!

●細野晴臣50周年記念ドキュメンタリー「NO SMOKING」は、彼のファンにはたまらない作品だろう。彼らしくのんびり、ゆったり描かれる彼の半生、音楽家としての足取り。

 

●スティーヴ・クーガンとロブ・ブライドンという日本では有名ではない二人の俳優が巡るシリーズの3作目「スペインが呼んでいる」は、例によって彼らのスター物まねや内ネタが満載だが、どこまで楽しめるかはちょっと疑問。宿泊するのは総てパラドール、食事も含めて6か所のパラドール(オンダビリア、ソス・デル・イレ・カトリコ、シグエンサ、クエンカ、アルマグロ、グラナダ、マラガ・ヒブラルファロ)が出てくる。次はギリシャの製作が進んでいるという。

 

 

 

 



今月のトピックス:文科省補助金


Ⅰ 文科省補助金


文科省補助金といえば、「表現の不自由展・その後」を含む「あいちトリエンナーレ」の補助金打ち切りが話題になった。既に展覧会は始まっており、開催に反対する人たちが大きな声をあげたため安全面から展覧会の中止と共に、補助金も突然打ち切りが決定された。元々現政権が快く思っていなかったのか、大きな声に押されたのか分からないが、補助金支給が決定されていたものが簡単に裏返ってしまったのだ。
正確に言えば文部科学省の下の文化庁が所管する独立行政法人「日本芸術文化振興会」が、文化芸術活動に対する援助を目的として芸術文化振興基金を創設、政府出資541億円、民間寄付146億円の合計687億円の原資を基に、その運用益で助成しているものだ。
映画を見ていると最後に「文化芸術振興費補助金」と表示されるものが少なくない。この補助金が内定されていた「宮本から君へ」への補助交付が取り消されたことを知ったのは、11月3日朝日新聞朝刊文化面での記事によってだった。理由は麻薬取締法違反で逮捕されたピエール滝が出演しているからというもの。封切りされたのは9月27日だったので、公開されてから随分経っていた。11月4日には東京国際映画祭での「i 新聞記者ドキュメント」上映後のトークショーでもこの補助金取り消しが話に出た。司会者だったかと思うが、「宮本から君へ」の製作者(河村光庸)が「新聞記者」や「i 新聞記者ドキュメント」と同じであることも要因の一つではないかと話された。それを聞いて、「新聞記者」のヒットや「i 新聞記者ドキュメント」の公開(11月15日)に当てて、取り消しになったのかと思ったものである。
今回この件について調べてみると、実際には7月には取り消しが口頭、更には書面で製作会社に伝えられていたらしい。HUFFPOSTによると、この取り消しの後9月27日付で日本芸術文化振興会は助成金の交付要領を改正し、第8条の「交付の決定及び通知並びに不正等による交付内定の取消し」の項目に、「公益性の観点から助成金の交付内定が不適当と認められる場合」という条件が追加されたということだ。文化庁が「あいちトリエンナーレ」への補助金全額不交付を発表したのは9月26日であった。
2つの補助金取り消しが共に要領改訂の前であり、条件としてはない形での断行である。
文化に対する姿勢が曲がり始めている印として記憶しておく必要があるのではないか?

 

 

 

 

Ⅱ 圧力・上映中止


「宮本から君へ」について知った11月3日の新聞記事は、その前半で川崎しんゆり映画祭での「主戦場」の上映予定が上映中止に変更された事件について触れている。以前にも紹介したが「主戦場」は慰安婦問題について多くの人にインタビューしたドキュメンタリーだが、インタビューされた人たちから訴えられていた。映画祭は「訴訟になっている作品」ということで中止決定をしたという。しんゆり映画祭のサイトを見ると、“共催者の一員である川崎市からの懸念を受けました。”とあり、川崎市からの要請によるものだったようだ。この決定に対し、同映画祭で2作品を上映予定していた若松プロが抗議のため上映を中止すると表明、抗議声明を発表した。抗議の声は映画関係者や識者からもあげられ、映画祭側は「主戦場」の上映を改めて決定したのだ。
今までにも一般の映画館での上映に対し作品内容に反対する人たちの抗議によって、上映中止に追い込まれることがあった。その都度マスコミで取り上げられはするが、すぐに忘れられてしまい、同じことを繰り返すことに。ただし、今回の映画祭での上映中止は、たとえ復活したとはいえ非常に大きな問題だ。映画祭当事者の決断だったのだから。

 

 

 

 

Ⅲ 和田誠

 

“ありがとう、和田誠さん”とあるキネマ旬報12月特別号の表紙を開くことができない。こっちを見ている和田さんの眼がなんともやさしいのだが、開いてしまえば彼の作品に今後会えないのがはっきりしてしまいそうなのだ。
彼の作品に出会ったのは、多分「話の特集」でだったろう。その前にも作品は見ていたのだろうが、色々な形での作品に出会ったのはレイアウトを含め美術的な面をすべて担当し、矢崎泰久氏とともに、自分たちの見たい雑誌を作るという観点で発行された「話の特集」であったことは間違いない。今もって雑誌「話の特集」を捨てられないのは、媒体としての雑誌の面白さを教えてくれたからだ。
キネマ旬報誌上での「シネ・ブラボー」のイラストレーション、「お楽しみはこれからだ」では文面も含め映画の楽しさを教えてくれた。「麻雀放浪記」をはじめとしての映画監督作品、ミュージカルに対する博識と関わり、長く続いた週刊文春の表紙などその才能を多方面に見せてくれた。
本当に長い間楽しませていただきありがとうございました。これからは多くの書籍、イラストレーション集などでお会いします。

 

 

 

 

Ⅳ 特別編集版、エクステンデッド・カット


作品が封切りロードショーされている時に、同じ作品の別バージョンが公開されるという事態が2件発生した。
特別編集版は是枝監督ドヌーヴ主演の「真実」で公開された。「真実」は10月11日に封切り、10分長い「真実 特別編集版」は11月01日に公開された。2つの作品が同時期に公開されていた。映画の公式サイトには“特別編集版”公開決定!としてニュース的に発表されている。是枝監督コメントが載っている。『「私家版」として友人に配るか「愛蔵版」としてDVD特典にするか悩んだ末に、周囲の方々の「せっかくなので」「こっちも好き」というお言葉に背中を押され、劇場公開させて頂くことになりました。イーサン・ホーク好きにはたまらない・・・はずです。どうぞよろしくお願いします。』
エクステッド・カットはタランティーノ監督の「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」で公開された。こちらも10分ほど長いとされている。
今までにもディレクターズカット版等の名称で再公開されることはあった。しかし、オリジナルのロードショウがまだ続いている間に違うバージョンが上映されるのは初めてではないか?これではどちらを見て評価するのかという問題も出てくる。2回も続けてみないといけないだろうか?いずれにしても観客の方を向いていない公開だ。
別版の同時期公開は絶対やめてほしい。監督としてどちらにするかを決めて公開してほしい。尊敬している是枝監督ですが、サイトのコメントが本当に監督の言葉だとしたら、“個人映画ではないのだから”とお返ししたい。

 

 

 

 

Ⅴ 黙示録


「黙示録―映画プロデューサー・奥山和由の天国と地獄」という本がめっぽう面白い。時代劇・映画史研究家の春日太一が奥山にロングインタビューを行い、聞き手・構成という役割で作られた本だ。
1982年からプロデューサーとしての作品を送り出した奥山の、正に波乱万丈の映画人生がヴィヴィッドに書かれている。2000年以前は日本映画をあまり見ていなかった私が読んでも面白かったのだが、当時の日本映画を見ていた人が読んだらものすごく楽しめるだろう。
様々なエピソードの果てに、現在奥山が関わっているのは吉本興業だという。最近吉本の映画が増えているなとは思っていたが、これにも驚いた。

 

 

 

 

 

Ⅵ 続・全面広告


今月も続いていた全面広告。先月号以降、朝日新聞に載った映画の全面広告は次の通り。
10/29 朝刊 「マチネの終わりに」 全2面(出版広告と共同で) 11/01封切り
10/30 朝刊 「閉鎖病棟」 全1面 11/01封切り
11/01 朝刊 「最初の晩餐」 全1面 11/01封切り
11/03 朝刊 「カツベン」 全1面 12/13封切り
11/03 朝刊 「永遠の門 ゴッホの見た未来」 全1面 11/08封切り
11/05 朝刊 「ひとよ」 全1面 11/08封切り
11/08 朝刊 「i 新聞記者ドキュメント」 全1面 11/15封切り

 

 

 

 

 

今月はここまで。
次号はいつも通りクリスマスの12月25日にお送りします。

 


                         - 神谷二三夫 -


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