今から30年位前、シネクラブ活動というのがありました。自分たちの見たい映画をフィルムを借りて映写しようという運動です。50年代後半から60年代にかけて産業としての映画が下り坂を転げ落ちていく中で、日本で公開される映画もどんどん少なくなっていきました。特にヨーロッパの芸術系映画が陽の目を見ないことが多くなりました。もちろん、ビデオもDVDもない時代。配給会社が輸入してくれないのなら自分たちで輸入して公開しようと、立ち上がった人達がいました。
川喜多和子さん(配給会社東和の川喜多夫妻の娘、伊丹一三の最初の妻)の六本木シネクラブが有名だったとか。残念ながら、私はその活動は少しも知らずに来てしまいました。
今回のテーマは、これとは関係のないシネマクラブ、映画館が主催しているもの。昨年、いかに安く映画を見るか探っていたころ、2つのクラブに入会しました。10月に入会しましたので、ちょうど1年、収支決算をしてみました。
1.東京テアトル クラブC
年会費3150円
特典①入場料がいつでも1000円 ②1回入場ごとにポイントが1点、10点で1回無料
銀座テアトル、新宿テアトル、テアトルタイムズスクエア、渋谷セゾンなど都内で8館所有の東京テアトルのクラブ、結構多彩な作品が見られる。
2004.10-2005.9に見た作品:
みんな誰かの愛しい人、ワンモアタイム、舞台より素敵な生活、恋に落ちる確率、ベルヴィル・ランデブー、故郷の香り、トニー滝谷、運命を分けたザイル、スーパーサイズミー、バッド・エデュケーション、イン・ザ・プール、
リチャード・ニクソン暗殺を企てた男、ヴェラ・ドレイク、コーチ・カーター、リンダ・リンダ・リンダ、ルパン
ということで16本、前売り券(ここは殆ど1500円券)と1000円の差額は500円、500X16=8000 -3150=4850
4850円は得した勘定で黒字。(15ポイントはたまっているので、1回は無料で見られますが、まだ貯めたまま)
2.シャンテシネクラブ
年会費4800円
特典①入場料は1200円、木曜日は1000円 ②2枚の劇場招待券、2枚のプログラム交換券
東宝の単館系ロードショー館、3つのスクリーンを持ち作品のバラエティも豊か。
2004.10-2005.9に見た作品:
僕はラジオ、笑の大学、やさしい嘘、ジョヴァンニ、五線譜のラブレター、ボン・ヴォヤージュ、巴里の恋愛協奏曲、陽のあたる場所から、ライフ・イズ・コメディ、レオポルド・ブルームへの手紙、微笑に出会う街角、海を飛ぶ夢、エレニの旅、アルフィ、ダンシング・ハバナ、モディリアーニ、ふたりの5つのわかれ路、マザー・テレサ、タッチ
ということで20本、前売り券(ここも殆ど1500円)と1200円の差額は300円、2本は招待券利用、1500x2+300x18=8400-4800=3600
プログラム2冊の代金(1000~1400円)を加えて4600円の黒字。
ということで、2館とも充分元は取れました。どなたにもお勧めできるわけではありませんが、上記のような作品をそれぞれ6本(で元は取れる)くらい見たい方にはお勧め、当日普通料金1800円と比べればもっと少ない本数でもお徳です。前回お話したシネコンでもポイント制の会員クラブを実施しているところは多い。
2つのクラブの宣伝みたいになってしまいましたが、悪しからず。
9/26-10/25の間に見た作品は、映画美学校で見た1本を入れて17本、以下の通りです。
タッチ
セブンソード
NANA
頭文字D
がんばれベアーズ・ニューシーズン
蝉しぐれ
四月の雪
シン・シティ
ステルス
亀も空を飛ぶ
真夜中のピアニスト
アワー・ミュージック
一番美しく
空中庭園
愛がつづる詩
コープスブライド
ドミノ
今月は飛びぬけた作品がありませんでした・・・
① コープスブライド
「チャーリー・・・」に続くティム・バートンのファンタジー、今回はアニメーション。「ナイトメア・ビフォー・クリスマス」よりずっと見安い、心温まる作品です。ほっぺに穴の開いたコープスブライドの情感あふれる表情、”いい女”です。
② 蝉しぐれ
藤沢周平の原作映画化は、「たそがれ清兵衛」「隠し剣 鬼の爪」に続き3作目。前2作は山田洋次監督ですが、今回は黒土三男監督、会社も松竹→東宝です。職業人としての武士と、人間として生きる軋轢の中で義を守る。貧乏だからと言うわけではなく、派手さのない静かな描写。まるで、シェルブールの雨傘のラストシーンと同じような時の無常観。
③ 亀も空を飛ぶ
今のイラクで生きる少年少女たちを描くイラク映画。地雷原から地雷を掘り出して売ることで金を稼ぐ子供たち。
自分たちだけの王国を築いてたくましく生きる子供たち、両腕のない兄と、目の見えない自分の子供を育てる少女の現実に言葉を失う。
今月の特徴は、漫画・アメコミを原作にした実写映画が4本もあったこと。
それぞれのできも良く、平均点以上ですが、奇妙で面白いのは「頭文字(イニシャル)D」です。れっきとした香港映画ですが、原作は日本の漫画、舞台は群馬。出てくる俳優は鈴木杏を除き香港・台湾スターばかり、主人公は豆腐屋の息子なのに言葉は中国語(吹き替えの日本語版もありましたが)です。殆ど際物のように聞こえますが、真摯に日本ロケで撮影、日本の味も出してます。
下駄履き親父を演じるアンソニー・ウォン(インファナルアフェア)が抜群の存在感。いやー、漫画の力は凄いと再認識しました。
アメコミの世界をそのまま画面に生き返らせた「シン・シティ」も特筆モノです。「ドミノ」にも出ているミッキー・ロークが完全復活しています。