2008年 2月号back

新しい年になって早1ヶ月が経とうとしています。
アメリカ経済の不安定さを除いては、大きな出来事も無く静かな1月、
ここいらで、寒さに負けず、充実の新春第2弾の作品群で、
元気に、明るく、温かく行きましょう。

 

 

今月の映画

 12/26~Ⅰ/25、年を超えて出会えた映画は21本、寒さに負けず頑張ってます。

<日本映画>

かぞくのひけつ 
茶々天涯の貴妃 
北辰斜めにさすところ
マリと子犬の物語 
ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ

 

<外国映画>

やわらかい手 
サラエボの花 
ベティ・ページ
迷子の警察音楽隊 
暗殺・リトビネンコ事件 
AVP2
カンナさん大成功です 
再会の街で 
俺たちフィギュアスケーター
ゼロ時間の謎 
チャプター27 
ペルセポリス 
ジェシー・ジェームズの暗殺 
アース 
スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師
Mr.ビーン カンヌで大迷惑?!

 

 

 

Ⅰ 今月のベストスリー

 

ジェシー・ジェームズの暗殺
 社会からのはみ出し者ジェシー・ジェームズ、その強盗団の顛末を、彼とその暗殺者の静かな心理劇としてサスペンスに満ちて描いた佳作。時代との距離感の取り方が、2組の兄弟(ジェシーとフランク、ロバートとチャーリー)の間で、微妙に変化しているのも興味深い。


かぞくのひけつ
 日本映画で久しぶりにすべらない喜劇。関西のエネルギーを実にリアルに画面に定着、特に大阪・十三という猥雑な街の雰囲気を余すところ無く描く。個人的にはかつて大阪にいた頃、第七芸術劇場にはお世話になりました。


迷子の警察音楽隊
 イスラエルに来たエジプト・アレキサンドリアの警察音楽隊という設定が見事。しかも、団員各自の個性がくっきり、イスラエルの田舎町住民の個性もくっきり。団長の性格がキーですね。

 

 

 次の作品も面白いですよーッ!

 

やわらかい手:本当にあんなのが東京にあるんでしょうかね?


俺たちフィギュアスケーター:男性スケーター同士のペア・・・?えへ!


ペルセポリス:監督の自伝的アニメ、イスラム世界で元気に生きる女性に力をもらいます。


アース:TVでも時に放映されていたBBCドキュメンタリーの総集編、きれいです。

 

 

 

Ⅱ 今月の”絶対に薦めたかったのに・・・”の作品

 

☆スウィーニー・トッド~フリート街の悪魔の理髪師~☆
 宣伝ではミュージカルのミの字も出ていなかったけれど、大御所ソンドハイムの手になる舞台の大ヒットミュージカルの映画化。映画は監督ティム・バートン、主演ジョニー・デップのゴールデンコンビ。
ティム・バートンは昔からこの作品を映画化したかったと聞きます。ミュージカルにしては物凄く暗い内容のお話、それを敢えてミュージカルにするのがソンドハイム。虐げられた主人公の恐怖の復讐劇を飾るのは、繊細で華麗な音楽ながら、親しみやすいくっきりしたメロディーラインではない歌の数々。
ダンスも無いオペラ的な舞台ミュージカル。

 舞台は実際の人間が目の前で演じているにもかかわらず、様々な制約から見る人のイマジネーションに働きかけて語られるもの。それに較べ、映画はよりリアルに描くことができる、というか、リアルにならざるを得ない。
 う~む、この差が完璧に発揮されて、ミュージカル好きの私にして・・・かなり引きました。こんなはずではなかった。
 いずれにせよ、見に行かれる方は気をしっかり持ってお出かけください。

 

 

 

Ⅲ 今月の懐かしい人

 

ジェニー・アガター:「やわらかい手」で、マリアンヌ・フェイスフルの
友達の一人、有閑マダムを演じていたジェニー・アガターは、30年以上前、「美しき冒険旅行」でオーストラリアの荒野を元気に歩いていた人。M・フェイスフルと違ってすぐ彼女と分かる姿形でした。いかにもイギリス人。

 

ダニエル・ダリュー:アガサ・クリスティー原作の「ゼロ時間の謎」で、
殺されてしまう金持ちの叔母さんを演じたダニエル・ダリューは、私がティーンエイジャーの頃(はは、40年位前ですね)、「ロシュフォールの恋人たち」で久しぶりに出演といわれていた今年90歳の大女優。今月は、もう1本、元気が出るアニメ「ペルセポリス」の声優としても出演です。

 

ドナルド・サザーランド:「再会の街で」で正しい裁判官を演じていたのは「M★A★S★H」とか「カサノバ」とか、主演作一杯のドナルド・サザーランド。いまやキーファー・サザーランドの父親として有名でしょうか?鼻にかかったもぐもぐの話し方が懐かしい。昔ロンドンの劇場ですれ違ったことがあります。



今月のトピックス 

 

Ⅰアカデミー賞の授賞式は開催されるのか?

 

 1/8の夕刊紙の呼びチラシは”アカデミー賞中止”と謳っていました。今年のアカデミー賞は2/24に、LAのコダックシアターで開かれる予定です。それが、何故中止に?

 実は1/13にゴールデングローブ賞の授賞式が予定されていました。それが、中止に追い込まれたのがこの日、1/8だったのです。ハリウッドにいる外国人記者が選ぶこの賞は、アカデミー賞より1.5ヶ月ほど早く、ビバリー・ヒルトンホテルのバンケットルームで行われます。アカデミー賞の前哨戦としていつも話題になり、日本でもNHK BSが録画ではありますが授賞式の模様を放映しています。

 今年の授賞式が中止に追い込まれ、発表を読み上げるだけになってしまったのは、アメリカの脚本家組合のストライキが関係しています。脚本家組合のストは昨年の11/5から条件の改善を求めて始まりました。主な要求はDVDなどで得られる二次使用による利益に対するする収入配分です。
 今や、映画業界自体もその収入の多くの部分を負っているDVDからの収益の
一部をよこせという要求です。今後増えていくであろうケーブルTVやネット配信の収益も関係しますから、脚本家組合、映画会社双方真剣でストは今も続いています。

 このストの影響で、多くの予定作品がクランクインできない状況ですが、
今回、ゴールデングローブ賞が中止に追い込まれたのは、授賞式の脚本を書く人もストのため書くことが出来なかったというものです。
 さらに、会場の前に組合員がピケを張るという噂が立ち、又、スターたちに授賞式に出席しないよう呼びかけ、賛同したスターたちが殆ど出席しないことになるなど、いくつかの要素が重なりました。

 ゴールデングローブ賞授賞式中止の報を受け、ではアカデミー賞も中止ではということで、1/8の夕刊となりました。
 その後、アカデミー賞を主催する映画芸術アカデミーの会長が「絶対に予定通り開催する」と発言したり、同じく交渉をしていた監督組合が最近妥結したこともあり、アカデミー賞は行われるだろうという方向に傾いてきていますが、まだ最終決着はしていません。
 2/10に行われるグラミー賞もどうなるのかと言われているのが現状です。

長々と書きましたが、今年のアカデミー賞は2/24ですから次号の見せよう会通信は結果が出た後となります。
 ノミネーションが発表されたのはアメリカ時間1/22、やっとノミネート作品リストが分かりましたので、私の予想を発表してしまいましょう。選んだ作品は、1本も見ていません。


予告編は「ノー・カントリー」「潜水服は蝶の夢を見る」「アイム・ノット・ゼア」と見ましたが。

 

作品賞:ノー・カントリー
監督賞:ジュリアン・シュナーベル(潜水服は蝶の夢を見る)
主演男優賞:ダニエル・デイ・ルイス(ゼア・ウィル・ビー・ブラッド)
主演女優賞:ジュリー・クリスティ(アウェイ・フロム・ハー 君を想う)
助演男優賞:ハビエル・バルデム(ノー・カントリー)
助演女優賞:ケイト・ブランシェット(アイム・ノット・ゼア)

 

上記6部門のノミネート作品のうち、今までに日本で公開されたのは「スウィーニー・トッド」「エディット・ピアフ 愛の賛歌」「ジェシー・ジェーム
ズの暗殺」の3本のみ。2~3月にかけて次のように多くのノミネート作品が公開されますので、期待しましょう。
○ノー・カントリー  

○つぐない  

○フィクサー  

○潜水服は蝶の夢を見る
○エリザベス・ゴールデンエイジ  

○アメリカン・ギャングスター  

○アイム・ノット・ゼア 

 

日本人関連の話題では2つありました。
1.浅野忠信が主演した「Mongol」(ドイツ・カザフスタン・ロシア・モンゴル製作)が、外国語映画賞にノミネートされました。
2.メイクアップ賞に「マッド・ファット・ワイフ」でエディ・マーフィーの特殊メイクをした、辻一弘さんが師匠のリック・ベイカーと共にノミネートされました。彼は2年連続のノミネートです。

 

 

 

Ⅱ アカデミー賞!が一番早かったのは?

 

 ”アカデミー賞確実!”の宣伝文句が使えるのはノミネーションが発表されるまで。ノミネートさえされない作品が多いのだから。この効果がどれほどあるのかは不明ですが、何かに頼りたくなるのが宣伝マンの常。今年もいくつかの作品でこの言葉が見られました。初めにこの言葉を見たのは昨年8月の後半。
2007年の授賞式が終わってまだ半年、2008年の授賞式まで後半年の頃、まだ熱い夏の時期です。早いースッ!
 例年、映画宣伝でアカデミー賞確実が花盛りなのは10月頃からのはず。

作品はなんと「エディット・ピアフ 愛の賛歌」。驚きました。フランス映画ですよ、シャンソンですよ、フランス語ですよ。これはかなり勇気ある宣伝です。あまりに早くて結果と結びつかないから却って良いという考え方もありますが。この映画が結構アカデミー賞路線の配給会社によって扱われたこともありますが、それにしてもね。「エディット・ピアフ」は主演女優賞(マリオン・コティヤール)、衣装デザイン賞、メークアップ賞でノミネートされましたから、まあよかったんですが。

 

 

 

 

Ⅲ 最近の日劇プレックス

 

 日劇といえば隆盛を誇る東宝映画館の中でも一番の看板劇場です。特にマリオンの11階にある旧日本劇場は全日本の代表みたいな劇場で、常に大作・話題作を上映してきました。9階にある旧日劇東宝、日劇プラザと3館で日PLEX1、2、3を形成しています。

 その日劇PLEXで、昨年の12月からレイトショーが始まりました。最終回が21:00前後から始まり、終映は22:30~23:30頃となります。これまで最終回は19:00前後の始まりでしたから、有楽町の夜の映画が遅くなりました。

上映しているのは、日劇PLEXで上映しているものやスカラ座で上映しているヒット作品。料金は1500円ですが、マリオンやイトシアの駐車券や特定カードがあると1200円になります。
 都心に車で来る人を狙っているんでしょうか?昨年5月頃だったか、19:00くらいからの最終回に1~2年前のミュージカル映画を上映していましたが、
今回のレイトショーといい、トライアルが続いています。看板劇場でも常に新しいことを追求しているんですねえ。


                         - 神谷二三夫 -


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