アカデミー賞授賞式も無事に開催、
これから受賞作も続々ロードショー公開されます。
春が待ち遠しいこのごろ、
一足お先に華々しいオスカー受賞作に出会いましょう。
1/26~2/25に巡りあえた映画は20本、やはり今年の新春第2弾は充実です。
母べえ
陰日向に咲く
KIDS
チーム・バチスタの栄光
人のセックスを笑うな
歓喜の歌
ぜんぶフィデルのせい
シルク
テラビシアにかける橋
ジプシー・キャラバン
ヒトラーの贋札、
アメリカン・ギャングスター
ウォーターホース
ラスト・コーション
レンブラントの夜警
マゴリアムおじさんの不思議なおもちゃ屋
エリザベス・ゴールデンエイジ
かつてノルマンディーで
いつか眠りにつく前に、
潜水服は蝶の夢を見る
①ラスト・コーション
学生演劇から抗日運動へ、時代に流されていくヒロインと、時代の先鋭化と共に増していく道ならぬ結びつき。抑制された描写の中で、激しく終末に向かっていくのは時代にたゆたう二人の運命だったのか。
②潜水服は蝶の夢を見る
主人公の視線を通して描かれる世界、瞬きという反応できる唯一の動きの中で、蝶のように羽ばたく主人公の心。一人称画面(つまり主人公の目から見た画面)が70%くらいだったような気もするがそこまで踏み込んだ監督に拍手。
③ヒトラーの贋札
ナチの大虐殺の裏で行われていた、ユダヤ人を使っての贋札作り。
品行方正ではなく犯罪者でもあったユダヤ人の主人公、善悪が一通りではなくリアルに描かれたドイツ映画の秀作。それにしても、ナチよ、自分たちでやれよといいたくなるが。
*今年度アカデミー賞外国語映画賞受賞です。
次点①チーム・バチスタの栄光
久しぶりに知的エンタテイメントの日本映画、テンポ良く、竹内、阿部のコメディ演技も滑ってないし脇役も個性あり。
次点②アメリカン・ギャングスター
ギャングと刑事、それぞれの道で地道に生きてきた二人が出会うのはラスト近く。主人公同士がなかなか出会わない上手い構成、アメリカ裏面史がたっぷり。
次の作品もいいですよ~。
*ぜんぶフィデルのせい:子供の目で見た70年初頭の左翼に夢を見ていた大人たちの世界。
*ジプシー・キャラバン:インドからスペインまでのジプシー(ロマ)の素晴らしき音楽の世界。
*母べえ:自由がなくなりつつあった1940年前後の日本で生きていた家族を取り巻く世界。
*人のセックスを笑うな:愛が無くても年の差なんて…こんなこともありそうな芸術学部世界。
*エリザベス・ゴールデンエイジ:アカデミー衣装デザイン賞受賞の華麗で骨太なエリザベス世界。
*レンブラントの夜警
ピーター・グリーナウェイといえば、20年ほど前ころに、美術的な、オペラ的な作風で一世を風靡した監督。「英国式庭園殺人事件」とか「コックと泥棒、その妻と愛人」とか、艶のある画面で見る人を魅了してきた。美術史家でもある彼が作ったレンブラントについての映画は、レンブラントの実像を知らずにストーリーを追っていてはつらいものがある。グリーナウェイらしく唯我独尊に作っています。作品としての、映像表現としての映画として、あるがままの姿を受け入れ、一瞬一瞬を楽しむことが要求される。なんだか、久しぶりにこんな映画を見た。
○アーマンド・アサンテ
25年ほど前、「マイク・ハマー俺が掟だ」で、ハードボイルド探偵をちょっぴり(でもないか)ワルに演じていたイタリア風味の男優。たくさんの映画に出ているので、懐かしいというほどのことはないのだけど、「アメリカン・ギャングスター」ではマフィアのワルを演じてて、いよっ、久しぶり!と声をかけたくなりました。
脚本家組合のストライキが終わったのが2/12、2/24の授賞式に滑り込みセーフ。日本時間の本日、めでたく授賞式が開催されました。授賞式の模様はまだ見ていませんが、いずれにしてもよかった。
結果は次の通りです。○×は神谷の予想に対してです。
作品賞:「ノー・カントリー」 (○)
監督賞:ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン「ノーカントリー」
(×)
主演男優賞:ダニエル・デイ・ルイス「ゼア・ウイル・ビ・ブラッド」
(○)
主演女優賞:マリオン・コティヤール「エディット・ピアフ~愛の賛歌」
(×)
助演男優賞:ハビエム・バルデム「ノー・カントリー」 (○)
助演女優賞:ティルダ・スウィントン「フィクサー」 (×)
今年は初めから本命がないといわれていましたが、受賞した作品も非常に割れました。
最多部門受賞作は「ノー・カントリー」の4部門、続いて3部門の「ボーン・アルティメイタム」、2部門の「ゼア・ウィル・ビ・ブラッド」、「エディット・ピアフ~愛の賛歌~」となっています。
嬉しかったのは「ONCEダブリンの街角で」が歌曲賞を受賞したこと。良い歌です。日本人は、「モンゴル」の浅野忠信、メイクアップ賞の辻一弘、共に残念でした。
う~む、驚きましたね。
「東京タワー オカンと僕と、時々、オトン」が、主要5部門受賞ですよ。去年の授賞式中継よりはよかったんでしょうか、というか、普通の式になってました。見ていると、日本のスターたちの中にも面白い人が増えてきたなと感じました。
少しずつ変わってきているんですね。
樹木希林の挨拶で、”これからは名実共に素晴らしい賞になるように”と言ったのには笑いました。
人が多く集まる東京の映画館、最近、何故この映画がこんなに混んでいるのということが少なくありません。今月見た映画でも、平日(水曜日)に行ったのに満席で入れなかった映画が2本ありました。
「レンブラントの夜警」「潜水服は蝶の夢を見る」です。平日の昼間ですよ。確かに水曜日はレディースディだし、偶然にも2本の上映館とも水曜日は男性も含め1000円で見られる映画館でしたが。「潜水服は蝶の夢を見る」に入れず代わりに行った「かつて、ノルマンディーで」は、最前列3席だけを残しほぼ満席。
美術についての映画、アカデミー賞でも話題の映画という前2作品は分らなくはないが、一般的にはそれほど話題になってはいないドキュメンタリー映画「かつて、ノルマンディーで」の混み方は何だったのでしょうか?東京の映画館に行く人たちの情報収集の仕方はどうなっているのか?人々の趣味が細分化し多くの人に等しく訴えかけられる作品が少なくなり、全日本人的思い出の作品なんてものがますます難しくなっている現在、これら3作品も必ずしも誰にでも受け入れられる作品ではないでしょう。
それがここまで混み合うのは何故か。ほんの少し、どこかの点に訴えかけるものがあり、それが上手くそうしたものを求めている人にヒットすれば、少なくとも東京ではある程度人を集めることが出来る。映画だけではありませんが、一極集中がますます進んでいる日本の文化状況の中で、異様に豊富になりつつある東京の映画状況。
理解できない映画館の混み方に違和感を感じつつ、様々な映画に出会える幸福をありがたく思いつつ、これでいいのかという気持ちもあるのです。
再映画化されているんですね、予告編を見ました。黒澤明の作品です。予告編を見る限り、全く違う作品になりそうで、椿の二の舞は踏まなさそうでちょっぴり安心。