2008年 6月号back

いつのまにか5月もあと少し、
雨のシーズンに入る前にたっぷり映画を見ておきましょう。
来週の日曜日は6/1、映画1000円の日です。


 

今月の映画

 4/26~5/25 GWを挟んだ30日間に出会った映画は24本、やっと普通に戻りました。

<日本映画>

パークアンドラブホテル 
スシ王子ニューヨークへ行く 
靖国YASUKUNI 
相棒 
あの空をおぼえている 
隠し砦の三悪人 山のあなた 
徳市の恋 
アフタースクール

 

<外国映画>

紀元前1万年 
パラノイドパーク 
ゼアウィルビーブラッド
アイムノットゼア
愛おしき隣人 
NEXTネクスト 
さよなら。いつかわかること 
スパイダーウィックの謎 
ミスト 
ラフマニノフある愛の調べ 
光州5・18 
それぞれのシネマ 
ランジェ公爵夫人 
チャーリーウィルソンズウォー 
最高の人生の見つけ方 
幻影師アイゼンハイム

 

 

 

Ⅰ 今月のベストスリー

 

ゼアウィルビーブラッド
 ブラッド・ピットの出世作「リバーランズスルーイット」と同じくらいの度合いでカタカナ(難解)題名が付けられている。それはさておき、厳しい映画である。資本主義のアメリカ的発展を見つめた、甘味の全くない映画である。

 

靖国YASUKUNI
 靖国神社についてはいろいろな本も読んだことがあるが、知らないことがいろいろあると自覚させてくれる映画だ。その意味で必見のドキュメンタリー。
靖国自体これほど問題のある存在なのに、実際の在り方が初めて画面に展開される。今月のトピックスも参照。

 

幻影師アイゼンハイム
19世紀末のウィーンを舞台に繰り広げられるミステリアスな世界。鮮やかなラストのドンデンまで息をつかせない展開。

 

次点①:愛おしき隣人
 スウェーデンのとある町で見かける人々の姿、奇妙な癖のある人々が正面を向きながら切々と、淡々と訴えかける。なんとも奇妙で暖かい人々の話が語られます。

 

次点②:最高の人生の見つけ方
 対照的な生き方をしてきた男二人、死の時期を知り何をすべきかを模索する。”余命6か月、一生分笑う“という惹句がいいです。

 

別格:それぞれのシネマ → 今月のトピックス参照

 

次の作品群も楽しめます。

 

パークアンドラブホテル:都会の中の解放空間、そこに集まってくる人々

 

相棒:なかなかのサスペンス。クライマックスの東京ビッグシティマラソンは東京マラソンが通常通らない晴海大橋を臨海大橋と名付けて撮影しておりました。晴海大橋は北野武の「監督バンザイ」でも撮影に使われていました。(地元なものでつい)


隠し砦の3悪人:黒澤作品のスターウォーズ的リメイクと言いましょうか。


アイム・ノット・ゼア:ボブ・ディランのファンであれば徹底的に楽しめます。


チャーリーウィルソンズウォー:アメリカはとことん変な国だが、会話の切れの良さは抜群。


アフタースクール:「運命じゃない人」の内田監督の第2作、面白いです。

 

 


Ⅱ 今月の懐かしい人

 

ピーター・フォーク
 2分間先を見ることのできる男ニコラス・ケイジの「NEXTネクスト」にはコロンボのピーター・フォークが久々に。相変わらずのとぼけぶり。

 

ニック・ノルティ
 なかなかよくできたファンタジー映画「スパイダーウィックの謎」で怪物の親分を演じていたニック・ノルティ、30年以上前「ザ・ディープ」でお目見え以来、癖のあるタフガイを演じてきた。

 

ジャンヌ・モロー
 「それぞれのシネマ」の1編でマルチェロ・マストロヤンニの夢を追い求める女優を演じたジャンヌ・モローは今年80歳。



 



今月のトピックス:靖国/それぞれのシネマ  

 

Ⅰ「靖国YASUKUNI」が公開された日


 GW後半の連休初日の5/3、「靖国」が渋谷シネアミューズで公開された。
公開までの紆余曲折はいろいろなマスメディアで報道された通り。やっと、映画館で上映されることになったのだ。できれば初日の初回に行きたかったが、その時間には用事があり断念。それでも別の映画を見に渋谷に出かけた。
 シネアミューズの前は11:30に初めに通りかかった。予想していたとはいえ映画館のあるビルの前は警察の車が2台、なぜか黒塗りの高級車が数台止まり報道陣の車も、ビル入り口には警察官数名、配給会社、映画館のスタッフ数名それらを上回る報道陣が約10名という状況だった。初回がもうじき終わるということで報道陣が多かった。その後、16:00までに合計4回前を通ったのだが、報道陣はいなくなっていたが、警察、関係スタッフは同じ状況。

 

 映画「靖国」は翌日5/4の15:50の回で見た。前日窓口に行って、翌日のチケット発売開始は10:00と聞いていたので09:50頃行ったのだが、すでに発売開始済みで、1、2回目は完売していた。
 15:30頃に映画館に行くと、その日のすべての回が完売となっていた。中に入ると、1列目の全席に「関係者席」の張り紙が。見やすい席ではないのに何故の疑問はすぐ解けた。1列目の上に横にわたってロープが張られたのである。
上映途中にスクリーンに何か妨害されることがないようにとの配慮であると思われる。1列目の左端にはスタッフが一人座り、途中でトイレに行きたい人のためにロープを外している。そして右端には警備員が立って観客の方を向いて監視している。こうした形ででも上映することができたのにはほっとする。

 

 


Ⅱそれぞれのシネマ


 昨年カンヌ映画祭は60回目を迎えた。それを記念して映画祭事務局は世界の映画監督24名に映画製作を依頼、昨年の映画祭で上映した。映画館をテーマに一人3分の短編映画。日本からは北野武が参加した。
 これだけの監督の作品を横並びに見ると、映画の持つ肌合いがそれぞれ違い面白い。監督自身の持つ個性が3分間の中で発揮される。

 初めに監督の名前が羅列して流されるが、作品毎には基本的に最後に名前が流される。
 ロマン・ポランスキーだけがなぜか初めに流されるのだが、事務局からは統一された指示はなかったらしい。作品を見ていて監督名を言い当てられたのは11名。中には北野武とロマン・ポランスキーが入っているから、純粋に当たったのは9名。
 作品後のクレジットタイトルを見て、なるほどね、確かにこの監督の作品だと思ったのは7作品。印象に残ったのは、
ジャンヌ・モローがマルチェロ・マストロヤンニの夢を見るアンゲロプロスの「3分間」、まるで歌謡曲が流れるホウ・シャオシェンの「電姫戯院」、いつもの空気が流れるカウリスマキの「鋳造所」、いかにもシビアなケン・ローチの「ハッピー・エンド」、いかにも真面目そうなナンニ・モレッティの「映画ファンの日記」、なんともエロチックな描写のウォン・カーウァイの「君のために9千キロ旅してきた」あたり。

 いずれにしろ、映画ファンにはたまらなく楽しい映画群だった。ユナイテッドシネマ豊洲はなぜか、CMも予告編も一切流さず、突如本編という公開の仕方。上映は5/30日まで、興味のある方はご覧ください。



                         - 神谷二三夫 -


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