2009年 1月号back

いつの間にか今日はクリスマス、
あと1週間で新しい年です。
元旦は映画も1000円、映画館詣でをして
新年の映画計を立てましょう。



 

今月の映画

 11/26~12/25 師走の忙しい時期に出会った映画は21本、極端な外高日低、つまり外国映画過多になりました。



<日本映画>

俺たちに明日はないッス 
私は貝になりたい 
青い鳥
252生存者あり 
K-20 怪人20面相・伝

 

<外国映画>

1408号室 
デスレース 
 未来を写した子どもたち
メダリオン(ア) 
インファナルアフェア(ア) 
ウォーリー
マジックキッチン(ア)
イザベラ(ア) 
アラトリステ
ドラゴン・プロジェクト(ア) 
エグザイル/絆 
チェチェンへ アレクサンドラの旅 
ワールド・オブ・ライズ
地球が静止する日 
ブロークン・イングリッシュ 
永遠のこどもたち
*(ア)作品については今月のトピックス参照

 

 

 

Ⅰ 今月のベストスリー

 

① 青い鳥
 重松清の小説は多く映画化されている。今年だけでも「君の友だち」「その日のまえに」が公開された。変に深刻ぶらずにしかし今の重要な問題にきっちり向いている。青い鳥も、彼得意の若者たちの世界で描かれている。主人公は吃音の中学臨時教師。吃音の教師という大きなハンデが既に彼の世界を表しているが、映画の阿部寛も好演している。本当のことはじっくり話さなくては。

 

②ウォーリー
 今やディズニー圏に入っているピクサープロの新作アニメは、今までの枠を飛び越えている。ファーストシーンの上手さでかなり感激、便利で楽な宇宙船生活の人間よりも、掃除ロボットの方がずっと愛せる。

 

③ワールド・オブ・ライズ
 リドリー・スコットの作品のレベルは高い。これほど長くヴィヴィッドな作品を作り続けている現役監督も少ない。エイリアン、ブレード・ランナー、ブラックレインから最近のグラディエーター、ブラックホーク・ダウン、プロヴァンスの贈り物まで、本当に外れの少ない監督だ。彼の新作は対イスラムテロ組織を描いたリアルなもの、アメリカに対する辛口ぶりもイギリス人らしい。

 


 次の作品もオススメです。

 

俺たちに明日はないッス:田舎のしょぼくれ高校生の性春がリアルに。

 

 

 この他のお勧めは、下の正月映画特集にて。

 

 

 

 

Ⅱ今月の懐かしい人

 

ジェラルディン・チャップリン
 「永遠のこどもたち」で霊媒師を演じていたジェラルディンは、もちろんチャーリー・チャップリンの娘、彼とウーナ・オニール(劇作家ユージン・オニールの娘)の8人の子供たちの長女。一般的には「ドクトルジバゴ」が有名だがその後も細く長く、多くの名作・佳作に出演している。ウーナ似の特徴ある顔は今も健在(当たり前か)、ちょっと神経質的な風貌が霊媒師役にもあっていた。

 

ピーター・ボグダノヴィッチ
 「ブロークン・イングリシュ」で主人公の母の今のパートナー、アーヴィングを演じていたのはピーター・ボグダノヴィッチ、「ラストショー」や「ペーパームーン」などの監督です。時々映画にも出演はしているようですが、日本の映画館では久しぶり。今年日本では"私のハリウッド交遊録 映画スター25人の肖像"という大型で分厚い本が出版されました。是非とも読んでみたいのですが、4500円もするのでまだ手にしていません。

 

 


Ⅲ 今月のお・・い番組

 

252 生存者あり

 ファーストシーンの後、伊藤英明演ずる弟がBMWのセールスマンで、客に”スピードは出さないでください"と言っていて、上司の阿部サダヲから注意を受けるあたりから、その気はあったのだが大きな地震の数日後に超異常気象で大きな雹が降り、超巨大台風が突然の如くやってくることになり、大波がお台場のフジTVの球を壊し(この映画は日テレ製作)、海水が地下鉄を襲い主人公たちを閉じ込めるにあたり、これはいくらなんでも・・・笑うしかないじゃんと結論したのである。こうなれば後は感情過多で泣かされようが、超英雄、つまりスーパーヒーローのように主人公が地下から仲間を背負って出て来ようが、まあ許すしかない、あほらしくて、笑いながら。




今月のトピックス:年末特集

 

 何が年末特集なのかは、よく分かりませんが。


Ⅰ お正月のお勧め作品

 

<既に見た作品の中から>


①地球が静止する日:
 正月映画の中では断トツのヒット、破壊の仕方がなかなかのもの。先に来ていた中国人のおじいさんは何?とかあるが、楽しめる娯楽SF作品。

 

ウォーリー:今月のベストスリー参照


③ワールド・オブ・ライズ:今月のベストスリー参照

 

④永遠のこどもたち
 子どもたちの持っている異世界との交信能力の不思議さ、大人たちの無力さがサスペンスフルに描かれる。

 

⑤エグザイル/絆
 返還前のマカオを舞台に、やくざな男たちを描く香港ノワール、ジョニー・トー監督の美学が発揮された快作。

 

⑥ブロークン・イングリッシュ
 ニューヨークのアラサー女性の生態が結構ヴィヴィッド、ジョン・カサヴェティスの娘の作品だからか、ちょっと映画ファン好み。

 

⑦アラトリステ
 ヴィゴ・モーテンセンの男の美学は期待ほどではないが、画面の渋い美しさには目を見張る。

 

 


<これから見たい期待作>


①PARISパリ:人間が生きている美しい街パリ。


②そして、私たちは愛に帰る:日本題名が強い。


③英国王給仕人に乾杯!:チェコ映画なのに英国王給仕人て何?

 

 

 

 

Ⅱ 特集上映(ア)

 

 今月の作品の中の5作品に付いた(ア)は、アンソニー・ウォン特集の旧作を意味しています。
 と言って、アンソニー・ウォンて誰?というのが普通の人か。「インファナル・アフェア」で屋上から落とされ殺された警部、あの濃い顔の俳優といえば思い出す方もいるかも。

 私自身もジャッキー・チェン以外の香港映画はほとんど知らないので、彼に注目したのも「インファナル・アフェア」の時、それまでにもちょろちょろ見ていたような気もするが、それほど記憶に残っていなかった。もっとも、その後、日本の漫画を原作に日本で作られた香港映画「頭文字D」の何ともおかしなオヤジぶりは強烈な印象だが。

 

 その彼の特集上映がシネマヴェーラで組まれたのである。そのチラシによれば既に160本以上の出演作があるという。今回は13作品が上映された。

 

 見た5作品の中には、現代香港のアラサー女性をくっきり描いたコメディ「マジック・キッチン」とか、少女から女性への微妙な時期を鮮やかに描いた「イザベラ」という拾いものもあったが、アンソニー・ウォンの出演時間が短い。それぞれ3分とか、2分という感じである。「イザベラ」など3回登場の毎回が食事場面。これで特集というのも凄い。

 その点「ドラゴン・プロジェクト」は純然たる主演作、さらにダメオヤジぶりもなかなかで納得の1作。

 イギリス人と中国人のハーフとして生まれたアンソニー・ウォンは1961年生まれの47歳、最近はハリウッド映画「ハムナプトラ3呪われた皇帝の秘宝」にも出演。

 今回、彼の特集が組まれたのは正月作品として現在公開中の「エグザイル/絆」に合わせて。特集のチラシの表紙は「エグザイル/絆」の写真に”黄秋生、遊侠一匹”というもの。黄秋生はアンソニー・ウォンのこと。そう、インファナル・アフェアでもそうであったように、
アンソニー・ウォンには男の美学が似合うのである。

 

 

 

 

Ⅲ 今年の映画決算

 

 3回目を迎えた決算報告、成績はいかに?

2007/12/26~2008/12/25の実績の数値です。

 

   映画館で観た映画本数 : 247本
   映画館に支払った金額 : 266,800円
   映画1本当たりの料金 : 1080円

 

 本数は昨年より4本上回りました。
1本当たり料金は1013円→1080円となりました。

来年は、ふふっ、1000円の人になるので鬼でなくてもつい笑ってしまいます。

 

 

 

 

Ⅳ ロバート・マリガンの死

 

 60~70年代にかけて活躍した監督、ロバート・マリガンが亡くなった。まるで四角い箱のように端正な映画を見せてくれました。
 真面目です。でも結構新しい。黒人差別と闘う弁護士を描いた「アラバマ物語」はアメリカ映画協会が選んだ全アメリカ映画感動作100の、堂々第一位です。何よりフェアでなければいけないという、良い意味のアメリカの草の根を描いていました。
 他にも「マンハッタン物語」、「レッドムーン」や「おもいでの夏」など60年代に生きた我々には忘れられない監督です。ご冥福をお祈りします。

 


 今月はここまで、
1週間後の元旦には新年特別号をお送りする予定です。



                         - 神谷二三夫 -


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