2009年 4月号back

桜が咲いて、新入生が学校に通う春、
新しい気持ちで出会いましょう。
もちろん映画に。
きっと驚く出会いがある。


 

今月の映画

 2/26~3/25に出会えた映画は21本、相変わらず外国映画の優勢が続いていますが、日本映画はいずれも水準キープで充実です。



<日本映画>

罪とか罰とか、 
ジェネラル・ルージュの凱旋 
ヤッターマン
釣りキチ三平 
BU・SU

 

<外国映画>

ホルテンさんのはじめての冒険 
ロックンローラ 
岸辺のふたり
シリアの花嫁 
ダウト―あるカトリック学校で―
パッセンジャーズ
いのちの戦場 
ダイアナの選択
DRAGONBALL EVOLUTION 
THIS IS ENGLAND 
長江に生きる ビンアイの物語 
PLASTIC CITYプラスティック・シティ
彼女の名はサビーヌ 
ベッドタイムストーリー 
ワルキューレ
リリィはちみつ色の秘密

 

 

 

Ⅰ 今月のベストスリー

 

 今回初めて書いてしまうが、見た映画をすべて5段階評価している。性格を表してか極端な点数(つまり1とか5とか)をつけることはあまりない。
 5は1年に0~1本か、1については今まで付けたことがない。5段階としながら、何故か4.5とか3.5など.5も付けていて実際は10段階か。毎月の1位には4.5クラスが多いが4.0も結構ある。もちろん、同じ4.0としながら微妙な差や好みの問題で順位はある。で、今月は4.0作品が多かったのである。9本もあった。でも4.5はなく、順位をつけるのが結構難しい。
 そこで、今月は特別にジャンル分けをしてみました。

 

 

●コメディ & ユーモア
ホルテンさんのはじめての冒険
 ほんわかとしたユーモアの作品だけれど、まじめ一徹のホルテンさんと職場の仲間の関係とか、道路で出会った酔っ払いの外交官とか、子供とか・・・さらっとした暖かい面白い映画です。

 

罪とか罰とか
 これ、好きな人となんでもない人とに分かれると言われていますが、私は面白かった。成海璃子とか犬山イヌ子とか、笑えます。

 

 


●国際問題
いのちの戦場
 アルジェリア戦争をドキュメンタリータッチで描き、兵士たちの精神の動きも丁寧に描くフランス映画。
 62年にアルジェリアが独立するまでの戦いは、フランスではあくまで内戦で
1999年に初めて戦争と認めたらしい。アルジェリア人もいるフランス軍と、アルジェリア人の解放軍が戦う。

 

シリアの花嫁
 イスラエルに占領されたゴラン高原にすむシリア人のパスポートは無国籍となっているなんて、初めて知りました。国境も、パスポートも所詮人の作ったものなのに、それに翻弄される人々が実にリアルに描かれます。

 


●ドキュメンタリー
彼女の名はサビーヌ
 フランスの女優サンドリン・ボネールが彼女の妹で自閉症のサビーヌを撮ったドキュメンタリー。自閉症という病気自体が認知されていなかった頃からの苦闘、5年間精神病院に入れられてしまった前と後の大いなる相違、対象に深い愛情を持つ身内だからこそ描ける真実、見る我々に強く訴える。

 

長江に生きる
 中国のおばさんの凄さは大阪のおばさんの比ではない。三峡ダムによって水没する地区に住むおばさんの権力に対する抵抗が凄い。しかし、中国は国力で押し切っていく。人民のための共産主義国中国の圧政ぶりは怖い。

 


●映画的
①ロックンローラ
 ガイ・リッチー監督(マドンナの前夫)が古巣に戻って、ロンドンの犯罪横丁を軽快なリズムで描いている。映画を見ている時の幸せ。

 

②ダウト―あるカトリック学校で―
 久しぶりに演技合戦のスリルを味わう。アカデミー賞は取れなかったとはいえ主要4役全員がノミネート。特にヴィオラ・ディヴィスの鼻水演技には驚き。

 

③岸辺のふたり
 8分の短編アニメ、オランダの作品。単純な描写の中に娘の一生と父との関係が詩情豊かに描かれる。


次の作品もオススメです。

 


ジェネラル・ルージュの凱旋:知的エンターテイメント的楽しさは第1作以上かも。


This is England:いやー、80年代イギリスの下層クラスのリアルさが怖いほど。


ヤッターマン:大人が子供題材に真剣に取り組んで大人用に作っておもしろい。


釣りキチ三平:至極まっとうな、普通の娯楽作で過不足ないところがいいですね。


ワルキューレ:これまたまっとうな作品で、こういう動きがナチ末期にはあったわけですね。

 

 

 

 

Ⅱ 今月の懐かしい人

 

ダイアン・ウィースト
 「パッセンジャーズ」でアン・ハサウェイのおばさんを演じていたダイアン・ウィースト、かつてウディ・アレンの「ハンナとその姉妹」とかで笑っているのか泣いているのか判然としない表情をしていた人、「パッセンジャーズ」でも同じ顔で出ていた。

 

 

 

 

Ⅲ 今月の英文タイトル

 

 上記作品名の中に英語のタイトルのものが、PLASTIC CITYプラスティック・シティを含め、3つもある。ちょっと珍しい。その中で、DRAGONBALL EVOLUTIONは、しばらく前まで「ドラゴンボール」と日本語で宣伝していたはず。それが、公開(3/13金曜日に封切り)近くなって英語題名になってしまった。この題名を見て理解できる子供はいるのだろうか?普通に考えれば、この映画の主要ターゲットは子供である。日本で世界最初に封切りをした人たち(映画会社)はなぜ英文題名にしたのか?

 

 映画を見てみると、青春映画になっていた。主人公の悟空は高校生である。
女の子との関係も、ティーンネイジャーのそれである。ごく普通の高校生もの映画と言える。これでは子どもは共感しようがない。しかも、子供的おふざけ感覚が希薄で笑うこともできない。

 

 昔ドラゴンボールを読んでいた・見ていた人たちを狙ったのだろうか?
彼らが見たとしても違和感を感じたのではないか?漫画的面白さがない。
チョウ・ユンファ演じる亀仙人はもっと面白くてもいいはずだ。
こうしたことを映画会社の人も感じたのでは?で、子供にはよく分からない、
でも大人には一応わかる英文題名にしてしまおうと考えたのではないか。

 

 上記はあくまで私の推測です。
ドラゴンボールは漫画もアニメも見ていない私の推測です。

 

 今後、ハリウッドはマンガを続々映画化しようとしている。鉄腕アトムもハリウッドでアニメーションで映画化されている。しかし、GRAGONBALLを見てみると、日本人以外の人が作った和食を食べているような違和感を感じる。
うま味、おかしみの置かれている軸が違っている。
まったく違う食べ物と思いきってしまえば、別の楽しみがあるのかもしれないが、子供のころからそれでもって育てられてしまった者には違和感が消えないかもしれない。

 

 

 

 

Ⅳ 今月のシックスセンス

 

 シックスセンスは面白い映画でした、特に最後の種明かしが。あの影響は結構大きかったのかも、映画の製作者たちには。今月は2本もその影響を感じさせる映画があった。パッセンジャーズとダイアナの選択である。でも、どちらもすんなりとはいかなかった。ありかよそれ?と感じさせる部分がある。特に、ダイアナなんかは、これまた映画会社の人が心配をしてか、分からない人はサイトを見てくださいと案内をしてくれる。小さな親切大きなお世話ってなもんである。





今月のトピックス:最近のできごと

 

●2/28:舞台挨拶

 「罪とか罰とか」の初日だった。偶然1回目を見ようと“シニア1枚”と1000円札を出すと、“1回目は出演者の舞台挨拶がありますので一律2000円になります”と返ってきた。舞台挨拶って、映画の宣伝のためじゃなかったっけ?宣伝して料金取るの?ということで、この日はパス、翌日別の劇場で見た。


●3/1:1年続映

 新宿武蔵野館で上映されている「岸辺のふたり」は8分のオランダ製アニメ映画だ。父と娘の関係、娘の一生を単純な線画だけで描いた詩情豊かな作品。
毎日、朝10:00から1回のみの上映をしている。500円だ。もう1本3分のアニメも同時上映、併せて11分。
 「岸辺のふたり」ポイントカードをもらった。
 そこには、“「岸辺のふたり」鑑賞1回で1ポイント、タイアップ加盟店でお買い上げで1ポイント、それぞれ5ポイント、計10ポイントで「岸辺のふたり」1回無料”とありました。
 驚きました、5回見て買い物をすると6回目がタダですということですよね。
さらに、“ポイントカードの引き換え期間は2008年12月6日から上映終了までの1年間”とある。1年は上映しますと宣言しているのである。癖になって5回見る人が出るのかも。


●3/1:シニアへの道①
 ということで、この日「罪とか罰とか」を見たのだが、“シニア1枚”と1000円を出したら、“今日は1日でどなたでも1000円です”。そうだよね、つい3か月前までは1日は1000円と刷り込まれていたのに、わざわざ自分は60歳以上ですと表明するとは。シニアの方は気を付けよう、毎月1日の1000円日。


●3/4:シニアへの道②
 「シリアの花嫁」を見に岩波ホールへ。1000円を払おうとしてよく見ると、
シニア 1500円とあるではないか。映画館の料金は全国統一ではないし、館毎に違っていてもいいのである。ユーロスペースだって、通常1700円、会員・シニア1200円である。シニアだから1000円ということではないという真実を勉強させていただいている。ユーロスペースには若い人には安くという思想があるからいいが、岩波の1500円は前売券と同じだし、
 混み合って開場前に列ができる場合、前売券があれば列に早く並べることを考えると、岩波のシニアにはメリットなし。シニアの方は気を付けよう、岩波ホール。


●3/19:分かりました~?
 ヒューマントラストシネマ渋谷だったのに、勘違いして文化村通りの方に行っていて、あわてて線路を越えてヒューマントラストシネマ渋谷に行きなおしやっと間に合って見た「PLASTIC CITYプラスティック・シティ」。
 終わって、下りのエレベーターに乗っていると、突然女性が“分かりました~?”と言いながら乗ってきた。もう一人乗っていた男性が知り合いで、彼に話しかけているのかと思っていると、そんなことはなく、同乗した全員(といって3人だが)に話していることが判明した。画面が凝っていて、時に観念的になったりするから、特にラストは分かりにくい。もっとストーリーに徹していたら面白かったろう。映画館で一緒になった人と話すことはほとんどないので、珍しい経験だった。


●3/21:タンスにゴン
 昨年亡くなった市川準監督の特集上映の初日1回目、BU・SUを見に行く。静かに、サラッとある種の透明感を持って人生を描いた彼の映画が好きだった。
市川夫人の挨拶もあり、立ち見も出る盛況だった。映画上映の前に市川監督製作のCM傑作集が上映された。CMのなかでもストーリーがありますよね。
ちあきなおみのタンスにゴンが懐かしかった。

 

 


 今月はここまで。

 



                         - 神谷二三夫 -


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