夏休みもそろそろ終わり、
秋がそこまでやってきています。
落ち着いて物事にじっくり取り組みたい季節、
芸術は映画で、映画は映画館で!
7/26~8/25の間に出会った映画は23本、極端な邦低洋高になりました。
日本映画は2本だけです。
(古)は封切りではない、50年以上前に作られた作品です。
(今月のトピックス参照)これらはベスト3には選んでいません。
山形スクリーム、
花と兵隊
アイスエイジ3 ティラノのおとしもの
バーダー・マインホフ 理想の果てに
ハウエルズ家のちょっとおかしなお葬式
そんな彼なら捨てちゃえば
ボルト
ならず者(古)
バルカン特急(古)
HACHI約束の犬
コネクテッド
G.I.ジョー
キャデラックレコード
靴みがき(古)
ヒズ・ガール・フライデー(古)
フランケンシュタインの花嫁(古)
モロッコへの道(古)
ココ・シャネル
グッド・バッド・ウィアード
ナイトミュージアム2
トップハット(古)
大いなる幻影(古)
宇宙へ
3時10分 決断のとき
96時間
①-1 3時10分、決断の時
名もない農夫、早撃ちの悪役、父を見る14歳の兄、再映画化された西部劇だ。素晴らしい作品はいつでもカテゴリーの枠を超えてしまう。自分が子供たちに示してやれることに命をかける。
①-2 コネクテッド
名もなく、情けない子持ちの男やもめが、偶然かかってきた電話に答えたためにえらいことに。約束の時間を守るべく走る走る。こちらは子供を抱き締めることができた。
②-1 グッド・バッド・ウィアード(試写会にて)
満州を舞台にしたのはうまい。アジア版西部劇としては、ジャンゴよりずっと上。マカロニ度で押し切った。ソン・ガンホのキャラクターが圧倒的です。
②-2 96時間
リュック・ベッソン(「グラン・ブルー」の監督です)は、アクションが本当に好きだ。どんどんハードになってきているような気もする。無駄なところ一切なし。同時期に「トランスポーター3 アンリミテッド」(未見)も公開されている。どちらもリュック・ベッソンは製作ですが。
③ハウエルズ家のちょっとおかしなお葬式
伊丹十三の「お葬式」でもいろんなことが起こっていたが、違う遺体が運ばれてきた初めから、なぜか感動のお別れの言葉まで、いろんなことが起こってたっぷり楽しめる喜劇です。
次の作品も面白い、お勧めです。
*HACHI約束の犬:押しつけがましさがなく、静かに感動させてくれる。スウェーデン人ラッセ・ハルストレムは「マイ・ライフ・アズ・ア・ドッグ」の監
督。
*G.I.ジョー:またかよハリウッドのCG過剰映画、確かにそうですが、あっけらかんと明るく楽しめる。
*キャデラック・レコード:マディ・ウォーターズを中心に黒人音楽ブルースが人気を得るまでを描く。
*花と兵隊:終戦後も日本に帰らずタイで人生を終えようとしている元日本兵のドキュメンタリー、想像より明るいのは現地に溶け込みある程度の成功をしていらっしゃるからか。
*ココ・シャネル:シャネルの伝記映画、も一つ感動が薄いとはいえ、これから出てくる他の2つのシャネル映画の露払いとしては最適だったかも。
★クリス・クリストファーソン
「そんな彼なら捨てちゃえば」で心臓病で倒れる父親を演じていたのはクリス・クリストファーソン、かつて「ビリー・ザ・キッド/21歳の生涯」をはじめ多くの主演作のある大スター。映画にデビューする前にカントリー歌手として地位を築いていた人、荒削りで酒飲みでというイメージが、「そんな…」でも生きている。それにしてもあまりに本音の「そんな彼なら捨てちゃえば」という題名はどうなんでしょうか?
★ピーター・フォンダ
「3時10分、決断のとき」でピンカートン社の探偵マッケルロイを演じているのはピーター・フォンダ、もちろん、あの「イージー・ライダー」の、ヘンリー・フォンダの息子の、ジェーン・フォンダの弟のピーター・フォンダである。久しぶりに見たらすごくいい老人になっていた。
8/21(金)に封切られた「宇宙へ」は8/21、22はどなたも500円で見ることができた。IHI協賛によるらしい。IHIの本社は豊洲にあって拙宅のお隣。
造船所のイメージがあったが、今や宇宙産業にも多くかかわっているらしい。
それにしても、今まで多くの企業が何らかの協賛をしてきたと思うが、直接的に入場料を下げてくれるというのは、感謝の念を表しやすい。ユナイテッドシネマ豊洲ではあまり大きなスクリーンではなかったとはいえ、1時間半ほど前に切符を買おうとした16:45の回は満員、19:00の回もほぼ満席という状況で感謝した人も多いはず。それにしても、IHIはこの2日間全回満席を想定して予算化したんだろうか?
「3時10分、決断のとき」でラッセル・クロウが演じた早撃ちの悪党、ベン・ウエイドは時間があるとすぐスケッチをするへんな奴。映画の最後に流れるクレジットを見ていたら、Assistant for Christian Bale(主演の一人クリスチャン・ベール)と並んで、Assistant for Ban Wadeとは出てくるがRussell Croweとは出てこない。確かDriver for も同じくBen Wadeなのである。
キャストのときの Ben Wade = Russell Croweは出てくるが、それ以外のRussell Croweであるべきところは総てBen Wadeとなっている。
一人、ラッセル・クロウのみが配役名で出てくるのである。何故?
自分の名前を売り込みたいのがスターのはずなのに。
最近、名画座が復活しつつあるという。7月には銀座シネパトスが3つあるスクリーンの一つを日本映画の名画座にするとして、高らかに名画座宣言なるチラシを作って昔の日本映画を上映し始めた。普通の映画館でも、角川シネマ新宿だったか、突然増村特集のように、名画座まがいのことを行うし、
1年くらい前だったか、初めて新・文芸坐に出かけたら、異様な混み方だったりとかするのである。最近のキネマ旬報では「名画座、健在!日本映画編」という特集もしている。名画座が隆盛になってきたと思われているのは、やはり、熟年層が懐かしがっていることが一番大きいのだろう。家で見るのではなく、映画館で見るのが当たり前だった世代は、懐かしい、あるいは見逃していた作品を映画館で見たいのだろう。時間にも余裕があり、映画館に出かけることができる。作品の中心は日本映画で特集で競い合っているのが今の名画座だ。
一部には、現在の日本映画が情けないので古い映画が求められているという声もあるようだが、本当だろうか?むしろ、今の日本映画のいい作品を見ないでノスタルジーに浸っているとも思える。古い映画と共に今の映画も見られるのであればいいのだが。昔の映画界はロードショーだけで成り立っていたのではない。封切りをするロードショー館、ロードショーが終わった後、少しの時間をおいてみられる2番館、主に地方にある3番館、そして1年以上というか、かな~りたってから久しぶりに見られる名画座があった。2番館以下は間口を広げれば名画座といえる、対ロードショー館という意味で。ロードショー落ちを2本立て1300円くらいで見せてくれる2番館は今の東京にも数軒存在する。
想像するに厳しい商売ではないか?今のロードショーは、ヒットすればするほど、いろいろ映画館を変えて(ムーブオーバー)、それでもあくまでロードショー料金で公開している。見たい人はこの期間に見てしまうだろう。
それより1~2カ月遅れて、2本立てで1300円とはいえ見に来る層がどれだけいるか。少し待てばDVDも発売されてしまうし、借りてみることも可能になってしまう。2本立てが必ずしも自分にうれしい組み合わせかどうかもあるし。
情報が長くは持たなくなっている今の状況では、ここに普通の人を呼び込むのはかなり難しい。むしろ、少し長く期間をおいて、話題になったけれど見逃していた作品を1年ぶりにやっと見ることができてうれしいというようなところを狙ったらどうか?しかも1本立てで、800~1000円くらいで。
版権の関係で外国映画の古い作品を揃えるのはなかなか難しい。今の名画座が日本映画中心になったのもそれが影響しているだろう。
今月みた外国映画に8本の(古)が入っていたのは、シネマヴェーラの“映画史上の名作2”というプログラムがあったからだ。「ヒズ・ガール・フライデー」や「フランケンシュタインの花嫁」、中でも「トップハット」が上映されたので駆けつけた。大画面でフレッド・アステア全盛時代の作品を日本で見るのは初めてだ。中学生のころTVの深夜映画劇場でまとめて見せてもらって以来、
アステアは神様になり、23歳初めて行ったパリの名画座でアステア特集を見て以来である。基本的には昔の映画より今の映画が好きなので、めったに名画座には行かないのだが、
アステアの大画面には勝てなかった。
いろいろな映画が見られるという意味で名画座の隆盛は歓迎だ。願わくば、外国映画の番組がもう少し増えること、常に10年以内くらいの作品も見返す機会があるようにすること、若い人たちも来る気になる名画座が増えるといいなと思う。
今月の1位の一つ「コネクテッド」はハリウッド映画「セルラー」の香港版リメイク。今まで、ハリウッドがアジアや日本やヨーロッパなど、つまりハリウッド以外の作品をリメイクすることが多かったのだが、これは逆のケースになった。「セルラー」は見ていないので比べてどうだとは言えないが、新聞評等を読むと、オリジナルよりも設定等がうまいと書かれていた。
香港映画は脚本がなく、その場その場で決めながら撮影するといわれる。
もちろん、監督の頭には完成写真があるのだろうが、きちんとした脚本がなく撮影しながら組み立てていくと言われていた。確かに、従来の香港映画を見ていると、そのあまりの変幻自在さにというか、いい加減さにやはり脚本がないのは本当かもしれないと思わせるものがあった。
その香港映画から「コネクテッド」のような構成された作品が出てきたのは驚きだ。まあ、フィルムのつなぎを考える編集でもある程度できるだろうが、
ここまで細かく描いているというのは、きっちり脚本がないと無理なのでは?
今月2位の一つ「グッド・バッド・ウィアード」は完全なる西部劇だ。
かつてイタリアから現れた西部劇が日本ではマカロニウエスタンと呼ばれた。
ほかの国ではスパゲッティ・ウエスタンと呼ばれたイタリアンウエスタンは、
セルジオ・レオーネ監督の「荒野の用心棒」で日本初登場、その暴力的描写とけれん味たっぷりの演出で話題になった。漫画から劇画が生まれてきた時のような衝撃だった。
レオーネ監督の傑作の一つに「続・夕陽のガンマン 地獄の決闘」という作品がある。この原題はもちろんイタリア語だが、英語では「The Good,The Bad and The Ugly」。Ugly(醜い)がWeird(変な)に代わっただけの韓国映画はもちろんこの作品を意識している。しかし、こんなことを知らなくても十分、いや十二分に楽しむことができる。満州という場所、時代設定にしたことが成功の大きな要因。キム・ジウン監督のリズム感、スピード感も凄い。
韓国映画が日本でその勢いがスピードダウンして久しい。はっきりくっきり(しすぎ)した話の運び、あくどいまでの売れ筋狙いの作り方、口当たりのいい言葉一つで表現できてしまいそうな作品内容などその要因はいろいろ考えられる。逆にこうした要素がうまく働き、スカッと爽快に作られたのが「グッド・バッド・ウィアード」といえようか。
2作とも外国作品から力を得て自らの作品力をアップさせたアジアの作品だ。共に、独自の作品世界を構築した素晴らしい作品、見る者に元気をくれる作品だ。
今月はここまで。
来月は芸術映画もど真ん中の9月25日にお送りします。