今年は残暑もなくすんなり秋になりました。
いよいよ秋シーズンの到来です。
秋は公開される映画の本数が多くなる季節、芸術系作品だけでなく、
配給会社が一掃大セールとばかり作品を公開することがあるのです。
掘り出し物に出会えるのは映画館です。
8/26~9/25の間に出会えた映画は28本(短編含む)、先月の続きで、名画座系に少し出かけてしまいました。
例によって(古)は名画座で見た作品です。ベストには含んでいません。
里山
20世紀少年<最終章>ぼくらの旗
ちゃんと伝える
BALLAD 名もなき恋のうた
南極料理人
女の子ものがたり
しんぼる
TAJOMARU
火天の城
カムイ外伝
ポー川のひかり
未来の食卓
トランスポーター3 アンリミテッド
サブウェイ123 激突
幸せはシャンソニア劇場から
大人は判ってくれない(古)
クリーン
九月に降る風
ウルヴァリン:X-MEN ZERO
柔らかい肌(古)
あこがれ(古)
ピアニストを撃て(古)
ココ・アヴァン・シャネル
男と女の不都合な真実
二十歳の恋・アントワーヌとコレット(古)
夜霧の恋人たち(古)
家庭(古)
正義のゆくえ I.C.E.特別捜査官
① ちゃんと伝える
父と息子の関係を描いて、登場人物たちの細かい感情に迫った佳作。
園子温という、少しとんがった映画(「愛のむきだし」など)を作ってきた監督の、自分の父に捧げた映画は、感情に走ることなくごく静かで深い感動を含む作品になっている。
②-1 カムイ外伝
白土三平の原作漫画が持つスピ-ド、緊迫感にかなり迫った作品。初めに出される漫画の描写に違和感なく実写が続く。アクションのみで語られる漫画のままに、小気味良い描写が良い。
②-2 ココ・アヴァン・シャネル
今年公開される3本のシャネル映画の2本目、彼女がオートクチュールのコレクションを発表するまでの人生を描く。主眼は彼女の成功物語というよりも、
19世紀生まれの女性が自立する、自分の意思を通すことに重きを置いて描いている。フランスの女性監督がもちろんフランス語で描く、資本はハリウッドのワーナーだが。
③ BALLAD 名もなき恋のうた
原作者が亡くなってしまったクレヨンしんちゃんを原作に、アニメから実写版にリメイクという珍しい作品。なんとも辛辣な言説もあのアニメの絵で受け入れられやすくなっていたアニメ版とは少し違うスタンスながら、違和感なく戦国の世と現代を描いた山崎監督に拍手。
次点:ポー川のひかり
ボローニャ大学の図書館から逃れ、ポー川のほとりの廃墟で暮らし始める大学教授。後半に行くほどインパクトは薄れるが、開始間もなくの本の殺人現場は強烈な印象。
次の作品も面白いですよ。ご覧あれ。
●サブウェイ123 激突:30年近く前の「サブウェイ・パニック」のリメイク、携帯やインターネットなどの新しい道具もうまく使いなかなかに見せます。
●幸せはシャンソニア劇場から:1930年代、2次大戦開戦間近のパリの片隅の演芸場シャンソニア、繰り広げられる人生模様とミュージックホール的楽しさがうれしい。
●クリーン:かつてパリでTVの人気タレント、今はカナダに住むロック歌手の妻だったのだが…、ドラッグ中毒との戦い、回復の物語。監督はフランス、主演は香港、ハリウッドなどインターナショナル。
●TAJOMARU:原作は芥川龍之介の「藪の中」で黒澤明の「羅生門」と同じ。ただしリメイクではない。今回は多襄丸になってしまう男の物語。敵役の桜丸のしたたかさもみもの。
●男と女の不都合な真実:男「やりたい、好き、愛してる」女「好き、愛してる、やりたい」という宣伝惹句、気軽に楽しめるラブコメディー。
●正義のゆくえ I.C.E.特別捜査官:世界から移民が流れ込んでいるアメリカその希望の天地で日々繰り返されるグリーンカードをめぐる争い。大変な国すね。
*ニック・ノルティ
この人を懐かしい人というのは申し訳ない。というのも、68歳の今も年0.5~1本くらいの割で映画が来ているからだ。
今回の「クリーン」での主人公の義理の父親役は実にいい味を出していた。ただし、「クリーン」は2004年の作品、この後もいくつかの作品に出ていて、
実は、昨年6月号でも懐かしい人として「スパイダーウィックの謎」で取り上げていた。1977年「ザ・ディープ」で日本デビュー、結構主役をこなしてきたが最近は渋い脇役が多い。自身ドラッグ中毒で有罪にもなっており、「クリーン」の理解した上で息子の嫁をやさしく見つめる父親役は真実味が感じられた。
「しんぼる」は松本人志の「大日本人」に次ぐ第2作。TVのバラエティ番組はほとんど見ないので、彼の芸風がどんなものかそれほど知らないが、あまり好きにはなれないタイプ。ただ、「大日本人」には作り手の意思がある程度分かり評価はしていた。
しかるに、今回の「しんぼる」はいかがなものか。TVのお笑いタレントたちが見せる一瞬芸の羅列のような作り、おもしければそれでも我慢できるが、
笑えるコントはほとんどない。1時間半、我慢してみているという感じ。
実際途中退出する人もいた。
「大日本人」「しんぼる」と、どちらも映画的センスはないと思う。作っている自分が楽しむのは勝手だが、人に見せるものにはなっていないのでは。
最近はほとんど総ての映画館で、お客様への注意が入る。
①携帯電話の電源はお切りください。
②上映中のご飲食は周りの方のご迷惑にならないようご注意ください。
③上映中はお静かにお願いします。
④前の席を蹴らないようお願いします。
スマートに流すところからダサーク訴えるところまでやり方は様々ですが、この4つはほぼどの映画館でも流されているようだ。このほか、⑤他店の食べ物を持ち込まないでください。 なんてものを入れている小屋もある。音がしなければ、他店のものでもいいと思いますがね。
最近、③①の事例に連続して遭遇した。
*9/6 「BALLAD 名もなき恋のうた」途中から、どこからともなく人の話し声が聞こえてくる。シニア世代のカップルのようだ。少し離れているのではっきりした言葉ではないが、ぼそぼそとうるさい。よくよく見ると、ほぼ真横、右に10人ほどのところの二人だ。まさか、“うるさぁーいっ”と叫ぶわけにもいかずぐっと我慢したのだった。
*9/6 「幸せはシャンソニア劇場から」開映ぎりぎりにやってきた20代後半カップル。縦3つのブロックの左側、真ん中より少し前の中央より通路側に座っていた私の、左横1つ置いて左の隅(左側ブロックは4列だった)に席を取った。20分経ったころ“~ね”という女性の声が聞こえたが、そのあとは静かになった。「BALLAD…」の後だっただけにこちらもピリピリしていた。
さらに20分経った頃、“~ね”“うん、~だな”と会話になってしまった。
1往復だけではない会話である。我慢、我慢、注意して刺されることもあると言いきかせたのだが…、“静かにしてください”ついに注意してしまった。
その後は静かになったのだが、終わり間際が危ないだろうか、先に出ようかなど、変に神経質になってしまった。
*9/9 「南極料理人」
平日の昼間なのに結構な入りは、水曜日は女性だけでなく男性も1000円のこの劇場のためか?女性の方が圧倒的に多かった劇場は9割くらい埋まっていた。
私の右隣は熟年女性の二人連れ、この、いかにもTV的話題に満ちた映画に口出ししたいタイプと見た。で、しばらくすると向こうの人が、“あらら”とか“へぇー”とか、反応言葉が発声されるようになった。注意するほどでもないのだが、妙に気に障るのだった。
*9/19 「ココ・アヴァン・シャネル」
1階の後ろから4列目、真ん中にその女性は一人で私より先に座っていた。
60歳前後とほぼ同年代、と言って声をかけたわけではない。まさか、顔をまともに覗くように見るわけにもいかず静かそうな雰囲気を感じた。1時間ほど経った頃、突然バッグを開けて取り出した。開いて、光る画面をじっと見ている、なかなか閉めない。わざとらしく目の横に手をかざしたのだが反応なし。う~む、限界だ。視界の隅に光が入る。“消してください”結構冷たく声をかけてしまった。
最近の映画館は、階段状になり、しかも前後の座席間隔も広いところが増えつつある。段差もなく、座席間隔も狭かった以前と比べると隔世の感がある。
あの当時、まともに座高高く座るとそれはそれは迷惑で、映画ファンは腰浅く掛け、足を前に投げ出す(狭いので苦しいのだが)のが礼儀というものだった。最近はこれを知らない人が多く、たまに段差のない平面映画館に行くと悲劇が起こることがある。
皆さん、平面映画館では姿勢悪く、腰浅く掛けましょう。座高の低い方は別ですが。
さて、段差映画館で時々みかける迷惑は、身を乗り出してみる人。せっかく段差になっていても前に乗り出されると画面にかかることが多いのです。疲れるだろうに、ずっと身を乗り出している人が時々います。背中は椅子の背にくっつけてゆっくりごらんください。
感動的な映画が終わっても最近の映画はキャスト・スタッフの名前がずっと流れます。感動の余韻に浸っていると、席をバタバタと立つ人たちが忙しく出ていきます。長いものでは10分以上も続くことがありますから、絶対出ていくなとは言いませんが、少なくともまだ見ている私のような人がいることをお忘れなく。
今月は「没後25年 フランソワ・トリュフォーの世界」の何本かを見に出かけた。もう、25年もたつのか、時の経つのは早い。「突然炎のごとく」は詩のような傑作で好きな監督の一人だったのに、デビュー作をはじめ初期の作品をあまり見ていなかったのだ。
「柔らかい肌」は最もトリュフォーらしい傑作だった。最後まで理解できない女性の心に振り回される男の悲劇。女は分からないと言い、騙されつつもぶつぶつと口に出して平衡感覚をとるウディ・アレンと、一人心の中で悩んでいるトリュフォー。
その繊細でナイーブな心も年と共に固まっていったのは仕方のないことか。
終電車、隣の女、日曜日が待ち遠しいの最期の3作は、公開当時見て、なんだかしっかりした作りになったなあ、破綻がないなあと思ったものである。元々、こんなものを目指していた人じゃないと思っていた。妙に突っ張り、こだわる部分が映画を破綻させ、でもその破たんが妙に魅力的に見えるような。
昔の作品を見るのはそれほど好きではないのだが、「大人は判ってくれない」「柔らかい肌」「ピアニストを撃て」だけは見たかった。やっと出会うことができました。
今月はここまで。