2009年 11月号back

早いもので11月号、
2009年も残りはあと2ヶ月、
毎日1本見ても60本、
頑張ろう。
さて、次の日曜日は11/1で映画1000円日です。


 

今月の映画

 9/26~10/25の30日間に出会った映画は23本、日本映画が特に充実、どの作品も面白い。



<日本映画>

のんちゃんのり弁 
沈まぬ太陽 
プール 
さまよう刃
クヒオ大佐 
ヴィヨンの妻 
風が強く吹いている
犬と猫と人間と 

 

<外国映画>

リミッツオブコントロール
逃げさる恋(古) 
私のように美しい娘(古) 
あの日
欲望の大地で 
ワイルドスピードMAX 
ATOMアトム(吹替え)
ファイティング・シェフ~美食オリンピックへの道 
あなたは私の婿になる
ATOMアトム(字幕) 
アバンチュールはパリで
私の中のあなた
アニエスの浜辺 
アンナと過ごした4日間 
きみが僕を見つけた日
パイレーツ・ロック 
地下鉄のザジ

 

 

 

Ⅰ 今月のベストスリー

 

①-1 風が強く吹いている
 三浦しをんの原作、箱根駅伝を舞台に描かれる青春群像。10人のメンバーの描き分けから、ラストへの盛り上げまで、脚本家大森寿美男の監督第1作は流石の出来。試写会で見ました。10/31の封切りです。

 

①-2 のんちゃんのり弁
 等身大の人間を描いて緒方明監督の目は曇りない。応援したくなる映画、しかも甘そうで、甘くないお話。人生はまだまだ続く、元気に生きる。

 

①-3 アンナと過ごした4日間
 映画はやはり感性が大事、スコリモフスキーの17年ぶりの新作には、主人公の息遣いまでが聞こえる。暗い情念で引っ張りながら、ヴィヴィッドでかつ詩情あふれる映像で魅惑する。

 

②ヴィヨンの妻
 根岸吉太郎監督の映画には、感性という危ういものなどないような感じもするが、じっくり描かれる映像の中に、いつの間にかじっとりとした情念が感じられる。

 

③-1 私の中のあなた
 科学の発達は時に恐ろしいことを人間にもたらす。人を生かすためにドナーを作るってそれは神の領域への侵犯か?

 

③-2 クヒオ大佐
 堺雅人のあいまいな微笑が、幸せなマッチングでなかなかの作品になった。
騙す者が騙されたり、なかなか面白い展開です。

 

③-3 パイレーツ・ロック
 1966年と言えば、43年前、イギリスにはすでにビートルズもいたはずなのに、ラジオが流せるロックの時間が制限されていたというのは驚き。制限されていたからこそ海賊放送をする方も聞く方も、真剣勝負、ますます好きになるという楽しさがあふれる。

 

次点:アニエスの浜辺
 アニエス・ヴァルダ監督の映画人生をスケッチした幸せな映画。映画を作る何かを創造することの根っこに何を据えているか、日仏の違いもたっぷり考えさせてくれる。

 


次の作品も面白い、ご覧ください。

 

沈まぬ太陽:長大原作のため、休憩10分ありの3時間半。日本人の会社好きは本物です。


さまよう刃:東野圭吾の原作の力を損なうことなく描いている。


ATOMアトム:今月のトピックス参照


犬と猫と人間と:あくまで普通人の感覚を維持して描いた飯田基晴監督に拍手、ロンドンには野良猫がいないなんて知らなかった。


あの日、欲望の大地で:ちょっと濃すぎるドラマで胃もたれを起こしそうですが、ギトギトラーメンが好きな方にはいいかも。


アバンチュールはパリで:甘い日本題名と違い韓国のおじさんの映画はかなりしょっぱい。

 

 

 

 

Ⅱ 今月の懐かしい人

 

①メアリー・スティーンバージェン
 「あなたは私の婿になる」であなたの母親を演じたメアリー・スティーンバージェン、作家H・G・ウェルズを主人公にした「タイムアフタータイム」でウェルズの恋人を演じていた。ウェルズを演じたマルカム・マクダウェル(時計仕掛けのオレンジ、最近はココ・シャネル)とは実生活でも結婚し、10年後に離婚。現実離れしたふわふわした感じはミア・ファーロー系、今回の母親役でもふわふわしていた。

 

②ジョーン・キューザック
 「私の中のあなた」で裁判官を演じていたジョーン・キューザックは、4か月前の7月号でも「お買いもの中毒な私」で取り上げましたが、又出てくれました。なかなかいい裁判官ぶりです。




今月のトピックス:
ATOMは2度見た/床に座って見た/ザジ 

 

Ⅰ ATOMアトム

 

 今月はものすごく珍しいことに、同じ映画を2回も見てしまいました。
映画は同じでも音が違う吹き替え版と字幕版ですが。最近のハリウッド製アニメは吹き替え版が圧倒的優勢となっている。今回の、日本出身のアトムを主人公にした「ATOMアトム」でさえ、字幕版を上映しているのは東京、大阪で各1館ずつのみ。しかも、その映画館で字幕版を上映しているのは1日1回だけ、
つまり、日本中で字幕版の「ATOMアトム」が見られるのは1日2回だけということになる。

 

 こんなに詳しくなったのは、ある事情から一刻も早く見るため近くの映画館に行き、吹き替え版しか上映していないその映画館でまず見た後、字幕版はどこで上映しているかを調べたから。こんなに貴重なものを見逃す手はない。
しかも、オリジナル版(字幕版)の声の出演者には、フレディ・ハイモア、ニコラス・ケイジ、ビル・ナイ、ドナルド・サザーランド、サミュエル・L・ジャクソン、シャリーズ・セロン、ネイサン・レーンと結構なビッグネームがずらり。ここまで大スターが声優しているハリウッドアニメも珍しい。

 

何故、字幕版で見なおしたのか。一つには、アニメ画が原作とはかなり違い初めはかなりの違和感を感じたとはいえ、作者の手塚心酔ぶりはなかなかだったことがある。で、より大きな原因は、最後のスタッフ、キャストが映された時、後ろにあのTVのアトムの主題歌が流されたことである。これが妙にはつらつとして耳に心地よいのである。でもこれは日本語版だけに違いない。
主題歌が始まる前の音楽も、終わった後の音楽もまるで違う曲調だったもの。
さらに、日本の声優キャスト名まで流されたもの。で、これは字幕版を確かめねばいかんと決めたのだった。

 

 TVの主題歌は、やはり字幕版にはなかった。日本人には随分違う印象になった。あまり印象に残らないテーマ曲が流されていた。

 

 この映画にはもう一つ不思議なことがある。TVのアトムはアメリカではAstro Boyの題名のもと放映された。映画のアメリカ題名もAstro Boyのはず。それなのに、字幕版でさえ題名はATOMとしか写されなかったのだ。
これは日本語の題名でしょう。題名だけつなぎ直したのか。

 

 こうした細かいことは気にしないで作品は楽しむことができる。日米の関係者がアトムのキャラクター画について話し合ったとき、アメリカからはあまりに子供っぽ過ぎると意見が出されたという。日本人にも許容範囲の子供らしさに書きなおされ作品は作られた。台詞の中にも、大人の皮肉が効いているものがある。もっとも、手塚作品にもその匂いはあるが。

 

 ストーリーがうまく作られている。ラストは素直に感動させてくれる。

 

 

 


Ⅱ 床に座ってみる

 

 久~しぶりに床(正確には階段)に座って見ることになった。午前配達指定の宅急便を待っていた。届いたのは10:18、ぎりぎり間に合う時間だった。
11:00開映の「アンナと過ごした4日間」を上映しているイメージフォーラムに着いたのは、10:55だった。
珍しくもチケット売り場に列ができている。「前の方しか席がありません」と聞きながら急いで中に入ったのは1分前。しかし、席がない。
私より前に入った数人もうろうろ席を探している。

 

 なぜか、最前列の10席にロープが張られ座れないようになっている。よほど座ってしまおうかと思ったが、ためらってしまった。2列ある通路のもう一方の列ではすでに階段に座っている人がいる。一番後ろに立っていると画面の上が欠けてしまうのだ。場内は暗くなり始めた。
こちらの列には座っている人はいないが、これは座るしかない。

 

 ということで、久~しぶりの事態になったのだ。コンクリートの床でお尻はたっぷり冷やされた。

 

 肩もこり始めた1時間45分後、映画は終わり観客は外に出始めた。と、「これからトーク・ショーがありますのでお残りください」の声。そーか、それで最前列の席にロープが張られていたのか。舞台のない小さな映画館、トークする二人のスペースを確保するためだ。多分、そのことを忘れてチケットを売ってしまった映画館のミスだと思うが、謎は解けた。

 

映画も中原昌也氏と山本均氏のトークショーも面白く、トークショーのときは椅子に座ることができた(帰った人もいたので)私は大満足だった。

 

 

 

Ⅲ 地下鉄のザジ

 

 大学生のときだったろうか、NHKか教育テレビで見たザジは傑作だった。
スラップスティックで詩のようで、ストで乗れなかった地下鉄のパリで、カトリーヌ・ドモンジョのすき間っ歯の笑い顔が画面で跳ねていた。ひょっとすると、TVでしか見たことのない映画で、どうしても劇場で見たい映画の私的No.1だったのではと思う。その「地下鉄のザジ」が突如劇場で公開された。
サイトを見ると、作品生誕50年を記念してとある。輸入元はザジフィルムズ。
この会社、前から怪しいとは思っていたけれど、やはりこの作品に影響されてこの名前にしたのでしょうね。確かめたことはないけど。

 

 今回見ていて思い出してしまった。40年くらい前、なぜか日本にいてNHKのTVフランス語会話にも出ていたニコラ・バタイユさんがバスドライバーの役で出ていたのだ。大学でフランス語クラスも取っていたのでフランス語会話の番組を見ていた。その先生がTVで見たザジに出てきたので驚いた。ずっと後で、バタイユさんはフランス演劇界では有名な人と知った。ザジを見直した後調べてみたら、バタイユさんは昨年お亡くなりになっていた。
合掌。

 

 長年の夢がかなって嬉しかった「地下鉄のザジ」でした。

 

 


Ⅳ 映画館の作法 続き

 

 先月お送りした映画館の作法、かなりの反響をいただきました。その後も作法違反はいろいろ経験していますが、最近の例は次のようなもの。

 

 「アバンチュールはパリで」は縦長のかなり小さな劇場で見ていた。中間より少し後ろの真ん中の席に座っていた。その私と同じ列の左端、4席ほど向こうに中年の女性が座っていた。途中からぶつぶつ独り言、その内あくびも始まった。で、かなりの声で“つまんない映画“と一言。確かに、甘くはない映画でしたからね。さらに、初日プレゼントで映画館から頂いた銀座のスイーツを、
ポリエチレンの袋をがさごそ開けて食べ始めた。(ちなみに私は始まる前に食べました。)終わるとさっさと立ち上がって去って行かれたのだった。



                         - 神谷二三夫 -


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