2010年 5月号back

今年は寒くなったり、暑くなったりを繰り返しているうちに、
アイスランドでは火山まで噴火したりして、
これで無事にGWが迎えられるのかと心配しましたが、
少しずつ安心できるようになってきました。
これで心おきなく映画館!!


 

今月の映画

 3/26~4/25の間に出会った映画は28本、日本の古い映画をたくさん見たので本数が多くなりました。今月のトピックスを参照ください。

 (黒)は黒澤映画特集、(ミ)は日本のミュージカル、

 (古)は外国映画の旧作です。ベストに入れていません。



<日本映画>

蜘蛛の巣城(黒) 
酔いどれ天使(黒) 
悪い奴ほどよく眠る(黒)
鴛鴦歌合戦(ミ) 
ひばり・チエミの弥次喜多道中(ミ)
ソラニン 
歌ふ狸御殿(ミ) 
ひばり・チエミ・いづみの三人よれば(ミ)
白痴(黒) 
君も出世ができる(ミ) 
てぃだかんかん 
踊りたい夜(ミ)
ダーリンは外国人 
ああ爆弾(ミ) 
RAILWAYS

 

<外国映画>

ウディ・アレンの夢と犯罪 
やさしい嘘と贈り物 
8 1/2(古) 
抵抗‐死刑囚の手記より‐(古)
ブルーノ 
シャッター・アイランド 
第9地区
オーケストラ
狙った恋の落とし方 
17歳の肖像 
アリス・イン・ワンダーランド
クロッシング
プレシャス

 

 

 

Ⅰ 今月のベストスリー

 

① 第9地区
 凄い設定のSF映画です。ほとんど現実のような、それにしては奇妙な、おかしくて不思議な緊張感のある作品。

 

②-1 クロッシング
 脱北者を描いた韓国映画はリアルにその模様を描く。すべての背景に貧困がある。巻き込まれる家族の悲惨な状況が胸にしみる。


②-2 プレシャス
 1987年のハーレムに暮らすことの現実を痛いほど教えてくれる。厳しい映画だが、希望を失っていないので救われる。マライア・キャリー、レニー・クラヴィッツも厳しい役で出演。

 

③-1 オーケストラ
 ソ連が崩壊して約20年、ソ連の誇ったボリショイ管弦楽団のもう一つの楽団を、リアリティを持って描く。ユダヤ人は本当にすごいというか。

 

③-2 RAILWAYS(試写会)
 ROBOT製作によるALWAYS三丁目の夕日に次ぐ~WAYS作品(?)。日本人の几帳面さは電車の運行に表れていることを認識させてくれる。忘れられつつある日本の力を思い出させてくれる。

 

 

 次の作品も面白いですよ。

 

ウディ・アレンの夢と犯罪:ロンドンの兄弟を描く新作は案外古いお話だが語りはスムース。それにしても監督名が日本語題名の中に入っているのはすごい。

 

シャッター・アイランド:謎解きは難しくないが、スコセッシ監督の画面作りはなかなか深い。

 

狙った恋の落とし方:これほどスマートな中国映画は初めて、中国人の間に
北海道ブームを巻き起こしたのもうなづける。

 

17歳の肖像:1961年のロンドン、グレコにあこがれる女子高校生のありがちな一つの道、大人になる過程を描く。

 

アリス・イン・ワンダーランド:ティム・バートンの世界炸裂、おかしな生きものたちのオンパレード、その中でアリスだけは超地味。

 

 


Ⅱ 今月見た昔の映画のベストスリー

 

① 8 1/2

 現実、夢、喜び、苦悩などなど全ての要素が響きあい、一つの空間を作り出すフェリーニの傑作。


② 白痴

 1950年代前半までの黒澤作品には太い理想主義が力強いが、さらに人間の欲望と聖性が札幌の雪の中に描かれる。


③ 君も出世ができる

 フランキー堺の素晴らしい動き、歌と踊りで物語を進めながら、楽しい気分にさせてくれるミュージカル作品。

 

 


Ⅲ 今月の意外

 

 今月は日本映画の旧作を多く見た。黒澤映画30作品上映、ニッポンミュージカル時代という特集の何本かを見たからだ。神保町シアターで4/3~23の間に21本が上映された“ニッポンミュージカル時代”は、映画館の人の話によれば、あまり集客は良くなかったらしい。残念ながら、日本におけるミュージカル映画の地位を表しているようでもある

 

 そんな中、満席になった作品があったという。21本の内7本しか見ていないけれど私もその作品を見ているので分かる。確かにその作品は他作品に比べて混んでいた。開映の20分前に行ったら残席僅少という状態だった。


 その作品は「踊りたい夜」。水谷良重、倍賞千恵子、鰐淵晴子がダンサーの3姉妹を演じるバックステージもの。少女マンガのにおいもするなかなかに楽しめる作品だった。吉田輝夫、根上淳、佐田啓二の男優陣では佐田が味を出していた。それにしてもなぜこの作品が満席になったのでしょうと聞いてみると、

 

  ①あまり上映される機会がなかった 
  ②鰐淵晴子が出ている

 

という回答だった。
これは意外だった。


 鰐淵晴子は日本人の父、オーストリア人の母の間に生まれたハーフスターのはしり、確か天才バイオリン少女として有名になり、映画のデビューは「ノンちゃん雲に乗る」で、人気の少女スターになった。アイドルなどという言葉もなかった時代、松島トモ子や小鳩くるみなどとともに、少女雑誌の表紙を飾っていた。10歳の時のこのデビュー作が代表作でもあるだろう。その後60歳代まで50年間に70本以上の映画に出ている。

 

 少女だったころの人気は確かにすごいものだった。それにしても、この作品に出演したのは28歳の時。少女ではない。彼女の役はバレリーナだった母親にあこがれバレーを目指す末娘。少女マンガの定番、バレリーナと母親(亡くなっていて出てはこないが)というのが、今回の人気の原因だろうか?
う~む、よく分からない。



 


今月のトピックス:GWの映画

 

Ⅰ 昔の映画に出会っています

 

 今月見た28本の映画の内、13本が昔の映画だった。純然ロードショーとして公開された「抵抗‐死刑囚の手記より‐」の大人1800円以外は、1500円や1200円で上映されていた。なぜかシニア料金はいずれの場合も1000円です…)1200円でニッポンミュージカル時代を上映していた神保町シアターは、
昔の作品だけを上映する名画座だが、それ以外の黒澤特集上映館や8 1/2の上映館は通常は封切り作品を公開しているロードショー館だ。かつて、こうした古い作品は名画座のみで上映されていた。そうした名画座はビデオやDVDに影響されたのだろう、徐々に減っていった。最近ではそれを補うかのように、通常のロードショー館で特に日本映画の特集上映が行われている。

 

 確かに黒澤作品など大きな画面で見てみたいと思わせるものを持っている。
すでにTVでも特集上映が行われたのにもかかわらず、作品によっては平日夜の最終回でもほぼ満席という人気だった。


 映画の観客数はそれほど増えていないのに、映画館のスクリーン数は増えている現在の日本。原因は、今や全スクリーンの80%を超えるシネコンの増加だ。そのシネコンの番組編成にも時々古い映画を見ることがある。今やロードショー作品だけでは多くのスクリーンを埋めきらないというところか。洋画の古い作品では“午前十時の映画祭”と銘打ち、全国25の映画館で1950~70年代の懐かしい映画が50本、毎朝10時の回で上映されている。
 一般1000円、学生500円でシニア料金はなくやはり1000円。
 その映画館もすべてシネコンのようなので、シネコンで「大脱走」や「太陽がいっぱい」などが上映されていることになる。予想より好調のようで集客予定が50万から70万人に上方修正されたとか。これが進めば、シネコンの10前後あるスクリーンの内、1つくらいは昔の映画上映になる可能性は十分にあるのではないだろうか。昔の映画に出会うのは名画座と限ったわけではない時代になりつつあるのかもしれない。名画座にこだわる必要にないのだろう。
 ただ、見るほうから言えば、どこで上映してもいいけれど、料金は1本800円を目指してほしい 。

 

 


Ⅱ ゴールデンウィークは何を見ましょうか

 

 もう何度もお伝えしているように、ゴールデンウィークという言葉は映画業界で生まれました。そのGWがもう間もなく始まります。1週間近いお休みの間映画を楽しむのは伝統文化を守る(?)ようなもの。
 さあ、励みましょう

 

GWに見るお勧め作品、一言で。

(*見ていない作品は責任持てませんが)

●話題の…アリス・イン・ワンダーランド

●面白さは…第9地区

●心揺さぶる…クロッシング

●悲惨な現実…プレシャス、息もできない

●心温まる…てぃだかんかん

●TVの続き…のだめカンタービレ最終楽章 後篇(*)

●叫びたい…ウルフマン(*)

●飛んでる…マイレージ,マイライフ

 

 今月号は古い映画の話題が多くなりました。“映画はいつも新しいものが面白い”という信念で映画を見てきました。いろんなところに今の時代を感じることができるからです。この気持ちは今も変わりませんが、
古い映画も悪くないと感じた今月です。

 

 

 では、良いGWを!良い映画で!!



                         - 神谷二三夫 -


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