2010年 11月号back

急激に寒くなってきました。
心地よい秋の季節が一瞬で過ぎ去り、
次の季節にまっしぐらの感じ。
心が寒くならないよう、
映画館に参りましょう!


 

今月の映画

 9/26-10/25の30日間に出会えた映画は23本、本来もっと作品が増えてもいい季節、特に外国映画の芸術の香り高い作品が例年より少ないような。

<日本映画>

大奥 
パーマネント野ばら 
スープオペラ 
死刑台のエレベーター
脇役物語 
おまえうまそうだな 
ヘヴンズストーリー 
インシテミル
妻の心(古) 
特急にっぽん(古) 
洲崎パラダイス 赤信号(古)

 

<外国映画>

メッセージ そして,愛が残る 
TSUNAMIツナミ 
恋人を家に送って帰る道(古)
君を呼ぶタンゴ(古) 
シングルマン 
冬の小鳥 
ナイト&デイ
ブロンド少女は過激に美しく 
エクスペンダブルズ 
ルイーサ 
国家代表?!
死刑台のエレベーター(古)

 

 

 

Ⅰ 今月のベストスリー

 

①シングルマン
 ロサンゼルスに住むゲイの大学教授、1962年、16年連れ添ったパートナーを8か月前に亡くした彼の、最後の1日をきめ細かく描く作品。ファッション界の巨人トム・フォードの初監督作品は、感情の襞を描いた美しい作品。主演のコリン・ファースがアカデミー賞を取らなかったのは不思議なほど。


②冬の小鳥
 キリスト教系の孤児院(?)に入れられ、外国に養子として旅立っていく子供たちを描く韓国・フランス合作映画。9歳の主人公ジニの孤独な闘い、新しい人生への旅立ちまで、甘さも救いもなく、悲惨さを憐れむ姿勢さえ見せず、彼女の心の変化を描く感動作。女流監督自身が韓国からフランスに養子としてきた人。今月のトピックスもご参照ください。


③ヘヴンズストーリー
 2000年からの10年間、2つの殺人から復讐までの長いお話。一人残された8歳の少女サトがTV画面で目覚めた後の、ある種の解放までの悲しい道程。
山崎ハコ演じる若年性アルツハイマーになる人形造形作家は天使か。休憩ありの4時間38分と長い映画ですが必見です。

 


 次の作品も楽しめます。出かけてください。


パーマネント野ばら
 西原理恵子の世界を描く作品としてはもっとも彼女の世界に近い作品では?
もちろん女性の生き方がその根源です。半年ほど前の公開作品、やっと見ることができました。

 

スープオペラ
 育ててくれたアラ還の叔母さんが結婚のため出ていった家に、いつかおじさんと青年が住みつき、家族のように生活するお話は、もう少し深いところもあるがオペラのように楽しくもある。

 

死刑台のエレベーター
 1957年のフランス映画をリメイク、2つの殺人事件が交錯する話はかなり上手く日本に移され、スタイリッシュな映画になった。ジャンヌ・モローが圧倒的(女の総てを見せる)なルイ・マル作とは少し違うテイスト。

 

ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士
 やっと完結したミレニアムシリーズ。北欧映画らしい地味さが、この派手な話を落ち着いたものにしているが、リメイクされるというハリウッド製ではどうなるか?

 

脇役物語
 益岡徹はこの作品で初めて主役を演じるが、お話はずっと脇役だった役者が主役に…という、なんだかおなしな状況を面白いと思えば楽しめる、ゆったりした人間喜劇。

 

おまえうまそうだな
 違う種類の親のもとで育てられる肉食、草食恐竜が主人公の絵本の映画化。
他の種類を排除しようとするのは人間界も同じ違っていてこそ面白いのにね。

 

ルイーサ
愛猫ティノが死んだ日、2つの仕事を共に失って無職となった59歳のルイーサとたんにお金がないというのもすごいが…、その後の生活が面白く温かい。

 

 

 


Ⅱ 今月の予定外で見た映画

 

 作品不足が続いている。9月の声を聞くと、本来なら作品数が増え始め、
お正月興行の始まる11月末まであふれるのが例年の姿と思っていたのだが。
この間に見られる少し変わった外国映画作品群が楽しみだったのに。

 

 まあ、自分の時間の都合もあり見たい映画がない時間がポカッとできることがある。そんなとき、予定外の映画を見てしまう。
 今月は次の3本。


*大奥
これ、どうも変な味。見に来る女性にとっても女の大奥の方が面白いのでは?
しかも、二宮が柄でなく一番目立つのが阿部サダヲというのはどんなもんでしょうか?


*インシテミル
米澤穂信原作のミステリーだが、ホリプロ50周年記念のこの映画、原作より
つまらないのでは?ミステリーとして上等といえない。


*国家代表?
韓国のスキージャンプチームのお話、実話に基づいている。長野オリンピックも主要舞台の一つ、後半だけはぐっと盛り上がる。今月のトピックスもご参照ください。



 


今月のトピックス:映画祭

 

Ⅰ 映画祭

 

 先週の土曜日10/23から東京国際映画祭がはじまっている。今年が23回目ということは1988年からと思いがちだが、初めは隔年で行われていて、始まったのは1985年という。

 

 85年と言えば私がバリバリに働いていたころ。今もバ位には働いているつもりだが、心も体も入れ込んで懸命に仕事を楽しんでいた。

 

 その頃も映画を見ていたとはいえ、平日に映画館に行く時間はなかった。
週末だけが映画に行けるときだった。見たい映画すべてを見ることはできず、
土日はそれらの新作映画だけを追いかけていた。そのため映画祭にかかる映画に出かけることは全く不可能だった。

 

 こうした映画の見方は今もそれほど変わっていない。水曜日も休みの週休3日で働くようになって6年目、しかしなかなか映画祭に出かけられない。

 

 1年間遊んでいた6年ほど前には東京国際映画祭のある部門のボランティアもしていたのに、その後ものめりこむことはおろか、ほとんど作品を見ることさえないのは、普通に働いている人がほとんど見られない作品を見ても仕方ないという気持ちがどこかにあるためだ。と、自分の映画祭に対する気持ちはおくとして、10月、11月と2つの国際映画祭が東京で開催される。

 

◎第23回東京国際映画祭

10/23~31 TOHOシネマズ六本木ヒルズ(+シネマート六本木)

コンペティション(14本)、特別招待作品(21本)、アジアの風(39本)、ワールドシネマ(11本)、日本映画・ある視点(8)、natural TIFF(10本) 他にも多くの映画祭、上映会が関連して行われる。

 

 

◎第11回東京フィルメックス 

11/20~28 有楽町朝日ホール・東劇・TOHOシネマズ日劇・国際フォーラムホールC

コンペティション(10本)、特別招待作品(10本)

 協賛企画として:アモス・ギタイ監督特集、ゴールデン・クラシック1950

 

他にも数多くの映画祭が大小取り混ぜ開催されています。友人のEさんから“ヒマラヤ映画祭にかかわることになって”とメールがきました。

知らない映画祭ですが、

サイトhttp://www.himalaya-japan.net/hfft10/ 

を見ると3回目だそうです。
 11/6-12には第1回東京ごはん映画祭なんてのも開催されます。
 他にも色々な国・地域の映画祭が年間を通して行われています。興味と時間のある方は出かけてください。

 

 

 


Ⅱ 韓国からの養子

 

 70年代、ハワイやアメリカ西海岸への航空機(特にノースウエスト)に乗ると、韓国人の乳飲み子が大量に乗っているのに出会ったものだ。アメリカに養子としてもらわれていくということだった。

 

 韓国は長い間養子大国として君臨してきた。最近は中国やロシア等に抜かれているようだが、今も養子を送りだしている国には違いない。

 

 今月は偶然にも韓国の養子についての映画を2本見た。
「冬の小鳥」と「国家代表?!」だ。


 「冬の小鳥」の施設は孤児院というより養子送りだし施設と呼ぶ方が正しい。主人公ジニが施設にいたのは1年位のものだろうか。その間にも何人もの子供たちが別れていくのだ。もちろん国内(先輩の悲しいエピソードもあり)もあるが、映画ではアメリカを中心に海外への旅立ちが多く出てくる。監督ウニー・ルコント自身が9歳の時フランスへ養女として出されたという。


 「国家代表?!」は韓国スキージャンプチームの話だが、チームの一人ボブは養子に出されたアメリカから韓国に戻り、母親を探すために帰化して韓国チームに加わり、メダルを取って母に呼びかけようというお話。実話だそうで韓国では有名な話なのだろう、映画も大ヒットしている。映画の最後にはチーム本人たちの写真が出てくる。

 

 養子自体はそれほど良いことだとは思われないが、別の地で才能を開花させることができたのは子供にとって良かったことかもしれない。それにしても、ジニの最後の表情を見ると、どこかの部分が大人になってしまったようで心をつかれる。

 

 

 

Ⅲ アーサー・ペンの死

 

 60年代の映画の大きな動きと言えばフランスのヌーヴエル・バーグと、少し後のアメリカのニューシネマだろうか。

 

 ニューシネマの最初の作品が「俺たちに明日はない」で、私の大学1年の時に見た作品。その衝撃はかなりのものだった。軽い気持ちで銀行強盗になっていくボニーとクライドとその一味、その妙な軽さと最後の強烈さのアンマッチが新鮮だった。

 

 それより前の「奇跡の人」ではたっぷり泣かせてくれた。俺たちに・・・」の後ではジーン・ハックマンが私立探偵を演じた「ナイト・ムーブス」が結構好き。

 

 9/28 88歳で亡くなられた。アメリカン・ニューシネマと言えばやはりいつまでもアーサー・ペンを思い出します。
 ご冥福をお祈りします。

 

 

 

Ⅳ 最近の経験

 

①異様な混み方

 10/2ユナイテッドシネマ豊洲に「パーマネント野ばら」を見に行く。10:45の開映に対し10:12頃に切符売り場に到着。今までに見たことないほどの長蛇の列ができていた。それまでに見た最長列の4~5倍の長さ。しかも列は遅々として進まず、刻々と開映時間が迫ってきた。チケット販売ブースは10近くあるのに係員がいて売っているのは3つしかない。これでは列は進まないよ。
やっと販売ブースにたどり着いたのは10:52頃、残念ながら本編がはじまっていた。「パーマネント野ばら」は翌日に回し「大奥」なんかを見てしまったのだった。後でチェックしてみるとこの日「機動戦士ガンダム00」が公開されその関連商品発売で人手がとられチケットブースの人が減ってしまったらしい。
侮るなかれガンダムだ。


②映画の前に読みあわせ会
 絵本の映画化「おまえうまそうだな」の初日に行ったら、その回は予告編の代わりに原作者の読みあわせ会が行われた。原作者宮西達也は結構若く見える(調べたら54歳)男性だった。

 大きな絵本を開いて観客に見せながら読んでいく。この絵本について何も知らない私は、始まる前にストーリーを読んでしまうとはなんと大胆なと思ったのだが、先生の元気な(とても54歳とは思えない)声で読まれた「おまえうまそうだな」は、なかなか面白かった。そして、これも調べたら、この絵本はシリーズで随分沢山出されていて、シリーズ販売総計は150万部ともあった。
道理で、お話は読みあわせされたもの以上に大きく膨らんでいた。

 


 今月はここまで。

 


                         - 神谷二三夫 -


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