 
			  今年も12月がやって来る。
			      忙しいのとそれがうれしいのとで、
			      なんだかあたふた、ドキドキの日々が続きそう。
			      落ち着いて心を鎮めるのは、
			      やはり映画館。
			      
			      
			    
				     10/26~11/25の31日間で出会った映画は32本、今月は珍しく東京国際映画祭、東京フィルメックスの2つの映画祭で、初めて1本ずつの映画も見ました。
				    午前十時の映画祭も「裏窓」で初体験。
				     さらに、市川崑(6本)、小津安二郎(7本)の作品群にも通い、作品数が増えました。
				    
			      
武士の家計簿(試写) 
                      雷桜
                      乱暴と待機 
                      マザーウォーター 
                      玄牝 
                    うまれる
(市川崑)
                      暁の追跡(古) 
                      愛人(古) 
                      青春怪談(古) 
                      黒い十人の女(古) 
                      処刑の部屋(古) 
                      ビルマの竪琴(古)
(小津安二郎)
                      東京の宿(古) 
                      一人息子(古)
                      浮草(古) 
                      出来ごころ(古)
                      生まれてはみたけれど(古) 
                      淑女と髭+突貫小僧(古) 
                      淑女は何を忘れたか(古)
パリから5時間(東京国際映画祭) 
                      クロッシング 
                      クレイジーズ
                      わたしの可愛い人シェリ
                      100歳の少年と12通の手紙 
                      怪盗グル―の月泥棒3D 
                      ノーウェアボーイひとりぼっちのあいつ
                      裏窓(午前十時の映画祭) 
                      マチェーテ 
                      約束の葡萄畑~ある醸造家の物語
                      スプリング・フィーバー
                      黒く濁る村 
                    夏のない年(フィルメックス)
今月は圧倒的な新作がなくベスト1は該当作なしです。
			      反面古い作品や映画祭の作品に強い作品が多々ありました。
①該当作なし
②-1 スプリング・フィーバー
		         まるでゲイ映画かという描写が続いて、よく中国で作ることができたなと感心しつつ、ラストに至って心の中に“世の流れ”“風来”などの言葉が、流れていったような気がする、寂寥感が見事。
		        
②-2 怪盗グル―の月泥棒3D
			       面白かった。孤児院の子供とか、オタクの宿敵泥棒とか、怪盗グル―の母親とか・・・、楽しめるアニメ、3Dも結構バッチリ。
		        
③-1 ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ
			       ジョン・レノンのビートルズデビュー直前までを描いて、彼の人となりを見せてくれる。伯母と実母との間で反抗しつつ成長していく姿、その後のレノンを感じさせてくれる。
		        
③-2 100歳の少年と12通の手紙
			       少年は口の悪いピザ屋のオーナー、ローズとのみ会話する。彼の反応を恐れている両親には会いたくもないという正直さ。それをはっきり描いていて、この辺りが何かと良心的になりがちな日本映画と違うところ。
次の作品もお勧めです。
★武士の家計簿:江戸時代末期加賀藩のそろばん係が残した家計簿に基づくお話。武士文化の、内実なくても体面保つという高楊枝の精神は今の日本にも。
★乱暴と待機:2組の男女、片方は本当の夫婦だが、片方は偽の兄弟。女同士は高校時代からの関係があり、この虚実の交錯する関係の中で、ぶりっこの女主人公がいや~凄いです。
★うまれる:出産にまつわる4つのエピソードを映すドキュメンタリー。
		        素直に共感できる内容、生まれてきてくれてありがとう
★マチェーテ:B級映画愛好家御用達作品。口あんぐりのテイスト。お好きな方はどうぞ。それにしても主演者の6頭身が凄い。
★黒く濁る村:理解不能な部分も散見されるものの、観客をぐいぐい引張ってゆくのは流石韓国映画。TVドラマのように濃い乗り。
●エレン・バーキン
「クロッシング」で嫌味な女性捜査官を演じるのはエレン・バーキン、いつも口を曲げて嫌味な女を演じてきたエレン・バーキン、代表作と言って頭に浮かばないが、あの顔は忘れられない。
		        
●ミレーヌ・ドモンジョ
「100歳の少年と12通の手紙」で口の悪いピザ屋ローズの母を演じているミレーヌ・ドモンジョは、かつて第2のブリジット・バルドーとも呼ばれたフランスのグラマー女優。私の世代では「ファントマ」シリーズ位からしか知らないが、バルドーより親しみのもてるお手軽なグラマーとして、その柔らかい雰囲気に結構人気がありました。
		        
●ジュリー・アンドリュース
「怪盗グル―の月泥棒3D」でグル―の母親の声を担当しているのはジュリー・アンドリュース、もちろん「メリー・ポピンズ」「サウンド・オブ・ミュージック」の。彼女は童話も書いていたと思うけど、強い怖い伯母さんをきっちり演じているのがいいです。
◎市川崑 初期作品集
市川監督はよくモダンだと言われていた。
艶のある端正な画面作りで作られた最近の作品でもそれは感じられたものだが、今回古い作品を見て、むしろ人間関係が新しかったんだと思った。岡田茉莉子が初々しい「愛人」や、北原三枝のボーイッシュさや轟夕紀子のかわいさ(?)が印象に残る「青春怪談」は新鮮だった。
18作品の内6作品しか見られなかったのは心残り。高校生の頃TVで見ただけだった「ビルマの竪琴」には深く感動した。白黒の画面に「埴生の宿」が流れる静かな再会の場面は忘れられない。言葉を交わすことなく去ってゆく安井昌二の後姿には見入ってしまった。
◎小津安二郎の世界
 11/20に始まって12/29まで上映されている神保町シアターの小津安二郎の世界は、現存する全劇映画36作品を上映するもの。生誕100年だった2003年に連続上映され、TVでも放映されたがその時は見ていなかった。まだ、7本しか見ていないが、サイレント作品にも素晴らしいものがあった。さらに、サイレントを含め若いころの作品はモダンさがかなり目立つ。
			       「出来ごころ」は長屋の住民を描いたサイレント作品。これこそ落語的世界を描いた映画で、語りのテンポの良さには感心した。笑いと人情話、カラッと乾いた作風がいい。
			       「浮草」は濃い人間ドラマを描いた作品。中村鴈治郎の存在感が圧倒的だ。
		        サイレントの自作「浮草物語」のリメイク。今回この「浮草物語」を見る時間がないのが心残りだ。
今年一杯続く小津安二郎の世界。これからも見たい作品が続く。
		        
◎東京国際映画祭 アジアの風 「パリから5時間」
イスラエルの若いロシア系の監督が作った作品は、久しぶりにシャンソンがたっぷり流れる楽しい作品。離婚しても元妻家族と付き合いを続け、息子のバーミツバ(ユダヤ教の成人式)の祝いに一緒にパリに行こうと計画している男性。しかし、飛行機恐怖症、それを克服するため精神科医に通っている。息子の音楽の先生との恋・・・など、ニューヨークの作品と言ってもよい現代感あり。監督は上映後に主人公にとっての一種の憧れとしてのパリと題名を付けたと話していた。5時間はパリからイスラエルへの飛行時間、日本は12時間ですね。
		        
◎午前十時の映画祭 「裏窓」
昔の作品50作を午前十時から全国の映画館で1年間にわたって上映する映画祭、アルフレッド・ヒッチコックの作品は2作品が選ばれた。「北北西に進路を取れ」と「裏窓」だ。「裏窓」はピッチコックらしい縛りのある設定で、女性陣の生き生きした会話が楽しいものだった。
◎東京フィルメックス 「夏のない年」
若い女性監督の手になる作品は、すみません、私にはちょっと退屈でした。マレーシア映画は初めて見た。
 偶然にも2本の出産映画が上映されている。
		        「玄牝(げんぴん)」と「うまれる」だ。
「玄牝」は岡崎市にある吉村医院を舞台に、自然に子供を産もうとするこの医院のポリシーに共感して集まった妊婦たちを追ったドキュメンタリー。医師をはじめ病院のスタッフと妊婦たちについてのドキュメンタリーを作ったのは河
			      瀬直美監督、フランスで勲章までもらったカンヌに愛された人だ。一面この病院のPR映画かいという気もする。それもあってか、途中で急に河瀬監督の発言が入り、何故か直截に死と結び付けられるのはいかがなものか。
吉村医師は「うまれる」にも1場面登場している。豪田トモという37歳の男性監督が作ったドキュメンタリーは、4つのエピソードがそれぞれストーリーを持ち共感しやすい作りだ。障害児と向き合う夫婦や、出産予定日にお腹の中で子供が亡くなった夫婦など慎重に選ばれたエピソードが上手く機能している。
		        
 どちらの映画館も通常は訪れない人たちが見に来ていた。もちろん、これから子供を産もうとしている女性及びカップルだ。「生まれる」の方には子供連れの夫婦も多かった、
		        
		        
		        
		        
いよいよお正月映画のロードショーが始まった。
今年の第一弾は11/19(金)封切りの「ハリー・ポッターと死の秘宝Part 1」だ。この、稀代の大ヒット映画シリーズもいよいよ終末に近づき、最終作はPart 1、2として2部作で作られた。
Part 2は来年の公開だ。11/19の封切りはお正月映画としてはあまりに早い印象だが、世界同時に近い11月の公開となっている。
12/1には「Space Battleship ヤマト」が公開され、本格的お正月映画シーズンに突入する。
今年の正月映画ラインナップは次の通り。
私が勝手に興業成績を予想しました。「武士の家計簿」以外は1本も見ていませんので、当たるも八卦当たらぬも八卦ということでよろしく。興行はもともと水ものと言われますし。
<大作群>
*ハリー・ポッターと死の秘宝Part 1:
   ぶっちぎりのトップか?
  *Space Battleship ヤマト:
   ハリー・ポッターにどこまで迫れるか?
  *ロビンフッド:
大作群の中ではちょっと苦戦か、
   でも、リドリー・スコットなんだからなあ。
  *トロン レガシー:
   CGが発達した今こそという気もするが…ちょっと微妙か?
  *最後の忠臣蔵:
出来にもよるが日本人は忠臣蔵が好きだと言われるので
   ある程度は行く?
  *シュレックフォーエバー:
   このお正月はディズニーアニメがないのでちょっと得。
  *相棒 劇場版Ⅱ:
前作スマッシュヒットの余勢をかってお正月に登場。
<話題作群>
*武士の家計簿:
   お正月らしい明るさ、ゆるい笑いがいいかも。
  *ノルウェイの森:
   村上春樹原作、ビートルズの曲も使いと話題は多いが…。
  *酔いがさめたら、うちに帰ろう:
超人気の西原理恵子と夫の鴨志田との話、予告編では
清志郎の曲が耳に残る。
<小粒ながら心に残る(だろう)作品群>
*クレアモントホテル:
   ロンドンの小さなホテルでの人の交流を描く。
  *人生万歳:
   ウディ・アレンの作品です。
  *シチリア!シチリア!:
   「ニューシネマパラダイス」のトルナトーレ監督の新作。
  *海炭市叙景:
日本の北の街に暮らす人々の姿を描く熊切監督の新作、
   函館では11/27より先行ロードショー。
  *エリックを探して:
ケン・ローチと言えば厳しい現実を描くイギリスの名匠、
初めてのハッピーエンド作と言われる。
以上、お正月休みに毎日通っても間に合わない数の映画が公開されます。
しかも1/1元旦は1000円で見ることができます。
  どうぞお楽しみください。
 映画の宣伝に限らないが、何かを人に伝えようとする時、
  多くの人に分かりやすい言葉・基準を使って訴えることが多い。
  ギネス、世界遺産などはその基準だし、最大(級)などの最上級言葉も一番訴えやすい言葉として多用される。
今年は少し静かだが毎年今くらいから良く使われる「アカデミー賞確実!」は、ノミネートが発表されるアカデミー賞授賞式1か月前までに良く使われる。発表されて、ノミネートされていなければ使えないことになるので。
11/27に封切られる「アメリア 永遠の翼」は、大西洋横断飛行に初めて成功した女性アメリア・イヤハートについての映画。「ナイト・ミュージアム」でも出てきましたよね、エイミー・アダムスが演じてました。
今回の映画ではヒラリー・スワンクが演じます。彼女はアカデミー主演女優賞2度の受賞者。ポスターにも、予告編にも“アカデミー賞受賞“と謳われています。
共演者はリチャード・ギアです。超有名なスターで、スワンクより一般的には有名でしょう。しかし、アカデミー賞は受賞していない。そこで付けられたのが“ゴールデングローブ賞受賞”の言葉。
ゴールデングローブ賞ってそこまで有名だったでしょうか?却ってリチャード・ギアが貧弱に写ったりして。
ちなみにゴールデングローブ賞はハリウッドにいる外国人特派員の投票による映画賞。アカデミー賞より1カ月ほど早く選出されています。
 今月はここまで。
  次回はクリスマスにお送りします。
