なかなか平常心に戻れない状況が続きます。
3.11の後、明るすぎない町の風景になれてきて、
いつの間にかこれでいいとなってきました。
普通の日常を取り戻す努力が大事、
私の場合は、そう、映画館。
3/26~4/25の31日間、余震に揺られながらも出会えた映画は31本、古い映画が多くなりました。
特に日本映画は<華麗なるダメ男>という特集に通いまして…、まあ、自分にないものにあこがれるということでしょうか。
高峰秀子さんの特集上映にも出かけています。しかし、この2本にもダメ男が出没、特に2本ともに出てくる宝田明はどちらも見事なダメ男ぶり。
落語物語
愛しきソナ
八日目の蝉(試写会)
少女たちの羅針盤(試写会)
まほろ駅前 多田便利軒
(古)
晩菊
暖簾
女ごころ
魚影の群れ
ろくでなし
秋津温泉
火宅の人
(以上、ダメ男)
放浪記
女の座
(以上、高峰秀子)
ザ・ファイター
わたしを離さないで
FANTASTIC MR.FOX
悲しみのミルク
SOMEWHERE
お家をさがそう
悪魔を見た
ザ・ライト エクソシストの真実
キラー・インサイド・ミー
ガリバー旅行記
(古)
ある日どこかで
天国は待ってくれる
ユタから来た男
暗殺者の家
誰がために鐘は鳴る
影なき男
嘆きの天使
①わたしを離さないで
何をもって人間というか、死を意識しながら、生きるとは何か、静かに語りかける映画です。カズオ・イシグロの原作の力もありますが、映画の静謐な語りかけに心揺さぶられるのです。
②八日目の蝉
角田光代の原作も素晴らしいのでしょう。母と子、家族の関係、人間関係について、静かに考えさせられ、感動させてくれる映画です。母娘が訪れたのは「二十四の瞳映画村」です。
③少女たちの羅針盤
女子高生たちの世界、若い感性で芝居作りに走る彼女たちがまぶしい。この時期の女の子でないとできない元気ではじけた世界、しかも殺人付き。
次の作品もお勧めです。
GWにお出かけください。
●ザ・ファイター:実在のボクサー、ミッキー・ウォードの実話の映画化、ステージママならぬボクシングママのあり方が凄い、これが実話というところに驚く。
●悲しみのミルク:ペルーからやってきた映画は、歌に託された母の記憶を、
娘が歌うことによって閉ざした心を開いていく。
●愛しきソナ:プライベートフィルムとはいえ、前作「ディア・ピョンヤン」に引き続き、北朝鮮に住む親族の驚くべき姿を見せてくれる。
●SOMEWHERE:自堕落な生活を送るハリウッドスター、離婚した妻との間の娘と過ごすうち、どこにも居場所が見つけられない男の宙ぶらりんな状況をセンス良く描く。
●キラー・インサイド・ミー:50年代のアメリカ、きれいに整った表の顔の裏で、そこに収まりきれない裏の欲望がうめきをあげている。
●まほろ駅前 多田便利軒:主役の二人がいい味を出していて、20代後半の男たちの、不思議な不安定さと落着きのバランスが何ともリアル。男映画でのこのリアルさは珍しい。
◎男女のアカデミー賞助演賞を取った「ザ・ファイター」のクリスチャンベールとメリッサ・レオは、確かに出てきただけで“これはアカデミー賞!”と分かるくらいの強い演技。ちょっと強すぎるかも。
◎落語家がわんさか出ている(と言って、私は知らない人ばかり)「落語物語」は、まあ、面白いけど、何も女房を死なせなくてもよいのでは?楽しげな夫婦だっただけに余計残念。
◎「天国は待ってくれる」のオリジナル版は、ウォーレン・ベーティによるリメイク版とはかなり違う。上質漫画の趣。
◎アンソニー・ホプキンスはやはりハンニバル・レクター博士の印象が強く、エクソシスト以上におどろおどろしい感じが濃厚。
◎「少女たちの羅針盤」試写会では監督、出演者の挨拶があったが、登場した成海璃子のイメージチェンジぶりには観客全員が驚いたよう。次作が心配?期待?
◎終戦から1962年までの主人公たちの変遷を描く「秋津温泉」は、17年という期間にしては、大きな変化が見られるのは、戦争という大きな事柄があったためか。バブル後20年の経過を考えると、その変化の度合いがかなり違うことにショックを受けた。
午前十時の映画祭で「ある日どこかで」を見に出かけた。午前十時には時々久しぶりに映画館に来るおじさんなんかがいらっしゃる。右端から4つほど中に入った席に座っていると、一つ置いて右、つまり端から一つ入った席におじさんがやってきた。上映開始まであと五分、叔父さんの右隣、端の席はまだ空いていた。で、叔父さんは端に座ってしまった。確かに、中に入って選べた方がいいですよね。3分前、親切そうな青年がやってきて、“いいですよ”と言いながら空いていた一つ前の端席に座った。1分前、若い女性がやってきて“すみません、ここ…”と青年に話しかけた。優しき青年はさらに一つ前の端席へと動いたのだった。場内が暗くなり予告編が始まった。
と、中年の男性がやってきたのだ。青年は話しかけられる前に隣に立った男性の気配を感じ、自ら動いて、さらに一つ前の、しかし端席は空いていなかったので、端から3つほど中に入った席に座ったのだった。青年にとってみると、
オリジナルの席より3列前に、しかも内側席になってしまった。しかも、その間に青年の放浪ぶりを見ていて恐れをなしたおじさんは、自分の席、つまり端から一つ入った席に戻っていたというのに。多くの映画館が座席指定となってから上映開始ぎりぎりにやってくる人が増えた。
確かにインターネット予約をすれば早く行く必要はない。予告編が始まってから来る人もちらほら。どんなに空いていても、指定された以外の席に座るときは、それなりの覚悟をしないといけない。もし、自分の席が占有されていたら、親切心から、“いいですよ”などとは言わず“ここはH-8ですよね?”とはっきり申し上げよう。
「秋津温泉」は4/20は16:40の回しかなかった。午前中は用事があり、神保町で16:40の前にもう1本見るためには時間が限られ手近のユナイテッドシネマ豊洲で見ることにしたのだが、「ガリバー旅行記」しか見る作品がない。
13:30の回を2Dで見ることに決めチケットカウンターへ。“2Dの吹き替え版ですね?”“えっ?”と答えながら、やってしまったかと思いつつ、“どうされますか”の問いに“仕方ない、あきらめて見ます”と答えていた。
ハリウッド大作で日本語吹き替え版と字幕版が用意されるようになって久しい。当初アニメ作品を中心に子供向け作品が主だったものが、難しい漢字を読めなくなった大人たちのためにもと、多くの大作、人気作にも広がった。今や、作品によっては字幕版を見ることの方が難しくなっているのだ。そういう状況を知っているので、“あきらめます”と答えたのだ。
ガリバー旅行記をお気楽に映画化した「ガリバー旅行記」はジャック・ブラックの主演だ。彼は製作にもかんでいる。
「キングコング」にも主演したジャック・ブラックはかつてロック・グループで歌っていた。中古レコード店の店員を演じた「ハイ・フィデリティ」でブレーク、その後映画スターになってからも、「スクール・オブ・ロック」をヒットさせるなど、ロック魂を感じさせるスターなのだ。
だから、ラストで歌が出てきても何の不思議もない。吹き替え版で何がいやと言って、下手な吹き替えで歌われる歌ほどいやなものはない。
映画会社は多くの人に見てもらおうと吹き替え版を用意しているつもりだろう。しかし、本当にそれで良いのだろうか?言わば偽物を見る人に提供しているのだ。本当の楽しみに気付かせることなく、安易に楽しめればよいとして吹き替え版を作る。
ハリウッド大作がかつてほどの人気がなくなったとされるが、偽物の楽しみのメッキがはげたという感じもする。本物の楽しさを知らせる気概がない限り本物のハリウッド復興はないと申し上げたい。
高井英幸氏は現在の東宝社長、2002年以来その職にある。「映画館へは、麻布十番から都電に乗って。」という本を書かれている。映画漬けであった中学時代から大学での映画研究会の活動、更に東宝入社後、スカラ座、日比谷映画など映画館勤務の状況など、読みどころ満載、映画好きにはこたえられない内容の本だ。まだ、読了していないのにお伝えしたくなってしまった。
1941年生まれの70歳。
映画の黄金時代1950年代が10代のころにあたり、名作の数々に感受性の高い年齢で出会っている。映画好きになるのも当然か。好きから、そのまま東宝に入社と珍しくも幸福な人生だ。
中学、高校時代、有楽町に加え自宅近くの麻布十番の映画館でも幅広い作品に出会っていた様子が書かれている。出会われた作品の幅の広さにも感嘆するが、その中で色々なジャンルの作品が出てくるのには、そうだったよなあという感慨を抱いた。
洋画に入れ込んでいらした中学高校時代は、西部劇、ミュージカル、史劇、冒険もの、戦争映画、空想科学映画、ディザスターものなど、東宝入社後、映画館勤務を経て36歳で映画製作部門へ移動したころは、青春映画、サラリーマン喜劇、特撮もの、時代劇、文芸作品などの作品に、出会っていらっしゃる。
今、映画をジャンル分けすることは以前に比べ少なくなったように感じる。
“名作はどんなジャンルであれ名作”であり、ジャンルにこだわる必要はないのだが、本を読んでいて感じるのは最近はジャンルの幅が狭まっていることと、
ジャンルに特化した面白さを感じることが少なくなったのではないかということ。
昨年、日本映画は時代劇が10本以上作られ、ジャンルとしての時代劇復活の印象があったが、西部劇は1本も公開されず、今年になってやっと「トゥルー・グリット」が1年半ぶりにスクリーンにかけられた。
50年代のMGMミュージカルのほとんどを製作したアーサー・フリードや、
西部劇の神様と言われたジョン・フォード監督のように、特定ジャンルに特化した映画人も今や珍しくなったし、特定ジャンルのファンも、一部アニメなどオタク的ファン以外には出会わない。作る方も見る方も幅広いジャンルの作品に出会うことが必要だと申し上げたい。
「婚前特急」という映画をご存知でしょうか?
4/1に東京では2つの映画館で封切られました。“このたび、わたくし池下チエは、5人の彼氏を査定します”というのが、映画のチラシに書かれた惹句。
主演は吉高由里子、男優陣は加瀬亮、青木宗高、榎木孝明、吉村卓也、浜野謙太、監督は1978年生まれの期待の新鋭・前田弘二とある。
この作品を見に出かけたのは4/17、公開3週目の日曜日だった。その前に見ていた映画の終了時間の関係で、劇場に着いたのは上映1分前。確かにぎりぎりの時間ではあったけれど、満席になることはあるまいと思っていた。ところが満席だったのである。
この映画、それほど話題になっていたとは思えない。吉高由里子はそれほど人気があったろうか?色々な映画にも出ているが、あまり印象には残っていない。超人気の男優が出ている訳でもない。何なんだという題名だし、前田監督が一部で人気なんだろうか?
確かに、どこかで(新聞評だったか?)で面白いと読んだか、聞いたかした。それで出掛けたのだが、そういう人が多かったのだろうか?こういう不思議な現象に出会うと、映画館に来た人一人一人に、何故この作品を選んだのかと聞きたくなる。その情報はどのように手に入れたか知りたくなる。
いずれにしろ満席の映画館は久しぶり、事前に話題になっていない作品としては超珍しい。で、まだ見ていないのである。どんな作品であれ、侮るべからずと申し上げたい。
「悲しみのミルク」は実は2度見てしまった。1回目は体調が悪く、途中でうとうとしてしまった。だから、ジャガイモの意味が分からなかった。
2回目に見たのは、これまた前の映画の関係で予告編が始まってからの入場になった。こちらも始まって4週間目の日曜日だったのだが、ほぼ満席、空いていたのは一番前に3席のみ。その後、これも埋まり満席だった。
一番前のほぼ中央に座ってふと右を見てみると、薄暗い劇場の右の壁近くにベビーバギーが置かれている。その時、子供というより赤ちゃんの声が聞こえた。目を凝らして見ると、通路を挟んで右側最前席に若夫婦と赤ちゃんとおばあちゃんがいるようなのだ。
これはなんだ?
この映画、いくらファンタジーっぽいと言ってもドラえもんではない。
一家で見に来る映画か?その後も、時々泣き声が聞こえ、一度は父親が抱いて外に出て行って、・・・戻ってきた。あまり泣かない赤ちゃんだったとはいえ、時々は聞こえてくる。
まさか「ミルク」だから来たわけじゃないよね?どうしても誰かが見たかったんだろうけど、そういう時は、隣のスクリーンでやっていた「多田便利軒」ではないけれど、どこかに預けてくるようにと申しあげたい。
今月はここまで。
来週からはゴールデンウィーク、映画業界が使い始めたこの言葉通り、映画館で過ごしましょう。