2012年 1月号back

やっと本格的な冬が来た。
大変な年だった2011年も冬の寒さとともに、
終わりを迎えようとしている。
そして今日はクリスマス。
何か良いことが起きますように。
良い映画に出逢えるように、
映画館で待機してます。

 

今月の映画

 11/26~12/25、クリスマスの日までの30日間に出会った映画は29本、年の最後の追い込みに、正月作品が加わり、かなり豊富な作品群がそろいました。

<日本映画>

恋の罪
ハード・ロマンチッカー 
RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ
不惑のアダージョ
怪物くん 
源氏物語 千年の謎
(古)舞姫 
芸者小夏 ひとり寝る夜の小夏 
悪女の季節 
ヤクザ囃子
霧ある情事
ある落日 
愛染かつら 
続愛染かつら 
告白的女優論

 

<外国映画>

新少林寺 
タンタンの冒険 ユニコーン号の秘密 
クリスマスのその夜に
リアル・スティール 
ジョージ・ハリスン リヴィング・イン・ザ・マテリアル・ワールド
無言歌
宇宙人ポール
ミッション・インポッシブル ゴースト・プロトコル
灼熱の魂 
ブリューゲルの動く絵
エル・ブリの秘密 世界一予約のとれないレストラン
永遠の僕たち
(古)ジュリア

 

 

 

Ⅰ 今月のベストスリー

 

① 無言歌
 今から50年ほど前、1956年毛沢東が“自由な批判を歓迎する”と発言し、その数カ月後、自由に発言した人々に対し「反右派闘争」を開始。彼らが教育のために送り込まれたゴビ砂漠の収容所を描く物語は、その厳しさに言葉も出ない。多くの死人を出しながら、次に送り込まれる囚人のために強制送還されるラストには虚しさを感じる。当然ながらというべきか、中国ではまだ公開されていないという。


②-1 タンタンの冒険 ユニコーン号の秘密
 ベルギーの漫画、タンタンの絵はどちらかといえばほのぼのとした絵柄、そのほのぼのタンタンから始まるスピルバーグ監督によるアニメ作品は、脚本が上手く話の運びがスピーディ。多分日本人には受けにくいアニメの絵柄が足を引っ張るだろうけど、何だか無声映画の冒険ものの雰囲気がある楽しい作品。


②-2 ミッション・インポッシブル ゴースト・プロトコル
 アクション映画の王道、ノンストップアクションでひっぱる4作目は、モスクワ、ドバイ、ムンバイ、シアトルと世界を股にかけ話が展開する、正にハリウッド的アクション大作。


③-1 RAILWAYS愛を伝えられない大人たちへ
 60歳を迎え引退しようとしている電車の運転手、長年連れ添った妻は看護師としての仕事を久しぶりに再開しようとしている。自身も間もなく還暦となる三浦友和が無口な主人公を好演、渋い魅力を見せている。


③-2 宇宙人ポール
 いちばん楽しんだ作品が宇宙人ポール、イギリスからやってきたオタク二人が、宇宙人と接近遭遇・・・。隠れた楽しみがいっぱいです、特に70年代の宇宙ものを楽しんだ人には。S・スピルバーグやS・ウィーバーとかまで出てきますよ。

 


 次の作品もお勧めです。

 

●新少林寺:リー・リンチェイという名前でジェット・リーがデビューした1982年の「少林寺」から約30年、今回もなかなかに濃いドラマで、見ごたえ十分。

 

●恋の罪:今一番濃い日本人監督といえば、園子温、またもやけどしそうなドラマです。TV的でないドラマの連続、ちょっとだけ観念的すぎるところもありますが。

 

●クリスマスのその夜に:北欧からやってきたクリスマスストーリーは、ハリウッド製と同じくいくつかのお話からなるストーリー、押し付けがましくない描き方がほのぼの心に訴えます。

 

●リアル・スティール:ミッション・インポッシブルとともにいかにもハリウッド的な前向きな娯楽大作、ロボットのボクサーというのがありそうな未来。

 

●灼熱の魂:中東のある地域からやってきた母には重い過去があった。母の死の後、その遺言で、父と兄を探す姉弟、魂を揺さぶる真実がラストで明かされる厳しいドラマです。

 

 


Ⅱ 今月の懐かしい人

 

★メリル・ストリープ
 などというと、今でもものすごく出演作があるじゃないかと反論される。
この5年間でも、マンマ・ミーアやダウト、ジュリー&ジュリアや恋するベーリーなどが思いつく。
 今回は彼女の映画デビュー作「ジュリア」を見てしまったのである。
ヴァネッサ・レッドグレーヴを見たくて午前十時の映画祭赤に出かけたのであるが、メリル・ストリープが金持ちの娘、嫌味なお嬢さんとして出てきて思い出したのだった。
 この作品の後「ディア・ハンター」に出演し、更にはもう少し後で「ソフィーの選択」でアカデミー賞を取るのだが、あの頃彼女には東欧移民の娘とい印象があったなあということを。白い、透き通るような肌がその印象を強めていた。


★シガニー・ウィーバー
 これまた、最近でも結構出ている大女優である。(偶然にも2人は共に1949年生まれ)だって「アバター」もほぼ主演ですよね。もちろん「エイリアン」で超有名だし、「ワーキングガール」や「ゴーストバスターズ」もある。
いずれにしてもSF作品の女主人公としてはこの人以外にいない。今回「宇宙人ポール」にも出てくるのだが、SF作品へのこうした出演は「ギャラクシー・クエスト」に次ぐもの、そのパロディぶりを楽しんで出演しているのがいいですよね。

 

 

 

Ⅲ 今月の注目の人

 

サイモン・ペッグ
 「宇宙人ポール」のオタク二人連れの片割れを演じているサイモン・ペッグは、「ミッション・インポッシブル ゴースト・プロトコル」にも出演、
更に「タンタンの冒険 ユニコーン号の秘密」にも出ているのです。インターポールの2人組、トムソンとトンプソンのトンプソンの方です。
 お正月作品3作に出ているのは凄い。1970年生まれのイギリス人、脚本も書く彼は、「ミッション・インポッシブル3」(2006)にも出演していましたが、その後に「ホット・ファズ」という警官のコメディに、今や相棒といえるニック・フロストと共に脚本・主演をしてブレイク。ニック・フロストは「宇宙人ポール」のもう一人の方ですし、「タンタン」ではもちろんトムソンを演じています。「宇宙人ポール」の脚本は2人で手掛けています。

 

 

 

Ⅳ 今月のつぶやき

 

◎神保町シアターの岡田茉莉子特集で9本を見た、うち2回にはトークが付いていた。訥々とした語りで面白かったが、2回目には夫の吉田喜重監督が飛び入りしかしちょっと話が長かった。

 

◎「タンタンの冒険 ユニコーン号の秘密」は、細かいところまで脚本が練られていてスムースな映画作り。スピルバーグはやはり映画の作り方が上手い。

 

◎「愛染かつら」を見ていて、こういうドラマが嫌いで10~20代にかけて日本映画を見なかったんだなあと、改めて思ったものだ。主人公を縛る幾多の要素がいかにも古い。

 

◎幾度も映画化されてきた「源氏物語」、今回は紫式部地震と物語が交錯しているが、今一つ面白くない。田中麗奈の執拗な怨念だけが後に残る。

 

◎「ジョージ・ハリスン リビン…」は、ビートルズ解散の書面にサインするジョージやポールが見られたり、それなりに楽しめたが、3時間半は長すぎ、特に第2部は少しだれる。

 

◎ブリューゲルのあの絵の感じをそのまま画面に定着していた「ブリューゲルの動く絵」、画面は素晴らしかったが物語はよく分からなかった。絵を詳しく知っていれば分かったのだろうか?

 

◎予告編でラーメンと訳されていた「永遠の僕たち」、本篇では中華麺と訳されていたが、発音はローメンだったから老麺でしょうが、出ていたのは焼きそばのようでした。

 

 

 


今月のトピックス:今年の決算報告

Ⅰ 今年の決算報告

 

 毎年1月号でお伝えしている決算報告も今回で6回目。途中で1000円の人になったので、その前とその後では大きく変わりましたが、2011年はいかがか。
 例によって、この1年で映画にいくらお金を使ったかを報告します。会計年度は、2010/12/26~2011/12/25の1年間、
今年は次のようになりました。

 

     期間: 2010/12/26 ~ 2011/12/25
    支出額: 295,300円
   映画本数: 344本
1本当たり金額: 858円

 

 1000円の人になってからの3年目、実は1本当たりの金額は次のように上がってきました。

    796円 → 823円 → 858円

 原因は何なのでしょうか?その一つは3D映画でしょうか、追加料金がかかりますから。しかし、これはそれほど見ていません。もう一つは、料金の高い映画館で多く見たかもしれないということ。シニア料金、会員料金が1000円より高い、例えばユーロスペース、岩波ホールで見る機会が多かったという可能性です。

 更に、通常料金より高い映画を見たというもの。次のコラムで書きますが、2500円という映画を2本見ました。無料で見られる試写会の回数が減ったことも考えられます。いずれにしても、800円台という料金で多くの映画を見せていただきました。感謝です。

 

 


Ⅱ 映画の料金

 

 今年は後半に2本の映画で、2500円の特別料金ですと言われた。「オペラ座の怪人 25周年記念公演inロンドン」と「ジョージ・ハリスン リビング・イン・ザ・メテリアル・ワールド」である。
 どちらも音楽関係、どちらも3時間半ほどの長さという共通点はある。
私は見ていないが、オペラ等の舞台中継的映像も3000円くらいで設定されていると思う。「オペラ座の怪人」はその手の1本と考えられなくもない。尤も、それがユニバーサル映画という点が特異だが。
 「ジョージ・ハリソン」の方はマーティン・スコセッシ監督で、「ラストワルツ」「ローリングストーンズ・シャイン・ア・ライト」に続く音楽もの。

10分のインターミッションを挟んで1部、2部となっているので、2本分としているのかもしれない。こうした特別料金になると途端にシニア料金はなくなりすべて2500円となる。

 今年にかけて入場料金を1500円にして7つの場所で実験したTOHOシネマズ最終的には入場者数が減ってしまったということで値下げは見送られることになった。震災の影響等で、それでなくても今年の入場者数は減っているので、必ずしも正しい実験結果とは言えないのだが。更に、1500円にするとともにシニア料金は無しにするところ等もあり、それでは減りますよね。TOHOシネマズの前向きな実験ではあったが、ちょっと詰めが甘いと言えようか?

 今や多くの人が割引を使って映画を見ていると言われる。前売り券や、各種カードによる割引があり、更に毎週水曜日(他の曜日の映画館もあり)のレディースディや、性別関係なく1000円の映画館、毎月一日の映画1000円日、夫婦50割引きなど利用できる割引は多々ある。1500円ではこうした割引より高いので、ありがたみは少ない。値下げするのならやはり1200円くらいにしないと効果は薄いのではないだろう?

 


 今月はここまでです。

例年通り、大晦日には新年特別号をお送りする予定です。



                         - 神谷二三夫 -


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