2012年 2月号back

う~、さむっ!
本格的に冬になりました。
季節なりにはっきりした暑さ、寒さの方が好きですが、
でも、寒いのは確か。
心だけでも暖めましょう、
もちろん映画館で!

 

今月の映画

 2/26~1/25のお正月を挟んだ31日間に出会った映画は28本、お正月第2弾の作品も多く、バラエティに富んだ作品群です。

<日本映画>

山本五十六 太平洋戦争70年目の真実
friendsもののけ島のナキ
ワイルド7
月光の仮面 
ロボジー 
ALWAYS三丁目の夕日’64
ヒミズ
(古)母の旅路 
三婆

 

<外国映画>

ニューイヤーズイブ 
サラの鍵 
CUT 
瞳は静かに 
善き人
運命の子
ミラノ,愛に生きる
ラブ・アゲイン 
キック・アス
フライト・ナイト、
サルトルとボーヴォワール 哲学と愛
パーフェクト・センス
哀しき獣
風にそよぐ草
デビルズ・ダブル
マイウェイ 12000キロの真実 
サンザシの樹の下で 
アニマル・キングダム
(古)鉄道員

 

 

 

Ⅰ 今月のベストスリー

 

①  サラの鍵
 フランス人の夫の実家のかつての住まいから、1942年7月にパリで起こった事件とそれにかかわった人たちの奇跡を追う主人公、彼女自身の生き方も絡みながらサラの人生が語られる。原題“彼女の名前はサラ”がラストで心に残る。

 

② ヒミズ
 東北の震災地を背景に、少年の生き方をハードに描く園子音監督の新作、目立たず、普通に生きたいと思いつつ、厳しい環境の下で、少年、少女のどこか純な気持ちが痛くこちらの心に残る。園監督の、叫びながら泣いているような描写に今回も捉えられた。

 

③-1 アニマル・キングダム
 オーストラリアの実話に基づいて作られた犯罪者一家の物語は、初めに主人公のナレーションで語られるように、ずっとおびえて生きている家族の姿が描かれるが、グランドマザーの何んとも艶めいた存在感が凄い。

 

③-2 哀しき獣
 前作「チェイサー」で緊迫したアクションを見せてくれたナ・ホンジン監督新作は更にハードな描写で、中国領の延辺朝鮮族自治州に住む主人公が色々な用事で韓国に出かけた顛末を描く。こういう人たちがいるのも知りませんでした。

 

 


次の作品もお勧めです。

 

●friendsもののけ島のナキ:子供の無垢な心が大人の邪心をきれいにしていくストーリー、加えて成長物語も、楽しく、ためになるアニメ作品です。

 

●善き人:ヒトラーの台頭に反対の気持ちを抱きながら、ユダヤ人の友人を助けることに、躊躇を感じてしまう大学教授、その揺れ動く心の怖さが静かに描かれます。

 

●運命の子:一族の血と、それを守ってあげようとする男のドラマ。いかにも中国的

 

●ラブ・アゲイン:原題はCrazy,Stupid,Love、恋は当然ながらクレージーでスチューピッド、17歳の同級生が結婚して今や44歳の夫婦のてんやわんやが面白い。

 

●キック・アス:1年くらい前の封切り作品、やっと見ることができました。
ヒーローもののパロディながら、ヒーローものでもある面白い映画です。

 

●風にそよぐ草:「二十四時間の情事」「去年マリエンバードで」など難しげな作品を作っていたアラン・レ根監督、1997年の「恋するシャンソン」あたりから作風が変わって、不思議で楽しい作品が多い。

 

●ロボジー:オイオイそれで大丈夫かよ~と言いたくなるのと、手作り感の心地よさがほどほどにブレンド、CG画面に対する手作り特撮画面のような暖かさが上手い方向に働いたアイディアの勝利作。

 

●サンザシの樹の下で:流石にチャン・イーモウは下手な失敗を見せない。適度にくすんだ緑が美しい画面で、文化大革命下の純愛が描かれる。

 

●ALWAYS三丁目の夕日’64:東京オリンピックの年の東京、この年に東京の風景が変わってしまったと言われるが、三丁目の住民たちは変わらずまるで村のような暖かさで生きている。

 

 


Ⅱ 今月のつぶやき

 

◎ニューヨークでカウントダウンの「ニューイヤーズイブ」、実際にはないボールダウンはいいのですが、タイムズスクエアの電光版のところのTOSHIBAは宣伝効果大ですね。

 

◎「鉄道員」を見ていると、カルロ・ルスティケリのあのメロディーが何度も流れてくるのが懐かしい。1960年前後のヨーロッパ映画音楽といえば、太陽がいっぱいと鉄道員が双璧ではなかったか?どちらもイタリア人作曲家だったんだなあ。ニーノ・ロータとカルロ・ルスティケリ、素晴らしい曲が多い2人ですね。

 

◎映画好きとは言え「CUT」には、驚いたというか、凄い主人公ではあるし、面白い映画だけれど、映画好きとあの殴られ屋の接点が見つけられないのが残念。

 

◎「friendsもののけ島のナキ」の主題歌は“Smile”、この曲はナット・キング・コールが有名、次に見に行った映画館ではそのナット・キング・コールの歌が休憩時間に流れていて驚いた。

 

◎第2の性のボーヴォワールとサルトルの関係を描いた「サルトルとボーヴォワール哲学と愛」、主人公はボーヴォワール、彼女の恋愛生活も結構活発だったんですねえ。

 

◎「デビルズ・ダブル」を見ていると、サダム・フセインにはひどい息子がいたんですねえ。しかも、自分にも息子にも影武者がいたとは…、原作は息子の影武者が書いたもの。

 

◎「マイウェイ 12000キロの真実」はあまりにできすぎた作品で、真実に基づいた物語などといわれると、反対に本当だろうか?と思ってしまうほど。リアルな描写と嘘っぽい話というのは言い過ぎか?

 

◎神保町シアター“川口家のひとびと”の「母の旅路」に出かけたのは、いわゆる三益愛子の母もの、31本も作られた作品の1本を見たかったから。中学生の頃その1本をTVで見た時、泣きながら見ていた記憶がある。ブランコ乗りになる「母の旅路」ではなかったが。あの頃は“三倍泣けます”の宣伝文句のままに泣けたが、今回は泣けなかったなあ。

 

 


今月のトピックス:
冬(に意味はないのですが)のアラカルト

 

Ⅰ フリーパスポート

 

 多くの映画館、シネコンチェーンでメンバーカードが発行されている。6回見たら1回無料とか、会員はいつでも1500円とか、メンバーズデイには1000円とか、様々な割引が特典となっている。TOHOシネマズは6回に1回フリーという特典の他に、マイレージシステムが並行してある。

 これは、見た映画の上映時間を分数で計算、加算していくもので、たとえば12/25に見た「永遠の僕たち」は90分の映画だったから90マイルが加算されたというようにマイル計算される。

 このマイルが6000マイルになると、TOHOシネマズの映画館で1ヶ月間無料で映画が見られるという特典がある。マイルの有効期限は2年間なので、
2年間で6000分を見なければ得られない特典だ。2011/12/31までの有効マイルが6000を超えたのは12/18だった。12月中に変えなければ無効になる。聞いてみると、申し出た日から1カ月の有効ということで、いつ申請するかをよ~く考えて12/30に行った。

 申し出ると、“係がきますのでしばらくお待ちください”との返事。やってきた係員はカメラ持参だった。胸から上の写真を撮られ、15分ほどでフリーパスポートが作られた。ということで、後4日間(1/25現在)TOHOシネマズでは無料観賞しているのである。今までの無料観賞は4本、案外少ないなあ。

 

 


Ⅱ ギンレイホール

 

 超久しぶりにギンレイホールに出かけた。飯田橋にある名画座というか、2番館というか。前に出かけたのは多分30年くらい前だった。その頃飯田橋にはもう1軒飯田橋佳作座があった。こちらは外堀通りに面していたが、歩いて1分も離れていないギンレイホールは外堀通りから軽子坂に入ってすぐのところにある。
 80年代の後半に佳作座は閉館してしまったが、ギンレイホールはいまだ健在だ。映画館は思っていたよりずっときれいで、しかもほぼ階段状の座席だったので驚いた。以前から階段状だっただろうか?佳作座のフラットな座席は覚えているのだが、ギンレイホールの座席を覚えていない。凄く記憶があいまいになっているんだけど、ギンレイホールのところにエロ映画館もあったような気がする。大塚名画座と混同しているかも。鈴木シネマだったかなあ。憶えている方がいたら教えてください。

 ギンレイに行ったのは、「サンザシの樹の下で」を見るため。昨年新宿ピカデリーで封切られたこの映画はなかなか機会に巡り合わなかった。驚いたことがもう一つある。出かけたのは1/18(水)の最終回20:10スタートの回だった。2本立て(併映は「シャンハイ」)の最後の1本は割引きになるだろうと想像し、その通りだったのだが、一般1500円が1300円になるだけで、シニア料金1000円は変わらないのだったが。
 平日の夜、最終回にもかかわらず、かなりのお客さんが入っていたことだ。
勿論満席なんかではないし、半分も入ってはいないのだが、40~50人くらいはいたのではないか。昨年シネマヴェーラに無声映画「サンライズ」を同じく平日の最終回で見に行ったとき、こちらも同じくらいの人数が入っていて驚いたのを思い出した。映画館で映画を見る人たちがいることに安心するのだった。

 ギンレイホールは友人F氏から、そのシステムを勧められていた。年間10500円で1年間何度でも映画を見ることができる「シネパスポート」というもの。ギンレイの番組は2週間替わりの2本立てだから、すべてを見れば52本の映画を10500円で見られる。何度でもOKだから時間がなければ1本見るだけでも損しない。確かにお勧めのシステムだ。

 

 


Ⅲ 予告編の問題

 

 「月光の仮面」は板尾創路の監督第2作、「板尾創路の脱獄王」はアイディアがはっきりしていて面白かったので、それなりに期待して見に出かけたのだが更に期待をあおる予告編を見たからでもある。予告編の最後は、主人公が水の中に消えていく画面だ。まるで河童の登場の反対に、少し上から写された顔面が垂直にそのまま水の中に沈んでいく。何だかシュールな画面なのである。
 この調子で作られていたら奇妙な作品になるに違いない、と思わせる予告編である。途中で寝てしまったんだろうか、この画面は本編にはなかったと思う。どなたか見た方は教えてください。予告編にあって本編にないというのは、今までにも案外あったことではあるので、それ自体は責める気はないのであるが、あの画面がないのは残念。作品的には奇妙な、ちょっと頭でっかち的な作品ではありました。

 

 


Ⅳ 3Dの将来

 

 このところ、暫く前に見た作品の予告編を立て続けに見た。1999年に公開された「スターウォーズ エピソード1 ファントムメナス」と1997年公開の「タイタニック」である。どちらも大ヒットした作品だ。ともに3Dに作りかえられて公開されるのだ。勿論撮り直しして作られた訳ではなく、あの当時のフィルムを処理して3Dに作りなおしたのである。ハリウッドはよくこの手の処理を行う。
 3Dの前には、モノクロ画面を処理してカラー映画にするというものがあった。日本で劇場公開された作品はない(いやあったかもしれないが、見たくない)ので見たことはないが、ビデオやDVDでは売りだされたかもしれない。しかし、イメージを変えてまでして行うより、カラーでのリメイクの方が商売になると思われたらしく、この流れはすたれていった。

 今回公開される2作品はもともと視覚的には強い画面を持っている映画である。スターウォーズのスペースシップ、沈没していくタイタニック、どちらも3Dでなくても見せる画面だった。見ている我々の想像力に刺激を与えてくれる作品だった。それを3Dにする意味があるのか否か。大きなインパクトのある映画だから3D効果も高いと考えられたのか?3Dを見られるようにした映画館の投資を回収するためだろうか?新作含めて3Dは増えているが、すでに飽きられているというか、慣れてしまったというか、という感じがするのは私だけでしょうか?

 

 

 今月はここまで。
 次回はアカデミー賞の前日にお送りします。直前のアカデミー賞予測をいたします。




                         - 神谷二三夫 -


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