今年はうるう年、オリンピックの年ですね。
2月は1日余分に楽しめます、
もちろん映画館で。
1/26~2/25の31日間、正月第2弾の作品(+古い作品)27本に、巡り合うことができました。
力作、佳作、傑作、軽妙作などなど、勿論愚作も含めて、バラエティに富んだ作品群です。
麒麟の翼
東京プレイボーイクラブ
キツツキと雨
51(ウーイー)世界で一番小さく生まれたパンダ
はやぶさ 遥かなる帰還
(古)最高殊勲夫人
巨人と玩具
人類学入門エロ事師たち
果てなき路
きみはペット
J・エドガー
ジョニー・イングリッシュ気休めの報酬
ペントハウス
人生はビギナーズ
最高の人生をあなたと
預言者
ものすごくうるさくてありえないほど近い
ドラゴン・タトゥーの女
ポエトリー アグネスの詩
ニーチェの馬
マシンガン・プリーチャー
おとなのけんか
ピラミッド 5000年の嘘
メランコリア
昼下がり ローマの恋
ヤング≒アダル、
Pinaピナ・バウシュ 踊り続けるいのち
①ニーチェの馬
農夫とその娘、馬との厳しい生活を眺めていると、その骨太でゆったりシンプルな描写の中に、生きることの全てが見えてくるような気がする。55歳で監督を引退するというタル・ベーラの傑作。
②-1 預言者
19歳で入った刑務所はコルシカマフィアの牛耳る世界、アラブという自分の出自から撒きこまれる運命、裏社会の中で生きていく術を身につけるマリク。
出所するラストで一回り大きくなった主人公の成長物語。
②-2 ドラゴン・タトゥーの女
ハリウッド製ミレニアムシリーズのリメイク第1作は、デヴィッド・フィンチャーの快心作。当然ながらスウェーデン製より華はあるが、想像よりずっと北欧の感覚、更にえぐみもしっかり。
③-1 おとなのけんか
舞台の1幕物のありそうなパターンと思いきや、流石にポランスキー監督、その壺にどっぷり浸かりながら、話の運びのうまさで快調に見せてくれる。子供のけんかに発する夫婦2組の大人のけんか、楽しみました。
③-2 麒麟の翼
始まりで殺人が提示され、その後はその謎を解いていくというミステリーの王道をこれほど気持ちよく見せてくれる映画は久しぶり。妙なひねり方もなく話に引き込まれました。
③-3 ヤング≒アダルト
主人公はヤング・アダルト小説のライター、メイビス・ゲイリー、37歳の彼女は元カレからのベビー誕生メールに久しぶりに故郷に帰ってくる。彼女の本音と夢、大人と子供の部分が辛くも甘くも描かれ、ラストまで飽きさせない。彼女は大人になれるのか?
次の作品も面白いです。
●Jエドガー:イーストウッド作品にしては少しうま味が足りないというか、それでもまあ、FBIのフーバー長官の人生と、ディカプリオの苦みばかりの顔に興
味を持ちました。
●ペントハウス:陰で悪いことをやっている金持ちを貧乏人(?)が協力してやっつけるという、勧善懲悪(?)コメディといいながら、金持ちから盗むんですけどね。
●東京プレイボーイクラブ:光本研がいう「いらっしゃいませー」の掛け声が何とも耳に残る、赤羽の繁華街で生きる男たちのハードな情けなさがなかなかです。
●人生はビギナーズ:ほんとにユアン・マグレガーはいくつになっても純真な心の持ち主の役ができますね。38歳の独身男の父、恋人、母、犬との関係がさりげなく、軽く描かれる。
●ポエトリー アグネスの詩:普通に暮らすということ、どんな出来事があろうとまるで少女のように暮らすこと、その美しさを教えてくれる不思議な映画、ここまでけがれないというのは凄いことです。
●キツツキと雨:あんなに頼りなくて監督になれるのか?と思いつつ、1977年生まれの沖田修一監督の実感が表現されたんだろうかと、そのなんとないおかしみを楽しみました。
●Pinaピナ・バウシュ 踊り続けるいのち:今月のトピックス“3Dの新しい展開”参照。
★エディ・マーフィー
「ペントハウス」で泥棒家業の指南役を演じているのは、あのエディ・マーフィ、“あの”と付くくらいの大物スターだ。それを懐かしいと言っていいのかどうか、まあ、それでも随分久しぶりに画面にお顔を拝見したのだ。「ドリームガールズ」以来だが、あの映画でシリアスになったためか、今回ちょっと表情が変わったような気もするが、単に加齢によるものだろうか?能天気なあの笑い声がぴったりの人だなあ。18年ぶりに「ビバリー・ヒルズ・コップ4」が製作されるようだ。
「人生はビギナーズ」は38歳の独身男オリヴァーの近辺を描いて面白いが、
75歳にして自分はゲイだとカミングアウトした後亡くなった父の残したのが犬。その犬アーサーを唯一の友に暮らす内向的なオリヴァーの前に…。
このアーサーがなかなか達者だ。確かに独り者の寂しさを紛らわしてくれるかもしれない。アーサーはCosmoという芸犬(?)が演じている。「ヤング≒アダルト」は37歳のバツイチ女性の一人暮らし、彼女も小さな犬(名前を失念)を飼っている。バッグに入れて田舎に帰るときも連れて行くくらいに可愛がっているのだが、毎夜酔いつぶれてしまう彼女はそれほど面倒見はよくない感じ。
どちらの作品の犬も独り者の生活の友みたいであるが、ちょっと安易な感じもするなあ。
さて、芸達者犬の本命が4月に封切られる「アーティスト」に、The Dog として登場のUggie(アギー)で、カンヌ映画祭でパルムドッグ賞まで受賞している。映画に与えられるパルムドール賞をもじってます。
◎「果てなき路」にはまいった。話がほとんど分からない。こんなに分かりづらくていいのか?モンテ・ヘルマン監督の超久しぶりの作品なのに、楽しめなかったのが残念。
◎TOHOシネマの1カ月フリーパスの最終日、仕方なく見たのが「君はペット」、すみません、あまりにつまらなくて驚いた。それにしても、最後のクレジットの部分に大量の日本人の名前が表示されるが、あれはファンクラブかなんかの人たちの名前だろうか?或いは支援者?
◎超肥満体のガボレイ・シディベは昨年の「プレシャス」の主演者、あの体格ゆえ心配していたけど「ペントハウス」で腕に自信のメイド役はちょっと愉快。
◎「最高の人生をあなたと」はアラ還世代には共感できる部分も多い映画、文字の大きい電話機を買う妻と、それに違和感を覚える夫というあたりが共に実感あり。
◎「ものすごくうるさくて ありえないほど近い」は何よりその題名に突っ込みを入れたくなる。好きになれない子供だなあと思いながらも、ああいう行動でしか反応できないほど深い心の傷、9.11から10年経ってやっと作品に描けるようになるんだなあと感心もした。
◎アメリカ人は本当に変わっている。昨年の「ザ・ファイター」の母親以上に、マシンガン・プリーチャーの個性は凄い。ラストに出てくるご本人の画像にはいたく感心。
◎ラース・フォン・トリアの映画は感情移入を拒むようなところがあるが、今回の「メランコリア」でも、母+娘2人(+姉の夫)の家族は全く好きになれない。シャーロット・ランプリングは好きな女優だがあの母親では好きになれる訳がない。それなら結婚式なんかに来るなよと言いたくなる。キルスティン・ダンストの妹にしてもなんで結婚式をしようとしたんだ。美しい画面と壮大な音楽で甘美な終末と評する人も多いが、これほど感情移入できない映画は珍しい。
現地時間の明日(2/26)、ハリウッドにあるコダックシアターでアカデミー賞の授賞式が行われます。コダックといえば、ご存知のように最近破産しました。これには誰もが驚きましたよね。全世界で映画に使われているフィルムの何パーセントがコダック製かは知りませんが、映画館でコダックの名前を見ない日はないくらいでした。写真に続き、映画でもデジタル化が進行していますから、それに乗り遅れたと言われ、アカデミー賞の会場名から“コダック”の名前が消えるかもしれないと心配されましたが、とりあえずそのままの名前のようです。
84回目となる今年のアカデミー賞の予測をいたしましょう。候補作とその予想です。
●作品賞
作品賞だけ10作品までノミネートされるようになって3年目、今年は9作品が選ばれました。日本での封切り日を入れました。多くがこれから見られます。
アーティスト:4/07封切り
ファミリー・ツリー:5/18封切り
ものすごくうるさくて、ありえないほど近い:公開中
ヘルプ~心がつなぐストーリー~:3/31封切り
ヒューゴの不思議な冒険:3/01封切り
ミッドナイト・イン・パリ:5/26封切り
マネーボール:昨年11/11に封切り済
ツリー・オブ・ライフ:昨年8/12に封切り済
戦火の馬:3/02封切り
話題はフランスの無声映画「アーティスト」、この作品が受賞すると第1回の作品賞「つばさ」以来の無声映画作品になるということです。
*私の予想はこの「アーティスト」
●監督賞
「アーティスト」のミシェル・アザナヴィシウス
「ヒューゴの不思議な冒険」のマーティン・スコセッシ
「ファミリーツリー」のアレクサンダー・ペイン
「ツリー・オブ・ライフ」のテレンス・マリック
「ミッドナイト・イン・パリ」のウディ・アレン
「アーティスト」のアザナヴィシスかなとも思いますが、
「サイドウェイ」のドラマの面白さが忘れられないので、
*予想はアレクサンダー・ペイン
●主演男優賞
「ファミリー・ツリー」ジョージ・クルーニー
「アーティスト」ジャン・デュジャルダン
「裏切りのサーカス」ゲイリー・オールドマン
「明日を継ぐために」デミアン・ビチル
「マネー・ボール」ブラッド・ピット
「アーティスト」のジャン・デュジャルダンは予告編で見る限り
ダグラス・フェアバンクスの雰囲気があり、かなり惹かれるが…。
*予想はそろそろ取ってもらいたいジョージ・クルーニー
●主演女優賞
「アルバート・ノッブス」グレンクローズ
「ヘルプ~心をつなぐストーリー~」ヴィオラ・デイヴィス
「ドラゴン・タトゥーの女」ルーニー・マーラ
「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」メリル・ストリープ
「マリリン 7日間の恋」ミシェル・ウィリアムズ
17回目(主演、助演の合計で)のノミネートのメリル・ストリープにあげたいのは山々だが、一昨年ブロードウェーの舞台が跳ねた後出てきたヴィオラ・デイヴィスが、ファン一人一人に丁寧にサインしていたのが忘れられない(映画作品と関係ない!)し、彼女の鼻水演技の迫力は「ダウト」以来感心しているので、
*予想はヴィオラ・デイヴィス
●助演男優賞
「マリリン 7日間の恋」ケネス・ブラナー
「マネー・ボール」ジョナ・ヒル
「Warrior」ニック・ノルティ
「人生はビギナーズ」クリストファー・プラマー
「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」
マックス・フォン・シドー
後の3人は70歳、82歳、82歳と高齢者がそろいました。
ジョナ・ヒル以外は好きな俳優で誰が取っても嬉しいが、最近の活躍と昔のトラップ大佐のよしみで、
*予想はクリストファー・プラマー
●助演女優賞
「ヘルプ~心をつなぐストーリー~」オクタヴィア・スペンサー
「Bridesmaids」メリッサ・マッカシー
「アーティスト」ベレニス・ベジョ
「ヘルプ~心をつなぐストーリー~」ジェシカ・チャスティン
「アルバート・ノッブス」ジャネット・マクティア
ほとんど知らない俳優ばかりなので、ほぼ下駄けり上げ予想で、
*予想はオクタヴィア・スペンサー
予想6部門の何部門が当たるでしょうか?明日(日本時間では明後日)確認してください。
最近の5作品は次のようになっている。
「十三人の刺客」「最後の忠臣蔵」「一命」「聯合艦隊司令長官山本五十六」「キツツキと雨」
3本の時代劇での侍と、軍人、木こりが演じた役である。
見るたびに感心している。以前から上手い人だったのでしょうが、そういう俳優にありがちな演技臭というか、鼻につく部分もあったような気がする。それが、最近の5作は役になりきり型演技になってきた。臭みにかまっている暇などないという感じ。
最新作「キツツキと雨」は山の村の木こり。新人監督と妙な親子型関係を築く不器用な男を、丸のまま見せてくれる。今までの経験の上に56歳という円熟に近づきつつある年齢、俳優としていいところに差し掛かってきてますね。
三國連太郎が引退、原田芳雄が亡き後、期待できる熟年の一枚看板になりつつあります。
「Pinaピナ・バウシュ 踊り続けるいのち」はヴィム・ヴェンダース監督作品。ドイツの舞踏家ピナ・バウシュの作品を撮った3D作品だ。ピナ・バウシュの魂そのままがすっきり現れているような踊りが素晴らしい。躊躇するものがない。
このドキュメンタリーの3Dがなかなかいいのである。奥行きをこれほど感じさせた映画も珍しい。最近多く作られている3Dの劇場映画(実写もアニメも)よりも効果ありだ。舞台であれ野外であれ、踊りは奥行きを出し易い素材と言える、何しろ動いているから。
3D映像は動いている部分が目立つ、反対にいえば動かない部分は目立たず、動く部分と差がある。動きが早いのでちょっとコマ落としのように見えるのだが。これがリアルとは違うなあと、Pinaを見ながら感じた。
同じドイツの監督ヴェルナー・ヘルツォークが、
ドキュメンタリー「世界最古の洞窟壁画3D 忘れられた夢の記憶」を3Dで作った。これがどんなふうに見えるかは公開されるまで待たなければ分からない。3/3(土)公開なので確かめよう。いずれにしても、同じ時期に活躍を始めた二人のドイツ人監督が、そろって3Dのドキュメンタリーを撮ったのだ。