2012年 9月号back

やっと真夏の天気が少し遅れ目でやってきました。
熱帯夜、真夏日が続く毎日。
ロンドンオリンピックで沸き立っていた頃より暑い日々、
体と心を休めるには、もちろん映画館!

 

 

今月の映画

 7/26~8/25夏休みを取ったりした31日間に出会った映画は31本、オリンピックの誘惑にもめげず見続けた作品はかなりの充実。
 内、11本は日本、外国映画合わせての古い映画でした。今月のトピックスもご参照ください。

<日本映画>

かぞくのくに 
ニッポンの嘘~報道写真家福島菊次郎90歳~ 
桐嶋,部活やめるってよ
あなたへ
(古)ジャコ萬と鉄
人間狩り
悪の報酬

 

<外国映画>

The Lady アウンサンスーチーひき裂かれた愛 
メリダとおそろしの森 
マダガスカル3
ダークナイト・ライジング 
クレイジーホース・イン・パリ 
あの日あの時 愛の記憶
トガニ幼き瞳の告発 
闇を生きる男 
ヴァージニア 
屋根裏部屋のマリアたち
セブンデイズ・イン・ハバナ 
アベンジャーズ
トータル・リコール
The Grey凍える太陽 
ジョルダーニ家の人々
テイク・ディス・ワルツ
(古)クリスチナ女王 
アパッチ砦 
オズの魔法使い 
三人の妻への手紙
街角桃色(ピンク)の店 
マルクス捕物帖 
ラブ・パレイド 
迷路

 

 

 

Ⅰ 今月のベストスリー

 

①かぞくのくに
 在日2世の女性監督ヤン・ヨンヒは今まで「ディアピョンヤン」「愛しきソナ」とドキュメンタリーを作ってきたが、その延長上に初めてドラマ作品を作った。“希望の国”北朝鮮に帰還した長男の25年ぶりの一時帰国。皆、誰もが静かにならざるを得ないという状況は、厳しい。静かに歌われる「白いブランコ」が心にしみる。


②ダークナイト・ライジング
 アメリカンヒーローのはずのバットマンなのに、こんなにみじめでいいの?と思いつつ、妙にエネルギー、たとえ負のエネルギーだとしても、が感じられる、クリストファー・ノーランの力作。だから、ラストの明るさが違和感に感じられるのか。

 

③-1 桐嶋、部活やめるってよ
 現代の高校生の集団劇、一人ひとりの息遣いが聞こえるほどに、精密に描かれた映画。これほど細やかにヴィヴィッドに描かれた高校生生活。必ずどこかにいると感じられる一人一人の高校生、なのに、ステレオタイプだけに終わらないのが素晴らしい。


③-2 テイク・ディス・ワルツ
 33歳と若いカナダの女性監督(もともと女優)サラ・ポーリーの2作目は、若妻の感情を細かく描いて素晴らしく、最後の展開では大人になるための天国と地獄もあり、若い女性には必見の作品。

 


 次の作品も面白いです、ご覧ください。


The Ladyアウンサンスーチー ひき裂かれた愛:15年も自宅軟禁、それはどう見ても長すぎると実感させる映画。

 

メリダとおそろしの森:ピクサ―のアニメも進歩しています、ストーリーの面白さで。たとえジブリに影響されているなあと感じさせるとしても。

 

マダガスカル3:テンポがいい、ということは、ストーリーの飛躍が面白い。
快適に見られるアニメ。

 

トガニ 幼き瞳の告発:現在も続いているらしい正義に向けての戦いは、いくら何でもと思いがちだが、日本でも似たような状況が少し前まであったのでは?

 

ニッポンの嘘~報道写真家福島菊治郎90歳~:90歳にしてこの反骨精神、
マスコミの一員という自覚から被写体にカメラを向ける。こういう人がまだい
るんだと感心する。

 

屋根裏部屋のマリアたち:1962年のパリが舞台、多くの価値観が変わった60年代という、先の時代の価値観変動を予感させる時代設定、しかし全く頭でっかちでない作品は面白い。

 

アベンジャーズ:ここ最近のハリウッドの低迷は、やはり脚本にあったんだと確信させる会心作。ヒーロー物語から想像されるスムースな物語運びではないのが面白い。

 

トータル・リコール:Aシュワルツネッガー主演の前作が作られたのは1990年、22年後の今回の映画はこの22年間に如何にGC技術が進歩したか実感させる。未来の薄汚れた社会には東洋系の風景が似合うのだろか、「ブレードランナー」の世界です

 

The Grey 凍える太陽:極限の世界で精一杯生きて、死にゆく人々、今やアクションスターのリーアム・ニーソンをもってしても…厳しい自然が容赦なく。

 

あなたに:きちんと、ということは見やすく、心に入りやすい形で作られた健さんの新作。


 

 

Ⅱ 今月のアニメ

 

 8月はアニメのシーズン。

 8/18~19の週末の映画ランキングベストテンには、内外のアニメ作品が5本もランクイン、半分を占めていました。

   3位 おおかみこどもの雨と雪
   4位 マダガスカル3
   5位 劇場版ポケットモンスター ベストウィッシュ 
      キュレムVS聖剣士ケルディオ
   9位 劇場版FAIRY TAIL 鳳凰の巫女
   10位 ROAD TO NINJA NARUTO THE MOVIE

 夏休みは子供向けアニメの花盛り、他にアンパンマンもありました。日本では、昔から子供向けアニメが正月、春休み、夏休みのピークには必ず公開され大きな成績を残してきました。ハリウッドアニメは少し前には、メリダとおそろしの森もランクイン、4位のマダガスカル3共々、子供というより大人向けのようでもあります。この10年位でしょうか、ハリウッドではこうした大人・若者向けアニメが多く作られています。

 巨大な制作費を投入して製作したアクション大作等が必ずしも大ヒットとならないのに比べ、アニメはコンスタントな成績が期待できるというのがその理由のようです。長らくディズニー・ピクサ―の子供向けがそのほとんどを占めてきましたが、今やドリーム・ワークスアニメ(シュレック、マダガスカル等)、フォックスアニメ(アイスエイジ等)と、他のメジャースタジオも参戦、多くのファンを集めています。ジブリアニメに次ぐ細田守アニメにたいする信用度アップの日本と、メジャースタジオが競い合うハリウッドが切磋琢磨しながら、これからも名作を見せてくれると思います。

 

 

 

Ⅲ 今月のつぶやき


●クレイジーホース・イン・パリの世界は舞台の表裏を思想性なく写していて、それが面白くもあり、つまらなさにも通じるか。

 

●アウシュビッツ収容所にはユダヤ人の他にポーランドの政治犯も収容されていたと初めて知った。収容所内で恋に落ちたユダヤ女性とポーランド男性が、21年後に再び出会う。いや、正確には出会う直前で映画は終わる、たとえ電話で話はしていたとしても。本当のドラマはそこから始まるかと思うのだが。

 

●ベルギー映画「闇に生きる男」には、これほど粘着質のベルギーを見るのは初めてとの感想を抱いた。いかがわしさたっぷり

 

●60年代前半、パリのメイドはスペイン人がメイン、これからはポルトガル人と教えてくれるのは「屋根裏部屋のマリアたち」だが、主人公の家のあり方を見ていると、ブルジョワという階級の存在も強く印象付けられる。

 

●81歳の高倉健は、その年齢にしては動けるとはいえ映画の始まりでの歩き方を見ていると、60歳代の主人公にしてはかわいそうかなと感じられた「あなたに」。妻が53歳で亡くなったという設定ですから、ちょっと厳しいという感じ。

 

 

 

今月のトピックス:映画史上の名作

Ⅰ 映画史上の名作

 

 渋谷シネマヴェーラでは1年に1~2回だろうか、映画史上の名作として30本くらいの古い映画を集めて約1ヶ月間上映している。今月見た外国映画で(古)のくくりに入れた8本はそこで見た。今回は映画史上の名作の7回目だから、今までに150本くらいは上映されたのだろう。

 映画を好きになり始めた中学生の頃、夢中で読んでいた映画ファン雑誌に映画の歴史とか、昔の作品について書かれていた。南部圭之助さんとか、飯島正さんとかの評論家の先生たちが、執筆していた。時々は、映画についての単行本も読んだりして、知識としての映画史を頭の中に詰め込んだ。作品の名前だけは知っている、出演者の名前も知っているという作品たち。それを大きなスクリーンで見たいと思う。そういう映画ファンの夢を実現させてくれる。めったにしなかった、会社終了後の夜の回に2本立てを見に行くこともした。
平日の最終回にもかかわらずある程度の人が見に来ている。同世代の団塊世代以上が多いが、若い人たちも多い。

 今回見た中では、グレタ・ガルボの妖しい魅力を満喫できる「クリスチナ女王」、今まで周辺作品ばかりを見ていてやっと本物に出会えた「オズの魔法使い」、話の面白さで見るものを引っ張る「三人の妻への手紙」、艶やかさを感じさせるエルンスト・ルビッチ監督の「街角 桃色の店」と「ラブ・パレイド」が楽しめました。文学に世界名作があるごとく、映画にも映画史上の名作があるというところ。そういえば、2回ほど柄本明さんを見かけました

 

 

 

Ⅱ 6時間を超える映画が再び岩波ホールで

 

 2005年だったか、岩波ホールで6時間6分の映画「輝ける青春」が上映された。そんなに長い映画、体力的に大丈夫かいなという懸念をよそに、引き込まれて感動した。2匹目のドジョウを狙って、さらに長い6時間39分の「ジョルダーニ家の人々」が公開された。問題が多々予想された。
  ①さらに長い時間、さらに高齢になった身に耐えられるか?
  ②今や、東京でも1、2を争うひどい座席の岩波ホールでの公開?
  ③ニッコウトラベルと同じ最高齢者が集まる岩波ホール、高齢者被害は

   ないか?

 今回の作品はTVドラマとの噂もあり、作品的な心配もあったのである。
作品が素晴らしければ、映画館のデメリットなど忘れて引き込まれるかもしれないからだ。いずれにしろ、できうる限り最高の環境で見られるように努力するしかない。
 今回は、チケットぴあで座席指定が受けられるとある(前回もあったのだろうか?利用しなかった)。
 まず、サイトのチケットぴあで確かめると、前、中、後の座席区域を選ぶようになっていた。その後、個々の座席を選ぶことができるのか?できないとまずい。何せ、あの岩波ホールなのだから、座席をCPU任せにできる訳がない。
仕方なくチケットぴあのお店に出向き座席指定ができることを確認の上チケットを求めた。前の人の頭がじゃまにならない中央ブロックの通路側席、スクリーンが遠いので前から3番目の席という個人的定位置を手に入れた。岩波ホールのサイトを調べると、13:40に始まる映画は、途中3回の休憩を含み終映は21:15になるという。2回目の休憩は25分間で夕食としての弁当など食す時間と思われる。飲食はロビーでお願いしますとうるさく案内される岩波ホール、
しかもロビーには椅子は10脚くらいしかなかったではないか。これは当然争奪戦になる。

 出かけたのは8/22の水曜日だった。予想通り、エレベーターからして岩波ホール族で混んでいた。勿論、高齢者で常には普通の映画館には出かけていない様な方々である。幸運にも満席ではなく前に人がいなかったため、画面が欠けることが無かったのだった。休憩になる都度、通常時の倍以上用意されていたロビーの椅子は満席になった。館内で食べている人もいたが、今回ほとんど“飲食はロビー”案内が流れなかったのは、岩波ホールとしても仕方が無いと観念したものと思われる。

 作品はどう見てもTVドラマ、4回とも同じ題名が現れ、最後のクレジットも同じだったし、さらに、作品内容が如何にもTVドラマ的にトピックの寄せ集め。撮影はかなり良かったとはいえ、クローズアップがかなり目立って、これまたTV的。何んとか長い時間を無事に過ごし、帰りのエレベーターに乗って1階へ。1階に着いたのに誰も降りようとしない方々、一番奥にいた私が“降りてください”と声をかけたのだった。

 


 今月はここまで。


 まだまだ続く残暑の季節、お元気に!

来週の土曜日は9/1で、映画は1000円の日です。お楽しみください。



                         - 神谷二三夫 -


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