2013年 2月号back

降ったら急に大雪、
東京だけではなく今年の冬はおかしな天気。
寒くて不安定な日常から逃れて、
ホットするのは、
もちろん映画館!!

 

今月の映画


 お正月を挟んで12/26~1/25に出会った映画は34本、年末年始は9連休になりましたので、随分見てしまいました。
 古い映画が約1/3とかなり多めですが、正月第2弾も頑張っています。


<日本映画>

グッモー・エビアン 
ふがいない僕は空を見た 
鈴木先生
渾身
カラカラ 
東京家族
(古)婦系図総集編 
破戒 
善魔 
海の花火 
丹下左膳 百万両の壺

 

<外国映画>

砂漠でサーモンフィッシング
愛について,ある土曜日の面会室 
マリー・アントワネットに別れを告げて 
サイド・バイ・サイド 
ブラッド・ウェポン
拝啓,愛しています 
最初の人間 
駆ける少年
燃えよ!じじィドラゴン
フランケンウィニー 
96時間リベンジ 
ルーパー 
フリーランサーNY捜査線
アルマジロ 
テッド 
ルビー・スパークス
(古)男になったら 
呪いの血 
ウンベルトD 
ミニヴァー夫人
嘆きのテレーズ 
モンキービジネス 
気儘時代

 

 

 

Ⅰ 今月のベストスリー


①駆ける少年
 1985製作のイラン映画、活き活きとした少年を描いて感動的だ。港町で、空き瓶集め、冷水売り、靴磨きなどで必死に生きるストリートチルドレン、その生きる歓びがほとばしる。アミール・ナデリ監督は2011年に日本で西島秀俊主演の「CUT」を撮っている。「駆ける少年」は自伝的要素があると言われる。

 

②-1 テッド
 テディベアが持ち主の子供の願いによって命を得、子供と共に成長し今や立派なダメおやじという設定が抜群。その徹底した悪ぶりが笑わせる。セス・マクファーレンが監督/脚本/原案/製作+テッドの声役と一人5役。

 

②-2 鈴木先生
 先生が生徒に真摯に向き合う映画などと言うと、今までにも幾多の映画があった。違いは鈴木先生がいかにも怪しいところ、笑いどころもしっかりとして、杓子定規にならず楽しめる。

 

③東京家族
 それは無理ですよね、あの作品に勝つのは。特に同じ設定の上二人の家族はもろに負けだ。その分、違う設定の末息子と紀子さんは、心配したよりは良かった。

 


 お正月第2弾は毎年狙い目です。
今年も面白い映画が揃いました。

 

グッモーエビアン:名古屋が舞台で、まるでマンガなのに原作は小説。
一筋縄ではいかない、面白い作品です。

 

ブラッド・ウェポン:ヨルダンから始まり、中国、マレーシアと舞台を変えながら、ノンストップアクションが炸裂する。

 

拝啓、愛しています:初めはなんて下手くそな映画なんだ、見え見えだしと思っていたが、いつの間にかそのペースに取り込まれる幸せな映画。

 

最初の人間:アルベール・カミュの未完の自伝的小説の映画化。
アルジェリアで生まれ育ったフランス人カミュのアルジェリアに対する思いが描かれる。 

 

フランケンウィニ―:ティム・バートンの映画にしては破綻が少ないアニメ。見どころ満載、楽しめます。

 

ルーパー:30年後の世界から送り込まれてくる人たちはあっという間に…、
なかなかのアイディアです。

 

アルマジロ:知りませんでした、デンマークがアフガニスタンに派兵していたとは。現地におけるその戦いぶりを追ったドキュメンタリー。見通しが効く平野の畑、そこでの銃撃戦はゆったりして怖い。 

 

カラカラ:沖縄を舞台に、還暦過ぎのカナダ人おじさんと、DV夫から離れようとしている30代妻の不思議な二人旅。なかなかの情感。沖縄在住のカナダ人監督クロード・ガニヨンの久しぶりの作品。


 

 

Ⅱ 今月の懐かしい人

 

トム・スケリット
 何かとお騒がせ的な「テッド」で、あの人にあったよ!として出てきたその本人、トム・スケリットはこの作品を見てアメリカでは人気だったんだなあと改めて思いました。79歳になる彼は多くの作品に出ています。
「M★A★S★H」「ビッグ・バッド・ママ」「トップ・ガン」「マグノリアの花たち」・・・。
 主役作品は見たことがない気がする。どこにでもいそうな元気のいい、ちょい悪雰囲気もあるアメリカのお兄さん。

 

 

Ⅲ 今月の古い映画


☆日本映画:三國連太郎と山中貞雄
 三國連太郎のデビュー作『善魔』を見た。木下恵介の作品。三國の大きな器は素晴らしかったです。山中貞夫監督の『丹下左膳 百万両の壺』は何んともゆったりペース。共に、その大きさを感じさせてくれました。

 

☆外国映画:ルイス・マイルストンとウィリアム・ワイラー
 「西部戦線異状なし」の監督ルイス・マイルストンが作った『呪いの血』は凄くきっちり作ら れていた。画面の切り替えが早いとかではなく、話がきっちりしていて気持ちが良かった。
 「ローマの休日」「ベンハー」の監督ウィリアム・ワイラーの作った『ミニヴァー夫人』は、静かで温かいイギリス的な日常を描きながら反戦映画になっていて素晴らしい。共に、いかにも名匠と呼ぶにふさわしい腕の冴えを見せてくれました。


 

 

Ⅳ 今月のつぶやき

 

●なんて覚えにくい題名なんだ、「愛について、ある土曜日の面会室」。ここで語られる3つのエピソード、なんだか3つともに突っ込みを入れたくなる。

 

●富士フィルムが映画撮影用フィルム、映画上映用フィルム生産からの撤退を発表したのは昨 年秋。今や多くの映画がデジタル撮影、デジタル上映されようとしているからだ。こうした状況について、キアヌ・リーブスがインタビュー役になり映画関係者に聞きまくっ たのが、サイド・バイ・サイド」。デジタルは便利で安価ときているから、仕方のない時代の流れとは言えるかもしれない。ただ、デジタルはどの程度保存できるのかという問題が解決されていず、
理想的な状態であればフィルムの方が保存期間は長くなる。それもあってか、富士フィルムも保存用フィルムだけは生産を続けるという。デジタルは、言ってみれば1、2のくっきり世界。あるがままを写し取るフィルムとはそこが違う。

 

●「96時間リベンジ」の舞台はイスタンブール。「007スカイフォール」に次いでエキゾチックな町並みを見せてくれる。

 

●2009年アフガニスタンに派兵されたデンマーク軍の兵士たち、志願して現地に赴いた彼らが、閑散とした普通の村で、アルカイダの兵士たちと銃撃戦を繰り広げるドキュメンタリー。静かな、何でもない村とその周りの畑を飛び交う銃弾、そのことに慣れていく兵士たち。


●古典相撲というものが隠岐の島で行われていることを知らなかった。PR映画みたいな作りで今一つ感のある「渾身」でしたが、始まりがまるで教育ドキュメンタリーみたいなのは良かった。


 


 

 

今月のトピックス:第85回アカデミー賞予想 


Ⅰ アカデミー賞の結果


 2013年のアカデミー賞授賞式はハリウッド現地時間2/24(日)の夜に行われます。日本時間でいえば、2/25の午前ということで、ちょうど一月後、見せよう会通信の3月号をお送りする日でもあります。会場はコダックから名前が変わったドルビーシアターです。
 今年の司会はセス・マクファーレン、今、日本でも大ヒット中の「テッド」を作った39歳の才人、俳優、声優、コメディアン、脚本家、プロデューサー、監督、アニメーター、歌手、活動家とウィキペディアに書かれています。

今年の作品予想はかなり難しい。
 何故なら、以下に予想する主要6部門にノミネートされている作品で、今までに日本で封切られたのが、「アルゴ」、「レ・ミゼラブル」の2作品だけなのです。6部門にノミネートされたのは全部で13作品ですから、従来より見ている作品の割合が低いのです。まあ、もう少し見ていても完全的中は今までありませんから、予想にはあまり関係ないかもしれませんが。

 ちなみにノミネート数の多い作品ベスト5は次の通りです。


「リンカーン」:12部門
「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日」:11部門
「レ・ミゼラブル」と「世界にひとつのプレイバック」:8部門
「アルゴ」:7部門


●作品賞

今年は次の9作品がノミネートされました。

「愛、アムール」:日本では3/09封切り
「アルゴ」:封切り済
「ハッシュパピー~バスタブ島の少女~」:4月封切り
「ジャンゴ 繋がれざる者」:3/01封切り
「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日」:1/25封切り
「リンカーン」:4/19封切り
「レ・ミゼラブル」:封切り上映中
「世界にひとつのプレイバック」:2/22封切り
「ゼロ・ダーク・サーティ」:2/15封切り

本命は「リンカーン」とか言われますが、
私はあえて『レ・ミゼラブル』にいたします。


●監督賞

「愛、アムール」のミヒャエル・ハネケ
「ハッシュパピー~バスタブ島の少女」のベン・ザイトリン
「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日」のアン・リー
「リンカーン」のスティーヴン・スピルバーグ
「世界にひとつのプレイバック」のデヴィッド・O・ラッセル

前作「白いリボン」も素晴らしかったハネケが取っても不思議はないが、
最近佳作を作っている『デヴィッド・O・ラッセル』に期待の1票を。


●主演男優賞

「世界にひとつのプレイバック」のブラッドリー・クーパー
「リンカーン」のダニエル・デイ=ルイス
「レ・ミゼラブル」のヒュー・ジャックマン
「ザ・マスター」のホアキン・フェニックス
「フライト」のデンゼル・ワシントン

ヒュー・ジャックマンに取らせてあげたいが、
ここは本命の『ダニエル・デイ=ルイス』が3度目を取るでしょう。


●主演女優賞

「ゼロ・ダーク・サーティ」のジェシカ・チャスティン
「ハッシュパピー~バスタブ島の少女」のクヮヴェンジャネ・ウォレス
「インポッシブル」のナオミ・ワッツ
「愛、アムール」のエマニュエル・リヴァ
「世界にひとつのプレイバック」のジェニファー・ローレンス

最高齢受賞者となるかというフランス人女優エマニュエル・リヴァですが、
今最高潮の『ジェシカ・チャスティン』としておきます。


●助演男優賞

「アルゴ」のアラン・アーキン
「世界にひとつのプレイバック」のロバート・デ・ニーロ
「ジャンゴ 繋がれざる者」のクリストフ・ヴァルツ
「リンカーン」のトミー・リー・ジョーンズ
「ザ・マスター」のフィリップ・シーモア・ホフマン

この部門が一番難しいかも、全員がアカデミー賞受賞者ですので。
しかも全員好きなもので…、えいやっで『アラン・アーキン』で。
「アルゴ」には「人生の特等席」でも素晴らしかったジョン・グッドマンも出ていたことだし 。


●助演女優賞

「ザ・マスター」のエイミー・アダムス
「リンカーン」のサリー・フィールド
「The Sessions」のヘレン・ハント
「レ・ミゼラブル」のアン・ハサウェイ
「世界にひとつのプレイバック」のジャッキー・ウィーヴァー

エイミー・アダムスは「人生の特等席」も良かったので期待大ですが、
最近結婚もしたこと(関係あるか?)だし、『アン・ハサウェイ』に。

 

 

この予想の結果は、来月のホットニュースとしてお知らせします。


 


Ⅱ 新しい映画館

 

 新宿に新しい映画館ができました。
新宿シネマカリテ(Cinema Qualite)、新宿駅東南口の新宿NOWAビルの地下1階に2スクリーンで、12/22にオープンしました。

 正確にいえば、この名前で1994~2001年に今の新宿武蔵野館のところにあったミニシアターの復活ということになります。
 新宿武蔵野館系列で、2つの映画館で5スクリーンとなりました。今回「サイド・バイ・サイド」を見せていただきました。今やシネコンの激戦区になりそうな新宿で、一味変わった作品群を公開してくれる新宿武蔵野館系列映画館。
頑張れ!!

 


 今月はここまで。
次はアカデミー賞の当日(しつこい)にお送りします。


                         - 神谷二三夫 -


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