寒い日が続きます。
外に出るのも億劫ですが、
出ない訳にはいかないのならば、
心まで暖まる映画館へ!
1/26~2/25の31日間に出会った映画は26本、外国映画が多くなりました。
日本映画の新作は少なくちょっと残念。
「かぞくのくに」はキネマ旬報表彰式で再見しました。
つやのよる
フラッシュバック・メモリーズ
みなさん,さようなら
かぞくのくに
脳男
(古)殺しの烙印
鯉名の銀平
東京は恋する
二人の銀座
斬る
アルバート氏の人生
人生ブラボー!
塀の中のジュリアス・シーザー
ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日
明日の空の向こうへ
ファイヤー・ウィズ・ファイヤー 炎の誓い
アウトロー
奪命金
エンド・オブ・ザ・ワールド
マリーゴールド・ホテルで会いましょう
ムーンライズ・キングダム
東ベルリンから来た女
ダイ・ハード/ラスト・デイ
レッド・ライト
王になった男
ゼロ・ダーク・サーティ
①-1 ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日
何よりその映像に魅せられました。プールや海の水の下からその上に浮かぶ人、さらに青い空まで、不思議な、宙に浮いているような画面の美しさにひかれました。トラが人のことかなどは要らなかったような気がします。
①-2 フラッシュバック・メモリーズ
ディジュリドゥという楽器は知りませんでした。アボリジニのこの楽器を演奏する日本人GOMAのことも。その彼が記憶を失う交通事故にあった後、演奏者として復帰したことも。それを記憶の時の重なりの中に描いた松江監督、感動しました。
② 塀の中のジュリアス・シーザー
実際の刑務所の中で演じられたシェークスピアの「ジュリアス・シーザー」。そのオーディションから、練習、上演までを追ったこの映画は、ドキュメンタリーとも言えるが、人物になりきるイタリア人の多彩さにノックアウト。
③-1 マリーゴールド・ホテルで会いましょう
今や高齢化社会は世界的なもの、いろんな国から高齢者映画がやってきたが、イギリスからはインドに生活の場を写そうとする高齢者6組の話。一人ひとりの生き方の違いやインドに対する様々な反応の仕方も描かれ、面白く、何より勇気を与えてくれる映画です。
③-2 ムーンライズ・キングダム
子供による大人のための絵本のような肌触り。子供たちの行動にてんてこ舞いの大人たちが面白い。子供の目から見れば大人はこんなものというため息も聞こえそう。
他にも面白いお勧め作品は次の通り。
◎人生ブラボー:これもアイディア勝ちですね、「テッド」みたいに。楽しみました。
◎みなさん、さようなら:日本人は“みんなで渡れば怖くない”と、集団生活が好きだった。多くの人が一緒に住んだ団地の中で一生を過ごそうと決心する小学生の物語。
◎奪命金:なんか久しぶりに香港映画らしい作品に出会った。
◎エンド・オブ・ザ・ワールド:世界の終りという映画は大型ディザスター映画として、たくさんやってきたが、こんなに一般市民レベルの映画でやってきたのは笑うしかない!
◎東ベルリンから来た女:壁が崩れるに至るまでの東ドイツには様々なドラマがあっただろう。1980年、ベルリンから田舎に赴任してきた女医の様々な葛藤、軋轢が誠実に描かれる
◎王になった男:王の影武者として採用された男の物語は、案外想定内の話だが、それでもやはり本物の王様とはどうあるべきかというテーマには感心する。
◎ゼロ・ダーク・サーティ:オサマ・ビンラディンを見つけ、殺すまでを描いた映画。オサマを見つけ出すことに入れ込んだ主人公マヤの執念にちょっと辟易。
☆ハーベイ・カイテル
「ムーンライズ・キングダム」でボーイスカウトの司令官を演じていたのは、ハーベイ・カイテル。マーティン・スコセッシ監督と知り合い70年代前半から多くの作品に出てきた。
「地獄の黙示録」の主役をコッポラ監督と対立して降板した後、様々な曲折を経て、90年代には様々なジャンルの映画に出演。「ピアノレッスン」「パルプフィクション」「ユリシーズの瞳」など、アート系映画の多くで印象的な姿を見せていた。最近見ないと思っていたら、この司令官役でかくしゃくたる人物を演じていた。
●つやが出てこない「つやのよる」は、桐島が出てこない「桐島、部活やめるってよ」とおなじ趣向。題名にある人物が出てこないのが流行るんだろうか?
●「明日の空の向こうに」はポーランド映画。ストリートチルドレンが国境を越えて、住みやすい地を求めようとするのだが、どこからどこへがよく分からなかったのは、見ているどこかで眠ってしまったんだろうか?
●団地という生活空間が進んだ生活と思われていた60年代に団地で生まれた子供が、その後、一生をそこで過ごそうとする「みなさん、さようなら」は面白いが、今や団塊世代の高齢化により空き部屋が多くなっていると言われる団地。状況は大きく変化している。
●日本人は笑うのが苦手だろうか?
「エンド・オブ・ザ・ワールド」はスティーヴ・カレル主演映画、コメディアンである彼が、ずっと真面目な表情で通すためか見ている人が誰も笑わない。
真面目に世界の終わりを描いていくのだが、そのこと自体がおかしいはずなのに笑わない。ひとり笑っていた私は馬鹿か?
●“運の悪さは遺伝する”と親子でアクションに取り組んだ「ダイ・ハード・ラスト・デイ」は、いくら何でもやり過ぎですよね。もうちょっと落ち着いてください。
●日活の60年代の映画で「東京は恋する」と「二人の銀座」という2本を見た。戦後の日活は若い俳優の映画という印象がある。確かに、裕次郎をはじめ新しく発見された若いスター主演で作品が作られた。この2作も若者たちが主人公だ。そして案外スマートだったんだなと思った。
アメリカ時間では2/24の夜、日本時間で今日の午前、アカデミー賞の授賞式がありました。
ロサンゼルス、ハリウッドのドルビーシアターで行われました。
先月号で予測した6部門は、次のような結果になりました。
作品賞:アルゴ
監督賞:アン・リー(ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日)
主演男優賞:ダニエル・デイ・ルイス(リンカーン)
主演女優賞:ジェニファー・ローレンス(世界でひとつのプレイブック)
助演男優賞:クリストフ・ヴァルツ(ジャンゴ 繋がれざる者)
助演女優賞:アン・ハサウェイ(レ・ミゼラブル)
主演男優賞と助演女優賞の2部門が当たりました。2/6で33%の確率でした。
他の部門も含め受賞作を見てみると、作品的にはかなりバラけた印象です。
12部門にノミネートされ本命と言われていた「リンカーン」は2部門の受賞にとどまりました。
最多受賞したのは4部門受賞の「ライフ・オブ・パイ」、3部門が「アルゴ」と「レ・ミゼラブル」ですが、受賞部門から言えば、今年は「ライフ・オブ・パイ」と「アルゴ」が分け合った印象です。
話の面白さでいえば、脚色賞と編集賞も取った「アルゴ」、画面の美しさでいえば視覚効果賞と撮影賞を取った「ライフ・オ ブ・パイ」となりましょうか。ゴールデン・グローブ賞の作品賞も取った「アルゴ」は俳優のベン・アフレックが監督した作品。ジョージ・クルーニーが製作に加わっています。12月号でも書いたように、アメリカ映画界が実際に絡んだイランのアメリカ大使館人質救出作戦を、面白く描いた作品で、これにアカデミー賞を与えるのは当然かもしれない。映画の中で製作者チームを演じたアラン・アーキンとジョン・グッドマンの2人組も面白かった。充実した作品が受賞になって良かった。
アカデミー賞は今年第85回、2/10に行なわれたキネマ旬報の表彰式は第86回、ということで、アカデミー賞より古い歴史を持つ表彰式に2年ぶりに参加しました。今年のベスト1映画が3本上映されました。
文化映画:ニッポンの嘘 ~報道写真家福島菊次郎90歳~
外国映画:ニーチェの馬
日本映画:かぞくのくに
3本共に見ていましたので全部を見るのは遠慮して、最後の「かぞくのくに」とその後の表彰式を見てきました。表彰式には全ての賞の受賞者(外国人は代理出席)が壇上に並ばれました。印象に残ったのは次の方々の言葉。
★ヤン・ヨンヒ(日本映画作品賞「かぞくのくに」監督):
「ディア・ピョンヤン」「愛しきソナ」と、家族のドキュメンタリーを2作発表していた監督の初めての劇映画。題材は自身の兄の北朝鮮からの一時帰国についての話。北朝鮮からは映画を作らなければ北朝鮮に暮らす家族にあわせてやると、毎回のように脅されていると話されました。
★周防正行(日本映画監督賞「終の信託」):
「シコふんじゃった」ではゲテモノ監督と呼ばれ、「Shall weダンス?」ではミュージカル監督、最近は社会派と呼ばれてますが…。
★内田けんじ(日本映画脚本賞「鍵泥棒のメソッド」、監督もしている。):
脚本作成は製作者と打ち合わせながらしていて、ストーリーの起点となる殺し屋の銭湯での転倒は、石鹸で滑ってというあまりにべたなものだったので、
周囲の反対にあったが、あくまでべたなものを貫いてそれでも外さないようにできたのはうれしい。
★安藤サクラ(「かぞくのくに」で主演女優賞、「愛と誠」「その夜の侍」などで助演女優賞):
超うれしいを更に感情豊かに述べたサクラさん、そのあまりに破れかぶれ(?)の言葉は記憶に残らず、何だか嬉しいみたいだとの印象だけが残りました。
この日、北九州での舞台が終わってから駆け付けた主演男優賞の森山未来は、羽田に着いた後、首都高速が異常な混み方のため、会場に着いたのは終了間際でしたが、結構落ち着いていました。
3月いっぱいで閉館になる銀座シネパトスでは“銀幕の銀座”を特集上映中。銀座のど真ん中の映画館での特集上映、これほど似合う上映会があるだろうか?
幾多の映画で舞台となった銀座は昭和という時代を感じさせる。石原裕次郎、浅丘ルリ子、岸恵子、佐田啓二、山本富士子、原節子、池部良、田中絹代、佐野周二、高峰秀子・・・。多くのスターが恋を語り、働き、競争し、歌を歌い、成功し、失敗してきた。銀座はまた歌にも多く歌われてきた。大ヒット曲の一つ「二人の銀座」はベンチャーズが作曲、永六輔が作詞している。
和泉雅子と山内賢が歌ったこの歌があまりにもヒットしたため、日活は映画を作らざるを得なくなったという。この映画の上映時に、和泉雅子と評論家川本三郎によるトークショーがあった。
予定時間を25分もオーバーしたトークショーは、4/5は和泉雅子がマシンガントーク、超面白い50分だった。この曲は最初越路吹雪に提供されたという。
しかし、彼女は自分には合わないと和泉にくれたという。和泉が音痴であることを知っていた越路は、彼女をカバーするために、正確には歌えるが、感情をこめて歌えない誰かとデュエットすることを勧めたという。ほとんどの楽器を演奏でき、絶対音感も持っていた山内はその条件にぴったりだった、感情をこめられないところも含めて。
こうして大ヒットが生まれたが、困ったのは和泉。音痴であることを認識していた彼女はなるべく歌いたくなかったのだった。 銀座シネパトスを松坂屋側に出たすぐのところに生まれ育った和泉は、銀座地区の生き字引のよう。13歳に日活でデビューする時、日活映画を見たことがないことに気付いた彼女は、シネパトスの前身の日活封切り館で初めて日活映画を見たという。最近では南極なんかに行って、まるで冒険家のように見える彼女は、今まで引退したと言ったことなどなく、誘いがあればいつでも出演したいとアピールしていた、ただし、気に入った題材であればとのこと。
まるで町内会の表彰式のように、ご近所さんが花束を持って多く訪れていました。シネパトスの鈴木マネジャーもご近所さんのようで、“次の回が遅れてもいいよね?”との和泉の声に鈴木さんもたじたじ。楽しいトークショーでした。
今月はここまで。
次号は春ど真ん中の3/25に。