天候の移り変わりが早い今年の冬→春、
寒いと思った冬が過ぎ、
今や桜の満開の時期も過ぎようとしています。
映画の世界でももちろん春休み番組が始まっています。
見逃すな!
今すぐ映画館へ!!
2/26~3/25、いつもより短い28日間に出会えた映画は26本、実際の出来事から触発された物語、日常の生活から発想された物語、物語として面白く作られた作品、ドキュメンタリーで教えてもらった事実などなど、様々な種類の作品に出会えました。
草原の椅子
約束 名張毒ぶどう酒事件死刑囚の生涯
すーちゃん まいちゃんさわ子さん
横道世之介
遺体 明日への10日間
プラチナ・データ
(古)お嬢さん乾杯
張り込み
影なき声
黒い画集 ある遭難
影の車
霧の旗
世界にひとつのプレイブック
故郷よ
アントニオ・カルロス・ジョビン
フライト
二郎は鮨の夢を見る
野蛮なやつらSavages
愛,アムール
オズ はじまりの戦い
ジャンゴ 繋がれざる者
偽りなき者
シュガーマン 奇跡に愛された男
シャドー・ダンサー
クラウド・アトラス
ザ・マスター
①-1 愛、アムール
今までそこにいた人が突然どこかに行ってしまう恐怖。多分、年を取りある時意識が飛んでしまう時が来ると、周りにいる人の驚きはいかばかりかと思うが、この映画はそれを静かに見せてくれる。
①-2 ザ・マスター
映画の描写、俳優の演技など目を見張る。ひとつも無駄なく、深い意味あいを伝えてくる。しかし、圧倒的な画面でノックアウトしてくれるかとの期待は、中盤以降内容が行き先を失うことでちょっとはぐらかされたような気がする。何度も見た予告編で船から二人の男が海に真っすぐ落ちていくのが目に焼き付いているが、それが見られなかったのは何故?
予告編からこれほどにストーリーを想像してしまった映画は最近なかっただけに、ストーリーの結末にもう少しドラマが欲しかった。男優二人の演技は素晴らしかった。ホアキン・フェミックスはブランク(?)を感じさせないなで肩演技。
②約束 名張毒ぶどう酒事件死刑囚の生涯
小学生高学年の頃、隣県の三重県名張市で毒ぶどう酒事件があったことは覚えているが、奥西死刑囚がまだ存命で、無実を訴えているとは知らなかった。1審での無罪判決、2審の逆転死刑判決から半世紀が過ぎている。この映画で提示された内容に対し、日本の司法はどう反応するのだろうか?
③偽りなき者
子供が自分の感ずるままついた嘘が人の運命を狂わせる。純真だからこそ怖い子供の言葉、それを信じ込んでしまう大人の怖さを北欧の小さな村で精密に描く。変に爆発させないで静かにエンディングを迎える大人の映画。
次の作品もお勧めです、ご覧ください。
◎草原の椅子:宮本輝原作の映画化、少し説教臭いが、それでも、二人の男が示す友情のあり方とか、特に西村雅彦の関西人らしさとかには惹かれた。
◎故郷よ:1986年4月のチェルノブイリ原発事故、隣町プリピャチのその日から10年先まで、人々がどう過ごし、どんなふうに変わっていったか…、他人ごとではないストーリーです。
◎フライト:これくらいきっぱりやられると感心しますね、中途半端じゃいけない。ファーストシーンから半端じゃない。D・ワシントンの悪ぶりも堂に入っています。それにしてもアメリカの~中毒の根は深い。
◎ジャンゴ繋がれざる者:タランティーノ監督の西部劇はマカロニ調と言われるが、それほど下品にはなりきれていない。画面がきれいだったりする。なんだか、西部劇になりきれていない気もする。風味がないのでお勧めしていいのか迷いますが…。
◎シュガーマン 奇跡に愛された男:思っていた以上に感動しました。
ロドリゲスという人の生き方に。生活をほとんど飾らずに歌にして歌っているようだ。1/4世紀後にあんなコンサートができるなんてすばらしい。今年のアカデミー賞長編ドキュメンタリー賞受賞作。
◎シャドーダンサー:北アイルランド(イギリス)のベルファーストで展開されるIRAの戦い。家族内での裏切りなど緊迫した状況が続き衝撃のラストへ。
☆ジャン=ルイ・トランティニアン
「愛、アムール」で老々介護に当たる夫を演じているのは、「男と女」でも愛を語っていたジャン=ルイ・トランティニアン。フランス男らしいスマートさで、海辺の風景を忘れないものにしていた彼も、今や82歳。随分久しぶりにスクリーンで見たが、静かに、リアルな老人を演じていた。
タランティーノは本当に映画好き、まるで子供のように、昔自分が見た映画の楽しさを再現しようとする。だから、この映画にはあの歌は欠かせないと思うらしく、昔の歌がそのまま使われることが多い。「キル・ビル」における梶芽衣子の歌声は忘れ難い。
“ジャンゴ”はマカロニウエスタン「続・荒野の用心棒」の主人公ガンマンの名前。フランコ・ネロが演じていた。映画を見ていない私でも知っているくらいその主題歌は有名な曲だ。タランティーノの映画でも、始まるとすぐエンニオ・モリコーネの曲が流れる。タランティーノの「ジャンゴ」は「続・荒野の用心棒」のリメイクでも続編でもない。主人公の名前だけいただいた、いや、正確にいえば、フランコ・ネロにもご出演頂いた(ゲスト出演)作品になっている。しかし、これまたタランティーノらしく、元作にも、フランコ・ネロにもあまり構うことなく、自由に作っているが、今回元作の雰囲気とはちょっとばかり違うのではとも思う。多くの歌が使われているが、その中に、ジム・クロウチの歌声が流れてくる。“I Got A Name”だ。
久しぶりに聞いたが、懐かしい、うれしい。一緒に歌いたくなってしまう。1973年に作られた「ラスト・アメリカン・ヒーロー」の主題歌だったもの。
ジェフ・ブリッジスが主人公のカーレーサーを演じていた。なぜこの曲が「ジャンゴ」に使われたのか?単にタランティーノが好きだったからとしても、許す。
●妻に去られて精神的ダメージを受け躁鬱病で入院、家に帰って両親との生活でリハビリ中の主人公というのが思いっきり情けない「世界にひとつのプレイブック」。現代的恋愛劇というんでしょうか?
●“大人の音楽映画祭”として10本以上の音楽映画が連続上映された。その内の1本「アントニオ・カルロス・ジョビン」は彼の曲が切れ目なく流される。ボサノバの神様が作った多くの曲が、何人ものアーティストによって歌われ、演奏される。(古いフィルム、TVから)日本からは、マルシアと小野リサが出演。音楽だけの映画なのがなかなか良い。
●数寄屋橋の地下にカウンターだけの鮨「すきやばし次郎」がある。ミシュラン三ツ星の鮨屋として有名。アメリカ人が作った「二郎は鮨の夢を見る」は、
その主人、二郎(ただし店の名前は次郎)と二人の息子を追ったドキュメンタリー。フィリップ・グラスの音楽に乗って夢のように美しく撮られているが…。やはり、フィリップ・グラスの音楽は美しいと、こちらの方で感心。
●今月見た日本映画の旧作6本の内、「お嬢さん乾杯」以外の5本は、神保町シアターの「松本清張と美しき女優たち」で上映されたもの。「影の車」以外は全て白黒映画である。白黒の画面は黒と白を対比させることで、人間の中の両面を強調する。人間の分からない部分を多く描くミステリーでは白黒画面が効果を発揮することを実感する。謎も一層際立つようである。
中でも「張り込み」は、冷房などない暑い夜行列車から始まり、佐賀のこれまた冷房などあるはずがない旅館の二階でランニングシャツ一枚でずっと見張る。太陽光線の暑さと、刑事たちの熱意、見張られる女の日常の陰影がくっきり描かれる。全てがカラーであることが良い訳ではない。
●「クラウド・アトラス」はどうなんでしょう?
一人のスターが時代を超えて何役も演じるというのはいいとしても、あのスピードでの描写、しかも同じテーマ(輪廻転生)が繰り返されるだけというのは…?
●東野圭吾(大人気)原作の映画化「プラチナ・データ」は今一つ話方が下手である。途中から出てくる多重人格者というのがもう少しうまく語られていたらと思われる。それにしても久しぶりに見た鈴木保奈美の顔は相変わらず扁平で薄い感じ。
早川雪洲をご存じだろうか?
1886年千葉県千倉に生まれた早川金太郎が、1907年にアメリカに渡り、舞台俳優から1914にハリウッド映画にデビュー、翌年出た「チート」が大ヒット、“女殺しの横顔”と称されたエキゾチックな魅力で、ルドフル・ヴァレンチノと人気を二分する大スターとなった。
その後も長く1968年まで映画、舞台、TVに出続け、1973年、87歳で亡くなった。映画ファンのはしくれとして早川雪洲の名前は知っていたし、ハリウッドの大スターとも知っていた。戦後でいえば、「戦場にかける橋」でアカデミー助演男優賞にノミネートされたことも。
昨年やっと見た「戦場…」で日本軍人を堂々と演じている姿に圧倒されたが、世界での人気についてはなかなか実感できないでいた。時代があまりに違うので、仕方がないかもしれないが。昨年末に「セッシュウ!世界を魅了した日本人スター・早川雪洲」という本が出版された。読んで驚いた。
「チート」で大スターになった雪洲はハリウッドにグレンガリ城を邸宅として構え、1917年の年収は57万ドルに達していたとか。こうした大スター振り以上に驚いたのが、多くの舞台にも出ていたことである。しかも、自分で脚本を書き、演出までしている。更に活躍の場も、アメリカ(ハリウッド、ニューヨーク)、日本、フランスとあり、しかも、戦前、戦後と作品を残している。アメリカ(映画81本、舞台16本、TV6本)、日本(映画20本、舞台24本TV14本)、フランス(映画14本、舞台1本)、イギリス(映画2本、舞台1本)、ドイツ(映画1本)、に出演しているのである。凄い!
日本人の教養としてと構えるまでもなく、同じ日本人として、世界的に活躍した早川雪洲のことは知っていていただきたい。今もって世界でこれほど活躍したスターはいないのだから。
3/3~3/12にかけて仕事で大阪に出かけた。
1996~2000年の4年間大阪に勤務していた時以来、これほど長く滞在したのは初めてだ。毎朝1時間ほど街を歩いて昔の街に対する勘を取り戻した。更に2本ほど映画も見た。「二郎は鮨の夢を見る」は平日の夜の回で見たが、かなりお客さんが入っていたのには驚いた。さすがの食の街か。今回は梅田近辺しか回らなかったのだが、気付いた範囲で2つの映画館5スクリーンが無くなっていた。もう少し多いかもしれない。しかし、嬉しいこともあった。JR大阪駅の上に作られたステーションシティの最上階に、ステーションシティシネマというシネコンができていたのである。12スクリーンを持つ大きなものだ。
珍しくも国内の映画3社(東宝、松竹、東映)が共同で運営しているらしい。
残念ながら、今回はここで映画を見る機会はなくロビー以外は見ることはできなかったが。
最近は座席をインターネットで予約することが多い。
「ザ・マスター」に行く前日の夜、予約サイトを操作して席を選んでいると、例によって真ん中の縦通路を挟む通路席はすでに満員。仕方なく通路側席から1席空けた3列目の席を予約した、多分空けた2列目の席もこの後埋まるだろうと想像しながら。当日、2列目の席はやはり埋まっていた。座った人が随分姿勢正しくかなりの座高なので、後の人がかわいそうとふと前を見ると、この列の人は皆姿勢よく座っているのだった。前の人が高いから、後ろの人も高くなるという鶏・卵状態。皆が楽な姿勢でゆるく座ればハッピーなのだが。反対隣りのおばさんはゆったり座っていたので安心したが、そのゆったり度が過ぎたのか途中からいびきが聞こえてきた。そして、彼女を置いてもう一つ向こうの席の若い男性は、ポップコーンを上映中ずっと食べるのはいいのだが、ポップコーンを手に取る時底を撫ぜるのか必ず音をさせるのだ。映画館は見ている時は一人になれるとはいえ、多くの人が一緒に見る環境だ。家で好き勝手にDVDを見ているのとは違う。最低限、たがいに良い状態で映画を見えるように心配りしたいものだ。
今月はここまで。
次号はゴールデンウィーク直前の4/25にお送りします。