2013年 7月号back

東京では、はっきりしない雨の季節が続きます。
降るのか、降らないのかはっきりせい!と言いたくなる気分。
外は雨(が降っているだろうか?)。
こうなったらこもりましょう!
勿論、映画館に!!

 

今月の映画

 5/26~6/25までの31日間に出会えた映画は30本、内9本が旧作となりましたが、新作も結構頑張っていました。

<日本映画>

はじまりのみち 
言の葉の庭 
リアル 完全なる首長竜の日 
奇跡のリンゴ
二流小説家 シリアリスト
(古)美しさと哀しみと 
日も月も
やくざ絶唱 
いのちぼうにふろう
自由学校

 

<外国映画>

ポゼッション 
ハーブ&ドロシー ふたりからの贈りもの 
パパの木
オブリビオン 
グランド・マスター 
バレット 
インポッシブル
G.I.ジョー バック2リベンジ 
ロマン・ポランスキー 初めての告白
イノセント・ガーデン 
三姉妹~雲南の子 
華麗なるギャツビ―
ローマでアモ―レ
3人のアンヌ 
アフター・アース 
エンド・オブ・ホワイトハウス
(古)水の中のナイフ
反撥
袋小路
ローラ

 

 

Ⅰ 今月のベストスリー

 

①インポッシブル
 スマトラ沖地震による津波が大きな被害をもたらしたのは2004年12月。クリスマス休暇でビーチリゾートにやってきた多くの人が被災した。映画でも既に「ピアアフター」が取り上げているが、実話に基ずく今回の作品のリアルさはその比ではない。3.11を経験した私たちには必見の映画となりました。


②ロマン・ポランスキー 初めての告白
 生まれたパリから3歳の時に一家でポーランドに帰ったユダヤ人監督ロマン・ポランスキーは、スキャンダル的な話題でも有名になっている。その彼がクラコフのユダヤ人街→ゲットー→強制収容所と動いた家族や、シャロン・テート事件、さらに未成年少女との淫行容疑についても、いつわることなく語っている。誤解されやすく、しかも言い訳をしない性格の彼が、静かに涙を浮かべる瞬間が何度もある。

 「ゴーストライター」「おとなのけんか」と最近の映画の上手さには舌を巻く。一緒に上映されている旧作4本(上記の古3本+ローズマリーの赤ちゃん)も見逃せない。


③はじまりのみち
 昨年の生誕100年を記念して作られた木下恵介監督を描いた映画。戦時中、病気の母を疎開させるためリヤカーを引いて何10kmを移動した実話をもとにしている。ゆっくりと、しかし時にしっかり動く絵を感じさせる作りで手堅く描かれる。天才と言われた木下監督の、家族思いの面を見せてくれる。

 

 次の映画たちもオモシロイ、ご覧ください。


ハーブ&ドロシー ふたりからの贈りもの:NYのふたりのコレクションを、全米50州各一つの美術館に50点ずつ贈るという50X50ヴォーゲル(夫婦の名字)キャンペーンを描いた続編。感心することがたくさんありました。


オビリビオン:2077年の地球は、敵に攻撃され人間が他の惑星に移り住んだ時代。水など地球の資源を監視するため働くカップルの話からスタートする、如何にもSF的なお話。


バレット:シルベスター・スタローン主演、ウォルター・ヒル監督のアクション映画。随分久しぶりの監督は、相変わらず無駄を排した描写で小気味よく話を進める。


◎イノセント・ガーデン:少女から大人になる時期の女性を描いた映画は多々ある。微妙な時期に彼女たちの感性は多くの変化を見せる。狂的に、エロティックにパク・チャヌク監督が描く。ニコール・キッドマンが母親役で如何にも女という面を熱演している。


三姉妹~雲南の子:中国南部の雲南省は貧しい地方ということでも知られている。そこで暮らす三姉妹の生活をじっくり描いたドキュメンタリー。10歳の長女の姿に心打たれる。一人子政策の中国で3人というところに貧しさも見える。母がいないというところにも。


華麗なるギャツビ―:なんで今ギャツビ―なのかはまるで分からないし、期待もしなかったが、心配したよりは面白かったと言えようか。時代とは関係なく自分色で作るバズ・ラーマンが、時代を引きずらない軽めのギャツビーを作ったような印象がある。


ローマでアモ―レ:ロンドン、バルセロナ、パリに続き、ローマとヨーロッパ都市狙いのウディ・アレン。4つの話が並行して描かれる。


3人のアンヌ:ホン・サンス監督の恋愛小話映画の新作。フランスからイザベル・ユペールを迎え、監督と女優とライフセーバーの3様の関係を軽いタッチで描く。


エンド・オブ・ホワイトハウス:ホワイトハウスの終わりと直截的な日本題名通り、ホワイトハウスが大きく破壊される映画ですが、非常に面白くできていて、際物でもなく、節度ある描写ぶりを大いに楽しみました。


 

 

Ⅱ 今月の予告編

 

①風立ちぬ
 宮崎駿監督が5年ぶりにメガホンを取ったスタジオ・ジブリの新作は「風立ちぬ」。その予告編が、今多くの映画館で上映されている。初めて見たのは、「G.I.ジョー バック2リベンジ」を見た時。本編が始まる前に流される何本かの予告編の最後に、突然手書き文字で“映画の終わった後4分ほどの「風立ちぬ」の案内を流します”と、鈴木敏夫プロデューサー名の案内が流れました。言わば予告編の予告編です。実際の予告編は本編終了後に流れるということになりました。これってどうなんでしょう?映画で感動したり、失望したりした後の余韻に浸っている時に、突然関係ない映画の予告編を見る羽目に。それ以降は普通に本編の前に流されるのを何回か見ましたが、相変わらず鈴木プロデューサーの前説は付いていました。ちょっと大げさ。もっとさりげなく流してほしかった。

 

②二流小説家 シリアリスト
 この映画のポスターを見ると、50年代のアメリカ映画「黄金の腕」のポスターを思い出した。腕のイラストが印象的だったので。映画の予告編は一度だけ見たが、実写ではないイラストによる予告編だった。そのタッチが60年代のアメリカ映画を思わせた。しかし、この予告編は1回しか見ていない。

 

 

Ⅲ 今月の懐かしい人

 

☆オルネラ・ムーティ
 ヨーロッパの大都市制覇を狙うウディ・アレンの新作「ローマでアモ―レ」、新婚の女教師が迷った街で出会うのは映画の撮影風景、そのスター、ピアを演じていたのはオルネラ・ムーティ。
 オルネラ・ムーティといえば70年代前半に、デビュー作「シチリアの恋人」や「ふたりだけの恋の島」などで、日本でもアイドル的人気を博した女優。
 目力の強い、彫の深い濃い顔立ち、ちょっと粘り気のあるセックスアピールなどが思い出されます。30年ぶりくらいに見たオルネラ・ムーティ、元気なおばさんになっていました。


 

Ⅳ 今月の旧作

 

 今月は日本映画5本、外国映画4本の旧作を見た。日本映画では、やっと見ることができた「自由学校」(松竹)が面白かった。1950年に朝日新聞に連載された獅子文六の小説を渋谷実が映画化。如何にも戦後すぐの、新しい価値観、考え方が出てきた社会のあり方がうかがえて、面白かった。
 1951年のGEに公開されたのだが、同時期に吉村公三郎監督の「自由学校」(大映)も公開され、どちらの作品も好成績を収めたため、この時期をゴールデンウィークと呼ぶことになったという。

 川端康成原作の2本「美しさと哀しみと」「日も月も」は、どちらも面白かったが、フィルムの状態がかなり悪かった。特に「美しさと哀しみと」は全編ほぼ赤茶けてカラー映画とは言えないほど。これではまるで“美しくなくて悲しくて”。

 外国映画は、ポランスキーの旧作3本とジャック・ドゥミ監督の「ローラ」。
「ローラ」は「シェルブールの雨傘」を見た時以来ずっと見たいと思ってきた作品。シェルブールの中に突然現れるあのアーケード2階の映像は何?と思ってきた。ジュヌヴィエーヴの夫になる宝石商ローラン・カサールのナントでの恋物語が「ローラ」で語られているらしいとは思っていた。しかし、これほどに2つの作品が結びついているとは思いもしなかった。ミッシェル・ルグランの音楽も同じものが使われていた。何より、時は移りゆくという人生に対する考え方が、「ローラ」で既に提示されていた。実際に歌われるのは踊り子たち(ローラを含め)の歌う歌のみだが、後にミュージカルを作り出す下地は十分に分かる。

 

 

 

 

Ⅴ 今月のつぶやき

●オーストリアゴムの木が凄い速さで成長し、広がっていく根や枝が主人公の家を壊してしまう「パパの木」。この木の成長ぶりにも驚くが、こうした事象をすんなり受け入れていく人たちの生き方も、感心してしまいます。


●ブルース・リーの師匠だったというイップマンも含め、題名通りカンフーの
マスターたちのドラマ「グランドマスター」は、カンフーに期待して見に行くと、がっかりするだろう。


●45分の中編アニメーション「言の葉の庭」は独自の作風で知られるアニメ作家新海誠の新作。15歳の男子生徒と27歳の女性の恋情を繊細な描写で描いた、
いつも通りに、感情豊かな作品。彼の10分ほどのCM作品「誰かのまなざし」(野村不動産)が併映されました。

 

 

 

 

今月のアラカルト:最近の映画界的話題


Ⅰ 映画館の切符売り場

 

 最近の映画館はチケットのインターネット販売を行っているところが多い。シネコンではほぼすべてのチェーンで行っているだろうと想像する。(映画を見たことのないシネコンチェーンもあるので)TOHOシネマズも当然のごとくインターネット予約ができるし、最近ではたまったポイントでの鑑賞もネット予約可になった。

 そのことで思い出したが、昨年のいつだったか、六本木のTOHOシネマズに行ったとき、切符売り場が無くなっていたことに驚きました。代りにあったコンピューター予約システムを自分で使って切符を買うことになっていて、面倒だなと思いつつ操作したのだが、その時分からない人をヘルプする役目の係の人に、TOHOの予約システムではポイント観賞は予約できませんね、他社はできるのにと、減らず口を叩いてしまった。
 そのためではないだろうが、暫くしてTOHOのシステムでもポイント観賞の予約可になった。最近久しぶりにTOHOシネマズ渋谷に入ったらここも切符売りの窓口は無くなっていた。そう、今やTOHOシネマズでは切符売り場廃止を目指しているように見える。

 

 

 

Ⅱ 前売り券はどうなるのか?


 今まで前売り券を買うとインターネットでの席予約はできなかったが、“それができますよ”を売りに、ムビチケなる前売り券が暫く前から登場している。カードになった前売り券で、しかし今までの前売り券よりも高い。大作の前売り券は1300円が多かったが、ムビチケになると1400、1500円が多くなった。これってつまり、予約させてやるから高いんだよということですよね。

 Ⅰの通り、TOHOシネマズさんでは切符売り場を廃止しようとしているので、前売り券を持ってこられても困る訳ですよ。ムビチケであれば大丈夫ということになる、とある人に教えてもらいました。確かに商売に長けたTOHOさんならやるかもしれない。

 さらに、「風立ちぬ」の予告編によると、この映画のムビチケは1300円になるらしい。まあ、結構なことではありますが、
 今後すべてのムビチケが1300円になるんだろうか?

 

 

 

Ⅲ 映画館の座席の飲み物置き

 

 TOHOシネマズ渋谷で東宝の映画館案内(アニメーション)を見ていたら、突然“席の飲み物置きは右側です”と明言されました。随分前ですが、この問題については見せよう会通信でも取り上げました。私も右側を主張していましたので、東宝さんなかなかやるじゃんと思ったのでした。映画館できちんと案内されていないと思っていましたので、ようやく映画館もやる気になったかと感無量でした。

 

 

 

Ⅳ スクリーンの幕

 

 映画のスクリーンサイズにはいろいろある。
 スタンダードサイズ:横縦比が1.37:1、または1.33:1 でかつての映画の標準サイズビスタサイズ:横縦比が1.66:1(ヨーロッパビスタ)、または1.85:1(アメリカンビスタ)現在多くの映画がこのサイズで作られる。現在のTV画面比にも近い。
 シネマスコープ:横縦比は2.35:1 横長画面の代表格他にも多くのスクリーンサイズがある。

 映画館は、映画のスクリーンサイズに合わせて上映をするのだが、上映画面のサイズに合わせて左右上下の黒い幕を調整していた。サイズに合わせて幕が調整され、揺れていたことを覚えている方もいるのでは。

 ところが最近のシネコンチェーン等では、この調整幕が無い、或いは使わない場合が多い。場内がしっかり暗く、画面が明るくなければ写っていない部分は気にはならない。しかし、画面が明るいため左右がよく見えてしまう場合、黒より明るい薄い灰色が気になる場合が多い。CMや予告編と本編のサイズが違う場合、調整が面倒とは言え、映画をキチンと見せてほしいと思うのだが。

 

 


Ⅴ アメリカは大丈夫か?

 

 「エンド・オブ・ホワイトハウス」の前に上映されたのは、「ホワイトハウス・ダウン」の予告編。ちょっと笑ってしまう状況でした。いずれにしろ、ホワイトハウスが破壊される映画が続くようです。

 このところ、アメリカ映画にはアメリカの危機、世界の危機、地球の危機を、宇宙の危機をあおりたてるものが多い。予告編を見ているだけで満腹になりそうだ。
 思いつくままに挙げてみると、G.I,ジョー バック2リベンジ、ワールド・ウォーZ、パシフィック・リム、スタートレック イントゥ・ダークネス凄い危機を見て楽しんでもらうというハリウッド戦略も分からないではないですが、う~む、ちょっとTOO MUCHな・・・。
 どうしてこんなに破壊願望があるのだろう?

 


 今月はここまで。
次回は梅雨も明け、夏休みに入った7/25です。

 


                         - 神谷二三夫 -


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