2014年 新春特別号back

あけましておめでとうございます。

東京では少し風が吹いていた以外はほぼ完ぺきな元旦の朝を迎えました。
雲ひとつない快晴で新年を迎えることができました。
今年は特別に初日の出の場所でもなかったのですが、運河の端の方へ走っていくと数人の人が太陽の出る方向を見ていました。元旦の朝は若い人が自転車で走り回っていたり、年齢問わず初日の出の方向を向いていますね。

 

“平和な年になりますように”という言葉が、本当に生きてくるような少し右向き状況の世の中、心置きなく映画を見ていられる日本になりますよう。


 

2013年間ベスト10

 

2013年1/01~12/31の365日間に見た映画の本数は353本となりました。
実は1本だけ2回見に行った映画があり、映画館に行った回数は354回になりました。旧作を84本見ていますので新作は269本でした。

 

269本から選んだ私のベストテンは次の通りです。

<日本映画>

 1.そして父になる
 2.日本の悲劇
 3.かぐや姫の物語
 4.さよなら渓谷
 5.凶悪
 6.永遠の0
 7.利休にたずねよ
 8.共喰い
 9.少年H
10.風立ちぬ

 

 

 家族のことを多く描いてきた是枝監督が、社会のあり方を含め家族とは何かを問いかけてくる「そして父になる」。単純にいってしまえば都会の中流以上サラリーマン家庭と、田舎の中流以下商店主家族の対比と言えるが、細かく描かれる2つの家族のあり様を見ていると、現在の日本のあり方が見えてくるようだった。

 さらに社会のあり方を突き詰めていたのが「日本の悲劇」。カメラが家の中から出ることが無いという狭い範囲で展開される物語は、家族の形が崩れ年老いた父と息子だけの話なのに、二人の間で共通の基盤に立って通じる話ができない。人を、家族を思いやる心が届く先が見当たらないようでもある現在の日本。

 4~9位になった6作品はいずれも原作本からの映画化、ドキュメンタリーの「凶悪」以外は総て小説が原作である。どの作品も大人の鑑賞に耐えうる内容だ。物語の重要性に多くの映画人が気付いているという印象がする。竹取物語を情念の物語として躍動感豊かに描いた高畑勲監督。大正から昭和という時代を背景に自分の生き方を語った宮崎駿監督。スタジオジブリのふたりのベテラン監督は、日本のアニメーション作品の豊かさを示してくれた。

 

 

 

<外国映画>

 1.愛、アムール 

   (Amour)
 2.ゼロ・グラビティ 

   (Gravity)
 3.ビル・カニンガムinニューヨーク 

   (Bill Cunningham New York)
 4.危険なプロット 

   (dan la Maison)
 5.セディック・バレ第一部、第二部 

   (Seediq Bale)
 6.きっと、うまくいく 

   (3 idiots)
 7.ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日

   (Life of Pi)
 8.42~世界を変えた男 

   (42)
 9.母の身終い

   (Quelques Heures de Printemps)
10.ポランスキー初めての告白

    (Roman Polanski: A Film Memoir)

 

 

 全世界的に高齢者問題は深刻のようで、高齢者を主人公にした作品が多く作られている印象だ。ベストテンに挙げた「愛、アムール」「母の身終い」以外にも、「マリーゴールド・ホテルで会いましょう」「カルテット 人生のオペラハウス」「アンコール」とフランス、イギリスの作品が目につく。

 

 アメリカからやってきた「ビル・カニンガムinニューヨーク」はドキュメンタリーだが、主人公は撮影当時80歳のカメラマン。ニューヨークを自転車で飛び回り、自分の撮りたいものだけを撮る。金のために嫌なものを撮ることはしない。飾りをすべてそぎ落とし、自分の信念に沿うものだけを作り、それ以外のことには少しもこだわらないという生き方が、多くのことを教えてくれる。
同じくドキュメンタリーの「ポランスキー 初めての告白」は、現在80歳の監督ポランスキーがこれまでの波乱の人生を正直に振り返っている。


 団塊世代という大きなマーケットに向けて作られた作品とも言えるだろうか。映画はもともとドキュメンタリーから始まったとも言える。映像で映すこと自体に、作り手の意思を離れてドキュメンタリー的要素が含まれてくる。技術の進展と共に、物語の中にドキュメンタリー的要素がどんどん取り入れられている。「ゼロ・グラビティ」は宇宙空間に漂う飛行士をリアルに描写することによって成立している。ごく近い未来である宇宙遊泳をほぼドキュメンタリーのように見せてくれる。「セディック・バレ」は台湾高地族の戦いをドキュメンタリーのように描いて、彼らの心さえ見せてくれる。

 

 その一方で、ドラマがきちんと作られることで成立した映画も、「危険なプロット」など目に付く。
 そんな中、作り物ということでは世界一かもしれないインド映画が新しい時代を迎えている。今までインド国内の観客だけに向けて作られていたものが、世界マーケットに向けての作品作りがされるようになってきた。「きっと、うまくいく」は、かつての映画のように見る人を明るい気持ちにしてくれた。最近上向き加減のフランス映画と共に、インド映画も注目です。

 

 

 例年通り、元旦の今日も映画を見に出かけたのだが、1/1は休館という映画館が増えてきたのを実感。映画館によっては1/1~3を休館というところもあった。実は、2本目に予定していた映画は休館というのを出かける直前に発見。仕方なく1本だけにしたのだった。

 


 今年も見せよう会通信をお送りします。2005年元旦に初めてのメールをお送りしましたので、10年目に入りました。今年、皆さんが昨年より1本でも多く良い映画に出逢いますように。


                         - 神谷二三夫 -


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