まるで冬の三寒四温のようで、寒の戻りなど4月の気候は不安定。
暖かくなったり、暑くなったり、寒くなったりを繰り返す。
繰り返し訪れても快適なのは、
そう、映画館。
3/26~4/25の31日間に出逢った映画は21本、年度の開始時期、いろいろな事情でいつもの月より少なめになりました。
GWはひと頑張りしたいと思います。
白ゆき姫殺人事件
神様のカルテ2
サクラサク
The Next Generationパトレイバー
クローズExplode
パラダイス 神
(Paradise:Faith)
はじまりは5ッ星ホテルから
(Viaggio Sola/AFive Star Hotel)
オーバー・ザ・ブルースカイ
(The Broken Circle Breakdown)
チスル
(Jiseul)
ハンガー
(Hunger)
リベンジ・マッチ
(Grudge Match)
大人の恋には嘘がある
(Enough Said)
世界の果ての通学路
(Sur Le Chenin de L’Ecole/
On The Way to School)
アデル,ブルーは熱い色
(La Vie D’Adele:Chapitres 1 et 2/
Blue is The WarmestColor)
神聖ローマ運命の日 オスマン帝国の進撃
(11 Settembre 1683/The Day of TheSiege)
キャプテン・アメリカ ウィンター・ソルジャー
(Captain America:The WinterSoldier)
八月の家族たち
(August:Osage County)
ワールズ・エンド 酔っ払いが世界を救う
(The World’s End)
(古)汚名
(Notorius)
生きるべきか死ぬべきか
(To Be or Not To Be)
レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ
(Leningrad Cowboys Go America)
①大人の恋には嘘がある
バツ一同士の付き合いが、それぞれの家族や、友人たちとの関係を含め、
等身大で描かれる。40~50歳になれば分かることもいろいろ、分かった上で行動する登場人物たちが辛口のユーモアを持って描かれる。
気に入って、探りながら、傷ついて、許しもする。脚本が上手いです。
②八月の家族たち
ピュリッツァー賞、トニー賞受賞の舞台劇を映画化。
本音トークで互いに傷つけ合う家族を見ていると、同じように舞台劇から映画化された「バージニア・ウルフなんかこわくない」を思い出すが、愛に収束することもなく、ばらばらの方向に離れていく今作はより厳しい社会を感じさせる。
③The Next Generationパトレイバー
名前は知っていても今まで作品に触れることはなかったパトレイバー。
今回は押井守監督により実写にて映画化された。これからシリーズで公開されるという。最近これほど漫画的というか落語的というか、面白い作品を見たことはない。基本は繰り返し、徹底的に繰り返して面白さを出している。
その他の面白い作品、お勧めします。
●白ゆき姫殺人事:綾野剛扮するTVディレクターの薄っぺらさに、今の日本が感じられる。TV局は見る人を感情的に揺さぶり話題になれば視聴率アップ、これだけを狙う。
●はじまりは5ッ星ホテルから:高級ホテルチェーンで各ホテルの品質チェックをする主人公、細かいチェック項目に興味しんしん。
●オーバー・ザ・ブルースカイ:まるでアメリカの流れ者のように、ウエスタン音楽に合わせて、流れていくふたりの関係を描くベルギー映画。
●ハンガー:北アイルランドのIRAの収監者が行う抵抗運動を描くこの映画、今年のアカデミー監督賞のスティーヴ・マックィーン監督のデビュー作、スタイリッシュで冷たい情熱を秘めたところ似てます。
●神様のカルテ2:まだ若いのに既に多くの作品を手掛けてきた深川栄洋監督は、ごく普通のしかし浮いてもいない映画を作る。これもなかなかの出来です。
●リベンジ・マッチ:スタローンとデ・ニーロのボクシング映画です、ロッキーとレイジング・ブルね。心配したよりは楽しく見られました。スタローンの大根演技さえご愛嬌として楽しまなければ。
●アデル、ブルーは熱い色;過激なレスビアン性愛描写など一面感心するが、それにしても3時間はいくらなんでも長すぎ。極端な話、高校生時代以降は要らないかも。
●クローズExplode:鈴蘭高校は男子高校生がファンタジーを完成させる魔法の場。これが悪い方向に収束しちゃうと、変に右方向に旋回するので要注意。
●ワ―ルズ・エンド 酔っ払いが地球を救う:大人になりきらない主人公が高校時代の友達と、故郷にある12軒のパブをめぐる。
アルフレッド・ヒッチコックの1946年の作品「汚名」は、イングリッド・バーグマンとケイリー・グラントのキスシーンで有名だ。当時プロダクションコードで3秒以上のキスは禁じられていたという。その規制の裏をかき、ヒッチコックは3秒以下のキスを繰り返しさせた。つまり、くっついては離れ、離れてはくっつくを繰り返した。その長さは2分半にもなったという。何回繰り返したんだ!
父がナチスのスパイとして逮捕された娘(バーグマン)がパーティで男(グラント)に出逢う。男はFBIの捜査官と分かるのだが、任務は彼女をブラジルにいるナチスの男と結婚させること。
凄い話ですね。二人は当然ながら愛し合う関係になっていたのですから。この辺りのハードさは戦争がすぐ近くにあったこととも関係しているのでしょうか?
この作品を見て驚いたのはケイリー・グランドの美男ぶりである。パーティ場面、頭を後ろから写されて登場する。カメラが右に左に動いた後、娘の相手として横顔、正面の顔が写るのだが、そこで衝撃を受けた。こんなに美しい男がいたのかと。端正な顔を昔から知っていたが、こんなに美しかったのかと驚いた。若くもなく、年とっているでもなく、ただ美しい男としての存在を輝かせている。
同じヒッチコック作品でも、「北北西に進路を取れ」とか、「泥棒成金」とかの手慣れた感じもなく、「断崖」の頃の(ヒッチにとっての)まだ海の物とも山のものとも判明しないような感じでもなく、堂々として美しくあるというところ。
女優を美しく見せる監督として有名なヒッチコック、バーグマンももちろん美しいが、この作品に限ってはグラントの方に力を入れたのではないかと思われる。
●綾野剛が演じるTVディレクイターは知ったことを何でもツイッターで流してしまう。自分がプロとして接している内容まで。情報が溢れすぎている時代、その軽重を判断できずしてメディアに関わるなどあってはならないはず。多くの情報に接していることで自分をプロと勘違いしている様が怖い。
今の時代、どんな素人であろうとも接することのできる情報量はほぼ同じ。それをどう判断していくことが重要と感じた「白ゆき姫殺人事件」でした。
●ベルギー映画で舞台もベルギーなのに、本場アメリカと変わらないウエスタン音楽が流れるのが「オーバー・ザ・ブルースカイ」。日本にも狂的なファンのいるウエスタン、ヨーロッパも同じだったかと感じた次第。
●北アイルランドのIRA、イギリスからのアイルランド独立闘争で有名だが、その武装闘争で逮捕された者たちの獄内での闘争は、自分たちが政治犯と認められるための、私服着用権闘争というのが面白い。そのための闘争方法もユニークだった「ハンガー」です。
●医者は人の命を扱う仕事、それだけに慎重になるのは当然だが、どんな場合でも失敗をするのが人間。あるいはどんなに努力しても不可抗力で失敗と取られることもある。日本はどんどん失敗を許さない社会になってきている。潔癖になりすぎてきている。子供から大人までどんな人にとっても窮屈な国になりそうだなあと感じたのは、「神様のカルテ2」で主人公が久しぶりに会った同期のこれまた医者の妻が、死んでしまった子供の親から責められたために失敗を繰り返さないよう医者の仕事にのめり込み自分の家庭を顧みなくなったというエピソードだった。
●世界には大変な状況下でも学校に通う子供達がいることを教えてくれるのが「世界の果ての通学路」。象におびえながらサバンナを15kmも横断したり、草原を馬にのって18kmとか、壊れそうな車いすで4kmを通いながら、勉強することに目を輝かせる子供達、健気です。
●マーベルはアメリカンコミックスの会社で長らくハリウッド映画に素材を提供してきたが、最近は自ら映画を製作するようになっている。スパイダーマン、アイアンマン、Xメンとかを個々に作ってきたが、それをひとまとめにしてオールヒーロー総出演で作ったのがアベンジャーズだ。
この辺りから、映画の最後クレジットの後に次作の予告編を加えるようになった。「キャプテン・アメリカ ウィンター・ソルジャー」では何と2回に分けて予告を流した。メイン配役クレジットの後に1回目が、最後に2回目が。
やりすぎでしょ、これ。
好きなものに入れ込んだ年月が違うと言うべきか。
ある年齢で好きになったものをそのままずっと維持してきた大人を見ると、何だか嬉しくなる。上に書いたベルギーのウエスタン愛好家を描いた「オーバー・ザ・ブルースカイ」は、歌われる場面だけ見ていればアメリカ映画と思うだろう。
もちろんプロとして活躍している人たちだから当たり前だが、映画の主人公たちは好きで続けてきているのが明白だ。
The Next Generation パトレイバーを見ていると、笑いに賭ける製作者の姿勢に驚いた。
押井守といえば、SF的なアニメという印象しかなかったが、この作品における繰り返しから来る笑いは、余程のことがなければここまでしないよという感じ。
20歳を過ぎたら人間は変わらないと大学の先生に教えられたが、それからの長い年月変わらない自分と付き合ってくればそれなりの風格が出ると言うべきか。
映画作家にも個人のテイストにこだわって、そうした作品ばかりを作り続ける人がいる。スリラーを作り続けたアルフレッド・ヒッチコックは有名だ。今月見た「汚名」でも結婚してナチスの妻となった女性が毒を盛られ、その罠から逃れられるかというサスペンス描写が冴えわたる。
今月見た旧作の1本「生きるべきか死ぬべきか」を作ったのはエルンスト・ルビッチ。ルビッチ・タッチという言葉ができるほど特徴のはっきりした映画を作り続けた。
1947年に亡くなっているので私が多くの作品を見られるはずはないが、今までに数作を見ることができた。艶笑劇、つまり大人の色恋をユーモアに包んで届けてくれる。
笑いながら、わくわくしながら映画を楽しむ、その贅沢さを味わえる。ナチスに占領されたポーランドでの話は反ナチスをはっきりさせながら、艶っぽいところを忘れずに締めくくるところが見事。
一つ事を続けることの大切さを教えてくれる大人たち、感謝です。
長く生きていれば、いろんなものが見えてくる。いろいろな角度からものを見ることができるようになるものだ。
何も知らずに一途に物事に邁進するのが若者の特権なら、様々な可能性を検討した上で判断できるようになるのが大人だろう。汚れのないクリーンで純粋な若者から見れば、なんだか薄汚れてずるい感じがするかもしれない。
「大人の恋には嘘がある」を見ていると、一部には批判のあるこの日本題名も、それだから大人の恋は面白いと思えてきた。
既に封切りされていてまだ見に行けてない作品に「そこのみにて光り輝く」がある。「海炭市叙景」に続いて作家、佐藤泰志の小説を原作に函館を舞台にした映画だ。
4/21から朝日新聞夕刊に連載されている「映画館をたどって」を読んでいたら、2本の映画を企画製作したのは菅原和博さんで、函館の市民映画館シネマアイリスの代表者もしているという。
映画好きの人たちが集まれる喫茶店を経営し、そこに集まる仲間たちと好きな映画、見たい映画の自主上映、さらには市民から一口一万円の寄付を募りシネマアイリスを1996年5月に立ち上げた。そして4年前に「海炭市叙景」で初めて製作に乗り出したということらしい。
映画は公開して初めて作品として完成する。映像を作るだけならそれは趣味の範囲、極端にいえばホームビデオと同じ。映画の製作から上映までに関わるのはなかなかできるものではない。那覇の映画館、桜坂劇場でがんばる中江祐司監督ともども、二足のわらじで、これからも我々を楽しませてほしい。
50代のお二人にエールを送ります。
消費税増税は勿論映画の料金にも影響した。
基本料金(大人1800円、大学・高校生1500円、子供1000円)はほぼ値上がりしなかった。高過ぎるという声も多くあったので、据え置きにされたとみていいのではないか。
しかし、各種割引料金は100円アップしたものがほとんど。シニア、レディース、毎月一日などはほとんどの映画館で1000→1100円になった。60歳になることは1000円の人になることという美しきテーゼが変わってしまった。
しかし、詳しく個々の映画館を見ていくとシニア料金は必ずしも同じとは言えない。今までシニア料金はいろいな映画館の会員料金と同じことが多かった。シニアになると会員になるメリットは6回とか、8回に1回は無料ということだけだった。しかし今回の値上げで会員料金よりシニア料金が高くなったところもある。渋谷のイメージ・フォーラムはシニア料金は1200円になった。これに対し会員は1000円である。すぐに入会した(入会金1000円必要)。ユナイテッドシネマは会員シニア料金を設定し、1100円を1000円にしている。
増税してからまだ1カ月足らず。これからいろいろな映画館で違う料金に出逢うことだろう。1000円の人になった後、安く見ることに努力しなくなっていたが、ちょっと楽しみが増えた思い。
変かな、これ?
明日から始まるGW、しっかり楽しんでください。
今月はここまで。次回はまだ五月晴れの爽やかさが続いているであろう5/25にお送りします。