西日本・日本海側では大雪が続きます。
東京も勿論寒くはありますが雪は1週間ほど前に少しという状況です。
冬らしい気候、寒いのは仕方ありません。
だから、ホッとできる場所が大事です。
それは映画館!!
12/26~1/25、年を超えての31日間に出会った映画は37本(ハッピーアワーは3本としています)、年末年始に9連休をいただきましたので本数が多くなりました。
お正月映画として公開された傑作、力作、佳作が並びました。旧作も邦洋合わせて多くなりました。
氷の花火 山口小夜子
ハッピーアワー1部、2部、3部
ともだちのパパが好き
人生の約束
の・ようなもの の ようなもの
(古)乾杯!ごきげん野郎
馬喰一代
喜劇男の腕だめし
スター・ウォーズ/フォースの覚醒
(Star Wars: The Force Awakens)
奪還者
(TheRover)
クーデター
(No Escape)
完全なるチェックメイト
(Pawn Sacrifice)
わたしはマララ
(He Named Me Malala)
ひつじ村の兄弟
(Hrutar / Rams)
あの頃エッフェル塔の下で
(Trois Souvenirs de Ma Jeunesse / My Golden Days)
消えた声がその名を呼ぶ
(The Cut)
ストレイト・アウタ・コンプトン
(StraightOutta Compton)
禁じられた歌声
(Timbuktu)
ブリッジ・オブ・スパイ
(Bridge of Spy)
タイム・トゥ・ラン
(Heist)
クリミナル・ミッション
(Criminal Activities)
パディントン
(Paddington)
ヴィオレット―ある作家の肖像―
(Violette)
ザ・ウォーク
(The Walk)
(古)暗殺者の家
(The Man Who Knew Too Much)
野望の果て
(Ruthless)
スカーレット・ストリート
(Scarlet Street)
男装
(Sylvia Scarlett)
紳士は金髪がお好き
(Gentleman Prefer Blondes)
ノックは無用
(Don’t Botherto Knock)
ゴールド・ディガーズ
(Gold Diggers of 1933)
でっかく生きる
(Living in a BigWay)
復讐は俺に任せろ
(The Big Heat)
シャーロック・ホームズ 緋色の爪
(TheScarlet Claw)
グレン・ミラー物語
(Glenn Miller Story)
①-1 スター・ウォーズ/フォースの覚醒
初作を思わせるにぎやかさ、初々しさ。ワクワクしますよね。初作を見た人には懐かしい顔がいっぱい、宇宙船ファルコンも登場するし。ラストのルーク・スカイウォーカーというかマーク・ハミルには感動。彼がこの年になるまでルーカスは待っていたに違いない。
①-2 ブリッジ・オブ・スパイ
事件が歴史になることを目の当たりに見せてくれる。ベルリンの壁崩壊の前に、壁が作られ、それによって東から西に脱出する人々が、ニュースとして報道されていたのは1960年代前半だった。それが歴史になる過程をこれほど的確に描いてくれたスピルバーグに感謝。
①-3 ザ・ウォーク
フィリップ・プティという綱渡り人については、「マン・オン・ワイヤー」というアカデミー賞長編ドキュメンタリー賞(2009年)の映画を見ていたので知っていた。
しかし、これほど怖い映画になるとは、しかも彼はあそこを3往復もしたのかと実感した。ロバート・ゼメキス監督としても、久しぶりの充実作。
② ハッピーアワー1部、2部
37歳の4人の女性たちが、様々な生き方を見せる映画、特に1、2部は、素人の出演者の演技が気にならないほど、一つ一つのテーマにゆっくり時間をかけ、それぞれが熟すのを待っているような映画作り。3部では、それがちょっと急ぎ足で、いかにもなところが見えて少し残念。
③-1 消えた声がその名を呼ぶ
映画の物語自体は実話という訳ではないようだけれど、1915年オスマントルコによるアルメニア人虐待があり多くの人が殺されたという事実があった。その時代を背景に、家族と離れ離れになり、自分はのどを切られ声を失った主人公が、娘たちが生きているとの情報を頼りに、探してキューバ、アメリカと渡り歩く。トルコからの移民の子としてドイツに生まれたファティ・アキン監督の渾身作。
③-2 禁じられた歌声
マリ共和国のティンブクトゥ、その近くの砂丘地帯に住む少女とその家族、静かで平和な街にいつかイスラム過激派が力を得て、町の風景、人々の生活を変えていく。多分、後に歴史の転換点ととらえられそうな現在のイスラム過激派の横暴の実態を、これ程静かに力強く描いた作品が出てきたことに一面驚いた。
他にも楽しめる作品がたくさんあります。
●完全なるチェックメイト:ボビー・フィッシャーという名前を聞いたことはあったが、この人の生き方をこの映画で知ってかなり驚いた。ここにも冷戦の影があったのかと。
●ひつじ村の兄弟:アイスランドを舞台にした映画はやはり人間が少ないためか、動物との関係が描かれ、しかもものすごく人間性に満ちた奇妙なおかしみがあって、印象に残る。隣同士に住みながら、40年口を利かない兄弟というのが何とも。
●氷の花火 山口小夜子:ファッションモデルとしての山口はその個性で印象に残るが、後年はむしろ体で表現する踊りなどに活動を広げたことはよく知らなかった。
そこでも自分の美学を通していた姿に感心した。
●友だちのパパが好き:ありえないだろうという物語展開ではあるが、面白い。周りから見放され(当然だが)あの二人はどうなるのか?
●タイム・トゥ・ラン:悪の世界の親分と彼に仕えた子分の、しかし対立に走る物語はありがち、しかし復讐に至る行為でもよい人を貫くジェフリー・ディーン・モーガンはかっこいい。
●パディントン:イギリス人の変な人好きは結構徹底している。話す熊という設定も、ペルーにいた熊というお話もほんまかいなと思いながら楽しめた。
●人生の約束:竹野内豊がIT企業を起こした社長とかというだけで軽い印象がしてしまうが、周りの人物もくっきり描かれ浮つかずに物語が訴えてくる。
石橋冠監督は80才にならんとするTVのドラマを作ってきた人で初めての映画らしい。
●ヴィオレット―ある作家の肖像―:ヴィオレット・ルデュックという作家は知らなかったが、彼女の自分の境遇に固執した物書きぶりにはある種の迫力を感じた。ボーヴォワール、ジャン・ジュネ、ジャック・ゲランなど有名人の前でも彼女自身は変わらなかった。
*グレン・ミラー物語
若い頃に見た映画を見直すということはあまりしない。基本的には新しい作品の方が色々な意味で面白く感じるだろうと思うからだ。しかし、時に若いころ見た作品を再度見たいと思うものがある。
今月「午前十時の映画祭」で見た「グレン・ミラー物語」はその1本TOHO日本橋に9:40頃行ったら最後の1枚ですと言われ最前列で見た。私と同じ思いの人が多かったということか?そんなはずはない。
再見して驚いたのはグレンミラーの名曲がかなりたっぷり演奏されること。紹介的な短い演奏ではない。これに関連するが、曲名に関するエピソードはほんの短い描写で印象的に描かれる。
エピソードはコンパクトに短く、名曲はたっぷりが映画の印象を強くしている。だから、エピソードも良く覚えているのだ。最近の映画のように、丁寧に描かれはするが下手すれば印象が薄くなるということがない。
*映画史上の名作14(シネマヴェーラ渋谷)
今月見た外国映画旧作11本の内、上の「グレン・ミラー物語」以外は総て映画史上の名作だ。いずれの作品もそれぞれに印象深いが、今回一番記憶に残ったのは「復讐は俺に任せろ」だ。男の自殺から始まる作品は、警察上層部と街のギャングとの癒着、いや当然ギャングの支配を一人の刑事が告発するのを彼の生き方と絡めて描き、シャープな映画になっている。
監督はフリッツ・ラング、オーストリア出身の監督は戦前ドイツ映画で活躍、「メトロポリス」等の名作を残したが、ナチスから逃れハリウッドに渡る。そこでフィルム・ノワールの作品を多く残した。
今回の特集では「スカーレット・ストリート」も彼の作品だ。人物描写が的確で時にはあくどいまでのくっきりした人物像を提示する。それに的確な俳優を使うのだ。「スカーレット・ストリート」ではギャング俳優として有名だったエドワード・G・ロビンソンに、まじめで気弱、女に騙される出納係を演じさせた。
「復讐は俺に任せろ」ではグレン・フォードが主演して刑事を演じている。ハードとソフトをミックスした人物像を演じさせるのに最適だと判断されたのだろう。グレン・フォードの俳優としての魅力がよく分かる。
●ルーカスはマーク・ハミルがこの年になるまで待っていたに違いない。
そうでなければ、あれほど期待を持たせて振り向かせる場面は撮れなかったはずだ。「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」は、この一瞬で38年間を飛んでしまった。今作の監督はルーカスではなく、JJエイブラムスです、念のため。
●誰が見てもタイだと分かる「クーデター」の舞台、ここまで描かれると国としてはちょっと引くことになるのではと心配した。
●1年ほど前だろうか「馬々と人間たち」という映画が公開された。
アイスランドを舞台に村の人々の関係が過激にも、奇妙におかしく描かれていた。冷たいのに妙にやさしい人間関係が「ひつじ村の兄弟」にもみられる。
●ファッションアイコンとしてのモデルの存在は人々の気持ちをつかみ取る。時代のトップモデルはその時代とともにある。山口小夜子はその一人だった。
「氷の花火 山口小夜子」は彼女を様々な角度から見せてくれた。
●「ハッピーアワー」は1~3部と3つに分けて公開されているが、もとは1本、
5時間17分の映画だ。分けた時、それぞれの始まり、終わりの画面はつけていない。突然終わり、突然始まるのである。これはやはりおかしいといえばおかしい。3本分の料金をいただくことを考えると、もう少し何とかしてほしかった。1本を3本に分けて公開したからだが、見る方の印象も3つに分かれた気もする。
●ベルリンは不思議な街だった。平面的にだだっ広いので空が広い。まだ東西に分かれていた頃行った時には、Uバーンを利用して1周すれば、列車の上から西と東が見える、そう、「ブリッジ・オブ・スパイ」で主人公が大変なことを見た時のように。
●人々がそれぞれの思いで生きていて、近いようでなかなか接点がなかったり、わがままに自分の意を通したりする様が濃い目に描かれた「友だちのパパが好き」は、日本的な部分と日本的でない部分がせめぎあって面白い。
●童話には(子供の)目に見えるありのままを描いてしまう部分があるが、そのために不思議がいっぱいになる。しかもそれが普通となる。しゃべる熊がいて、ペルーからやってきて、人間家族の一員となって、しかもかなり個性の強い家族や隣人だったりした「パディントン」は面白い。
●尾藤イサオは上手いです。芸人の力というか。でも元々は歌手ですよね。
「の・ようなもの のようなもの」の主題歌は「シー・ユー・アゲイン雰囲気」で「の・ようなもの」と同じ、尾藤の若い声が聞こえてきます。
●アメリカの警官はバカか、フィリップが綱渡りをしている時に捕まえるぞなどと彼を追い払ったために、何度も往復する彼を見なければならないという状況に、我々を追い込むとは!「ザ・ウォーク」、怖かった!
円山町という名前は東京オリジンではない私は、東電OL殺人事件で初めて知った。まるやまちょうと読むこともその時に覚えた。その事件らしきものが映画に描かれることもあった。ラブホテル街として知られている。
その町に「シネマヴェーラ渋谷」ができたのは2006年で、10年が経つことになる。昨年の年末に「円山町瀬戸際日記 名画座シネマヴェーラ渋谷の10年」が出版された。筆者は館主である内藤篤さんだ。
この映画館は見せよう会通信で何度も取り上げている。東京にある名画座で、封切り作品の3か月~半年位で上映する昔で言う2番館ではなく、昔の映画を特集に合わせて集め、番組を組みながら上映する本来の名画座は、東京には4館しかないと内藤さんは言い、シネマヴェーラはその一つだ。
(その他は、神保町シアター、新文芸坐、ラピュタ阿佐ヶ谷)「円山町瀬戸際日記」は開館後の2006~9年と2014~15年の映画館運営記だ。
内藤さんは私が通った映画美学校の映画上映専門家養成講座で何度か講師を務めてくれた。通っていたのは2005年で、このとき内藤さんは開館に向けて準備をしていたわけだ。内藤さんは本業が弁護士で、映画・芸能関係を専門にしていると聞いていた。
卒業するころ「シネマヴェーラ」が開館すると聞いた。副業として映画館経営とは何ともうらやましいと思ったものだ。私自身の目標も映画館を持つことだったから。今回、この本を読んで私の希望はあきらめざるを得なかった。それ以前にも、開館前後には内藤さんのインタビュー記事などがメディアに出たが、そこで1億円が必要と書かれていたことで、ほぼあきらめてはいたのだが、今回の本できっぱり諦めたのだ。何故なら、本来の意味で名画座を目指すためには日本映画をよく知らないとできないことを痛感させられたからだ。よく考えれば当たり前だ。映画の版権の関係で日本で上映できる古い外国映画はほとんどないのだから。
午前十時の映画祭が始まったのは、新たに版権を獲得してもペイすると判断したからだ。古い日本映画は今勉強中の身にしてみれば、もう間に合わないと分かった。
内藤篤さんはよくシネマヴェーラ渋谷でお見掛けする。この本を読んでも感心するほどヴェーラで映画を見ていることが分かる。ミュージカルがひょとして一番好きかという記述もある。映画を心底愛していることが伝わってくる。教えてもらった時はそれほどとは感じなかったのだが。
現地時間2/28(日)に行われる第88回アカデミー賞のノミネーションが発表された。
主要な賞は次の通り。(作品名の後ろは日本公開日)現時点での私の予想は太字で表示しました。
ただ、まだ情報が少ないので来月変更の可能性ありです。
*作品賞
マネー・ショート 華麗なる大逆転 (3/04公開)
ブリッジ・オブ・スパイ (公開中)
ブルックリン (7月公開予定)
マッドマックス 怒りのデス・ロード (昨6月公開済)
オデッセイ (2/05公開)
レヴェナント 蘇えりし者 (4/22公開)
ルーム (4/08公開)
スポットライト 世紀のスクープ (4月公開予定)
キャロル (2/11公開)
*監督賞
アダム・マッケイ(マネー・ショート 華麗なる大逆転)
ジョージ・ミラー(マッドマックス 怒りのデス・ロード)
アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ(レヴェナント 蘇えりし者)
レニー・アブラハムソン(ルーム)
トム・マッカーシー(スポットライト 世紀のスクープ)
*主演男優賞
ブライアン・クラストン(トランボ(原題))(夏頃公開予定)
マット・デイモン(オデッセイ)
レオナルド・ディカプリオ(レヴェナント 蘇えりし者)
マイケル・ファスベンダー(スティーブ・ジョブズ)(2/12公開)
エディ・レッドメイン(リリーのすべて)(3/18公開)
*主演女優賞
ケイト・ブランシェット(キャロル)
ブリー・ラーソン(ルーム)
ジェニファー・ローレンス(JOY)(公開未定)
シャーロット・ランプリング(さざなみ)(4月公開予定)
シアーシャ・ローナン(ブルックリン)
*助演男優賞
クリスチャン・ベール(マネー・ショート 華麗なる大逆転)
トム・ハーディ(レヴェナント 蘇えりし者)
マーク・ラファロ(スポットライト 世紀のスクープ)
マーク・ライランス(ブリッジ・オブ・スパイ)
シルベスター・スタローン(クリード チャンプを継ぐ者)
*助演女優賞
ジェニファー・ジェイソン・リー(ヘイトフル・エイト)(2/27公開)
ルーニー・マーラー(キャロル)
レイチェル・マクアムス(スポットライト せ世紀のスクープ)
アリシア・ビカンダー(リリーのすべて)
ケイト・ウィンスレット(スティーブ・ジョブズ)
最多ノミネート作品は、12部門の「レヴェナント 蘇えりし者」、10部門の「マッドマックス 怒りのデス・ロード」、7部門の「キャロル」と続きます。
アカデミー賞を選ぶメンバーは6000人以上、その構成が白人94%、男性77%、平均年齢が62才と偏りがあると批判されている。今年の男女優賞のノミネートが白人ばかりだと黒人映画関係者が騒いだことが発端だ。2020年までに白人以外と女性を2倍にするということだ。
今月のベストスリーで3本のアメリカ映画を1位に並べた。それぞれに、面白さは様々だが、見ている我々に何らかのワクワク感を抱かせてくれるという映画の魅力をたたえていたからだ。
ガラパゴス日本では、「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」が1、2週目とも集客数で1位になることはできなかったが、その後3~5週目は1位になっていた。やっと、この作品の面白さに日本人が目覚めたということだろうか? ここ何年もハリウッドの大作は思うほどの成績を挙げられない状況が日本では見られた。アメコミ原作を中心とした大作が敬遠されたのだろう。確かに、大味でいかにもアメリカ的にCGを多用したアクションものが続いていた。一度当たれば何本も続編が作られ、同じような作品が並びがちだ。飽きられても仕方がない部分もあった。しかし、このところ少しずつ面白さを取り戻しつつあるというのが私の印象だ。
昔から、世界中の才能を集め面白い映画を作ってきたハリウッド、人種などこだわらず、どんなものであれ映画に向いた題材であれば触手を伸ばす。才能があればどんなに若くても起用する。
スピルバーグもそんな状況から出てきたのだが、昨年の興収トップになった「ジュラシック・ワールド」を監督したのはコリン・トレヴォロウ、誰も知らなかった当時38歳の監督、長編第2作目でこの作品を担当したのだ。こんな風に、どんなに期待の大作でも才能を見込めば若い人に任せる。それには、様々な点で作品を支える体制ができているのだろう。商売として成功できるように多くの人が協力する。
1位に並べた3本はそうした様々なものがベストに近い形で結集された結果だ。さすがハリウッド、安心して映画に身を任せることができる。見ている方は楽しむだけでいい。
今月はここまでです。
次回はアカデミー賞の3日前(日本的には4日前だろうか?)の2/25にお送りします。