2016年 6月号back

五月晴れの5月もあと少し、
気持ちの良い天候を楽しみましょう。
6月には雨のシーズンが始まるでしょう。
そんな中、快適な環境で楽しめるのは、
勿論、映画館!

 

 

 

今月の映画

 

 4/26~5/25、GWを挟んだ30日間に出会った映画は32本、先月に続き日本映画の旧作が多くなりました。桂文珍師匠の選んだ大阪関連映画特集4本と清水宏監督特集の7本です。
 外国映画ではオランダ、ノルウェー、パレスチナ、フィンランド、タイ、台湾とバラエティに富んだ国の映画を楽しみました。

 



<日本映画>

太陽 
テラフォーマーズ 
殿,利息でござる 
園子音という生きもの 
ひそひそ星 
海よりもなお深く


(古)
【大阪関連映画】
悪名 
浪花の恋の物語 
花のれん 
王将


【清水宏監督】
蜂の巣の子供たち 
その後の蜂の巣の子供たち 
金色夜叉
花形選手 
母情 
女医の記録 
霧の音

 

 

<外国映画>

ズートピア
  (Zootopia) 
緑はよみがえる
  (Tornrranno I Prati / Greenery willBloom Again) 
追憶の森
  (The Sea of Trees) 
孤独のススメ
  (Matterhorn) 
山河ノスタルジア
  (山河故人/ Mountains May Depart)
シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ
  (Captain America:Civil War) 
カルテルランド
  (Cartel Land)
ハロルドが笑う その日まで
  (Her er Harold / Here is Harold) 
オマールの壁
  (Omar)
ヘイルシーザー!
  (Hail, Caesar!)
ファブリックの女王
  (Armi Alive) 
マクベス
  (Macbeth) 
すれ違いのダイアリーズ
  (The Teacher’s Diary)
台湾新電影時代
  (光陰的故事・台湾新電影

   Flowers of Taipei - Taiwan New Cinema)


(古)

山猫 4K修復版
  (Il Gattopardo / The Leopard)

 

 

 

 

 

Ⅰ 今月のベストスリー

 


① オマールの壁
 パレスチナの人たちがどんな生活をしているのか知らない。それにしても、町の中に高さ8メートルの分離壁が作られ、友人、恋人に会うにも壁を越えなければならないとは。イスラエル秘密警察に捕まったオマールが、その後たどる運命は厳しいものだった。パレスチナ人により、パレスチナで作られた、パレスチナについての映画、必見です。


② カルテルランド
 メキシコの麻薬戦争をミチュアカン州で自警団を立ち上げる医師を中心に描く。単純な自警団物語にはならず、複雑な力関係から意外な結末になる驚きのドキュメンタリー。
 作ったのはアメリカの会社で国境付近のアメリカ側における自警団も描かれるが、力関係が常に変転していくメキシコの麻薬戦争の実態は怖い。


③ 台湾新電影時代
 台湾映画にニューウェーブがやってきて輝いていた時、その当時先頭に立っていた何人かの映画人を取り上げているドキュメンタリー。
 世界でも有名になったホウ・シャオシェン、エドワード・ヤンなどを中心に新鮮な映画を送り出していたのは30年前、懐かしかった。

 

 

  

 

他にも面白い作品が目白押し、楽しんでください。

 

 

●ズートピア:ディズニーの新作アニメは動物国の物語。小さな女性ウサギが自分が希望する警官になって、挫折を乗り越えて一人前になっていく物語は、いかにもなお話。

 

●追憶の森:富士山麓の青木ヶ原樹海を舞台に描かれる人の思いの物語。最終の地を探してたどり着いた地で見出すその人との関係性。癒されました。

 

●孤独のススメ:妻子を失くして生きる元気を失っていた主人公、近くにやってきた記憶喪失男の奇妙な行動に生きる力を回復するというオランダの喜劇映画。

 

●山河ノスタルジア:中国のジャ・ジャンク―の新作は金持ちになり、国際化していく中国を3つの時代に分け1999年~2014年~2025年と描く。案外薄い感動だったがラストは良い。

 

●シビル・ウォーズ/キャプテン・アメリカ:キャプテン・アメリカがアイアンマンと対立し、アベンジャーズが二手に分かれて戦う原因はソ連のあの頃にあったという活劇。

 

●ハロルドが笑う その日まで:北欧の喜劇はペースが少し違うところが面白い。40年も続けてきた家具店を隣にIKEAができることでつぶされたハロルドが、IKEAの創始者カンプラードを誘拐というとぼけたお話。しかもカンプラードの性格がまた何ともおかしい。

 

●ヘイル・シーザー:流石にアメリカ、50年代ハリウッド黄金時代のパロディをまともに作っている。まるでザッツエンタテインメントを見ているよう。時は赤狩りの時代でもあり、ソ連の潜水艦まで出てくるのです。楽しみました。

 

●殿、利息でござる:1700年代後半仙台藩の吉岡宿で実際にあった話を映画化、自分たちの街を存続させるために協力しあう人々、自分たちの商売をも顧みず、金を差し出す人には感心する。

 

●すれ違いのダイアリース:名作などでは決してないが、その愛嬌で見せてしまうタイ映画。水上学校分校の先生二人も、子供たちも魅力的。それにしても平日は宿泊込みの学校で驚き。

 

●マクベス:シェークスピアの名作を映画化したのは長編2作目のオーストラリア人監督ジャスティン・カーゼル。激しい戦闘シーンと、後半のドラマで見せます。

 

●ひそひそ星:園子音監督の新作はひそひそ話す不思議なSF。25年前に書いた自身の脚本を映画化。日常のままに宇宙に行った宅配便の担当者のお話は、なかなかに魅力的な部分も。

 

●海よりもなお深く:是枝監督の新作はダメ男の物語。父親のダメ姿を見て育ったのに、同じ道を進もうとしているのは情けないだろうと言いたくなった。

 

 

 

 

 

Ⅱ 今月のトークショー


 2つの特集上映に通いました。


 GWも終わりに近づいた5/7の土曜日、旧作「金色夜叉」を見に行ったのだが、その映画館に行く前に他の映画館に立ち寄り、金色の後で見る作品のチケットを買った。

 

 作品は「カルテルランド」、メキシコ麻薬戦争のドキュメンタリーという知識はあったが、他には何も知らず、凄く混むかもしれないという恐れもあまり抱かず、時間があったので立ち寄ったというのが実情。チケットにふられた番号順に入場する映画館なので、時間があるから番号取りに行ったのだ。上映開始の4時間くらい前に行ったのに、60番代だったのにはちょっと驚いた。

 

 10分前に開場なので15分前に映画館に行ったらびっくり。人でかなりあふれている。この回は満席らしいし、更に終了後にトークショーがあるということを初めて知った。それで、こんなに混むのかと合点したが、聞けば他の回も満席だったとか。
ちなみにこの日は封切り初日だった。

 

 トークショーは犯罪ジャーナリスト(こういう人がいるんだ!)の丸山ゴンザレスという人が行った。登場したら拍手もあったし、携帯で盛んに写真を撮る人もいてそうか、このトークショー目的の人も案外多いんだと実感。TV番組「クレイジージャーニー」でメキシコのミチョアカン州に潜入取材したという。映画が2014年で終わっているので、その後の状況を見に行ったことになる。
 自警団はその後殆ど実質が無くなってしまったこと、現地の人にとっては生活を安定させてくれるなら政府でも、自警団でも、麻薬カルテルでも構わないと思っているなどとの話があった。
 映画を見ていても状況の変化の速さには驚いたが、その後の変化も続いているんだ、現地の人は大変だ。

 

 人々は自分たちの生活にダメージが及ばない限り行動を起こそうとしないし、警察とかが取り締まらないので自警団が生まれ、それが変質していく。国のシステムがしっかり確立していないのでこうしたことが起こってしまう。日本人としても遠い話ではないんじゃないかとの話でした。



 

 

Ⅲ 今月のつぶやき

 


●新人類は昼間生きられないという「太陽」はいかにも演劇的な人物の多い作品。頭で考えられた人物造形の枠を出ていない。


●今絶好調のディズニーは正しいことだけをちょっとやりすぎ(?)という感じまでした「ズートピア」は、確かに良くできていた。ウサギ以外に、キツネまでが良いやつに。


●吉本興業の始まりを書いて直木賞の山崎豊子の原作を映画化した「花のれん」は、吉本せいを演じた淡島千景が魅力的、お話も楽しめます。そういえば、今月見た「マクベス」は吉本興業の配給でした。


●寛一お宮といえば「金色夜叉」、尾崎紅葉の原作を映画化した清水宏監督作品。思ったよりずっとまともで深い映像が作られていました。


●信州の山小屋に中秋の名月の日にやってくる主人公たち、3年おきにやってくる二人の時々で変わるその状況、そしてすれ違いを描く名作は「霧の音」、清水監督の傑作です。

 

●スターわんさかの「ヘイルシーザー」で面白い二役を演じてるのはティルダ・スウィントン、ハリウッドにいた有名コラムニストを双子として演じている。ハリウッドで有名だったのは、叔母さん型体系のルエラ・パーソンズと帽子コレクションで有名なヘッダ・ホッパー、ともに全国紙にコラムを持ちその影響力は絶大だったようです。ティルダは体系、帽子的にはヘッダ・ホッパー型を演じていました。

 

●大島渚監督の息子、大島新氏が作ったドキュメンタリーは「園子音という生きもの」。ひそひそ星」を製作中の園子音監督に密着。2015年には4本も監督作が公開されたが、その1本「みんなエスパーだよ」の脚本をよく読んでいないかのような暴言まで記録。

 

●今まで何故か見逃していた「山猫」をやっと見ることができた。今は亡きイタリアの名匠ルキノ・ビスコンティ監督の作品だ。しかし面白くなかった。困ったもんだ。一番の違和感は、仕方がないとはいえバート・ランカスターもアラン・ドロンも吹き替えであったこと。勿論イタリア語への。

 

 

 

 

 



今月のトピックス : ロッド・マッケン  


Ⅰ ロッド・マッケン

 

 マリメッコの創始者アルミ・ラティアの人生を描いた「ファブリックの女王」を見ていたら、突然「行かないで Ne me quitte pas」が流れてきた。ジャック・ブレルが書いたシャンソンの名曲だ。しかしここで流れてきた歌詞は英語だった。英語に訳したのはロッド・マッケン、英語の歌詞も良く多くの歌手に歌われた。ロッド・マッケンはブレルの歌を多く英訳していた。

 

 ロッド・マッケンの名前を知ったのは「ミス・ブロディの青春」の主題歌の作者(作詞作曲)としてだったか、「ジョアンナ」の作詞作曲者としてだったのか覚えていない。いずれにしても、その歌曲に強く惹かれ、レコードを集め始めた。あの頃(1960年代末)、一部では注目されていて日本でもレコードが発売された。

 

 元々詩人として作品を発表していたらしい。 
 音楽にイージーリスニングがあり、一部からはあんなものとけなされるように、詩でも人受けのする優しい彼の詩は一部からは無視されていたらしい。
60年代のアメリカでは彼の詩の朗読に、アニタ・カーが曲をつけた「海」「空」「大地」のLPが大ヒット、日本でも岩谷時子が日本語詞をつけ、石坂浩二が朗読して発売された。このあたりのことも記憶にあったかもしれない。

 

 その後、日本でも少しLP(詩の朗読ではなく歌っている)も発売されたが、それほど多く作られたわけではない。それで、仕事で海外に出かけるようになると、自由時間にレコード店を回り始めた。ハワイをはじめアメリカでは当然だが、パリでも結構買った記憶があるのは、やはりブレルとの関係でフランスでも売られていたのだろう。

 

 ロンドンでも買っている。日本でも輸入盤セールなどに出会うと真っ先に探した。手元にあるレコードをチェックしたら38作品があった。2枚組やボックスになったものも1と数えたので、枚数は45枚を超えるだろう。まったく美声とは言えないが、かすれるような声で歌うのが、或いは語るように歌うのが気に入っていた。シナトラのように艶のある声で朗々と歌うのも好きだが、反対にかすれ声で歌うのも好きだった。

 

 映画音楽でも「ナタリーの朝」や「スヌーピーとチャーリー」などを担当した。その後クラシック音楽の作曲も行い、レコードも作られている。私はクラシックのレコードは持っていないが、多くの分野で活躍していたことが分かるだろう。

 

 キネマ旬報の今年の2月下旬号(ベストテン発表特別号)を読んでいたら、2015年映画・TV関係者物故人のリストがあり、1月29日に、ロッド・マキューン(米/作曲家、シンガーソングライター)81歳と出ていた。

 

 彼のレコードを探すことをしなくなって既に25年は経つ。それでも時々、まだ生きているだろうかと気にしていた。
キネマ旬報に名前を見た時すぐに皆さんにお伝えしようかとも思ったが、それほど有名でもないのでほとんど知られていないからと思い控えていた。それが、今回マリメッコで「行かないで If you go away」に出会い、書くことに決めてしまった。個人的なことで申し訳ありません。

 

 

 

 

Ⅱ 外国人のマナー


 5/05の子供の日に「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」を見たのは、渋谷の映画館だった。流石に繁華街のシネコンで、子供の日ということもあり映画館は混んでいた。勿論子供のお客さんも多く入っていた。

 

 わたしの右隣には10歳前後の子供が二人坐っていた。その向こうにはお母さんと、更にその向こうには二人のお兄さんらしい人が座っていた。つまり家族で映画を楽しみに来たのだろう。話している言葉はフィリピン語だろうか?顔貌からはフィリピンらしさがうかがえた。

 

 子供たち二人はかなりの時間、話をしていた。作品だけに大きな音がする場面が多くそれほど目立ちはしなかったが、何せ隣で話しているのでちょいとうんざり。更にお母さんが携帯電話をつけてみている時間も多くなってきた。映画館はマナーについての注意を流しているが日本語だ。


 まあ、日本人は映画館のマナーに過敏すぎるとも言われる。外国では映画は娯楽、だから楽しめばいいという考え方が一般的。そこで細かいことを言うことはないという感じか。確かにそれも分かるのだが、今回はちょっときつかった。これからは、休みの日に繁華街での外国映画大作は見ないように注意しよう。

 

 

 

 

Ⅲ 検定


 日本で~検定のブームが吹き荒れたのは10年程前だったろうか?昔からある「英語検定」とか「簿記検定」とかは仕事にも役立つ検定だったものが、「京都検定」などのご当地検定を筆頭に、様々な検定試験が行われた。

 

 元々資格にはそれほど興味もなく、持っているものといえば珠算3級くらい。運転免許も資格といえば資格だが、ペーパードライバーで40年以上が経つ。それなのに、映画検定が発表されるとやってみるかという気になった。人よりは少し多く見ているし、映画美学校で勉強もした。主催したキネマ旬報も随分力を入れていた。しかし、私には弱点があった、日本映画の知識が弱かったのだ。団塊世代が若かったころ、日本映画より洋画を見る人が多かった。私も日本映画はほとんど見なかった。試験だからと言って付け焼刃的に勉強をするのはやりたくなかった。正確には、やったとしても頭に入らないのではという恐れもあった。で、事前勉強はしないことにした。但し、1、2級は無理だからと3級を受けて合格した。

 

 久しぶりに合格証を見てみたら、
第一回映画検定は2006.6.25に行われたことが記載されていた。そうか今年で10年か。全国では1万人を超えたと言われる初回の検定試験。その時の状況を書いた見せよう会通信2006年7月号を久しぶりに読み返したら、東京の2会場だけで1万人を超えたらしい。

 

 ブームになったものは去るのが鉄則。映画検定も例外ではない。最近では何人が受験しているのだろうか?

 

 

 

 


今月はここまで。

次回は6/25、梅雨の真っただ中にお送りします。



                         - 神谷二三夫 -


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