あけましておめでとうございます。
穏やかな元旦、風もなく初日の出を拝むには絶好の日和。
いつも通り朝は軽いジョギング、日の出より少し前に終了し、
日の出は周りの高いビルの上部に日が当たり始めることで知りました。
日の当たる場所が徐々に広がっていきました。
2017年1~12月に見た映画は448本となりました。
旧作は約1/4の117本でしたので、新作映画は331本となりました。
一般公開されていない映画祭での上映分も含みます。
2013~16年は毎年公開本数が1100本を超えていますので、
2017年も1100本を超えているものと想定すると1/3にも届いていません。
沢山見ればいいというものではありませんが、
いつかこちらを刺激してくれる作品に出会えると期待して追いかけてしまいます。
昨年末になりますが、12/30に渋谷シネマヴェーラにヒッチコック特集を見に行ったところ、大変な混みようで、1回目から立ち見は当然のこと、入場できない人も出ていました。
この日のプログラムは1本がヒッチコックの「バルカン超特急」、もう1本がキャロル・リードの「ミュンヘンへの夜行列車」でした。今回の特集で唯一ヒッチコック外の作品です。この作品が日本未公開だったこともあるのでしょう。また、2本の脚本家チーム(シドニー・ギリアット、フランク・ローンダー)が同じで共に列車が舞台になり、主演のマーガレット・ロックウッド、英国人チームのベイジル・ラドフォードとノーントン・ウェインも両作に出演していて、兄弟作品だったのも大きな要因です。(1938年、40年の作品です。)
1950年代の映画黄金期には当たり前だった混みようを久しぶりに体験しました。
1.人生フルーツ
2.夜空はいつも最高密度の青色だ
3.あゝ荒野 前・後編
4.三度目の殺人
5.幼な子われらに生まれ
6.愚行録
7.エルネスト
8.散歩する侵略者
9.武曲
10.勝手にふるえてろ
次点 禅と骨
「人生フルーツ」と「禅と骨」はドキュメンタリー映画で、キネマ旬報のベストテン等では劇映画と違う部門になる場合が多くなります。さらに「人生フルーツ」は一昨年試写で見ていますが、昨年1月2日に封切られたので2017年作品に入れています。
高度経済成長期を通して自分の生き方を貫いてきた建築家とその妻、2人の生き方が緩やかに描かれた作品を見ながら、我々はどこかに置いてきてしまった何物かに思いを馳せる。豊かになり、便利になることだけで進んできた日本社会は今大きな曲がり角に来ている事を日々感じながら、先人の日々の生活をうらやましく思う。
高齢化、少子化が進む日本社会、余裕が感じられない経済、必ずしも人が住みやすい方向には進んでいない状況下、様々な作品に触れることができ教えられることも多かった。
詩を原作とする「夜空はいつも最高密度の青色だ」は今の若者たちの姿を描いて心に触れる。「三度目の殺人」「散歩する侵略者」「愚行録」は映画作りの上手さを味あわせてくれる。荒ぶる魂を描いた「あゝ荒野」「武曲」や、バブル崩壊後の社会で人間関係を手探りする「幼な子われらに生まれ」、秘めた歴史を教えてくれた「エルネスト」という作品群だ。
「勝手にふるえてろ」には一見賑やかなように見えて実は孤独で、子供っぽい心を抱えた現代女性の姿を元気に描いている。
1.パターソン(アメリカ)
2.ムーンライト(アメリカ)
3.ローサは密告された(フィリピン)
4.オン・ザ・ミルキー・ロード(セルビア)
5.マンチェスター・バイ・ザ・シー(アメリカ)
6.ドリーム(アメリカ)
7.ネルーダ 大いなる愛の逃亡者(チリ)
8.ブレードランナー2049(アメリカ)
9.ラ・ラ・ランド(アメリカ)
10.否定と肯定(イギリス・アメリカ)
次点 ハロルドとリリアン ハリウッド・ラブストーリー(アメリカ)
2017年は2008~2016年まで続いてきた興行収入の日本映画>外国映画が逆転するかもしれないと言われている。実際の統計数字は少し待たないと出てこないが、年末の興行では「スター・ウォーズ」が大きな数字を挙げているので可能性がある。
ここ数年日本ではハリウッド大作が苦しい戦いをしてきた。アメコミ作品を中心としたシリーズ物が嫌われ、外国程の興行成績を挙げていないのが主な原因だ。昨年も多くのアメコミ作品が公開された。昔は映画会社が主体でマーベルやDCコミックスと提携しながら映画化していたのが、現在は両コミック社が主体となり映画会社と提携している印象だ。当然両社とも如何に見せるかに努力していて、アメコミ大作映画の在り方も変わってきている。昨年公開された中でも、「ローガン」「ワンダーウーマン」「マイティ・ソー バトル・ロイヤル」などは単体の作品としてみても充分面白い仕上がりになっている。
昨年の新年号でもベスト10に占めるアメリカ映画の比率が高かったが、今年も同じような結果となった。アメコミ作品はなく、シリーズ物ではブレードランナーのみが入っている状況だ。ここ数年アメリカ映画は質的に高い作品が増えている印象。
そんな中、今やベテラン監督と言っていいジム・ジャームッシュが「パターソン」を送り出してきた。かつては、少し変わった主人公とどこに向かうか分からない展開、独特のユーモアがミックスされユニークな作品が多かったが、この映画ではそれまでの特徴を保持しながら、主人公も監督も落ち着くべきところはうまく落ち着いている印象だ。細かい生活描写、様々なユーモア、バーでの会話や犬、マッチ、郵便受けなど小道具の使い方など全てがうまくはまった作品だ。
ベスト10には入れなかったが「ハクソー・リッジ」「ダンケルク」の2本の戦争映画は、共にリアルな描写が際立ち今までにない臨場感、緊迫感を与えてくれた。
戦争と言えば、毎年ナチス/ユダヤ人関連の映画がやってくる。今年はドイツ以外で作られたものが目立った。「ヒトラーへの285枚の葉書」は舞台がベルリン、登場人物はドイツ人想定なのに、フランス人監督、英国人俳優を使い英語で作られた。「ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命」はポーランドが舞台だがアメリカ人俳優を使い英語で作られたアメリカ映画、「少女ファニーと運命の旅」はフランスが舞台のフランス映画などだ。そんな中「否定と肯定」はナチスのユダヤ人虐殺はなかったとする論争を巡る裁判を描いて、フェイクニュースという現代の問題をも照射する。
近年大きく取り上げられるテーマに差別の問題がある。人種、性別、階級など多くの差別があり、自分と違うものは排除するという本能部分で差別が発生し、それを抑制すべき理性が弱体化している現象を反映してのものかと思う。それにしてもえげつないまでに弱者をいじめている部分が目立つこの頃、差別をテーマにした映画も多く作られている。「ムーンライト」「ドリーム」「ラビング 愛という名前のふたり」「サーミの血」「ゲットアウト」「永遠のジャンゴ」など、国、地域を問わず作品を見ることができる。
今年はリドリー・スコット監督が自作に落とし前を付けた年としても記憶される。「エイリアン:コヴェナント」「ブレードランナー2049」は共に自分の初作に対するある種の回答として提出された。共に一つの時代を築いた作品だっただけに、さらに「ブレードランナー」は監督はドゥニ・ヴィルヌーヴで自身は製作に回ったという事で心配したが、杞憂に終わった。流石である。
今年もどんな映画が見られるかと期待を膨らませつつ、今年が皆様にとって良い年となりますようお祈りいたします。