2018年 4月号back

寒い寒いと言っていた今年の冬だったのに、
東京では既に桜が満開、やはり今年の天候は普通ではない。
普通ではなく不安な気持ちの時、
落ちつける場所は、勿論映画館!

 

 

 

 

 

今月の映画

 

2/26~3/25の一年で一番少ない28日間に出会えた作品は44本、
先月に続き日本映画新作が10本となり、
旧作と合わせた本数でも健闘して外国映画と同じ本数になりました。
このまま今年は行けるでしょうか?
しかし外国映画も充実、拮抗しています。

 


 



<日本映画>

おだやかな革命 
願いと揺らぎ 
野球部員,演劇の舞台に立つ! 
一陽来復Life Goes On 
おもてなし 
生きる街 
北の桜守 
ニッポン国VS泉南石綿村 
去年の冬,きみと別れ 
素敵なダイナマイトスキャンダル
風速七十五米 
宇宙人 東京にあらわる(古) 
早春物語(古) 
狂った野獣(古) 
沖縄やくざ戦争(古) 
竜二(古) 
鉄と鉛 Steel & Lead(古) 
冷血の罠(古) 
さらば映画の友よ インディアンサマー(古) 
脅迫(おどし)(古) 
東京の瞳(古) 

親不孝通り(古)

 

 

<外国映画>

あなたの旅立ち,綴ります
  (The Last Word) 
アバウト・レイ 16歳の決断
  (3 Generations) 
ザ・シークレットマン
  (Mark Felt:The Man Who Brought Down

   The White House)
ビガイルド 欲望のめざめ
  (The Beguiled)
ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ
  (The Big Sick) 
シェイプ・オブ・ウォーター
  (The Shape of Water) 
ブラックパンサー
  (Black Panther) 
15時17分,パリ行き
  (The 15:17 to Paris) 
ハッピーエンド
  (Happy End) 
花咲くころ
  (Grzeli Nateli Dgeebi / In Bloom) 
ダウンサイズ
  (Downsizing) 
ゆれる人魚
  (Corki Dancingu / The Lure) 
聖なる鹿殺し
  (The Killing of A Sacred Deer) 
しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス
  (Maudie) 
馬を放つ
  (Centaur)
ラッキー
  (Harry Dean Stanton is Lucky) 
フェリーニに恋して
  (In Search of Fellini) 
修道士は沈黙する
  (Le Confessioni / The Confessions) 
リメンバー・ミー
  (Coco)
メイド・イン・ホンコン(古)
  (香港製造 / Made in Hong Kong) 
モレク神(古)
  (Molokh)  
ストーン/クリミアの亡霊(古)
  (Kamen)

 

 

 

Ⅰ 今月のベストスリー

 

 

① ニッポン国VS泉南石綿村
「ゆきゆきて、神軍」で有名な原一男監督が新作ドキュメンタリーで取り上げたのはアスベスト訴訟。アスベストが有害物資であることは70年代には判明していたのに国による措置が取られていなかったのは何故かという基本的疑問があるが、大阪泉南地区の被害者が裁判という形で立ち上がり闘った8年間を描く。必見。今月のトークショーも参照ヨロシク。

 

②-1 ハッピーエンド
「愛、アムール」から5年ぶりの新作となるミヒャエル・ハネケの作品。監督自身が「今回は“良い”映画を作ろう、とは思わなかった。“不快”な映画を作るときだ」と言っているとチラシにあった。何とも怖い話だが、始まりからスマホの画面で撮られたある計画が明かされ、3世代が一緒に生活する邸宅で不快な話が進行する。

 

②-2 ラッキー
主演者ハリー・ディーン・スタントンは2017年9月15に91才で亡くなった。ポスターには「Harry Dean Stanton is Lucky」と彼の名前が入っていて、彼なくしては不可能で、彼に捧げられた作品だ。主人公ラッキーの日々の生活が繰り返し描写されるという昨年の「パターソン」と同じような作りで、枯れた生活が描かれる。俳優ジョン・キャロル・リンチの監督デビュー作。

 

③-1 ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ
インドではなくパキスタン移民二世の恋愛物語は簡単ではない。しかもシカゴでお笑い芸人を目指しているのだから。しかし、見るべき作品だ、しかも面白い。主演のケメイル・ナンジアニは脚本・製作総指揮も兼ねていて、今年のアカデミー賞授賞式でもかなり活躍していました。

 

③-2 聖なる鹿殺し
ヨルゴス・ランティモスという1973年生まれのギリシャ人監督は、4作目の前作「ロブスター」で奇妙な味を感じさせていたが、新作ではテクニックが更に進化、殆ど平板に近い台詞のやり取り、謎の少年を演じるバリー・コーガンの上手さも相まって不条理劇を素晴らしいペースで見せてくれる。

 

③-3 去年の冬、きみと別れ
中村文則原作の映画化。小説は未読だが、映画は久しぶりに面白いミステリーだ。考えられた脚本により物語に厚みがあり引きこまれる展開になっている。瀧本智行監督の監督術も小気味よい。

 

③-4 リメンバー・ミー
ディズニー・ピクサーの新作アニメはメキシコを舞台に試写の世界を描く。骸骨中心の故か、絵的にはかなり自由度が高い。さらに、物語が良く練られていて最後まで飽きさせないのは最近のディズニーアニメと同様だ。

 

 

 

 

おもしろい作品は他にもワンサカ!お楽しみください。

 

あなたの旅立ち、綴ります:生前葬というものがあるが、これは生前訃報を作ろうとする女性の話。シャーリー・マクレーンが適役、成功したビジネス女性で憎まれ役。それにしてもこの映画の予告編で、彼女を“往年のハリウッド大女優”というのはどうか?今もだろ!

 

アバウト・レイ 16歳の決断:トランスジェンダーして男性になりたい16歳の主人公が、離婚した両親から承諾のサインをもらい決断するまでの物語。祖母がレズビアンという設定。レイのエル・ファニング、母のナオミ・ワッツ、祖母のスーザン・サランドン、皆適役。

 

ザ・シークレットマン:ニクソン大統領が辞任に追い込まれたウォーターゲート事件、1974年だから44年も前になる。その時ディープスロートという名前で呼ばれていた情報提供者、当時のFBI副長官マーク・フェルト(2005年に告白)の実話映画化。アメリカという国の三権分立、反対勢力の在り方を一つの方向にまとまりやすい日本は参考にすべし。

 

シェイプ・オブ・ウォーター:1960年東西冷戦真っただ中の頃、アマゾンの半漁人をめぐって語られるファンタジー。主人公は何故話せないのか?何故老人と住んでいるのか?妙にエロス(暗いというか隠された)を感じさせる意味は?

 

ブラックパンサー:アカデミー賞授賞式でも話題にされていたほど大ヒット(3/19の興収で6億ドル超え、アメリカでの歴代5位の「アベンジャーズ」を来週には抜き、さらに「タイタニック」も抜く可能性あり)している黒人ヒーローのアメコミ映画は、思った以上に硬く真面目に作られていてユーモア不足。

 

ダウンサイズ:人間を13㎝に小さくしてしまえば、色々な問題が解決できるし…というコメディだが、それほど単純じゃない。縮小操作を発明したノルウェーの科学者を中心にしたコロニーに行ってみると、そこの人々は地下のシェルターに…。

 

野球部員、演劇の舞台に立つ!:甲子園を目指す野球部員が先生の命令で演劇部の舞台に立つ。八女北高校での実話は、若い内に他のことを経験するとか、外から自分を見つめ直すとかの大事さを教えてくれるさわやかな昨品。

 

おもてなし:日台合作で作られた本作は、舞台はすべて日本(琵琶湖畔、京都)、田中麗奈、余貴美子出演だが、台湾人の監督、ワン・ポーチェはじめ台湾の俳優も4人出演。日本人脚本家だが、日本映画にはあまり見られないペースと話の跳び方が心地よい。

 

しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス:カナダの画家を描く実話映画は、今月2本で障害者を演じるサリー・ホーキンスの熱演もかすむほどに、最後に現れる実際のモードの姿に衝撃を受けた。

 

北の桜守:吉永小百合の聞き書きによる新書を読むと、初めから北三部作が構想されていた訳ではないようだが、那須真知子脚本、吉永主演の三部作の最終作は、南樺太から始まる1945~1971年の物語。

 

馬を放つ:キルギスという小さな国から送られてきた映画。以前「明かりを灯す人」を監督・脚本・主演したアクタン・アリム・クバトは新作も一人三役をこなし、プリミティヴな主題と描き方で遊牧民の心を力強く描く。

 

修道士は沈黙する:北ドイツのハイリゲンダムのリゾートホテルに集まったG8会議メンバーは、IMFの専務理事が自身の誕生日を祝った翌朝、彼がビニール袋をかぶって死んでいることを知る。自殺方殺か?前日の夜、誕生祝に呼ばれていた神父を部屋に呼び告解死体と告げていた。告解の内容は他言することができない…というミステリー。

 

 

 

 

 


Ⅱ 今月のトークショー

 

◇3/01 東中野ポレポレ「願いと揺らぎ」 我妻和樹監督
上映後に監督のトークショーがあった。この映画は東日本大震災被災地の一つ南三陸町の漁村「波伝谷」を舞台にしたドキュメンタリーだが、実はこの前の作品「波伝谷に生きる人びと」が3年前に公開されていると初めて知った。
監督は2005年に大学生として波伝谷の民族調査に参加、2008年卒業後も村にとどまり研究を続け現地で被災、震災後現地をいったん離れたが、震災までの3年間の映像を使いドキュメンタリーの製作を決意、「波伝谷に生きる人びと」を製作した。
今回の「願いと揺らぎ」は前作の続編として震災後の波伝谷をドキュメンタリーにしている。村で行われる「お獅子さま」というお祭りが復活する過程を中心に村人の姿を追い、複数の仮設住宅に住むようになった人々をいかにまとめていけるかを描いている。震災後7年を経過した今、一応まとまったようにも見える村を監督は今後も取り続けたいと表明した。

 

◇3/15 渋谷ユーロスペース 「ニッポン国VS泉南石綿村」 原一男監督
「ゆきゆきて、神軍」(1987年)で有名な原監督は、94年の「全身小説家」以来23年ぶりのドキュメンタリー作品として新作を発表した。(昨年山形ドキュメンタリー映画祭で公開)
この間劇映画を1本発表しているが、基本的には作るものがなく低迷していたと自ら話された。10年程前大阪のTV関係者から「泉南アスベスト国家賠償訴訟」を撮らないかと言われ、藁をもすがる気持ちで何の知識もなくカメラを向け始めたという。その後裁判闘争が終結するまでの8年間、被害者たちに密着してきた。結果は勝訴とはいえ、被害者を時期で分ける点を残し、全被害者救済とはなっていない。(これは他の公害訴訟でもいつも問題になる。)
この日、ノルウェーだかの人権映画祭に出るため出発するという事で少し早目に終了した。

 

 

 

 

 

 

Ⅲ 今月の懐かしい人

 

☆ホリー・ハンター
「ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ」で大病により昏睡状態になったアメリカ女性の母親を演じていたのは、「ピアノレッスン」で主演女優賞総なめだったホリー・ハンター。あのアメリカらしくない映画のため、たぶん彼女のイメージは彼女本来のキャラクターから離れてしまったと思うが、この新作ではアメリカらしい元気母さんを演じていて、うれしくなってしまった。

 

☆ウド・キア
「ダウンサイズ」で金持ちのヨットマンを演じていたのは、目力の強い青い目が一度見たら忘れられないウド・キア。70年代前半、アンディ・ウォーホールが企画制作した「悪魔のはらわた」「処女の生血」で強烈な印象を残した。怪しい役が続いていた。デビューは「残酷!女刑罰史」、その後「O上の物語」とか「サスペリア」である。2000年以降はラース・フォン・トリア作品の常連でもある。
私にとっては永遠に怪しい奴ですが、「ダウンサイズ」ではヨーロッパのノーマルな金持ちだ、13cmにはなっているが。

 

 

 

 

 

 

Ⅳ  今月の惹句(じゃっく)

 

2/26~3/25の間に封切られた作品から、惹句のベスト3を選びました。

ウチらの命、なんぼなん?ニッポン国VS泉南石綿村(3/10封切り)
もう一つ“ニッポン国から棄てられた民が国に問いただす”もあり、国に訴える。

 

孤独と一人は、同じじゃない。ラッキー(3/16封切り)
この映画には哲学的な言葉がよく似合う。

 

一生ものの友達 一生ものの恋 ともに奏でた音楽 ぼくらの10年の物語坂道のアポロン(3/10封切り、未見)
そう簡単に“一生もの”などと使わないでほしい、たかが10年だろうと、ちと反発。

 

 

 

 

 

Ⅴ 今月の旧作


今月の旧作は日本映画が12本、外国映画が3本となった。この中で個人的に好きだったのは次の2本。

 

風速七十五米:1963年の田中重雄監督作品。4年前の伊勢湾台風(映画中にそのニュース映像が使われている気がする)を教訓に、台風記者に宇津井健、ネオン広告塔建設会社の娘に叶順子、名古屋のライバル会社の手先に田宮二郎の3名が絡む恋愛模様+特撮。何といっても個人的に伊勢湾台風は忘れ難い。

 

鉄と鉛 Steel & Lead:1997年のきうちかずひろ監督・脚本作品。脚本が良く練られ、隙のない物語、刑事くずれの探偵と暴力団組長から監視を頼まれたやくざの関係、無駄のない演出で最後まで飽きさせない。渡瀬恒彦と成瀬正孝のコンビには続編が欲しいくらいだ。

 

 

 

 

 

Ⅴ 今月のつぶやき


●現在のアメリカはトランプ大統領で大変だろうが、ニクソン大統領の時代の事件と言えばウォーターゲート事件で、大統領が辞任に追い込まれた。事件についてワシントン・ポスト紙などに情報を提供した人がディープ・スロートと当時話題のポルノ映画から名づけられたのだが、その人を描く「ザ・シークレットマン」はアメリカの強さを教えてくれる。

 

●クリント・イーストウッドと言えば現在の映画の神様の一人、何を作っても何故か名作なのだが、「15時17分、パリ行き」はちょっと作りが浅い。主人公三人に何故本人たちを使ったんだろうか?本人たちとは言え台詞そのものが単調で、それに合わせて映画の作りも。ラストにオランド大統領からの勲章授与場面のみ本物を出すという処理もできたはず。

 

●縮小サイズコメディ「ダウンサイズ」で人間を小さくする方法を発見したノルウェーの科学者を演じていたのはロルフ・ラスゴード。2016年12月に封切られた「幸せなひとりぼっち」で主役のおじさんを演じていた地味目の俳優だ。

 

●ウィークエンドスーパーとか写真時代と言った雑誌名はもちろん知っていた。70年代後半から80年代にかけてエロ雑誌がサブカルチャーの一部を担っていた。残念ながら両誌とも見ていなかったが。発行者は共に末井昭で、この名前も知っていた。「素敵なダイナマイトスキャンダル」は同名の彼の自伝的エッセイ(1982年刊)から作られている。あの当時のある種の熱さを見ることができ面白かったのだが、映画的はそこだけになっているかなと言うところがちょっと残念。

 

●町山智浩の新刊「激震!セクハラ帝国のアメリカ」を読み始めたら、前書きにディズニー・ピクサーのCCO(チーフ・クリエイティヴ・オフィサー)のジョン・ラセターの名があったので驚いた。この人はハグ魔として有名で男女構わずハグしていたらしい。「リメンバー・ミー」にも確かExecutive Producerとしてクレジットされていた。“私に無理やりハグされたり、一線を越えられたと感じた人々にお詫びします”と言う詫び状とともに長期休暇に。

 

 

 



今月のトピックス:震災から7年



Ⅰ 震災から7年


東日本大震災は2011年3月11日、既に7年が経過している。戦後最大の震災、復興はどうなっているのか?ここには福島原発の問題も含まれ、より複雑なものになっている。
もちろん今までにもドキュメンタリーを含め多くの映画が作られてきたが、今月は3月11日を含んでいたこともあって、より多くの映画が公開され、4本の作品に出会った。

 

おだやかな革命:3つのエピソードからなるドキュメンタリー、各地で自然エネルギーに取り組む人々を取り上げているが、初めのエピソードが原発事故後の福島での会津電力、飯館村での飯館電力で共に太陽光発電による小さな電力会社だ。飯館村で畜産を続けながら、必ずしも人が戻っていない飯館村で産業を立ち上げる姿に頭が下がる。

 

願いと揺らぎ:震災によって大きな被害を受けた宮城県南三陸町の波伝谷地区、80戸のうち残ったのは1戸のみだったという。伝統の祭り“お獅子さま”をいかに続けるかを描く。(今月のトークショーを参照)

 

一陽来復Life Goes On:宮城県石巻市・南三陸町、岩手県釜石市、福島県川内村・浪江町の被災地を取り上げ、前を向いて復興に取り組む人々を取り上げたドキュメンタリー。基本的には先に進もうとするエピソードで、頑張っている人々を教えてくれる。

 

生きる街:唯一のドラマは石巻を舞台に、夫が不明のまま、姉弟の子供ふたりが家を出てしまい一人で民宿などをしている女性が主人公、夏木マリが実にリアルに元気な母を演じている。夫を待ち続ける彼女にも、子供を持つことを怖れる娘も、怪我により水泳選手を続けられなかった息子も、誰もが震災による傷を負っているが…。

背景に大震災が隠れているドラマを始め、今後も多くの映画が作られるだろう。

 

 

 

 

 

Ⅱ アカデミー賞 


3月4日(日)の夜米アカデミー賞の授賞式が行われた。(日本時間3月5日昼間)
6部門についての私の最終予想は、4部門が当たり、2部門がはずれで66.7%の勝率だった。はずれの作品賞、助演女優賞は下の通り⇒の後に受賞作・人を記入しました。

 

◇作品賞 ◎スリー・ビルボード ⇒ シェイプ・オブ・ウォーター


◇監督賞 ギルレモ・デル・トロ (シェイプ・オブ・ウォーター)


◇主演男優賞 ゲイリー・オールドマン (ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男)


◇主演女優賞 フランシス・マクドーマンド (スリー・ビルボード)


◇助演男優賞 サム・ロックウェル (スリー・ビルボード)


◇助演女優賞 ◎ローリー・メトカーフ (レディー・バード)
⇒ アリソン・ジャネイ (アイ、トーニャ 史上最大のスキャンダル)

 

 

主演女優賞はフランシス・マクドーマンドで良かった。アカデミー賞の俳優賞は障害者を演じると獲得しやすいと言われていて、シェイプ・オブ・ウォーターのサリー・ホーキンスかもと思ったのだが、マクドーマンドの圧倒的演技の前には敵ではなかった。その代わりに作品賞を取られたようで、こちらはちょっと残念。
話はそれますが、マクドーマンドはイエール大学のスクール・オブ・ドラマで学んでいた時、ルームメイトが今月の懐かしい人で取り上げたホリー・ハンターだったという。テキパキ感が似ている。

 

今年の授賞式を見ていると、司会者ジミー・キンメルに一番取り上げられていたのは最高齢88歳のクリストファー・プラマーでしょうか。アカデミー賞自体が90回目ですからほぼ同じ歴史というか、年齢だ。プレゼンターとして出てきたエヴァ・マリー・セイントはアカデミー賞より4~5ヶ月年上と告白していましたが。
日本のマスコミでは日本人受賞者辻一弘(メイクアップ&ヘアスタイリング賞)さんが一番の話題になっていた。ゲイリー・オールドマンの上にチャーチルを作り出したのだから受賞も当然か。
映画関係の物故人では世界のスター、監督などに交じって鈴木清順監督と俳優中島春雄が取り上げられていた。中島春雄はゴジラのぬいぐるみに入った人、享年88歳だった。

 

 

 

 

 

 

Ⅲ 映画館椅子のピッチ


1月のことになるが、久しぶりに渋谷TOEIに行って驚いた。前後の真ん中あたり、通路脇に座ったのだが、あまりに前の席が遠い。何しろどんなに腰を前にして、足を精いっぱい伸ばしても前の席に届かないのだ。分かりますよ、私の足が短いからだろうというのは。それにしても、映画館を横断する横の通路かと思ったほどだ。
最近の映画館は前後の席間のピッチがかなり広い。シネコンが増え階段状の席が多くなり、更にピッチが広がった。映画の黄金期(50年代後半)は映画館が混み、いかに多くの席を作るかが命題だった。当然ピッチは狭くなった。60年代以降観客数はどんどん少なくなり、席数の多い劇場はあまり必要ではなくなった。
東京にはかつて1000席を超す映画館が何軒かあった。しかし、マーケットの縮小からどんどん閉館、改装となり、1000席以上の映画館は無くなった。
今年の2月4日に閉館となった有楽町のTOHOシネマズ日劇1が座席数946で全国1位の席数を誇っていた。この時2位だったのが、同じく有楽町にある丸の内ピカデリー1の802席、3位が大阪のTOHOシネマズ梅田で737席と下のサイトにあった。

 

全国映画館 座席数ランキング https://matome.naver.jp/odai/2147416248646857001 

 

ことほど左様に小さな映画館・スクリーンが多くなったのだが、ピッチだけは広がった。今や、どんな演劇用劇場や公共施設の劇場などより、映画館の方がシートピッチは広いのではないか?映画館以外はあまり行っていないが、少なくともブロードウェーのどの劇場よりも広いことは保証する。勿論映画館により狭いところもありますが。

 

 

 

 

 

 

Ⅳ 最近の本


勿論映画についての。

 

●「最前線の映画」を読む:町山智浩 集英社インターナショナル新書
相変わらず知らないことを教えてくれる。例えば、2009年からの6年間でアメリカはドローン攻撃で2372~2581名のテロリストを殺害したとアメリカ政府が発表したとか。


●映画のキャッチコピー学:樋口尚文 洋泉社
筆者は30年以上映画評論家と広告クリエーターの両方の顔で仕事をしてきたとある。最近の惹句はがむしゃら度が低く猥雑さもまれになりおとなしいとあり、同感。


●私が愛した映画たち:吉永小百合 取材・構成立花珠樹 集英社新書
サユリストには申し訳ないが大味というか同じパターンが多いと感じる小百合さんの演技、しかし彼女なりの努力を怠っていないなあと感心。


●映画衣装物語《ドキュメンタリー昭和映画》:池田誠 ダイナミックセラーズ出版
長年にわたり映画の衣装に携わった池田氏がその思い出を語る。実直な感想が面白く、「死ぬにはまだ早い」の西村潔監督、主演黒沢年男については結構くそみそ。


●美しく、狂おしく 岩下志麻の女優道:春日太一
今の映画ライターで新刊が待たれる人の一人、春日の新刊は初めての女優についてのもの。TV「バス通り裏」は初々しかったなとか、かなり分析的に自分を見ているなという感想。

 

 

今月はここまで。
次号は、GW直前の4/25にお送りします。

 

 


                         - 神谷二三夫 -


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