2019年 3月号back

2月も終わりに近づき、
春らしい日も徐々に増えつつあるこの頃。
大きなところで自然は正しく変化していく。
どんな変化にも対応できる自分になる、
そのためには、そう、映画館!

 

 

 

今月の映画

 

1/26~2/25のはやぶさ2号成功を含む31日間に出会った作品は42本
邦画/洋画は18/24で3対4となりかなり半々に近い。新作だけでは11/21で、約1対2。新作は邦洋共にバラエティに富んだ作品群。楽しみました。



<日本映画>

闇の歯車 
七つの会議 
十二人の死にたい子供たち 
洗骨 
牧師といのちの崖 
トラさん~僕が猫になったワケ~ 
半世界 
眠る村 
フォルトゥナの瞳 
サムライマラソン 
ねことじいちゃん
沖縄スパイ戦史(旧) 
万引き家族(旧) 
回路(旧) 
君の名は 第一部(旧) 
君の名は 第二部(旧) 
君の名は 第三部(旧)
戦う兵隊(映画祭) 

 

 

<外国映画>

ナチス第三の男
  (The Man with The Iron Heart) 
天才作家の妻 40年目の真実
  (The Wife) 
サイバー・ミッション
  (解碼遊戯 / Reborn) 
ジュリアン
  (Jusqu’a La Garde / Custody) 
ヴィクトリア女王 最期の秘密
  (Victoria & Abdul) 
ミスター・ガラス
  (Glass) 
ヒューマン・フロー 大地漂流
  (Human Flow) 
メリー・ポピンズ・リターンズ
  (Mary Poppins Returns) 
劇場版 バーニング
  ( Burning) 
フロント・ランナー
  (The Front Runner) 
ゴッズ・オウン・カントリー
  (God’s Own Country) 
誰がための日々
  (一年無明 / Mad World) 
ともしび
  (Hannah) 
ファースト・マン
  (First Man) 
ちいさな独裁者
  (Der Hauptmann / The Captain) 
アクアマン
  (Aquaman) 
ナポリの隣人
  (La Tenerezza / Tenerezza:Holding Hands) 
女王陛下のお気に入り
  (The Favourite) 
金子文子と朴烈(パクヨル)
  (Anarchist From The Colony) 
ビール・ストリートの恋人たち
  (If Beale Street Could Talk) 
THE GUILTYギルティ
  (The Guilty)
スリー・ビルボード(旧)
  (Three Billboards Outside Ebbing, Missouri)
戦場のフォトグラファー ジェームズ・ナクトウェイの世界(映画祭)
  (War Photographer)
ヒロシマ・ナガサキ(映画祭)

  (White Light, Black Rain:
  The destruction of Hiroshima and Nagasaki) 

 

 

 

 

Ⅰ 今月のベストスリー

 

 

① 女王陛下のお気に入り
いやー、楽しみました。18世紀初頭イングランドの王室で繰り広げられる女の戦いは、いじわるが交差して爽快なほど。それがフランスとの闘いまで左右する。アン女王は失くした17人もの子供(生むのも失くすのも凄い!)の代わりにうさぎを可愛がっていて、彼女の好きなものなのだ。「ロブスター」「聖なる鹿殺し」のギリシャ人監督ヨルゴス・ランティモスは本領発揮。いじわるも念が入っています。必見です。

 

② 劇場版 バーニング
原作は村上春樹の短編「納屋を焼く」、映画にしたのは韓国のイ・チャンドン監督。小説家を目指しながらアルバイトで暮らす男、同郷の幼馴染の女、ポルシェを乗り回す金持ちの男、3人の関係を描きながら、常にその後ろにある社会とそれが個人に迫る影響力を感じさせる緊張感持続の148分。力作です。NHKが製作に入っていて、昨12月短縮版が放映されている。

 

③-1 洗骨
沖縄の粟国島に残るとされる洗骨という風習を基に脚本を書き映画にしたのは照屋年之、ガレッジセールのゴジである。中退したとはいえ日大の映画学科に在籍した彼は、芸人となった後も2006年の短編映画デビューからほぼ毎年短編+長編1本を発表してきた。これを知れば、今回の作品の落ち着いた、しかも深く考えられた内容、表現がうなずける。主演の奥田英二も今までの彼とは全く違うイメージで好演している。

 

③-2 半世界
中学からの同級生で39歳になる3人の男たちは、40歳を前にして様々なことで迷っている。坂本順二監督の26本目の新作は彼自身のオリジナル脚本により作られているが、男たちの日常を追って一見分かりやすい。稲垣吾郎、長谷川博己、渋川清彦がどこにでもいそうな男たちを演じる。

 

③-3 GUILTYギルティ
デンマークからやってきた88分の映画は緊急通報指令室から1歩も出ることなく、緊張した物語を伝える。監督・脚本のグスタフ・モーラーは、1988年生まれ2015年にデンマーク国立映画学校卒業、この作品で長編映画デビューを果たした。

 

 

 

映画館に出かけましょう!楽しめる作品は他にも。


天才作家の妻 40年目の真実:40年前、作家としてデビューしたかった彼女は女性が作家として成功するのは難しいと聞くのだが…。40年もの間我慢してきた彼女が目覚めてしまうのはノーベル賞授賞式という舞台。結構ありがちな設定かなとも思うが、いかにも演じがいありそうな内容ではある。グレン・クローズ、ジョナサン・プライス、クリスチャン・スレーターを動かしたのはスウェーデンのビョルン・ルンゲ監督。

 

ヴィクトリア女王 最期の秘密:ジュディ・デンチが2度目のヴィクトリア女王を演じる作品。女王の晩年、即位50周年でインドからやってきたインド人アブドゥルとの関係を描く。スティーヴン・フリアーズ監督はさすがの作品づくり、

 

ヒューマン・フロー 大地漂流:ヨーロッパやアメリカに流入しようとする難民は増加するばかり、その実体を流麗な映像で見せる。監督は中国人、アイ・ウェイウェイ、北京オリンピックメインスタジアム“鳥の巣”のデザイン参加で有名だ。現在はベルリン在住。

 

七つの会議:半沢直樹シリーズなどTVドラマの原作として人気の池井戸潤小説からの映画化2作目は中小企業の会社が舞台。会社内部、資本系列など日本の会社によく見られる問題を手際よく、軽く喜劇風にも描いている。

 

フロント・ランナー:1988年の米大統領選挙、民主党候補の予備選で最有力候補だったゲイリー・ハートが、時代を見誤りスキャンダル報道で姿を消した実話を描くジェイソン・ライトマン監督作品。時代の変わり目、一つの転換点だったんだなあと感じる。

 

ゴッズ・オウン・カントリー:イギリス・ヨークシャーの荒野で父の跡を継ぎ牧場を一人で管理する主人公、父に雇われてやってきたルーマニア出身のロマの男、男同士の愛を繊細な描写で描く作品。風景・自然描写も美しい。

 

ともしび:1982年生まれのイタリア人監督アンドレア・パラオロの長編2作目は、私には夏木マリのおどろおどろしいナレーションの予告編が頭に焼き付いてしまっていた。シャーロット・ランプリングのほぼ一人芝居は、確かに主人公の思いが細かく表現され素晴らしい。

 

ファースト・マン:1969年、今から50年も前に成し遂げられた月面着陸を描く作品は「ラ・ラ・ランド」のライアン・ゴスリングとデイミアン・チャゼル監督が再び手を組んだもの。映画の作り方は随分違い、主人公ニール・アームストロングの性格にもよるのだろうが、映画自体が随分控えめだ。ヒーローものには似合わない迷いも多い。トランプのアメリカとは大違い。

 

ちいさな独裁者:1945年4月と言えば月末にヒトラーが亡くなったのだが、ナチスという組織がほぼ崩壊していたことを教えてくれる作品。主人公は部隊から脱走した兵隊、見つけた将校の制服と強気の言動が彼を独裁者に作り上げていく。

 

アクアマン:アトランティス伝説とアーサー王伝説が合体したりして、その大げささが実にぴったりの作品。ここまであっけらかんとトンデモな物語を豪勢に語られると、笑って楽しむしかない。

 

牧師といのちの崖:和歌山県白浜町の観光名所三段壁は自殺志願者が集まってくる。そこに置かれたいのちの電話を運営する牧師の藤藪庸一氏に密着したドキュメンタリー。助けた人々が生きて行けるように働ける場所まで用意して共に生きていこうとする。

 

金子文子と朴烈(パクヨル):1923年、関東大震災で東京が揺れた年、朝鮮人アナキスト朴烈に惹かれ、同志として、恋人として共に生きていくことに決めた金子文子の実話を映画化。イ・ジュンイク監督は静止した画面を多用し、二人の生き方をじっくり描く。主要出演者の中では唯一の日本人俳優、山野内扶のことを初めて知った。

 

ねことじいちゃん:瀬戸内海のとある島だろうか?実際にはない宮の島はどこにあっても不思議はない。高齢者が多くなった島に外からやってきた若い女性がカフェを開店。物語があってなきがごとしのエッセイ風運び、立川志の輔を中心とした俳優陣、ベーコン(主役たまを演じる)を中心とした猫陣のゆったり調和も心地良い。

 

 

 


Ⅱ 今月のトークショー(映画祭)

 

高円寺に座・高円寺という杉並区立の施設があるのを知ったのは、昨12月にそこで行われた一人芝居を見に行ったからだ。その時の唯一の収穫は、「座・高円寺 ドキュメンタリーフェスティバル」のチラシを手に入れたことだった。今年で10年目を迎え、記念特集として「戦争とドキュメンタリー―記憶と記録―」が組まれていた。このフェスティバルの特徴は映画・テレビの枠を超えてドキュメンタリーを上映するという事で、今回も5本のテレビドキュメンタリー作品も上映された。映画・TVどの作品の後にもトークショーが行われ、TV作品は無料だがトークショーは有料で行われた。
このフェスティバルはドキュメンタリー製作にかかわる人たちも客席にいた印象があり、トークショー後の質問にはかなり踏み込んだ内容のものもされていた。
18本の作品が上映されたが、3本のみ見せていただいた。

 

戦場のフォトグラファー ジェームズ・ナクトウェイの世界:対談 森達也/加瀬澤允
ナクトウェイはアメリカの写真家、多くの戦場や貧困地区を巡り被写体に密着して撮影する。今回彼についてのドキュメンタリーを作るためにクリスチャン・フレイ監督はナクトウェイのカメラに超小型カメラを付けて撮影もしている。どんな危険な現場でも冷静に写真を撮り続けるナクトウェイをドキュメンタリーも冷静に追っている。このドキュメンタリー映画とナクトウェイの写真を見比べてみると、写真の印象がいかに強いかに驚かされる。
トークショウでは森さんから、写真に至るまでの様々を後ろに隠し最高の場面一つで人を感動させるという話があった。芸術には総てのことを描く必要はなく、むしろ何を削るかという事が重要だというのだ。加瀬沢さんは先月封切られた「牧師といのちの崖」のドキュメンタリー監督。映画美学校で講師/生徒の関係だったらしい。

 

 

戦う兵隊:対談 伊勢真一/山崎裕
1939年、日中戦争の戦意高揚映画として作られた作品だが、“兵士の人間性や、家を奪われた中国人の表情などにフォーカスした内容は「厭世的」とされ上映中止”とされたという。監督の亀井文夫は逮捕、投獄もされている。確かに題名とは裏腹に戦闘場面はほぼ皆無、蝶の跳ぶ自然の風景などが写され、兵士の人間的表情と併せ、映像が真実を伝えるという点では見どころのある作品だった。
トークショーでは撮影をしたカメラマン三木茂、瀬川順一についての話がされた。山崎裕氏はこのフェスティバルのプログラムディレクターだが、本業はカメラマン(1940年生)。多くのドキュメンタリーも含め、劇映画でも黒沢清、是枝裕和、西川美和などの監督と仕事をしている。

 

 

ヒロシマ ナガサキ:対談 長谷川和彦/山崎裕
2007年製作のスティーブン・オカザキ監督作品。今や日本ではなかなか作られない被爆地を正面から描き、多くの人たちの証言を含み良くできた作品と再認識。
トークショーは広島生まれという事で長谷川和彦監督が登壇。「青春の殺人者」「太陽を盗んだ男」の2本の作品を送り出した後、1980年以降は作品がない彼の話を聞こうと集まった人が殆どだったのではないか?「ヒロシマ ナガサキ」でも描かれているABCCは、体内被曝の影響をアメリカが調べたものだが、長谷川監督は体内被曝をした子供として4歳の時から小学生時代検査を受けていたという。途中、同じく検査を受けていた子供が白血病で死亡したことを新聞で知り、自分も死ぬものだと思い生き急いだという。30歳になるまでに監督デビューしようとしていたが、「青春の殺人者」は30歳のデビュー作となってしまったこと、さらに現在3作目を準備中で沖縄を舞台にしたものになる予定という話があった。もし実現すれば、40年ぶりの監督作品となる訳で、半信半疑ながら期待もしてしまう。

 

 

 

 

Ⅲ 今月の惹句(じゃっく)

 

1/26~2/25の間に封切りされた作品の惹句の中から、今月は“強い!”と感じた2本。

海中で、暴れろ。:アクアマン
ごめんあそばせ、宮廷では良心は不用品よ。:女王陛下のお気に入り

どちらも映画の内容にぴったりで、簡潔。

 

 

 

 

Ⅳ 今月のつぶやき

 

●中国・香港が製作国だから当然と言えば当然だが、アジア各国のスターが出ている中、日本からの山下智久が悪役となる「サイバー・ミッション」を見ながら時代は変わったと実感した。今それ程は入ってきていない中国映画がなだれ込んで入ってくれば、もっと感じることだろう。

 

●ヴィクトリア女王は寂しい人だったのだなあと思わせる「ヴィクトリア女王 最期の秘密」だが、同じジュディ・デンチが演じた「Queen Victoria至上の恋」でも彼女は夫アルバート公が亡くなり傷心のため引きこもりがちになり、人との接触で慰められる。新作より25年くらい前の物語だった。

 

●エミリー・ブラントは好きな女優だし、リン=マニュエル・ミランダは今やブロードウェイの大スターだが、「メリー・ポピンズ・リターンズ」があまり楽しめなかったのは、父親役のベン・ウィショーを含め配役全体がどうも暗いというか、楽しさに欠けていないかと感じた。アンジェラ・ランズベリー、ディック・ヴァン・ダイク、メリル・ストリープなどの大物も出ているが。さらに、楽曲も前作ほどのすぐ覚えられる、印象に残るものがなかったのも痛かった。

 

●鈴木Q太郎が出てきた時は、それまでの落ち着いた雰囲気と合わないのではと心配になった「洗骨」だが、変に浮いたりせずむしろ広がったのは沖縄という縛りのない社会の故か、あるいはゴリの演出が開かれていたからか?

 

●最近思わぬ作品が混んでいることが時々あるが、「トラさん~僕が猫になったワケ~」もその1本だ。封切り日とは言え、平日の昼間なのにほぼ満席となったのだ。少女漫画誌連載、主演が人気グループのメンバーというのが理由だろうか?もちろん猫人気も。「金子文子と朴烈」もその1本で、こちらは平日にもかかわらず満席が続いていた。金子文子の生き方に共鳴したのか女性の方が7:3くらいで多い。女性の口コミだろうか?どんなふうに広がるのか知りたいものだ。

 

●くっきり美しい画面、快適な場面転換で結構見どころのある「サムライマラソン」だが、どうも時代劇としてしっくりこない。誰が監督したんだろう?と見てみると、バーナード・ローズというイギリス人監督だった。さらに製作者はあのジェレミー・トーマス、「戦場のメリー・クリスマス」「ラスト・エンペラー」などを作っている。日本映画では三池宗史監督の作品等を複数手掛けている。だから、どこが違っていたのだろうか?

 

●猫人気から多くの猫映画が作られる状況になっている。「トラさん…」も勿論その1本だが、今月はもう1本、同じく漫画原作からの映画化「ねことじいちゃん」が公開された。動物写真家で“世界ネコ歩き”で有名な岩合光昭が劇映画を初めて監督。ファーストシーンから流石の猫シーンが連続、何十匹と出演する猫俳優など、猫好きにはたまらないのでは。

 

 

 

 



今月のトピックス:アカデミー賞結果


Ⅰ アカデミー賞結果


91回目のアカデミー賞授与式が現地時間2月24日の夜に行われました。残念ながらWOWOWを契約していないので、受賞速報のサイトを見ながらチェックしました。2年前の作品賞間違い発表の時には、速報でも「ラ・ラ・ランド」が一旦は作品賞と出ていましたが、そうした間違いがないように願っております。


先月号の6部門予想をそのまま持ってきて結果に変更しています。予想作品には◎を付けて太字表示をしていましたので、次の受賞結果で◎太字になっているものは予想的中となります。

 

作品賞:◎グリーンブック (3月1日封切り予定)
監督賞:◎アルフォンソ・キュアロン (ROMA/ローマ Netflix配信中)
主演男優賞:ラミ・マレック (ボヘミアン・ラプソディ 上映中)
主演女優賞:オリヴィア・コールマン (女王陛下のお気に入り 上映中)
助演男優賞:◎マハーシャラ・アリ (グリーンブック 3月1日封切り)
助演女優賞:レジーナ・キング (ビール・ストリートの恋人たち 上映中)

 

私の予想的中率は50%となりました。

 

今朝の朝日新聞の文化欄に「変わるアカデミー賞」という記事があった。簡単に言ってしまえば、作品賞はかつて風格のある娯楽大作に与えられることが多かったが、現在は作家性の濃い作品が多くなり、商業的作品と乖離してきたというもの。
この記事の中で、かつて20世紀フォックス映画の宣伝担当だった古澤利夫さんが“もし主演のラミ・マレックが賞をとったら、130億円を突破するだろう”と「ボヘミアン・ラプソディ」(ちなみに20世紀フォックス作品)について予測している。マレックの受賞は今回で一番の番狂わせだろう。現在116億円あたりだから、10億円以上が彼の受賞で増えるだろうと予測していることになる。
ちなみに「ボヘミアン・ラプソディ」は他に編集賞、録音賞、音響編集賞を受賞していて、4部門受賞は今年の最多受賞作品となる。いずれも3部門の「グリーンブック」「ROMAローマ」「ブラックパンサー」を抜いてしまった。

 

日本の作品でノミネートされていた「万引き家族」(外国語映画賞)、「未来のミライ」(長編アニメ賞)は残念ながら共に受賞を逃した。外国語映画賞はメキシコ(アメリカ合作)の「ROMA ローマ」の、長編アニメ賞は「スパイダーマン:スパイダーバース」となりました。

 

 

 

 

Ⅱ キネマ旬報 ベスト1上映会と表彰式


米アカデミー賞より1回歴史が古く、今年で92回目を迎える「キネマ旬報ベスト・テン第1位映画鑑賞会と表彰式」が、2月10日(日)東京文京シビックホールで行われた。


2018年の第1位映画と他の賞の結果は次の通り。


文化映画:沖縄スパイ戦史  

外国映画:スリー・ビルボード  

日本映画:万引き家族


日本映画監督賞:瀬々敬久(「菊とギロチン」「有罪」)
日本映画脚本賞:瀬々敬久、相澤虎之助(「菊とギロチン」)
外国映画監督賞:マーティン・マクドナー(スリー・ビルボード)


主演女優賞:安藤サクラ(「万引き家族」) 

主演男優賞:柄本佑(「君の鳥はうたえる」他)
助演女優賞:木野花(「愛しのシリーン」)  

助演男優賞:松坂桃李(「孤狼の血」)
新人女優賞:木竜麻生(「菊とギロチン」)  

新人男優賞:寛一郎(「菊とギロチン」)


読者選出日本映画監督賞:是枝裕和(「万引き家族」)
読者選出外国映画監督賞:マーティン・マクドナー(スリー・ビルボード)
読者賞:立川志らく(「立川志らくのシネマ徒然草」)
特別賞:樹木希林

 

表彰式には、マクドナー監督に加え瀬々、相澤、是枝の諸氏は仕事のため代理の方が出席だったが、他の方は出席。樹木さんの代わりには娘の内田也哉子さんが出席した。


上記の中でTV各局でニュースとして映像が流れたのが、主演男女優賞の安藤サクラ、柄本佑の夫婦受賞者だ。夫婦での受賞は初めて、これからもなかなか難しいだろうという事で話題に。安藤は主演賞が3回目、他に助演賞を2回受賞しているが、今回の挨拶も“大丈夫だろうか?この人”と感じさせてくれた。初めて助演女優賞を受賞した2011年の時の挨拶の印象とほとんど変わらない。成長していないというか、天然というか?

 

 

 

 

Ⅲ 金曜日封切りの影響


東宝が金曜日封切りを開始したのが昨年の4月、その後松竹も追随しているのでかなりの本数が金曜日に封切られている。特に大きな問題になっていないのは、映画の社会的地位がダウンしていることの現れかもしれない。私個人にとっては、金曜日という平日に封切りという事で、初日に混まずに見ることができる機会が増えたというメリットがある。


従来土曜日夕刊には多くの映画の広告が掲載され、翌日封切り日に何を見るかを検討していたのだが、これがどうなったのか?木曜日夕刊に掲載されるようにはならなった。依然として金曜日の夕刊に掲載され、当日封切りの作品は“本日公開”と謳われるようになった。さらに、朝刊に載る映画広告が少し増えたように感じる。

 

 

 

 

Ⅳ 「君の名は」の報告


「。」のつかない「君の名は」の状況はどんなものか?と見に行ったのは2月19日(火)。第一部の上映開始時間12:00の1時間前からチケットが発売される。ひょっとして長蛇の列になっていたらと、10:30には到着するように出かけた。ところが、着いてみると1組の老夫婦が心配げにうろうろしているだけ。不発だったのかと思いながら、そのまま並ぶには時間がありすぎると三省堂書店で時間つぶし。


10:45に再び見に行くと、先の夫婦+2人という状況で、これは完全にこけたなあ、神保町シアターの普通の日でもこれ以上並ぶことはあると思いながら5人目として並んだのだ。私の前の女性が興奮しながら他の男性二人と話している。“感激したわ。美男、美女の運命、次にどうなるかとドキドキしてた。”つまり、彼女は以前に見ていて、再び興奮するために来ていたのだ。ちなみに彼女は昭和19年生まれと言っていたので、それほどの年ではない(?)。途中から話に加わり話していると、男性の一人は先の夫婦のご主人で、以前に3部作すべて見ているという。ただし、今回は奥さんのお供できただけで映画は見ないとのこと。ちなみに奥さんはこの会話には加わらず、少し離れていた。もう一人の男性は今回初めてのよう。3人はいずれも80歳前後かという印象だった。
驚いたのは「君の名は。」のことを19年生まれの女性は全く知らず、アニメで作ったんですかなどと言っていたこと。反対に若い人は「君の名は」のことは知らないだろうからおあいこか。


この後、発売開始の11:00までに長蛇の列はできず、10名くらいの列で終わってしまった。第一部も満席ではなく、7割くらいの入りだった。第二部、第三部と見る人は減っていき最後は3割までいなかったという印象。
救いは、作品が流石の出来だったこと。菊田一夫の原作はすれ違いが半端じゃない。私個人は十分楽しめました。


それにしても、先のご主人が“最後には彼女がパリに行くんですよね、あの当時でパリというのは凄いですよね”と話されていたのが、う~ん、人の記憶は随分変化するものなんだと改めて思い知らされた。

 

 

 

 

 

 

今月はここまで。
次号はひょっとして桜が満開?かもの3/25にお送りします。

 


                         - 神谷二三夫 -


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