2019年 4月号back

そろそろ春、どんどん春、一旦冬、再び春と
季節はめぐり、春になっていく。
それにしても「ROMA/ローマ」の問題は一筋縄ではいかないなあと、
思いながら座っていたのは、映画館!

 

 

 

今月の映画

 

2/26~3/25のイチローの引退を含む28日間に出会った作品は44本、
日本映画、外国映画共に面白い作品が多くありました。
米アカデミー賞関連の作品3本もあり、
作品の充実度は今年になって一番でした。



<日本映画>

翔んで埼玉 
岬の兄妹 
ジョアン・ジルベルト ライブ・イン・トーキョー 
きばいやんせ!私 
あの日のオルガン 
月夜釜合戦 
疑惑とダンス 
まく子 
こどもしょくどう
広場の孤独(旧) 
黒い潮(旧) 
夜の鴎(旧) 
愛情の決算(旧) 
叛乱(旧) 
心に花の咲く日まで(旧) 
月は上りぬ(旧) 
乳房よ永遠なれ(旧) 

鹿島灘の女(旧)

 

 

<外国映画>

アリータ バトル・エンジェル
  (Alita: Battle Angel) 
グリーンブック
  (Green Book) 
天国でまた会おう
  (Au Revoir La-Haut / See You Up There) 
あなたはまだ帰ってこない
  (La Douleur / Memoir of Pain) 
バジュランギおじさんと小さな迷子
  (Bajrangi Bhaijaan / Brother Bajrangi) 
運び屋
  (The Mule) 
シンプル・フェイバー
  (A Simple Favor) 
ウトヤ島,7月22日
  (Utoya 22,Juli / Utoya:July 22) 
スパイダーマン:スパイダーバース
  (Spider-Man:Into The Spider-Verse) 
サタデーナイト・チャーチ 夢を歌う場所
  (Saturday Church) 
イップ・マン外伝 マスターZ
  (葉問外傳 張天志 / Master Z:The IP Man Legacy)
マイ・ブックショップ
  (La Libreria / The Bookshop) 
ふたりの女王 メアリーとエリザベス
  (Mary,Queen of Scots) 
サンセット
  (Napszallta / Sunset) 
キャプテン・マーベル
  (Captain Marvel) 
家族のレシピ
  (Ramen The) 
ROMA/ローマ
  (Roma) 
ビリーブ 未来への大逆転
  (On The Basis of Sex) 
ブラック・クランズマン
  (BLACKKKLANSMAN) 
バンブルビー
  (Bumblebee) 
マクベス(旧)
  (Macbeth) 
オセロ(旧)
  (The Tragedy of Othello:The Moor of Venice) 
偉大なるアンバーソン家の人々(旧)
  (The Magnificent Ambersons) 
離愁(旧)
  (Tomorrow is Forever) 
謎のストレンジャー(旧)
  (The Stranger) 
黒魔術(旧)

  (Black Magic) 

 

 

 

 

Ⅰ 今月のベストスリー

 

①-1 グリーンブック
1962年、ケネディ大統領時代のアメリカ、黒人差別はまだ激しく、南部では黒人用ホテルが決まっていて、それを紹介したのがグリーンブックだ。黒人ピアニストが南部演奏旅行に出かけるに際し、運転手として雇ったのがナイトクラブの用心棒をしていたイタリア系アメリカ人。こうして、人種も、生活、信条など何ひとつ一致しないふたりの旅を描いたのは、今まで軟なコメディ(「メリーに首ったけ」等)を作っていたピーター・ファレリー。今年のアカデミー作品、助演男優、脚本賞受賞作。

 

①-2  ROMA/ローマ
1971年のメキシコ、親子三代の中上流家庭で家政婦として働く原住民系の女性を中心に、日々の生活が淡々と描かれる。当時メキシコは不安定な時期であり、家族の父親が家を離れてしまうなど大きな変化もあるのだが、映画は祖母、母、4人の子ども、2人の家政婦の生活を白黒画面で静かに追っている。アルフォンソ・キュアロンはアカデミー監督賞、撮影賞(撮影も監督自身)、外国語映画賞を獲得した。

 

②-1 岬の兄妹
どんどんそちらに向かっていると分かっていながら、なかなかそれを認めようとしない日本社会に、これでもかと貧しさを見せつけてしまう平成最後の傑作は、足の悪い兄と自閉症の妹が生きる姿を赤裸々に描く。ここまで過激に、正直に映画にしたのはこれが長編デビューの片山慎三監督。韓国のポン・ジュノ監督や山下敦弘監督の作品などに助監督として参加してきた新鋭だ。

 

②-2 ふたりの女王 メアリーとエリザベス
イギリス王室が秘めるドラマは凄い。今回はスコットランドのメアリーとイングランドのエリザベス、ふたりの女王の対立、争いを描くのだが、2人はコインの表裏で切っても切れない関係にあると言って映画を監督したのは女性のジョージ―・ルーク。今まで舞台の演出で活躍し映画は今回デビューとなる42歳だ。

 

③-1 月夜釜合戦
大阪釜ヶ崎の猥雑さを表すためか、はたまた夜店の賑わいのような空気を定着させるためか16㎜フィルムで作られた作品は、古典落語からとられた題材を正に大釜の中で煮込んだ感じ、どこをしゃぶっても濃い味がする。

 

③-2 疑惑とダンス
53分の中編ではあるが、いやー、面白いです。映画は脚本がなく、登場人物6人のキャラクターを俳優6人に話し、台詞は総て俳優のアドリブ、キイとなる方向性だけを与えて作られた。作ったのは27歳の二宮健監督。今年1月に封切られた「チワワちゃん」も彼の作品。まだ見逃しているのだが。今月のトークショーも参照ヨロシク。

 

③-3 ビリーブ 未来への大逆転
アメリカの最高裁判事の一人で、今月86歳になったルース・ベイダー・ギンズバーグの歩みを描く映画は、60年前のアメリカがいかに女性差別をしていたかを教えてくれる。彼女の甥が脚本家でもないのに叔母さんの人生に感動して脚本の草案を書いたという。アメリカの良さを感じさせてくれる作品だ。

 

 

 

面白い作品は他にも。映画館で楽しみましょう。


アリータ バトル・エンジェル:日本の漫画(木城ゆきと)から作られたSFアクション映画。製作・脚本はジェームズ・キャメロン、監督はロバート・ロドリゲスでサイボーグ少女アリータの物語を繰り広げる。天に浮かぶ支配者の町と、そこからゴミが棄てられる地上の支配される者の町、サイボーグ同士で戦うモーターボールでの暴力など、どこかで見た設定ながら、その描写に引き込まれる。

 

翔んで埼玉:魔夜峰央と言えば「パタリロ」だが、そのテイストのままの漫画“翔んで埼玉”から 実写映画化。埼玉の人から嫌われることもなく大ヒット。笑えます。

 

天国でまた会おう:「その女 アレックス」で有名な作家ピエール・ルメートルの非ミステリー作品からの映画化。脚本にはルメートル自身も参加、ラストを映画らしく変更していたのは良かった。主演のアルベール・デュポンテルが監督・共同脚本も担当している。

 

移動都市/モータル・エンジン:移動都市ロンドンが地上をはい回り、弱小都市を飲み込んでどんどん巨大化。それに対する反移動都市勢力との闘いがド迫力で描かれる。予告編に登場していたピーター・ジャクソン監督は、監督はせず、製作・脚本担当だった。

 

バジュランギおじさんと小さな迷子:歌もあるし踊りもあるインド映画だが、「きっとうまくいく」と同じように人の善意に焦点を当てた映画。肉体派アクションスターだったサルマン・カーンが主演したことに、インド映画の変化が感じられる。

 

運び屋:クリント・イーストウッド監督の新作は自身が自分より2歳年上の90歳の老人を演じて主演している。かなり痛々しくもある主演ぶりだ。“集大成だ”などと褒められるだろうが。ニューヨーク・タイムズの記事からの映画化。90歳で車を運転しながら運び屋をしていたのが実話とは、驚きのアメリカだ。

 

ウトヤ島、7月22:東日本大震災のあった2011年、ノルウェーでは77人が死亡するテロ事件が発生した。映画は“ドキュメンタリーではない。フィクションだ”と最後に伝える。ワンカットで作られた映画は一つのカメラで撮られていて、犯人を映すわけではない。

 

スパイダーマン:スパイダーバース:「未来のミライ」等を蹴散らし、今年のアカデミー賞長編アニメーション賞を獲得した作品。えっ、アニメまでアメコミ作品かよなどと思ったものだが、作品を見て納得。人種、時空を超えスパイダーマン、ウーマン、その他が登場する。

 

イップ・マン外伝 マスターZ:久しぶりにカンフーアクションを見たせいか、いやいや、実際にこの作品のアクションは凄い。ドニー・イェン主演の「イップ・マン」シリーズの派生作品で、イップ・マンに敗れたチョン・ティンチを主人公にしたアクションファン必見作。

 

サンセット:ナチスの強制収容所を描いた前作「サウルの息子」で衝撃的デビューを飾ったハンガリーの監督ネメシュ・ラーズローの第2作は、1913年ブダペストの帽子屋が舞台だ。前作ではそこで行われた行為を隠すためにボケた画面を使用していたが、今回は周りの状況が分からない、見えないという状況を表すためにボケ画面を使っているようだ。見ている我々にも分かり難く、イラつくこともあるのだが。

 

キャプテン・マーベル:今やアメリカ映画の主軸であるアメコミ映画はそれなりに進化しているとはお伝えしてきたが、“アベンジャーズが登場する前の物語”とする今作も、随分脚本が練られている。3年前のアカデミー賞主演女優賞のブリー・ラーソンや4回ノミネートのアネット・ベニングが出演しているのもうなずける。

 

家族のレシピ:斎藤工や松田聖子が出演していて日本語もかなり聞こえるが、メインはシンガポール。シンガポール人だった母の味を求めて主人公がシンガポールへ。監督はエリック・クー、日本では2014年11月に公開された「TATSUMI マンガに革命を起こした男」の監督でもある。これにも驚いた。美味い食事と、人情劇でなかなか心地よい出来。

 

ブラック・クランズマン:スパイク・リー監督と言えば、NBAニックスの試合会場マディソン・スクエア・ガーデンに必ずいるという印象だが、勿論映画監督が本業だ。その彼がKKKについての映画をついに作った。友人デンゼル・ワシントンの息子ジョン・デイヴィッド・ワシントンが主演している。

 

 

 

 


Ⅱ 今月のトークショー

 

3月17日は山歩きに出かける予定が、朝の天気予報をチェックすると午後から雨必至、仲間に連絡し延期することに。急に空いた日、渋谷ユーロスペースに2本の映画を見に出かけた。どちらも上映後にトークショーがあるとは知らずに。


月夜釜合戦西山真来(女優)、梶井洋志(製作者)+草野なつか(他の映画の監督)
釜ヶ崎と言えば、日雇い労働者の町、大坂の中でも最も異次元を感じさせる街だが、そこで繰り広げられる釜騒動を描く作品は、異空間の緊張感と落語を基にするお話のぶっ飛び感が面白い作品。
しかし、この日のトークショーは何について話されているのかよく分からないものだった。内輪話のようでもあり、草野監督のあまりに感覚的な発言もあり、う~む、よく分からなかった。

 

疑惑とダンス:全出演者(徳永えり小林且弥小村昌士川面千昌木口健太福田麻由子)+二宮健監督
殆どゲームに熱中するように引き込まれてしまうこの中編映画を作った人と出演した6人の俳優が上映後のトークショーに現れた。6人揃ったのは映画を作った時以来だという。トークショーもほとんど映画のノリのようになって楽しめた。
チームとして各人が自分の役割をわきまえ、話を進めたり、ひっくり返したり、茶々を入れたり、だまし合ったりと、いかにうまく会話が弾んだかを楽しそうに話した。この映画のテーマは“ふたりはやったのか、やらなかったのか”という訳で、興味津々、勿論結婚する二人じゃないですよ。
この映画にはリピーターが一杯いるようで、私を含めた初めての人は今回入場者の半数以下だった。一番多い人は12回で“ぎわ王”と呼ばれていて、出演者とも顔馴染みだった。

 

 

 

 

 

Ⅲ 今月の旧作

 

<日本映画>


渋谷シネマヴェーラの“俳優が監督するとき”は3月29日まで続映中。なかでは、佐分利信の作品5本、田中絹代の作品2本が楽しめた。脚本家では田中澄江が目立った。1950年代中頃、女性の問題について目を向けていた。
「夜の鴎」(佐分利/田中):主人公は2度目の結婚で木材商の田崎潤と結婚した新珠三千代、しかし彼が事故死、次に結婚したのは葬儀屋の佐野周二、さらに4番目は画家の佐分利信…。相手が次々死んでしまう女性を主人公にし、しかもそれを肯定的に描いたのには感心。
「乳房よ永遠なれ」(田中/田中):月丘夢路が演じる妻の結婚に対する違和感も、短歌仲間の森雅之に対する思いも、乳房切除後の葉山良二に対する恋も全て歌を詠む彼女の感性から生まれる。

 

 

 

 

<外国映画>


先月号でも1本見ていた“オーソン・ウェルズ特集”は今月が本番。外国映画の旧作6本はすべてこの特集の作品。今さら言うのもなんですが、彼は俳優としても魅力的だったんだなあと再認識、「第三の男」もあるんだから。
「偉大なるアンバーソン家の人々」:1942年と「市民ケーン」の翌年に作られたこの作品、奥の深い構図、明暗のくっきりした画面など芸術的には勝るとも劣らない。
「離愁」:監督作ではなく、主役クローデット・コルベールの相手役として出演したメロドラマ。第一次大戦時、戦争での負傷により自ら戦死と伝えてもらった男性が、20年ぶりに今は他の男性と再婚している妻に会う…。1946年の作品だ。

 

 

 

 

Ⅳ 今月の懐かしい人

 

☆ミミ・レダー
90年代かなり熱中して見ていた海外TVドラマ「ER」の多くの本数を監督していたミミ・レダー、その後映画に進出して「ディープ・インパクト」(1998年)で大ヒットになった時はびっくりした。女性監督ですからね。彼女が監督した作品を随分久しぶりに見た「ビリーブ 未来への大逆転」は、なかなか良い手ざわり。

 

☆ハリー・ベラフォンテ

バナナ・ボートがヒットした頃は知らないが、ハリー・ベラフォンテが歌っていたことは知っている。映画にも少し出ている(西部劇等以外に1992~6年のロバート・アルトマン監督3作品に出ている)が、勿論歌手としての印象の方が強い。更に黒人の地位向上、公民権運動に取り組んできた人としても有名だ。その彼が、「ブラック・クランズマン」の最後の配役表に出ていたので、あの老人が彼だったのかと知った。今年92歳だ。

 

 

 

 

 

Ⅴ 今月のつぶやき


●踏み絵が草加せんべいというのが笑えた「翔んで埼玉」、監督は千葉県出身の武内英樹、脚本は神奈川県出身の徳永友一、原作は新潟県出身の魔夜峰央と公式サイトに書かれていた。勿論出演俳優の出身地も明記。

 

●デンマーク系アメリカ人のヴィゴ・モーテンセンがイタリア人の用心棒を演じることに驚いたが、彼が随分太った(20㎏も増量!)のにもびっくりした「グリーンブック」は、彼が演じたトニー・リップの実の息子(ニック・バレロンガ)が製作・共同脚本として参加していて、イタリア人家族のありようがきっちり描かれている。最後のクリスマスにはシナトラの歌なんかも聞こえてきた。

 

●時間の関係で見ることになった「サタデーナイト・チャーチ 夢を歌う場所」はゲイであることを自覚しつつある高校生の物語。深刻なテーマが案外深刻に描かれるが、突然ミュージカルにもなるのだ。その違和感がちょっと奇妙。

 

●武正晴監督と言えば「百円の恋」だが、「きばいやんせ!私」も脚本家の足立紳とのコンビで本音の言葉を駆使して作品を面白くしている。しかし、女子アナのこういう話はまるで週刊誌ネタで手あか付き過ぎという気がする。作る方も見る方も気持ちがよくなる作りなのがちょっと気になる。

 

●ボサノバは好きだった。「ジョアン・ジルベルト ライブ・イン・トーキョー」を見ると、彼がいかに物静かな人だったかが分かる。ギターと歌だけの心地良い時間を楽しんだ。

 

●1971年のメキシコシティの映画館で上映されていたのは「大進撃」、当時日本でも人気があったフランスのルイ・ド・フュネスのコメディだ。「ROMA/ローマ」はあの頃のメキシコ人の生活を描いて、まるで小津映画のようなところがある。あの映画館はスクリーンの横に立派な立像が左右にあるのも凄いが、最後の配役等が写されているのに、左右開きの幕が閉まっていることには驚いた。幕に名前が写っている状態だ。

 

●現在の日本の貧困状態を描いた作品が2本、「岬の兄妹」と「こどもしょくどう」だ。後者は子供食堂そのものを描くのではなく、食堂開設に至る状況を描いている。両親に捨てられ、居住していた車も失い、行き場のない姉妹の悲劇が痛い。

 

 

 

 



今月のトピックス:映画館か、配信か?


Ⅰ 映画館か、配信か?


「ROMA/ローマ」が劇場公開されると知ったのは友人からのメールでだった。3月21日の初日まで1週間を切っていた。急に決まったのだろうか。Netflixによる配信でしか見られないとあきらめていたが、早速初日に見に出かけた。
映画はメキシコシティで暮らす家族と家政婦の生活を白黒画面で静かに見せていた。想像していたものより、随分地味に映る映画だった。
この作品をTV画面で見るのは良くも、悪くもある。派手なアクションもなく、必ずしも大画面の迫力がなくても描かれているものを追うには支障はない。しかし、この作品を小さな画面で見ることは、白黒のコントラストの中に描かれる美しさを十分には味わうことができない。
キネマ旬報のインタビューに、監督のアルフォンソ・キュアロンは次のように答えている。問:自分の作品を劇場の大きなスクリーンで見てもらいたいと思っていますか?
答:もちろんだ。僕は大きなスクリーンで上映されるものとして映画を作っている。しかし、同時に次の2つのことを認識している。一つは、従来の映画鑑賞とは違うやり方で映画を見るタイプの人がいること。もう一つは、これが白黒のメキシコ映画であり、劇場興行においては必ずしも大成功を期待できないだろうという事だ。

 

この作品は昨年のカンヌ映画祭で、劇場公開されない映画は受け入れないと拒否され、その後のヴェネチア映画祭では受け入れられて金獅子賞を受賞している。
映画祭での上映は大きなスクリーン上で行われた訳で、TV画面で行われたわけではない。この映画が劇場では見られないとなれば、やはり映画祭の作品とするのは問題ではないだろうか?あるいは、その映画が完結する、つまり上映される形(TV画面)で上映されたものを見て審査されるべきではないか?
金獅子賞作品が映画館で見られないのであれば、金獅子賞に値しないのではないか?

 

「ROMA/ローマ」はてっきりNetflixが製作依頼して作られた作品かと思っていた。監督が答えているものを読むと、そうではなく製作後に作品が買われたと思われる。しかし、初めからNetflixでしか上映されないと分かっていて、それを了承した上で作られた作品がこれから多くなってくるだろう。
日本映画でもそうした作品が既に予定されている。それらの作品は日本アカデミー賞の対象になるのだろうか?キネマ旬報作品賞の対象になるのだろうか?
あるいは、Netflixをはじめとする配信作品製作会社はこうした賞レースに参加したいと思っているのだろうか?

 

 

 

 

Ⅱ アカデミー賞授賞式


今年のアカデミー賞授賞式は珍しくも司会者なしで行われた。1989年以来30年ぶりという司会者なしは、89年が司会者より受賞者等を多く出演させようというポリシーがあったのに対し、今年は決定していた司会者(ケビン・ハート)が同性愛者への差別的な過去のツイート発覚で辞任させられ、その後受ける人がいなかったという事らしい。
1989年は例外として、基本的には司会者ありでずっと行われてきたアカデミー賞、かつてはボブ・ホープやビリー・クリスタルなどが多数回担当して印象に残る。しかし、最近は日本では殆ど知られていないアメリカのコメディアン・俳優等が担当していてあまり覚えていない。
Memorialでは、日本から脚本家・橋本忍とアニメーション作家・高畑勲が紹介されていた。

 

 

 

Ⅲ 金曜日封切り その後


キネマ旬報を読んでいたら、東宝が昨年から金曜日封切りにしたのは、土曜日が初日だとその日に舞台挨拶などがあり、そのために出勤する人もいて経費的に合わないためだったとあった。しかし、実際に金曜日に封切り、初日挨拶をしたのだが、金曜日では入場者が少ないので盛り上がりが欠けるため、舞台挨拶は土曜日に戻ってしまったという。つまり、経費的にはメリットがなかったことになる。
土曜日封切りに戻そうかという意見もあるという。
プレミアム・フライデーの二の舞となるのだろうか?

 

 

 

 

Ⅳ ボヘミアン・ラプソディ― その後


快進撃を続けてきた「ボヘミアン・ラプソディ」の興行成績が、19週目となる3/16-17の週末興行成績で累計125億円を突破し、日本における音楽・ミュージカル映画の興収歴代No.1になった。今までの「美女と野獣」(2017年)の124億円を抜いたのだ。ロードショーはまだ続いているので更に記録を伸ばすだろう。
ただし、週末興収のベスト10からは19週目で姿を消した。

 

 

 

 

 

Ⅴ TOHOシネマズの値上げ


既に新聞記事等になっているのでご存知の方もいらっしゃるだろうが、3月18日にTOHOシネマズが鑑賞料金の値上げを発表した。詳細は次の通り。


実施日:2019年6月1日


一般:1800円 → 1900円
シニア(60歳以上):1100円 → 1200円
ファーストデイ(毎月1日):1100円 → 1200円
レディースデイ(毎週水曜日):1100円 → 1200円
TOHOシネマズデイ(毎月14日):1100円 → 1200円
夫婦50割引(お二人で):2200円 → 2400円


大学・高校・中学・小学生、幼児、レイトショー、障がい者割引については変更なし。
また、12月1日の「映画の日」の1000円も変更なし。

他の映画会社、シネコン、映画館についてはまだ発表されていないが、変更の可能性が高いのではないかと思われる。

 

 

 

 

 

Ⅵ マーク・レスター


NHK-BSでドキュメンタリー「マイケル・ジャクソン 最期の24時間」を偶然見ていたらマーク・レスターが出てきたので驚いた。
マーク・レスターと言えば「小さな恋のメロディー」で圧倒的人気を得た子役だ。その前にはミュージカル「オリバー」にも主演していた。その彼が大人になって、亡くなったマイケル・ジャクソンのドキュメンタリーでインタビューされている。
Wikipediaで調べると、1958年生まれのマークは28歳で俳優を辞め、整骨士の資格を取り現在は整骨院を開いているとのこと。ジャクソン5がロンドン公演にきた時、マークのファンであったマイケルが面会しに来た時からの親友だという。マイケルが亡くなる1週間前にも電話で話をしたらしい。更に、“マイケルに精子提供をしたこともあると発言し、マイケルの娘パリスは自分の子供だと思うと語っている。”とも書かれていた。驚き!
ちなみにマイケル・ジャクソンも1958年生まれ、気が合ったんでしょうね。

 

 

 

 

今月はここまで。
次号はゴールデンウィーク10連休の直前4/25にお送りします。


                         - 神谷二三夫 -


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