今年の桜、東京では満開宣言の割には、
すぐにパッと華やかにはならず、
しかし長く花が見られるという予想外の展開。
2本立てを見に行っておまけの方により惹かれる(ちょっと違うか?)ような、
そんな得することがあるのは、映画館!
3/26~4/25の桜満開を含む31日間に出会った作品は49本、
邦洋比率は1:3でした。
旧作が邦洋合わせて18本となり、全体の数を押し上げました。
美人が婚活してみたら
ユーリー・ノルシュテイン<外套>を作る
21世紀の女の子
新宿タイガー
麻雀放浪記2020
多十郎殉愛記
キングダム
慟哭(旧)
親鸞 白い道(旧)
学生野郎と娘たち(旧)
いのちの朝(旧)
漂うごとく
( / Adrift)
ベトナムを懐う
( / Hello Vietnam!)
ショーン・オブ・ザ・デッド
(Shaun of The Dead)
ダンボ
(Dumbo)
記者たち~衝撃と畏怖の真実~
(Shock and Awe)
セメントの記憶
(Taste of Cement)
リヴァプール最後の恋
(Film Stars don’t Die in Liverpool)
バイス
(Vice)
マックィーン:モードの反逆児
(McQueen)
ザ・プレイス 運命の交差点
(The Place)
希望の灯り
(In den Gangen / In The Aisles)
12か月の未来図
(Les Grandes Esprits / The Teacher)
ハンターキラー 潜航せよ
(Hunter Killer)
芳華-Youth-
( / Youth)
ビューティフルボーイ
(Beautiful Boy)
魂のゆくえ
(First Reformed)
荒野にて
(Lean on Pete)
アレッポ最後の男たち
( / Last Man in Alepo)
僕たちのラストステージ
(Stan & Ollie)
ねじれた家
(Crooked House)
ヒトラーVS.ピカソ 奪われた名画のゆくえ
(Hitler Versus Picasso and The Others)
シャザム!
(Shazam!)
イメージの本
(Le Livre d’Image / The Image Book)
ある少年の告白
(Boy Erased)
山猫
(Il Gattopardo / The Leopard) (旧)
<ソヴィエト映画の世界>
ロマノフ王朝の最期
( / Agony)
十月
( / October)
私はモスクワを歩く
( / Romance in Moscow)
人生は素晴らしい
( / Life is Beautiful)
ストライキ
(Stachka / Strike)
青い山 本当らしくない本当の話
( / Mountain or an Incredible Story)
怒りのキューバ
(Soy Cuba / I Am Cuba)
<ハワード・ホークス監督特集Ⅱ>
果てしなき蒼空
(The Big Sky)
駆潜艇K-255
(Corvette K-255)
港々に女あり
(A Girl in Every Port)
暁の偵察
(The Dawn Patrol)
光に叛く者
(Criminal Code)
(新作だけを対象にしています)
①-1 記者たち~衝撃と畏怖の真実~
ナイトリッダーという新聞社は初めて知った。9.11テロの後アメリカが一つの方向に向いていた時、それに対してNoという事は、太平洋戦争中の日本でNoと言うのに近いだろう。自由が守られ、より開かれた社会と思われるアメリカでも、勇気のいることだったろう。監督で出演もしているロブ・ライナーは1947年生まれで日本の団塊世代と同じ。「スタンド・バイ・ミー」「恋人たちの予感」など好きな作品も多く、同年代としては誇らしい。
①-2 バイス
バイスプレジデント、つまりアメリカの副大統領を描いた作品は息子ブッシュ大統領の時代、ディック・チェイニー副大統領が主人公だ。今この作品が公開されると、思い出されるのは当然ながらトランプ大統領だ。トランプは一過性で出てきたのではなく、その前があったのだと思わされる。10年前のバイスについてここまで描けるアメリカ映画を尊敬する。クリスチャン・ベールの化けぶりに感心。サム・ロックウェルのブッシュも似てる。
②-1 セメントの記憶
内戦が続くシリアから出稼ぎや、難民としてベイルート(レバノン)の建築現場で働く男たちを追ったドキュメンタリー。1975~90年のレバノン内戦により破壊された街と、高層ビルが建設されつつある街を写す画面が美しい。美的センスのあるドキュメンタリーを作ったのは亡命しドイツ在住の元シリア兵ジアード・クルスーム(1981生まれ)。
②-2 魂のゆくえ
ポール・シュレイダーと言えば「タクシードライバー」の脚本が有名だ。彼の最新監督・脚本作「魂のゆくえ」はニューヨーク州北部の小さな教会の牧師が主人公。汚されていく社会の中で如何に社会の中の、或いは生き方の清純さを守るのか、主人公は狂気の淵にまで出かけていく。
③-1 ダンボ
ディズニーがアニメーションで「ダンボ」を作ったのは1941年。それをCGで作れる時代になって実写版を監督したのはティム・バートン。アニメ作品もあるバートンが実写にしたのは、アニメより人間に寄り添いたかったためという気がする。「シザーハンズ」の監督はいつまでもどこかに芸術家がいる。
③-2 希望の灯り
1990年の東西ドイツ統合後、旧東ドイツ・ライプツィヒ郊外のスーパーマーケットを舞台に、ままならない生活の悲しみを職場の仲間とのささやかな助け合いに癒されている人々の姿を優しく描く。ライプツィヒ生まれのトーマス・ステューバー監督が旧東ドイツ・ハレ生まれのクレメンス・マイヤー(原作・脚本)と組んで作り上げた佳作。
面白い作品は他にも。映画館に出かけてみよう。
◎ショーン・オブ・ザ・デッド:サイモン・ペッグが若いなあ、髪型変えたからかなと思ったのだが、調べれば2004年の作品だった。なぜ今?「カメ止め」効果でしょうか?ゾンビでコメディの先駆作。
◎ユーリー・ノルシュテイン<外套>を作る:ロシアで「外套」というアニメーションを30年以上前から作り続けているノルシュテインも凄いが、早く完成して欲しいと催促に行く日本人にも驚き、その顛末をドキュメンタリー映画にしたというのにさらにビックリ。
◎新宿タイガー:新宿タイガーに初めて出会ったのは昨年の秋。それまで存在も知らず変な人だと思った。その後予告編でこの映画のことを知った。2度目に目にしたのが、この映画を見た4月4日。彼も団塊世代の一人。いろんな人がいるから不思議はないが、よくしゃべり、圧倒的に明るいのには感心。何故か2度とも仮面はかぶっていなかった。
◎マックィーン:モードの反逆児:リー・アレキサンダー・マックィーンというデザイナーは初めて知った。仕立て職人として働き始めたことが、最後まで彼の創作の基本だった。奇抜で攻撃的なデザインを自ら洋服にしていたのだろう。
◎ハンターキラー 潜航せよ:潜水艦ものは、狭い艦内、生死にかかわる緊張感など映画的興奮を基本的に持っているが、この作品は欲張りにも米ロの対立、地上のアクションまでも詰め込み、楽しめる作り。原潜が急降下するとき、乗員が皆斜めに立っているのには驚き。
◎芳華-Youth-:毛沢東が亡くなる少し前から始まる映画は、子供の頃に紅衛兵運動が始まり、親と離れて農村での集団生活をしたり、親が批判され農村での労働をさせられたりした世代に焦点を当て、彼等のその後を描く。あの当時を体験してきた中国の人々にとっては、
懐かしくもつらく、しかし感情移入できる作品に違いない。
◎多十郎殉愛記:巨匠中島貞夫の20年ぶりの新作とある。しかし彼の映画を見たことがない。監督補佐として熊切和嘉(監督)が付いている。学生時代の教授と教え子の関係らしい。幕末、色々な力が拮抗する中で自分の在り場所が定まらず…最後のチャンバラへ突き進む。
◎荒野にて:15歳のチャーリーは親を失い、大人社会の中で老競走馬ピートの世話をしながら孤独の中で生きている。ついにはピートと共にアメリカの大自然をさまよいながら安住の地を求めての旅に。
◎アレッポ最後の男たち:シリア内線でアサド政権側と反政府側との主戦場となっていたアレッポ。政権側+ロシア軍の爆撃にさらされた街で、がれきで生き埋めとなった人々を救おうとする男たちを追ったドキュメンタリー。撮影は2016年。激しい被害に驚く。
◎僕たちのラストステージ:1937年にピークを迎えていたお笑いコンビ、ローレル&ハーディ(日本ではちびとデブの“極楽コンビ”と呼ばれる)の1953年のイギリス、アイルランド公演を描いている。サイレント時代から活躍していたコンビの最後を描く。ジョン・C・ライリーのデブぶりはかなり凄い。
◎ねじれた家:アガサ・クリスティ原作のミステリー。レギュラー探偵のいない作品でかなり良質なミステリー小説の印象は持っていたが、映画も同様にバランス感覚が良い。
◎シャザム:マーベルと並ぶアメコミの雄、DCコミックスはスーパーマンやバットマンなどマントで飛ぶ人が多いが、それをパロってコメディに仕上げたのがこの作品。なかなかの造りだが、これを見ていてトランプ政権下のアメリカというものにも思いを馳せた。
◎キングダム:原泰久の漫画を原作に映画化。紀元前245年、春秋戦国時代の西方の国「秦」を舞台に、農家の奴隷として一緒に働いた2人の少年が大将軍を目指す物語。中国ロケでの画面を含め、大きさを感じさせる映画作りが成功。
◎ある少年の告白:同性愛矯正プログラムに参加したガラルド・コンリーの原作を基に、その実体を描く。アメリカにはこうした施設が今もかなりあるらしい。宗教とも結びついて正しい人間に戻すという方向に行くのが何とも怖い。
<外国映画>二つの特集上映、ソヴィエト映画とハワード・ホークス監督特集に通った。目立ったのは次の作品。後者はまだ始まったばかり。この後まだ1か月ほど続く。
<ソヴィエト映画の世界>
「ストライキ」、「十月」:エイゼンシュテインの映画史的名作は共に流石の出来。
「私はモスクワを歩く」:1963年の作品だが、現代のしかも西欧の作品のよう。
「青い山 本当らしくない本当の話」:ジョージア(グルジア)のとぼけたおかしさ。
「怒りのキューバ」:キューバとの合作。画面の美しさは尋常ではない。
<ハワード・ホークス監督特集Ⅱ>
「果てしなき蒼空」:ミズーリ川を3000㎞以上遡っていく開拓劇。1952年の作品にしてはインディアンの扱いがフェアという作り。
「駆潜艇K-225」:1943年に作られた戦争中輸送船を守る駆潜艇の活躍を描く。
「暁の偵察」:1930年ホークス初のトーキー作。1次大戦仏独戦線の空の戦い。
☆ ミカエル・ニクヴィスト
「ハンターキラー 潜航せよ」でロシアのアンドロポフ潜水艦長を演じていたのは北欧版「ミレニアム」でミカエル・ブルムクヴィストを演じていたミカエル・ニクヴィスト。
北欧らしい渋い大人の男といった感じの顔を久しぶりに見たのだが、映画の最後に“ミカエルの思い出に”と出てきて驚いた(もう一人、多分スタッフの方と共に)。調べると、2017年6月27日に肺がんで亡くなっていた。今年はもう1本日本公開があるかもしれない。「クルスク」という、これまた潜水艦の話らしい。
いずれにしてもご冥福をお祈りします。
3/26~4/25の間に封切りされた作品の惹句の中から、今月はブッシュ大統領時代の2本+ベイルートの1本。
真実は誰のためにあるのか。:記者たち~衝撃と畏怖の真実~
全部ホント:バイス
嘘か、ほんとか、真実か?トランプの前から始まっていた。
天空の建設 地上の破壊:セメントの記憶
シリアからの労働者は地下にいた。
●大九明子監督と言えば、「勝手にふるえてろ」で女性の本音を描いて面白かったが、新作「美人が婚活してみたら」も同様の路線で作られている。原作はとあるアラ子の漫画で、シソンヌのじろうが脚本を書いている。女性はこういう話、どう感じるのでしょうか?
●ヴィスコンティの代表作の1本「山猫」をついに見た。何度も上映されている作品だが何故か縁がなく、昨年TVで途中から少し見ただけだったのだ。大きな画面で見て、シチリアの貴族階級の暮らしが大きなスケールで描かれていることに感動した。しかし、主演二人の声の吹き替え(イタリア語への)には参った。特にバート・ランカスターは、違和感がぬぐえない。アラン・ドロンにしても馴染めない。
●朝のジョギング中、カメラマンが豊洲を後景に女性を撮っているのに出くわした。それから約1か月後くらいだったろうか、新聞の日曜版に大きく写真が掲載された。女性は山戸結希、1989年生まれの女性監督だった。生まれが何と愛知県刈谷市、私の実家の隣町だ。まだ若い監督だが、2016年に27歳にして商業映画「溺れるナイフ」を監督している。なかなかの出来だった。「21世紀の女の子」は彼女のプロデュースのもとに彼女を含む15人の若手女性監督が監督した8分以内の短編を集めたもの。中では彼女の作品が一番か。
●団塊世代のおじさんなのに新宿ゴールデン街などで遅くまで飲み、翌朝は3~4時に起きで新聞配達をしていた「新宿タイガー」、その体力は驚きだ。
●賛否両論あると聞く「麻雀放浪記2020」は私には受け入れがたいものだった。2020年という近未来の設定、ふんどし麻雀等のハチャメチャコメディで平和ボケの日本に活を入れるというのだ。もっと真剣に現日本の政治状況と向き合った方が却って効果があると思う。
●若者たちが踊る「芳華-Youth-」はバレエのポーズがいかにも共産圏という雰囲気。久しぶりに出会った。
●白黒画面の美しさに圧倒された「怒りのキューバ」は、監督ミハイル・カラトーゾフで作られた。「戦争と貞操」(後に「鶴は翔んでゆく」に改題)の名匠だ。白黒コントラストの美しさ以上に驚いたのはカメラのアングル。特に建物の間の道路を民衆が仲間の遺体を掲げて行進するのを上から写したのは、いかにして撮ったのか?ドローンなど当然ない1964年の作品とは信じられない。
●思った以上にドキュメンタリータッチだった「ヒトラーVS.ピカソ 奪われた名画のゆくえ」はヒトラーによって奪われた60万点の美術品と、いまだ不明の10万点の行方を追う。
●これではゴレンジャーならぬロクレンジャーじゃないか?と思ったのは、「シャザム」のラスト、兄弟全員が力を得て並んだ時だ。この路線は、ちょっとやばくないですか?アメコミはゴレンジャーを超えられるか?
●1970年以降の作品は殆ど見ていないゴダールの最新作「イメージの本」は、う~む、どう見たらいいのだろうか?美しいと言ってしまうのも違うような気がするし、何を描きたいのと聞くのも意味がないような。極端に言えば、素人が作った映像作品?それにしてもドーファという字幕が何度も出るが、ドーハのこと?活字での情報に頼らないと分からず、独りよがりになってしまう。
映画の字幕については今までにも何冊かの本が書かれている。
今年の2月に出版された「映画の字幕ナビ」という本がある。発行は(株)スティングレイで、著者は落合寿和という人だ。著者紹介を読んでみると、大学卒業の1990年に字幕翻訳家としてデビュー、WOWOW放送開始特番を始め、映画、報道、音楽、スポーツなどの字幕翻訳及び吹替翻訳を担当とある。東京テレビの「シネマ通信」やTBSの「王様のブランチ」の映画コーナーなどでインタビューやメイキング映像などを翻訳していたという。主に放送関係での翻訳、字幕製作が多かったようだ。映画館で上映される映画の翻訳は殆どされていないのではないか。少なくとも私は劇場でお名前を見たことはなかった。
この本には、彼が如何にして字幕翻訳をするようになったかなども書かれている。このあたりは今までに出版されてきた字幕翻訳者の本とそれほど変わるところはない。古くは字幕翻訳者の草分けの一人清水俊二(1906~1988年)の「ビバリーヒルズにこだわるわけ~映画の英語は生きている」(1983年)や、彼の弟子にあたり、現在も活躍中の戸田奈津子の「字幕の中に人生」(1997年)、以前紹介したことがある太田直子(1959~2016年)の「字幕屋は銀幕の片隅で日本語が変だと叫ぶ」(2007年)など面白く読んだ本があった。
この「映画の字幕ナビ」が少し変わっているのは、その題名の通り字幕翻訳の方法について細かく書かれていることだ。通常の翻訳と違い字幕翻訳には制約が多い。画面に表示できる文字数には制限があり、きちんとした英語(あるいは他の言語)での脚本がない場合、或いはあったとしてもその場で変更されて作られたりしている場合もあり、更に物語の伏線などをきちんと伝えられるように物語の内容に沿った翻訳ができるかなど、注意すべきことが多いのだ。口語での速度の速い会話や、複数の人物が同時に話すなどを如何に訳すかなども難しい問題だ。
筆者は字幕翻訳のある程度の基本を作り、更に職人的な細かい部分にこだわった方法を確立できればという気持ちで執筆されたらしい。今までの本でも結構細かいことも書かれていたが、一般読者に向けて読み物として書かれていたことが普通だった。この本は字幕翻訳家の技術向上のためにといった趣だ。
劇場公開された作品でも、TV放映やDVD製作にあたっては再度翻訳(字幕及び吹替用)が行われる。筆者はこうしたことも数多く手がけていて、劇場公開時の字幕をチェックし、改訂した例も結構紹介されている。
より分かりやすい映画字幕に向けて、より良い方向に向かっていけますように。
NHKBS1で日曜18:00~に放映されるクールジャパンは、日本在住の外国人が日本の様々な事象について意見を述べる面白い番組だ。4月7日は「外国人が感じた“ニッポン人あるある”Part3」として外国人が不思議に感じる日本人の行動についてだった。
それを見ていたら、日本人は映画館でエンドロールの最後まで見ているというのがあった。司会の鴻上尚史が君たちの国では最後まで見ないの?と聞くとおどろきの回答が。
最後まで見ているという国はなかった。エンドロールになるとライトがつけられたり、半分つけられるという国もあった。先月号の今月のつぶやきで、「ROMA/ローマ」に出てきた映画館ではエンドロール時に幕が閉まると驚いて書いたのだが…。エンドロールの最後まで見ている日本人はガラパゴス状態なんだろうか?
最近のハリウッド製アメコミ映画(アベンジャーズとか、シャザムとか)ではエンドロールの後に次回に続く的な画面が出ることが多い。ジャッキー・チェン作品では昔からNG集がここで映されていた。明るくなってしまったら、これらをきちんと見ることができない。今月見た「荒野にて」はエンドロールの途中で急にナレーションが始まり、最後まで続いた。画面自体はクレジットが流れていたのだが、このナレーションには字幕も付いた。何故なら、それはチャールズ・ブコウスキーの詩か小説の1節だったのだ。
日本人がガラパゴス状態でも、映画館は最後まで暗い中、静かにしていてほしい。
映像過剰時代である現代でも、なぜかヒット作なのにリバイバル公開されない映画が時々ある。主には映画の権利状態からそうした状況になるのだろうが、時にはビデオやDVDも作成されていないものもある。
昨年はそうした状態にあった「まぼろしの市街戦」が、4Kデジタル修復版として公開された。バージョンが違うという事で再公開されるのは以前から時々あった。特に製作者の力が監督より強いアメリカ映画などで、必ずしも監督の思い通りになっていなかった作品などが、長年の監督の希望でディレクターズカット版が作られて公開されるというものだ。昨年公開された「恐怖の報酬 オリジナル完全版」は、1953年のフランス映画「恐怖の報酬」を1977年にアメリカでリメイクしたものが監督の希望版から30分近くがカットされていたため、40年ぶりに完全版が公開されたというものだ。
1967年の「卒業」は午前10時の映画祭で上映されたことはあるが、今年の6月7日から新たに「卒業 4Kデジタル修復版」としてロードショーされる。
最近、4Kデジタル修復版と並んで、4Kレストア版、デジタルリマスター版、HDリマスター版などが付けられて再公開される作品が増えているように感じる。「卒業 4Kデジタル修復版」は「小さな恋のメロディ デジタルリマスター版」と併せて公開される。
こうした形で再公開できるのなら是非ともどこかの映画配給会社にお願いしたい作品がある。「ボーイフレンド」(ケン・ラッセル作品)、「ジョアンナ」(マイケル・サーン作品)の2本のミュージカルだ。最近のミュージカルのヒットの波に乗れるのではと思うのだが。
フィルムセンターから国立映画アーカイブに変わって1年が経つ。現在、深作欣二特集が4月23日~5月26日の期間で上映されている。
今や老人のたまり場(シニア料金は310円です)とも言われるアーカイブに「誇り高き挑戦」を見に出かけた。上映30分前に入場開始。確かに自分を含め高齢者が多い。上映されるまでに少し時間があるので本を読んでいた。と、突然、男性老人の叫び声が。“うるさい。話すならロビーに出て行け”えーっ?まだ始まっていないよね?確かに男性二人が多分映画について話していた。確かに小さな声ではなかったが、大声という訳でもなかった。もし私が知り合いと2人で来たら同じように話をしていただろう。
怒った老人はひょっとして眠っていたのかもしれない(想像です)。で、眠りを妨げられた怒りとか。上映が始まって少し経った頃、どこかからいびきが聞こえてきた。あの老人とは違う方向からだったが。
今月はここまで。
次号は令和になって初めての通信、5月25日にお送りします。