2023年 7月号 最近の映画界の話題back

 

梅雨とはいえ、それ程の雨が降っていない東京、
しかし、蒸し暑く快適ではない。
こんな時心地良い場所を求めるなら、
そう、それは映画館。

 

 

 

今月の映画

 

5/26~6/25のShohei Ohtaniが快進撃をみせた31日間に

出会った作品は45本、
邦/洋画は11/34と外国映画が多くなりましたが、
新/旧は33/12で、旧の12本は総て外国映画で、
外国映画の旧作が多くなった。



<日本映画>

   11本(新11本+旧0本)

【新作】
波紋 
こわれること いきること 
老ナルキソス 
渇水 
怪物 
水は海に向かって流れる 
逃げきれた夢 
共に生きる 書家金澤翔子 
大地よ アイヌとして生きる 
マゴーネ 土田康彦「運命の交差点」についての研究 
大名倒産

 

<外国映画>

   34本(新22本+旧12本)

【新作】
クリード 過去の逆襲
  (Creed Ⅲ) 
65シックスティ・ファイブ
  (65) 
aftersunアフターサン
  (Aftersun) 
イメージズ
  (Images) 
苦い涙
  (Peter Von Kant) 
ウーマントーキング 私たちの選択
  (Women Talking) 
The Killer 暗殺者
  (The Killer: A Girl, Who Deserves to Die) 
テノール!人生はハーモニー
  (Tenor / Tenor) 
リトル・マーメイド
  (The Little Mermaid) 
プチ・ニコラ パリがくれた幸せ
  (Le Petit Nicolas: Qu’est-Ce Qu’on Attend

   Pour Etre Heureux?

  / Little Nicolas: Happy as Can Be) 
RODEOロデオ
  (Rodeo) 
海を待ちながら
  (Waiting for The Sea) 
少年,機関車に乗る
  (Bratan)
M3GANミーガン
  (M3GAN) 
探偵マーロウ
  (Marlowe) 
ザ・フラッシュ
  (The Flash) 
スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース
  (Spider-Man: Across The Spider-Verse) 
青いカフタンの仕立て屋
  (Le Bleu du Caftan / The Blue Caftan) 
カード・カウンター
  (The Card Counter) 
アシスタント
  (The Assistant) 
世界が引き裂かれる時
  (Klondike) 
告白,あるいは完璧な弁護
  (Confession)

 

【旧作】
<初期ドン・シーゲルと修業時代>
贅沢は素敵だ
  (No Time for Flowers) 
抜き打ち二挺拳銃
  (The Duel at Silver Creek) 
サラトガ本線
  (Saratoga Trunk) 
復讐!反ナチ地下組織
  (The Conspirators) 
殺し屋ネルソン
  (Baby Face Nelson) 
暗黒の鉄格子
  (Count for Hours) 
ビッグボウの殺人
  (The Verdict) 
戦慄のスパイ網
  (Confession of A Nazi Spy) 
鉄腕ジム
  (Gentleman Jim) 
仮面の報酬
  (The Big Steal) 
暗闇の秘密
  (Night Unto Night)

 

<その他の旧作>
雨に濡れた舗道
  (That Cold Day in the Park)

 

 

Ⅰ 今月のベストスリー

  (新作だけを対象にしています)

 

① 逃げきれた夢
定時制高校の教頭は教え子が働く食堂で、支払いをしないで出てしまう。追ってきた彼女と話をしながらも…。自身の出身地、北九州の八幡を舞台に、光石研がまるで彼自身の生活を演じているのかと錯覚しそうなほど、普通に行動していて、特に松重豊とのやり取りなど心地良い。監督、脚本は二ノ宮隆太郎。

 

 テノール 人生はハーモニー
オペラ座にやってきたのは寿司の出前のアルバイトをしているアントワーヌ。普段はラップに励んでいるが、出前先でちょっとオペラ風に歌ってしまう。その後の展開は定番通りにテノールとして・・・。分かっていても気持ちがいい。

 

 青いカフタンの仕立て屋
LGBTQ問題は全世界的に進んでいるのだろうが、モロッコからの映画がこのテーマを扱い、しかも非常に洗練された形で映画化されたことにはちょっと驚いた。監督はタンジェ生まれの女性監督、マリヤム・トゥザニ、脚本は夫であるナビール・アユーシュと共同で書いている。デビュー作「モロッコ、彼女たちの朝」に続く第2作。

 

 

 

やっぱり映画は映画館で楽しもう!(上映が終了しているものもあります。)

 


クリード 過去の逆襲:「ロッキー」の強敵だったアポロ・クリードの息子アドニスを主人公とするクリードシリーズの3作目。1976年の「ロッキー」1作目から既に47年、スピンオフ作品ながらまだまだ元気。今回は主役を演じたマイケル・B・ジョーダンが監督も。

 

アフターサン:イギリス映画ながら舞台はトルコのリゾート。父と過ごした11歳の娘、その時のビデオを見ながら20年後の彼女が語るという構成。父の行動の裏にある微妙な動きを理解できなかったという複雑な感情の揺れを繊細に描く。35歳の女性監督シャーロット・ウェルズの長編デビュー作。

 

波紋:荻上直子監督の新作。常にちょっと変わった視線からの作品をユーモアを持って作ってきた監督らしく、波乱万丈の物語の中にもおかしみがある。向井真理子の熱演もあるが、ここでも光石研の情ない中年男が見もの。

 

苦い涙:1972年ドイツのライナー・ベルナー・ファスビンダー監督(故人)作「ペトラ・フォン・カントの苦い涙」(未見)をフランスのフランソワ・オゾン監督がリメイク。共にゲイとして有名な監督。女性同士を男性同士の主人公に置き換えて作られた今回の作品は、華麗な舞台劇を見ているようだった。

 

渇水:水道局に勤める主人公が同僚と水道料金滞納の家庭を回る。3か月未払いの家庭がそれでも払えない場合、水道栓を閉めて回るのだ。命の水と貧困という分かりやすい構成の物語。母親が帰ってこない家庭の二人の姉妹を前に主人公はどう行動するのか?

 

怪物:是枝裕和監督の新作、カンヌ映画祭で脚本賞受賞ということで、期待は大きかった。「羅生門」と同じように3つの視点で描かれているともあった。坂本龍一の音楽、安藤サクラ、田中裕子などの出演者と期待が高まったのだが。3つの視点ということからか、リアルとは言い難い安藤サクラの狂気の母親や、死人(ゾンビ)のような田中裕子の校長など、こんな風に描くとはと驚いた。こうした構成自体が正しかったのか?の疑問が浮かぶ。

 

リトル・マーメイド:製作前から話題になっていたらしい、ハリー・ベイリーという黒人歌手がマーメイドのアリエルを演じることが。公開後、今もって話題になっている。今月のトピックス Ⅰ最近の映画界の話題 ②リトル・マーメイド を参照してください。

 

水は海に向かって流れる:田島列島の人気漫画を映画化。男性かと思いきや女性漫画家。そうでなければこんな話は書けないでしょう。超クール風な26歳の女性を演じるのは広瀬すず。らしくない役柄で、期待ほどの成績になっていないという記事があったが、結構楽しめた。監督は前田哲、今月は「大名倒産」も公開された。

 

プチ・二コラ パリがくれた幸せ:フランスで50年以上愛された児童書「プチ・ニコラ」とある。目にしたことはないが映画で見る限り、なんだか懐かしい絵物語。プチ・ニコラを誕生させたイラストレーターのジャン=ジャック・サンペと小説家ルネ・ゴシニのそれぞれの人生、ふたりの出会いなどを織り込みながら楽しいニコラの物語が語られる。

 

共に生きる 書家金澤翔子:ダウン症の書家金澤翔子とその母を追ったドキュメンタリー。小学校の普通のクラスにいられなくなり、母娘二人で過ごすことになった時、母は娘に般若心経の写経を何回もさせていたという。それが基礎になり書家として花開いたらしい。ダウン症だからか、いつまでも無垢の子供の部分を失わない書家の姿に感心。

 

海を待ちながら、 少年,機関車に乗る:この2作品はユーロスペースで特集上映されている<再発見!フドイナザーロフ ゆかいで切ない夢の旅>で上映されたもの。バフティヤル・フドイナザーロフ監督はソ連時代にタジキスタンで生まれ、ソ連解体によりタジキスタンが独立した1991年に26歳で「少年、機関車に乗る」で監督デビュー、6監督作品を残して2015年49歳で亡くなっている。
海のない中央アジアの小さな国で、おおらかでファンタジックな作品を生み出している。

 

M3GAN ミーガン:両親が事故で亡くなり孤児になった少女ケイディのために、叔母のジェマが開発した「お友達AI人形」がミーガン。映画の題名はMEGANのEの部分を横3本線にしてスクリーンには現れる。M3GANと書かれると、何故3?と思うのだが。怖いかと身構えたが、結構上品な作り。

 

探偵マーロウ:フィリップ・マーロウと言えばレイモンド・チャンドラーのハードボイルド小説の私立探偵。今までにも何度も映画化されている。今回の映画は、チャンドラー亡き後(1959年没)、「長いお別れ」の公認続編とされたジョン・バンヴィル(ベンジャミン・ブラック名義)作の「黒い瞳のブロンド」を原作としている。ニール・ジョーダン監督が1939年のロサンゼルスの物語を上手く画像にしている。マーロウを演じるリーアム・ニーソンは100本目の映画出演、いかにも適役と思われるが、私にとってはあの声がどうにもしっくりこなかった。

 

ザ・フラッシュ:う~む、この作品には色々考えるところがあり、簡単に面白いとは言えないような。ただ、アメコミ作品もここまで来たかという感じはする。今月のトピックス 参照。

 

スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース:これまたかなりの力作と感じていますが、スパイダーバースの関係(?)でスパイダーマンがわんさか発生、ちょっと笑ってしまいます。

 

マゴーネ 土田康彦「運命の交差点」についての研究:ヴェネチア在住のガラス作家土田康彦についてのドキュメンタリー。ムラーノ島にスタジオを構える唯一の日本人である彼の様々な面をとらえている。大阪の辻調理師専門学校卒業の彼は、有名なハリーズバーで調理師として働いたこともあり、知人にはいつも料理を作り、話をしながら楽しんでいる。

 

アシスタント:名門大学を卒業して、映画のプロデューサーを目指し中堅エンタメ企業(NYC、LAX、LONにオフィースあり)に就職して2か月の主人公ジェーン。業界の大物らしい会長(いつも不在で登場はしない)の下でジュニアアシスタントとして働く。長時間、様々な仕事に振り回される姿がリアル。監督、脚本、製作のキティ・グリーンはメルボルン出身の女性。前作「ジョンベネ殺害事件の謎」というドキュメンタリーが有名。

 

世界が引き裂かれる時:2014年7月、ウクライナ・ドネツク州のグラボベ村は親ロシア派と反ロシア派の対立が激化していた。7月17日に起こったマレーシア航空機撃墜事件を背景に作られたドラマは破局に向かっていく。女性監督マリナ・エル・ゴルバチの新作は、2022年1月ロシアのウクライナ侵攻が始まる直前、サンダンス映画祭で監督賞を受賞している。

 

告白,あるいは完璧な弁護:監督ユン・ジョンソクが脚本も書いている。この脚本が凄いというか、行き過ぎというか、なるほどねというか。こういうどんでん返しのミステリーは余りに凄いと、見ている方はちょっと引いてしまうような。

 

 

 

 


Ⅱ 今月の旧作

 

<外国映画>

渋谷シネマヴェーラの特集<初期ドン・シーゲルと修業時代>で11作品を見た。


ドン・シーゲルと言えば、「マンハッタン無宿」(1968年)で始まったクリント・イーストウッドとのコンビが、「真昼の死闘」(1970年)、1971年には「白い肌の異常な夜」「ダーティ・ハリー」の2作品を生み出して有名になった。ふたりのコンビ作は「アルカトラズからの脱出」(1979年)を含め5作となった。


監督デビュー作は1945年の「Star in the Night」(日本未公開)で1982年までに38作品を発表しているが、アクション映画を中心に様々な作品を監督している。彼の作品として記憶されるものには、「ボディ・スナッチャー/恐怖の街」(SF映画の古典)、「殺し屋ネルソン」(ギャング映画)、「燃える平原児」(プレスリー主演西部劇)、「殺人者たち」(ヘミングウェー原作のフィルム・ノワール)、「ラスト・シューティスト」(ジョン・ウェインの遺作)などがある。


今回の特集は名前にあるように初期の作品と、修業時代として別の監督の下で助監督や編集などを担当した作品が上映された。特別上映とされた「殺し屋ネルソン」(1957年)以外は1953年以前の作品群で、今回見た11作品を分けると、次のようになる。


監督作贅沢は素敵だ、抜き打ち二挺拳銃、殺し屋ネルソン、暗黒の鉄格子、ビッグボウの殺人、仮面の報酬、暗闇の秘密
助監督作:サラトガ本線、復讐!反ナチ地下組織、
編集・モンタージュ・特撮:戦慄のスパイ網、鉄腕ジム、


これらの作品の中で最も楽しめたのが「抜き打ち二挺拳銃」だった。西部劇のスター、オーディ・マーフィーが主演するB級西部劇。テンポよく77分にまとめられ、マーフィーのあんちゃんぶりも小気味よかった。

 

 

 

 

 

Ⅲ 今月のつぶやき 

 

●フィリップ・マーロウが久しぶりにスクリーンに帰ってきた「探偵マーロウ」。自分でも不思議に思うほどリーアム・ニーソンの声が引っかかって素直に楽しめなかった。他の作品で彼の声に引っかかったことはない。ということは、他のマーロウ作品が記憶の底にあって、それからかなり乖離した彼の声が目立ってしまったのだろうか。なんだかイギリス人っぽい(?)気がしたのだ。
マーロウを演じた有名俳優には次の人たちがいる。


ハンフリー・ボガート:三つ数えろ(原作は「大いなる眠り」)1946年製作
ジェームズ・ガーナー:かわいい女 1969年製作
エリオット・グールド:ロング・グッドバイ(原作は「長いお別れ」)1973年製作
ロバート・ミッチャム:さらば愛しき女よ 1975年製作


この中では最後のロバート・ミッチャムが一番印象深い。


7作あったフィリップ・マーロウ作品の内6作は映画化されている。感情を重視したレイモンド・チャンドラーの小説が映画に適していたということだろうか。あるいは、小説にちりばめられたカッコいい台詞が映画人に訴えることが多かったということか。
チャンドラー自身はケイリー・グラントがマーロウのイメージに最も近いとしていた。

 

 

 

 

 

 



今月のトピックス:最近の映画界の話題  

 

Ⅰ 最近の映画界の話題

 

①ストライキ
6月にあったブロードウェーのトニー式授賞式。それに関連したニュースの中に、脚本家のストライキのため、式の脚本がなく・・・というものがあった。脚本家のストライキはハリウッドで5月3日から始まっていた。
コロナの3年間、製作面においても初期の頃は製作自体が止まってしまい、暫くは新作が出てこなかったり、本数が少なくなったりしていた。その頃映画館自体も休業を余儀なくされたり、入場人員数を半数等に制限されたりする状態が続いていた。2020年に公開が予定されていた大作映画が公開延期となったりした。昨年あたりからコロナ開始後の作品が見られるようになり、映画界も徐々に通常の状態に戻ってきた。
そんな時に始まったアメリカにおける脚本家のストライキは将来の作品不足につながるのではと心配されている。
今回のストライキの原因は、基本的には脚本家の収入減に対するものだ。
要因は2つあるようだ。そのいずれもがネットフリックスなどの配信会社に関係している。
1つは、従来の映画館で上映される作品については、その回数によって脚本家にも歩合金が支払われるが、配信作品は回数が発表されていないため、脚本家の追加収入はない。しかも、映画館にかけられた作品も配信会社が映画館公開と同時に、あるいは従来より早く配信をするため、映画館での上映回数が減り、歩合金額が減少しているという。
もう1つは、配給会社の作品製作体制にある。アメリカではテレビドラマ採用/不採用を決めるため1回分のパイロットフィルムを作ってきたそうだ。不採用となった1話だけのドラマが大量に作られる方法だが、脚本家を含め関係する映像関係者には勿論料金が支払われる。配信は、4~5人の脚本家を雇い4話くらいまでの物語を作り、パイロットフィルムは作らず決めるという。製作が決定すると改めて複数の脚本家を雇うが、配信では5~6話で完結するミニシリーズが多く、テレビドラマに比べて短いものが多い。さらに配信のギャラは良くないという。
こうした要因で脚本家たちの収入はインフレ調整をすると、この10年間で23%減少したらしい。
テレビドラマは再放送されたりする都度、脚本家に再使用料が入るが、配信はアクセス数を公表していないという状況だ。
配信のがめつさが目立ち過ぎという気もする。

 

リトル・マーメイド
リトル・マーメイドはアンデルセンの「人魚姫」を基に、1989年にディズニーがアニメで映画化したもの。「人魚姫」とは違いハッピーエンドとなる変更がされ、世界的にも大ヒットした。この作品はその後舞台ミュージカルとして上演された。今回の映画は、初めての実写版映画となる。
この映画は主人公の人魚アリエルを黒人の歌手ハリー・ベイリーが演じると発表されるや、大きな論争を巻き起こした。彼女は、しかもR&B歌手だったのだ。
公開後はさらに大きな論争が巻き起こった印象だ。黒人主演に賛否という形だ。
実際に見てみると、違和感があると感じた。アニメは見ているがそれ程の印象はなく、舞台は見ていないが、この映画の黒人の風貌と歌い方がこの作品に合っていただろうかという思いだ。感情的に歌い上げるベイリーの歌唱力は他の作品で活かす方が良かったのでは?
ポリコレに極度に敏感になっているディズニーが、作品自体の持つ内容を考慮せず突っ走ったという気がする。
監督は「シカゴ」等の映画を監督した、元々ミュージカル舞台の振付師をしていたロブ・マーシャルが担当している。この映画がミュージカルとしてどうかというと、それほどでもないという印象でした、私にとっては。
ということで、ポリコレ的には正しくても、作品的に最善であったかは疑問が残る。

 

 

 

Ⅱ バース問題


バース問題などというと、何のこと?と言われそうだ。ランディ・バースが何か問題でも?彼は2004~2019年の間オクラホマ州議会上院議員だったらしいですね、関係ないですが。


今回のバースは、多くはマルチバースという形で使われている。マルチバースはマルチにユニバースの合成語ということで、日本語にすれば多元宇宙となる。
このマルチバースが映画に登場してきたのは「ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス」からも分かる通り、マーベルなどのアメコミ作品からだ。それが波及して、今年アカデミー賞で主要部門を独占した「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」でもマルチバースが大活躍、分かり難い作品づくりに貢献している。
マルチバースの考え方は、我々がいる現世界の他に、別の世界が存在しそこでは違う状態になっているという考え方だ。あくまでそういう考え方があるというだけで、当然ながらそれを見たり、感じたりすることは実生活ではありえない。
そのありえない世界を画像にしだしたのが、最近のアメコミ作品であり、上の「エブ・エブ」ということになる。


今月の作品では「ザ・フラッシュ」「スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース」の2本のアメコミ作品が該当する。
この内驚いたのが「ザ・フラッシュ」だ。何故なら同じ画面に二人の主人公が、年齢は違うとは言え、存在していたのだ。これってありですか?マルチバースは二つのバースが交錯することはないというのが基本ではないのか?映画だからどうあってもいいとも言えるが、こればっかりされると観客は迷路で迷ったようになる。


「エブ・エブ」の時にも書いたが、作る側は理解した上で製作しているが、見る方は基本そんな知識なく見るのだ。巧い製作者であればそれを感じさせずに作品化してしまうのだが。

 

 

 

 2冊の映画本

 

①「アメリカスーパーヒーロー映画」by 町山智浩(イースト・プレス)
マルチバースのように最先端(?)を行くアメコミ映画だ。それなりに楽しんで見てきたのだが、マーベル、DCの世界を完璧に理解、記憶するほど入れ込んではいなかった。
そんな不勉強者にはこの本が効く。まるでアメコミ映画界が一つの物語のように語られる。これにはビックリ、感動した。

 

②「ハリウッド映画の終焉」by 宇野維正(集英社新書)
この本にもアメコミ映画のことが書かれている。今のハリウッド映画と言えば、アメコミ映画を外して語ることはできない。それ以外の映画についても書かれている。
ハリウッドの映画が、コロナの影響もあり配信という上映形態に足をすくわれている。上のストライキのところでも書いたが、配信での成績が公表されることがないというのも問題だ。映画製作に関わる人たちにお金が回っていかない。などについての問題を提起している。

 

 

 

 

 

 題名の前に

 

今月見た作品の<外国映画>の中に次のような作品がある。
aftersunアフターサン、The Killer 暗殺者、RODEOロデオ、M3GANミーガン
いずれも日本語題名の前にローマ字が置かれている。基本的には原題が置かれているのだが、これは流行りなんだろうか?今までにも時々見られたが、今月は4本もまとまって見られたのでちょっと驚いた。

 

 

 

 

今月はここまで。
次号は、夏も、夏休みも真盛りの7月25日にお送りします。

 

 

 


                         - 神谷二三夫 -


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