今年東京では猛暑日の日数が歴代1位を更新中、
今日以降も可能性はあるのでどこまで伸びるのか?
こんなありがたくない暑さの中でも、
ホッと一息できるのは、
そう、映画館!
7/26~8/25の暑い日が続いた31日間に出会った作品は39本、
邦/洋画は13/26とほぼいつも通りの数値に。
新/旧作は34/5となりました。
13本(新11本+旧2本)
【新作】
キングダム 運命の炎
658km,陽子の旅
遠いところ
一秒先の彼
夢みる校長先生
PLASTIC
ミンナのウタ
リボルバー・リリー
高野豆腐店の春
SAND LAND
認知症と生きる 希望の処方箋
【旧作】
<生誕110年記念 映画監督 中村登 女性賛歌の映画たち>
紀ノ川
<午前十時の映画祭13>
地球防衛軍
26本(新23本+旧3本)
【新作】
星くずの片隅で
(窄路微塵 / The Narrow Road)
イノセンツ
(De Uskyldige / The Innocents)
サントメール ある被告
(Saint Omer)
シモーヌ フランスに最も愛された政治家
(Simone, Le Voyage du Siecle
/ Simone, A Woman of The Century)
コンサート・フォー・ジョージ
(Concert for George)
古の王子と3つの花
(Le Pharaoh, Le Sauvage et La Princesse
/ The Black Pharaoh,
The Savage and The Princess)
インスペクション ここで生きる
(The Inspection)
トランスフォーマー ビースト覚醒
(Transformers: Rise of The Beasts)
アウシュヴィッツの生還者
(The Survivor)
ジェーンとシャルロット
(Jane par Charlotte / Jane by Charlotte)
バービー
(Barbie)
クエンティン・タランティーノ 映画に愛された男
(QT8: The First Eight)
マイ・エレメント
(Elemental)
猫と,とうさん
(Cat Daddies)
破壊の自然史
( The Natural History of Destruction)
ふたりのマエストロ
(Maestro(s))
ブギーマン
(The Boogeyman)
ソウルに帰る
(Retour a Seoul / Return to Seoul)
クライムズ・オブ・ザ・フューチャー
(Crimes of The Future)
シャーク・ド・フランス
(L'annee du Requin)
【試写】
オペレーション・フォーチュン
(Operation Fortune)(10/13封切り)
ファッション・リイマジン
(Fashon Reimagined)
(9/22封切り、UK Walkerにて紹介済)
ロスト・キング 500年越しの運命
(The Lost King)
(9/22封切り、UK Walkerにて紹介済)
【旧作】
<スペイン・メキシコ時代のブニュエル>
黄金時代
(L’Age d’Or)
<みんなのジャック・ロジエ>
アデュー・フィリピーヌ
(Adieu Philippine)
+短編2編(パパラッツィ、バルド/ゴダール)
<その他>
エドワード・ヤンの恋愛時代
(獨立時代 / A Confucian Confusion)
(新作だけを対象にしています)
① ソウルに帰る
韓国を舞台に、ほぼ韓国人の俳優で、言葉は韓国語とフランス語、英語で作られたこの力強い映画は、好調の韓国映画かと思いきや、製作国は仏=独=ベルギー=カンボジア=カタールとなっていて、韓国は入っていない。監督はカンボジア系フランス人のダヴィ・シュー、主演は演技経験がないという韓国系フランス人アーティストのパク・ジミン。彼女の存在感が凄い。受賞はならなかったものの、今年の米アカデミー賞国際長編映画賞にカンボジア代表として選出された。
② キングダム 運命の炎
2006年連載開始でまだ連載中という大長編漫画の映画化3作目。前2作は殆どが戦場でしかも共に134分の長編だったが、3作目も2時間超えの長さ。ここに来て初めて物語がかなり加わり、しかも描写ペースは全2作と同じゆったり、丁寧なものだった。今後、同じスタッフ、キャストでどこまで描くのか興味と期待が膨らむ。
③ 遠いところ
県民所得全国最下位、子供の貧困率28.9%、非正規労働者割合や、一人親世帯比率も全国1位に加え、若年層の出産率も1位(データは映画の公式サイトから)という沖縄を舞台に、その現実を描く厳しい映画。貧しさに起因する多くの事柄を、沖縄だからと他人事として見られるだろうか?
映画館では沢山の映画を楽しめますよ!(上映が終了しているものもあります。)
◎星くずの片隅で:なんだかかなり手あかのついた日本題名がちょっと悲しいが、センチメントな感覚が案外作品に合っているかも。香港からやってきたラム・サム監督のデビュー作はコロナ禍の狭い町の片隅で、くじけながらも前向きに生きる人々を描く。
◎イノセンツ:ノルウェーからやってきた北欧スリラーは子供たちが主人公。無垢な子どもたちは、自分たちの持つ不思議な力を徐々に拡大させていくのだが…。子供の頃、誰もが持っていた不思議な力が悪の方向に向かった時…という怖さが迫る。
◎コンサート・フォー・ジョージ:ジョージ・ハリソンが亡くなった1年後の2002年に行われたコンサートを描くドキュメンタリー。エリック・クラプトンを中心に多くのアーティストが、ジョージの歌を歌い、演奏する。シンプルで、ピュアな輝きを持つジョージのサウンドを堪能する。
◎ロスト・キング 500年越しの運命:シェークスピアの戯曲「リチャード三世」によって、醜悪な悪役として記憶されてしまったリチャード三世。墓・遺骨が行方不明で確認できなかったのが、一人の主婦によって発見されたという実話に基づく映画化。驚きです。(9月22日公開)UK Walkerの記事もご参照ください。(https://ukwalker.jp)
◎インスペクション ここで生きる:この作品で監督デビューのエレガンス・ブラットン(1979年生まれ)が自身の経験を描く映画。ゲイで海兵隊に入隊、いじめられるという映画だが、驚いたのは彼がいまだに海兵隊にいるということ。この映画も海兵隊員のままで作られたという。
◎トランスフォーマー ビースト覚醒:トランスフォーマーと言えばタカラトミーの変形ロボット玩具から発想された映画シリーズ。2007年に初作が作られ、今回で7作目。今回は様々な機械動物が活躍するのが単純に楽しい。
◎アウシュヴィッツの生還者:アウシュヴィッツがアメリカ映画で描かれるのはちょっと珍しい。勿論アメリカにはユダヤ人も多く、アウシュヴィッツに収容された人がいても不思議はない。原題は「The Survivor(生還者)」とアウシュヴィッツは入っていない。実在したボクサー、ハリー・ハフトの物語を、その息子が書いた本に基づいて映画化。
◎ジェーンとシャルロット:ジェーンと言えばイギリス人の時はジョン・バリーと結婚していて、フランス人ではセルジュ・ゲンスブールと結婚して、シャルロットを生んだ人。この親子、どちらもちょっと変わっていて、それが最初に描写されているのでお見逃しなく。監督シャルロットによるジェーンについてのドキュメンタリー映画。
◎リボルバー・リリー:長浦京のハードボイルド小説を行定勲監督が映画化。大正末期の東京、花街の女将をしている小曽根百合の裏稼業は殺し屋リリー。「グロリア」(ジョン・カサヴェテス監督)の主人公のように、子供を守ってハードな時代を生き抜く。結構面白いが、ちょっと長いのが難。豪華キャストの中で綾瀬はるかは頑張っている。
◎バービー:世界的には大ヒットなれど、韓国、中国、日本では今一つ。日本ではリカちゃんの方が売れたとかいろいろ言われているが、この映画の持つ笑いが十分に理解されていないのでは?グレタ・ガーウィグ監督は、つまらない人形劇を作ることなく、血の通った人間の物語を見せてくれる。後半、マチズモ描写があまりに定形ではあるが。
◎クエンティン・タランティーノ 映画に愛された男:映画監督クエンティン・タランティーノについてのドキュメンタリー。映画を10本作って引退すると言っているタランティーノの8本目までの作品を順にインタビューを交えて語っていくという構成。全8作に関係していたワインスタイン・カンパニーの件など、興味津々である。
◎破壊の自然史:ウクライナの映画作家、セルゲイ・ロズニッツァが過去の映像から作り出すドキュメンタリーの新作。今回はナチス下のドイツに対する連合軍の空爆を描く。ナチスのイギリス空爆に対する報復としてドイツへの地上最大と言われる空爆を実施。建物の外側だけが残った多くの街の状況が、今のニュースで流れるロシアのウクライナの街々に対する空爆を思い起こさせる。
◎ふたりのマエストロ:父と息子が共に有名指揮者という設定は面白いが、ミスを犯したコンサートホール、ミラノのスカラ座が全く謝らないのはどうか?こんな風に思うのは日本人である私だけか?アイディアが面白いだけに、細かいところまできちんとして欲しかったというのが本音。ミスをした秘書がちょっと自慢するのにも唖然。更にスカラ座での演奏時にも唖然。面白かった作品だけに、おかしなところが目に付く。
◎SAND LAND:「DRAGON BALL」も「Dr.スランプ」も読んだことがない鳥山明、彼の“圧倒的完成度を誇る名作”と言われるまんが「SAND LAND」の映画化。さすがのお話。楽しめました。
◎シャーク・ド・フランス:原題の(L'annee du Requin)は(サメの年)。これが日本語題名(フランスの鮫)になったのは、一瞬「ジョーズ・ド・フランス」になりかけたものから修正したんだろうかと想像する。正に(ジョーズフランス版)。いつ出てくるかと身構えていると結構かわされて、超ドキッとするかと身構えているとふんわり鮫が出てくる感じ。おばさん主人公なのもフランス風?
<日本映画>
<午前十時の映画祭13>で上映されていた「地球防衛軍」を見ていたら、子供の頃を思い出した。小学生の頃、まだ家にテレビがなく親戚や隣の家にテレビを見せてもらいに行っていた頃、毎週見ていたのは月光仮面。あの、手作り感満載の描写が「地球防衛軍」には溢れていた。監督は本多猪史郎(「ゴジラ」や「モスラ」の監督)、特撮監督は円谷英二(特撮の第一人者)で作られたのは1957年。月光仮面は1958年に始まっているので、「地球防衛軍」があって、月光仮面ができたという関係だ。懐かしさを求めてか、結構見に来た人は多かった。
<外国映画>
<みんなのジャック・ロジエ>という特集で見た「アデュー・フィリピーヌ」はちょっと感心した。ジャック・ロジエという監督は通常ヌーヴェルヴァーグメンバーとはされていない(含まれるとする場合もある)。しかし、この作品の新しさはかなり強烈。作品を見てみると、その映像はシネマヴェリテというか、即興性に満ちたものだった。
7月29日ユーロスペース「658km 陽子の旅」上映終了後 初日舞台挨拶
菊地凛子、竹原ピストル、オダギリジョー、浜野謙太、熊切和嘉監督
監督を含め5名が登壇して、典型的な初日舞台挨拶。
主演の菊地凛子は初主演作の「空の穴」(2001年)以来22年ぶりに熊切監督に呼んでいただいたと感謝の念を述べた。
浜野謙太は今回の役を皆さんは“クソ野郎”とお思いでしょうがと、笑わせた。確かに!
☆バリー・レビンソン
「アウシュヴィッツの生還者」の監督がバリー・レビンソンと知った時、内容を知らずに当然ヨーロッパの映画だと思っていたので、えっと思い懐かしくなった。80年代、「ナチュラル」「グッドモーニング、ベトナム」「レインマン」等で真摯に生きるアメリカ人を見せてくれた監督バリー・レビンソンは輝いていた。映画を見てみれば、これはアメリカ映画だと分かる。生還者というニックネームのボクサーを描いていた。
バリー・レビンソンは監督デビューの前、メル・ブルックスの「サイレント・ムービー」「新サイコ」で共同脚本家をしており、更にその前にはテレビの「キャロル・バーネット・ショー」などバラエティの脚本を書いていた。自身もコメディの舞台に立ったこともあるらしい。このコメディの部分が、作品に柔らかさをもたらしている。1942年生まれの81歳。これからも頑張って欲しい。
☆ダニー・デヴィート
「アウシュヴィッツの生還者」でボクサー“生還者”のコーチを演じていたのは、舞台と同じ役を演じて映画デビューをした「カッコーの巣の上で」で共演したジャック・ニコルソンと親友になり、「バットマン・リターンズ」ではニコルソンの推薦により悪役のペンギンを演じていたダニー・デヴィート。147㎝の短身(肥満)でのペンギン歩きが似合っていた。
彼はそれ以前に多くの映画で活躍、「ロマンシング・ストーン 秘宝の谷」「ローズ家の戦争」などちょこまかと動く姿が目立っていた。
最近見ていないと思っていたので、今回の「アウシュヴィッツの生還者」は懐かしかった。調べてみると、今回は出演だけではなく、製作者の一人でもあったようだ。9月1日公開の「ホーンテッド・マンション」の予告編にも登場している。
●「夢みる小学校」のオオタヴィン監督の続編「夢みる校長先生」は6人の校長先生が登場する。いずれも公立の小・中学校の先生だ。学校の規則を全廃したり、テストを廃止したりの校長先生ばかり。尾木ママや前川喜平さんも登場して、公立学校の校長先生は自分の好きなように学校を運営することができると発言していた。これにはビックリ。何のための厳しい規則と思われるものが多い中、どうしてこれが知らされていなかったのか?
●製作が名古屋学芸大学となっている映画「PLASTIC」。鈴木慶一や小泉今日子なども出演していて、ちょっと面白い。大学自体が製作者となっていて、時に映像を学べる学校では卒業制作という形での作品製作はあったりするが、この映画の監督宮﨑大祐のように学校と関係のない人が監督し、一般公開される作品は結構珍しい。映画製作には多くの人が関係するが、表に出てこない部分で学生が製作に関係した可能性は高い。
●悪い作品ではないし、思ったより観客数も伸びているというディズニー・ピクサーの「マイ・エレメント」。しかし、ちょっと不思議な作品で、単純には楽しめないところもあり、ほんまかいな、ありえないという設定もあったりする。今までのディズニーのようには集客はできないのではと思ったよりは…という評価。難しい時代、ディズニーの迷いも感じられる。
●70年代の前半、こんな名前の女優が出てきたといった調子で紹介されていたミュウ・ミュウを久しぶりに見たのは「ふたりのマエストロ」。妻であり、母である役を演じている。デビュー以来今までコンスタントに出演しているし、女優賞を受賞したこともあるが目立つ存在ではなかった。1950年生まれの73歳、庶民的な風貌で周りの風景に溶け込んでしまうといった感じだ。今回の役は良かった。
この映画ではミュウ=ミュウと表記され、Wikipediaではミウ=ミウとなっている。フランス語ではMiou-Miouと書かれ、発音的にはミウ=ミウが一番近い。
映画は誰がどんな作品を見てもいいのだが、作り手がある程度客層を想定して作られたものもある。というか、映画を作る人たちは特定の層を想定して製作しているのだろう。
過日「バービー」を見に行った時、始まって暫くしたら下の方の座席から子供の声が聞こえるようになった。それほど大きな声ではないが、幼児っぽい話し方で、英語らしい声が聞こえてきた。一度話始めるとなかなか止めることができないようで、かなり迷惑になってきた。すると、通路を挟んで私と同じ段に坐っていた男性が突如立ち上がり、声のする下の方に降りていって話しかけ、すぐ戻ってきた。勿論英語だったので多分アメリカ人だったのだろう。
すると、少し経って幼い子供(3~4歳くらいだろうか)と母親が立って出て行ったのである。
想像するに、「バービー」という題名から、子供が楽しめると思った母親が連れてきたのだろう。しかし、人形としてのバービーが出てくることはなく、人間としてのバービーを描く映画だったのである。
鳥山明は人気の漫画家。「SAND LAND」は予告編を見ていて、見てみたいと思った。絵がはっきりしていて、登場人物が面白そうだったので。見ごたえのある作品だった。この作品を漫画だから子供向きだろうと見逃してしまうのはもったいない。映画を作った監督・横嶋俊久、脚本・森ハヤシも鳥山明の原作漫画に大人の鑑賞に堪えうる面白さがあると見ていたはずだ。この作品には子供が見ても面白い点があるから、大人一辺倒ではないが。
作る側が想定している観客層と、実際の客層が合致する幸福な作品と、合致しない作品があるのは当然だ。見る側も自分の思い込みだけで見る作品の幅を狭めないようにして、想定しなかった楽しみを見つけるようにしたいものだ。
コロナになってからドキュメンタリーの本数が増えたとして、2022年1月号で報告している。その号では1か月の間に10本のドキュメンタリーを見ることができた。今月はそれほどの本数はなく、次の7本だ。
日本映画:夢みる校長先生、 認知症と生きる 希望の処方箋
外国映画:コンサート・フォー・ジョージ、 ジェーンとシャルロット、 クエンティン・タランティーノ 映画に愛された男、 猫と,とうさん、 破壊の自然史
音楽と映画に関係するドキュメンタリーが日本/外国映画共に増えているようだ。
音楽関係:コンサート・フォー・ジョージ(公開済)、BE:FIRST THE MOVIE(8/25公開)、クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァル トラヴェリン・バンド(9/22公開)、リバイバル69 伝説のロックフェス(10/6公開)、くるりのえいが(10/13公開)、
映画関係:ジェーンとシャルロット(公開済)、クエンティン・タランティーノ 映画に愛された男(公開済)、ジャン=リュック・ゴダール 反逆の映画作家(9/22公開)、ヒッチコックの映画術(9/29公開)
コロナ禍で映画の公開本数が減少したり、製作本数自体が減少したりしたその隙間に、ドキュメンタリーの公開が増えたと言える。
それぞれのファンにとっては見逃せない作品が続く。
今月はここまで。
次号は、もう猛暑日はないだろうと願いたい9月25日にお送りします。