急に冬がやってきた印象で、
寒さに慣れていない体が文句を言っている。
ゆっくり深呼吸で周りの環境に体を慣れさそう。
寒い気持ちになった時、
心に温かさをもたらすのは、
そう、映画館で!
11/26~12/25の本格的に冬が始まった30日間に出会った作品は42本、
邦/洋画は12/30となっているが、新作の邦/洋画は12/16で同数に近い。
洋画は旧作が約半数の14本だった。
12本(新12本+旧0本)
【新作】
映画の朝ごはん、
ディス・マジック・モーメント、
ほかげ、
水いらずの星、
怪物の木こり、
女優は泣かない、
春の画SHUNGA、
ヤジと民主主義 劇場拡大版、
市子、
あの花が咲く丘で,君とまた会えたら、
屋根裏のラジャー、
Perfect Days
30本(新16本+旧14本)
【新作】
シチリア・サマー
(Stranizza D’Amuri / Fireworks)
ナポレオン
(Napoleon)
バッド・デイズ・ドライブ
(Retribution)
エクソシスト 信じる者
(The Exorcist: Believer)
父は憶えている
(Esimde / This Is What I Remember)
Winter boy
(Le lyceen / Winter Boy)
マエストロ:その音楽と愛と
(Maestro)
最悪の子どもたち
(Les pires / The Worst Ones)
ジョージタウン
(Georgetown)
枯れ葉
(Kuolleet Lehdet / Fallen Leaves)
ウィッシュ
(Wish)
ティル
(Till)
VORTEXヴォルテックス
(Vortex)
ポトフ 美食家と料理人
(La Passion de Dodin Bouffant / The Pot-au-Feu)
スイッチ 人生最高の贈り物
( Switch)
【試写】
哀れなるものたち
(Poor Things)(1月26日公開予定)
【旧作】
ゴーストワールド
(Ghost World)
神の道化師 フランチェスコ
(Francesco, Giullare di Dio
/ The Flowers of St. Francis)
<文学と映画>
三文オペラ
(Die Dreigroschenoper / Beggar's Opera)
月光の女
(The Letter)
黄金の馬車
(Le Carrosse D'or / The Golden Coach)
キリマンジャロの雪
(The Snow at Kilimanjaro)
摩天楼
(The Fountainhead)
結婚式のメンバー
(The Member of The Wedding)
大いなる罪びと
(The Great Sinner)
河
(The River)
破局
(The Breaking Point)
欲望という名の電車
(A Streetcar Named Desire)
海の狼
(The Sea Wolf)
二日間の出会い
(The Clock)
(新作だけを対象にしています)
①-1 枯れ葉
フィンランドのアキ・カウリスマキ監督の6年ぶりの新作。ヘルシンキのカラオケバーで出会った二人、ロシアのウクライナ侵攻のニュースが何度も流れる中、共に失業した二人は名前も知らないままひかれあう…。悲劇と喜劇をさまよう恋物語。前作「希望のかなた」で監督引退宣言の後の復活。現在66歳なのでまだまだ作り続けてほしい。
①—2 Perfect Days
日独の製作で、監督ヴィム・ヴェンダース、主演役所広司の映画が作られた。都内の公共トイレを清掃して回る仕事をしている男性の毎日の生活を描く。シンプルな生活と仕事の繰り返しが丁寧に描かれる。大きなドラマがある訳ではない。そこには生きることの大切さが声高ではなく静かに描かれる。音楽好きなヴェンダースらしく、主人公が愛聴してきた音楽がロックを中心にカセットテープからの歌声として使われる。
② 哀れなるものたち
亡くなった若い女性をよみがえらせ、育てていく物語は言ってみれば「マイ・フェア・レディ」と同じかもしれないが、違うのは物から者(人)にしようかとする部分。これはSFの物語だ。1月26日公開予定。
③ 父は憶えている
久しぶりにキルギスからやってきた映画は、アクタン・アリム・クバトが監督、脚本、主演を務めている。ロシアに出稼ぎに行き行方不明となった男が23年ぶりに戻ってくるが、話ができなくなっていた…。妻は他の男と結婚していた…。
他にも楽しめる映画が沢山、映画館でお楽しみください。(上映終了済作品もあります。)
◎映画の朝ごはん:なんとも魅力的な題名だ。映画人(監督)が映画人についてと、ロケ撮影時に出される定番の朝ごはん弁当として使われるお弁当屋さん「ポパイ」についてのドキュメンタリーを作った。「ポパイ」は映像業界に知らぬ者のいない伝説のお弁当屋さんとか。
◎ディス・マジック・モーメント:マレーシア出身のリム・カーワイ監督が、大坂に留学中に知ったテアトル梅田の閉館に直面、全国のミニシアター22軒を巡り始めたのを追ったドキュメンタリー。各映画館の生の声を拾っている。今月のトークショー参照。
◎ほかげ:塚本信也監督が、闇市、バラック小屋の住居などを舞台に体を売る女性、一人で生きる戦争孤児など、終戦直後の日本の姿を描き出す。主演の朱里はNHK「ブギウギ」とは全く違う役柄を熱演している。
◎ナポレオン:リドリー・スコットが描くナポレオン・ボナパルトの伝記映画。英雄としての戦いはきっちり描かれているが、ジョセフィーヌとの結婚生活が結構情なく描かれ、その対比が面白いと言えば面白い。
◎バッド・デイズ・ドライブ:今年71歳になったリーアム・ニーソンの新作は、車の座席下に爆弾を仕掛けられた父親の役。息子と娘を朝学校に送っていく際に犯人からの要求がどんどんエスカレート。如何にそれを乗り切るのかのサスペンスアクション。
◎春の画SHUNGA:江戸から明治になると表舞台から消えてしまった春画。北斎や歌麿など浮世絵師たちがその技を生かして描いた超一級の芸術を、たっぷり見せてくれる。監督の平田潤子をはじめ、企画・プロデュース、プロデューサーも女性とサイトで紹介されている。
◎ヤジと民主主義:北海道放送から送られてきた映画には「劇場拡大版」という副題が付いている。2019年札幌での安倍首相の演説時、“安倍やめろ”の声を上げた男性が警察官に排除された事件を軸に、民主主義下でのヤジが何故か排除されようとしている日本の現在を描くドキュメンタリー。
◎市子:映画を監督した戸田彬弘が主宰する劇団チーズの舞台作品の映画化。無戸籍という重い運命にある女性の半生を描いている。しかし難しいテーマを、丁寧に説明することなく、時制の移動が多いためか映画だけで十分な理解をすることはかなり難しい。杉咲花が熱演しているが、ちょっと残念。
◎マエストロ その音楽と愛と:マエストロは指揮者・作曲家レナード・バーンスタインのこと、彼と彼の妻を描く映画は主演したブラッドリー・クーパーが監督・脚本(ジョシュ・シンガーと共同)を担当している。Netflix配給の映画で、ほとんど宣伝なく公開された。
◎ジョージタウン:ワシントンのジョージタウン地区で繰り広げられる物語。ニューヨークタイムズに発表された実際の記事を基に書かれた脚本での映画化。社交界で名を知られた高齢女性が若く野心家の夫に殺されたのでは…。俳優のクリストフ・ヴァルツの初監督作。
◎ティル:1955年ミシシッピー州で起きたエメット・ティル殺害事件、公民権運動を前進させたこの事件の映画化。シカゴに住む14歳の黒人少年がミシシッピー州の親類を訪ねた時、食品雑貨店主の妻の白人女性に口笛を吹いたとして虐殺された事件とその後の母の行動を描く。
◎ポトフ 美食家と料理人:始まりの20分くらいだろうか、主人公が料理する場面が続く。まるでスポーツのように肉体を駆使して動くこの場面が、最後まで強い印象を残す。「青いパパイヤの香り」で監督デビューしたベトナム出身・パリ育ちのトラン・アン・ユンの新作は物語以上に風景、生活などそこにある物が輝いていた。
<外国映画>
渋谷シネマヴェーラでの<文学と映画>特集では1926~1952年に作られた35本が上映された。今までの特集で見た作品も多く、見ていない作品から12本を見た。
その中では「月光の女」「黄金の馬車」「摩天楼」「欲望という名の電車」が印象に残ったが、特にジャン・ルノワールの「黄金の馬車」が圧倒的な面白さだった。艶やかな色彩、ヴィバルディの音楽の中で描かれるくっきりした人物像、映画としての大きさを感じさせる傑作だった。
文学というテーマ通り、いずれの作品にも原作の持つ物語が太くあり、最近の物語のありかがよく分からない作品との違いは大きいと改めて認識した。
11月26日 イメージフォーラム「ディス・マジック・モーメント」上映後 リム・カーワイ監督と作家 岩井圭也の対談
リム・カーワイ監督は1973年生まれのマレーシア出身、19歳の時留学生として来日、卒業後通信会社に就職も、映画への思いが募り、北京電影学院で映画製作を学び映画監督に。この映画は日本のミニシアターに感心し、全国22カ所のミニシアターを訪ね話を聞いたものをまとめたドキュメンタリー。知り合いだという作家、岩井氏との対談。岩井氏は、作家今村翔吾が理事長を務める一般社団法人ホンミライで理事になっている。
映画、文学のどちらも今や斜陽化にあるという。映画館に行く人、文学を読み本屋に行く人が共に減少している。効率化を求められる現在の風潮下で、ゆっくり作品に向き合うという人が減っている。若い人たちはゲームなどに時間を費やしている。
東京と地方の違いもある。地方では、映画館や本屋がなくて困っている人たちもいるが、それにこたえられるものが見つけられていない。
12月9日 シネスイッチ「春の画 SHUNGA」上映後 作家 朝吹真理子と監督 平田潤子との対談
朝吹さんより“肉眼で見るより映画の方がよく見える印象”“普通のものより少し異常な、倒錯的なものが好き”“浮世絵師の裏稼業だからこそ、異形との愛などなんでも生まれる可能性があった”“江戸時代はヒエラルキーが決まっていたのでファンタジーにいく”等の発言があった。
平田監督はテレビで現代史の番組等を作っていたとのこと。民俗学的な興味から春画に向かうようになったという。
12月10日 東中野ポレポレ「ヤジと民主主義劇 場拡大版」上映後 山𥔎 裕侍監督挨拶
日曜日の朝早くにお越しいただきありがとうございます。どんな事柄であれ、声を上げる、ヤジを飛ばすことの大切さを感じています。
☆ヴァネッサ・レッドグレイヴ
2019年、つまりコロナ前の作品なのに日本ではなぜか今公開されている「ジョージタウン」で、社交界で著名な高齢夫人を演じているヴァネッサ・レッドグレイヴは、1960~70年代に数々の作品で活躍、1977年の「ジュリア」ではアカデミー賞助演女優賞も受賞している。
祖父はサイレント映画のスター、ロイ・レッドグレイヴ、父は映画、舞台で活躍したマイケル・レッドグレイヴ、弟コリン、妹リンも俳優(2人は共に2010年に死去)という俳優一家。現在86歳という高齢の割には数年に一度くらいの割合で映画にも出ているのだが、この役の関係なのか急に懐かしくなった。
●旧作に入れている「ゴーストワールド」は2001年に作られた若者映画。高校を卒業する少女二人の物語だが、これが意外に混んでいた。しかも若い人で。ちょっと驚き。
●初作「エクソシスト」から50年経って作られた「エクソシスト 信じる者」。初作は今年8月に87歳で亡くなったウィリアム・フリードキン監督が作っているが、今回の新作を見ると、彼の偉大さが再認識された。
●ワシントンでのお話の「ジョージタウン」。ジョージタウンという名前をWikipediaで検索したら、アメリカにはなんと45のジョージタウンという町があると出てきた。ジョージの町という意味だから、力を持ったジョージという人がいた町が多いということだろうか。
●高齢者化が世界的に進んでいるが、それにしても単純にその経過だけを描く「ヴォルテックス」はいかがなものか?しかもあの二分割画面は何なのか?そんなことでしか表せないのか、もう少し面白くできないものか?心が離れているとか、それが老いだとかなんて分かっているわい。
●映画製作のきっかけは渋谷区内の公共トイレを刷新するプロジェクトThe Tokyo Toiletだという「Perfect Days」。区内のトイレがいくつか現れるが、いずれもが新しく、様々なデザインのきれいなトイレばかり。これには驚いた。公共トイレのイメージが変わった。公共トイレに行ってみたくなる。プロジェクトは成功だ。
(正確には支出報告です。)
当たり前だが、今年も年末がやってきた。発行月日に合わせて、見せよう会通信の会計年度は12月26日~12月25日としている。毎年1月号にこの報告を掲載している。
今年は次のようになった。後ろの( )内は昨年の数字。
期間: 2022/12/26 ~ 2023/12/25
支出額: 496,050円 (481,630円)
映画本数: 500本 (496本)
1本当たり金額: 992円 (971円)
1本当たりの金額が昨年より21円アップしましたが、本数は昨年から大きな変更はありません。500本の内、旧作が108本で昨年の86本よりかなり増えました。反対に新作は昨年の410本から392本と減少しました。
映画館の入場料金が多くの映画館で値上げされました。大手のTOHOシネマズで言えば、2023年6月1日から大人1900円→2000円、シニア1200円→1300円となりました。多くの映画館が同様の値上げをしています。これが1本当たりの金額が上がった主な原因と思われます。
今回の値上げは必ずしも全映画館が追随した訳ではなく、映画館によって違いが出てきています。これについては、次のコラムで具体的に説明します。
コロナの影響はほぼなくなり、最近の映画館は結構混んできています。通勤時間帯の電車が以前のように混み始めているのと同じように、コロナ前の状態に戻ってきているということです。
上で書いたように多くの映画館が一般1900円→2000円、シニア1200円→1300円に料金変更をしました。しかし、映画館によっては値上げしないところもありました。さらに、映画館によっては毎週、毎月のサービスデイを設け割引したり、会員制度で割引したりしています。私が利用している東京の映画館を中心に一般、シニア料金、サービスデイの比較をしてみました。
〇シネコン(TOHOシネマズ、ユナイテッドシネマズ、松竹マルチプレックスシアターズ、ティ・ジョイ)ただし、イオンシネマ、109シネマズは除く
一般:2000円 シニア:1300円、 サービスデイ(毎週水曜日、毎月1日):1300円
〇イオンシネマ シネコンとしては最安値ですが、利用したことがありません。
一般:1800円 55歳以上:1100円、 サービスデイ(毎週月曜日、毎月1日):1100円
〇ヒューマントラストシネマ(有楽町、渋谷)
一般:2000円 シニア:1300円、 サービスデイ(毎週水曜日、毎月1日):1300円
〇角川シネマズ有楽町
一般:2000円 シニア:1300円、 サービスデイ(毎週水曜日、毎月1日):1300円
〇銀座シネスイッチ
一般:1800円 シニア:1200円、 サービスデイ(毎月1日):1200円、(毎週金曜日レディースデイ):950円
〇ユーロスペース
一般:1800円 シニア:1200円、 サービスデイ(毎週火曜日、毎月1日):1200円
〇イメージフォーラム
一般:1800円 シニア:1200円、 サービスデイ(毎週月曜日、毎月1日):1200円
〇新宿武蔵野館・シネマカリテ
一般:2000円 シニア:1300円、 サービスデイ(毎月1日):1300円、(毎週水曜日映画ファンサービスデイ):1200円
〇シネマート新宿
一般:2000円 シニア:1300円、 サービスデイ(毎週水曜日、毎月1日):1300円、(毎月25日シネマートデイ);1200円
〇テアトル新宿
一般:2000円 シニア:1300円、 サービスデイ(毎週水曜日、毎月1日):1300円
〇K’sシネマ
一般:1800円 シニア:1200円、 サービスデイ(毎月1日):1000円
〇キノシネマ新宿
一般:2000円 シニア:1300円、 サービスデイ(毎週水曜日、毎月1日):1300円
〇シネクイント・ホワイトシネクイント
一般:2000円 シニア:1300円、 サービスデイ(毎週水曜日、毎月1日):1300円
〇ル・シネマ渋谷宮下
一般:1900円 シニア:1200円、 サービスデイ(毎週火曜日、毎月1日):1200円
〇恵比寿ガーデンシネマ
一般:2000円 シニア:1300円、 サービスデイ(毎週水曜日、毎月1日):1300円
以上のように、結構細かい部分で料金が変わっています。同じ映画でも見る映画館で安くなることがあるとなります。
毎月1日は、元々の映画の日である12月1日が毎月の1日へと拡大されたものですが、12月1日だけは1000円にしている映画館が多いです。
横浜にあるミニシアター、ジャック&ベティ。その名前だけは知っているが、行ったことはない。先日、東京のある映画館のチラシ棚にこのちょっと変わった名前の映画館の、通常チラシより一回り大きいA4サイズのチラシを見つけた。そこに書かれていたのが“閉館待ったなし”の言葉だ。
その必死さが、ふんわりしたユーモアの中に聞こえてくる。さらに“この場所で映画館を続けたい!”と言う叫びも書かれている。
コロナ禍での来場者の減少、建物の老朽化などで映画館の存続が危ぶまれる状態であることで、クラウドファンディングを実施していますという。Motion Gallery経由で目標金額3000万円となっている。
https://motion-gallery.net/projects/HelpJandB のサイトを見てみると、12/24現在で、35,257,175円が既に集まっていて、少しホッとした。
チラシには“銀行振り込みや現金での支援も”とある。少額ながら協力しました。
興味のある方はよろしくお願いします。
今月はここまで。
次号は、新しい年の最初の月が終わりに近づく1月25日にお送りします。