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 東京で働くようになってしばらくたった頃、会社の先輩の東京人から、
お正月は東京が静かになっていいんだよと言われました。
確かに車も少なく、元旦は人出もそれほどなく、空気もきれいになるよう。
今年も天気に恵まれ、東京は静かなお正月を迎えました。
 2024.1.1~12.31に映画館で観た映画は510本、新作は411本、旧作は99本となりました。
                毎年、日本映画、外国映画に分けてベスト10を発表しています。これを決めるために、まず候補作品を選びます。2024年は日本映画で48本、外国映画で60本を選びました。
                 1年前、いや半年前のことでも結構忘れています。作品名からすぐ思い出すもの、あれ、こんな作品あったっけとなるもの、正にいろいろです。そのため、見た当時どんなことを思ったかを知るため、自分の作品メモを読み返します。基本的にはメモ程度の短いものが多いですが、時に長くなることもあります。読んでみてもさっぱり思い出せない作品さえあります。さらに、見た当時はあまり思ってもいなかった作品が時間をおいて考えると重要になることもあります。
                 この数年来、ドキュメンタリー作品が力を持ってきたと感じています。48+60で選んだ108本の中に、フィクション以外のドキュメンタリー作品が26本ありました。約24%がドキュメンタリーだったことになります。日本映画48本の内14本、外国映画60本の内12本がドキュメンタリーとなりました。日本映画の方が比率的には高くなったのは、日本内の問題に挑んだドキュメンタリーが多く、こちらの関心に訴えるものが多かったためです。
                 今回選んだベスト10の中にも、ドキュメンタリーは何本か入っています。
                
		        
                  
				    1.	雨の中の慾情
				    2.	正体
				    3.	五香宮の猫
				    4.	正義の行方
				    5.	キングダム 大将軍の帰還
				    6.	悪は存在しない
				    7.	ぼくのお日さま
				    8.	どうすればよかったか?
				    9.	ゲバルトの杜 彼は早稲田で死んだ
				    10.侍タイムトリッパー
				    
			      
 現在の日本の文化で世界に誇りうるものといえば漫画になるだろうか?
			      団塊世代である我々が大学生だった1960年代末~から、大学生でも漫画を読む人が増えた、あるいは表で読むことが平気になった。
		        すでに半世紀の時が経ち、漫画が従来の小説と並ぶほどの影響力を持つようになった。
		         昨年の新年特別号で、“漫画を超える、あるいは同等の映画が造られたという印象だ”と書いたが、今年は「雨の中の慾情」という作品で一歩先に進んだ気がしている。そこには、漫画で描かれたものをより膨らませたものが書かれていると感じる。漫画作者(つげ義春)の上に映画作者(片山慎三)を感じられるのである。
			       ドキュメンタリーもまた進歩している。作者の身の回りの問題を作者自身が迷いながら撮影していた「どうすればよかったか?」、まるで名エッセイを読むような心地よい流れで描かれた「五香宮の猫」、内ゲバによるリンチ殺人で死者が100人を超えた政治闘争の闇を明かした「ゲバルトの杜  彼は早稲田で死んだ」など、様々なドキュメンタリーが作られ問題提起をしていた。
			    
                  
				    1.	オッペンハイマー
				    2.	瞳をとじて
				    3.	落下の解剖学
				    4.	エドガルド・モルターラ ある少年の数奇な運命
				    5.	夜の外側 イタリアを震撼させて55日間
				    6.	ソウルの春
				    7.	本日公休
				    8.	リリアン・ギッシュの肖像
				    9.	ぼくとパパ 約束の週末
				    10.キノ・ライカ 小さな町の映画館
				  
				    
				     映画作家クリストファー・ノーランは今や真実の物語を作る第一人者といえるだろう。正確に言えば、真実と思える物語、その映画の中では完結している物語を。
 50年で4作目の「瞳をとじて」のビクトル・エリセは、映画を作れなくなった監督を描き、今作迄30年以上も映画を作れなかった自分自身を語ったようだ。この二人には、作風は全く違っても映画を作る真摯さにおいて共通したものがある。
				     ヨーロッパ映画では圧倒的にフランスが多くの作品を見せてくれたが、ベスト10の中には1本(落下の解剖学)のみとなった。反対に、なかなか作品が来ないイタリア映画が、今回2本の作品(「エドガルド・モルターラ  ある少年の数奇な運命」「夜の外側 イタリアを震撼させて55日間」)を送り込んできた。イタリア作品が共に歴史に基づいた作品であるのに対し、フランス作品はよりドラマ性の強い作品であるのが面白い。
				     ヨーロッパということで言えば、珍しくもドイツ映画が1本入っている。「ぼくとパパ  約束の週末」だ。これはドイツの正直さが上手くいかされたと言えるだろう。
				     外国映画のドキュメンタリー映画は2本、1本はジャンヌ・モローの監督による「リリアン・ギッシュの肖像」だ。フランスの女優によるアメリカの女優のインタビューという内容だが、これは見ている方が嬉しくなってしまう作品だった。二人は共に歴史的女優といっていいだろう。
				     そしてもう1本が「キノ・ライカ  小さな町の映画館」だ。これまた、見ているものを幸せにしてくれるドキュメンタリーだった。
今年はどんな映画見られるだろうか?
                  
