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■大江健三郎略年譜

    
遅れてきた青年
新潮社文庫  
解説:なし  (<遅れてきた青年>とぼく自身 大江健三郎)
定価:743円(税別)
頁数:548頁(文庫版)
ISBN4-10-112605-4
カバーデザイン:新潮社装幀室 初出:1960年9月より1962年2月 雑誌『新潮』連載
  戦争は終わるぞ、きみは幼なすぎて、戦争にまにあわないよ、ぼうや!
  
 ちょと観念的で、読みとおすのがちょっとつらかった作品。第一部と第二部に分かれている。
     第一部 「1945年夏、地方」
     第二部 「195*年   東京」
 作者自身の言葉によると第一部では<森のなかの小さな村での、戦争末期の、《乱世》の全体的な復元>である。
 第二部は<山村で生れ、そこに育った青年が、大都市の生活という異域にむけて、どのようにはいりこもおうとし、その冒険的な企画がどのように破滅するか>である。
 作者が25歳から26歳にかけて書いた本格的な長篇小説である。そして1960年という安保闘争を経験した特異な時代を理解するためには避けて通れない作品である。
 大江作品を楽しむには「荒唐無稽」「諧謔」という独創的世界に慣れ親しむ必要があるが、この作品でははやくもそのきざしがはっきりとでてきていて、世評の低さに反してとても重要であると思う。初期の傑作のひとつといってもいいのではないだろうか。

 ただ、大江入門者が初期に読む作品としては避けたほうがよいかもしれない。
 

<冒頭>
 第一部 1945年夏、地方
 第一章
 「あなたは遅刻ばかりしています、それにあなたは、最近やぶ睨みになってきているわ、
右の眼が」と女教師がいった。「あなたは、この村の六年級でいちばん成績の良い、立
派な少国民だったのに」

<出版社のコピー>
地方の山村に生まれ育ち、陛下の勇敢な兵士として光栄ある死を選び得た戦争に遅れてしまった野心的な青年が、都会に出て外面は社会的成功をかちえながらも、内面において限りなく失落感にさいなまされる姿を通して、戦後世代共通の体験を描く。昭和20年8月15日を境にめもくらむような運転を経験しつつ学生作家として登場してきた著者が、内的体験のすべてを仮託したフィクショナルな自伝。
<おすすめ度>
  ☆☆☆☆★ 

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