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■大江健三郎略年譜

    
われらの時代
新潮社文庫  
解説:なし  (<われらの時代>とぼく自身  大江健三郎)
定価:490円(税別)
頁数:272頁(文庫版)
ISBN4-10-112602-X
カバー画:山下菊二 初出:書き下ろし 1959年7月 中央公論社刊
最初の長編小説
 最初の長編小説。エンターテイメント作家がどんどん長い作品を書く現代では、中篇の長さといったほうがいいかもしれない。
大江氏自身がこの作品を「村八分のふしだら娘のように、ほとんどあらゆる批評家から嫌悪された」と語っている。当時の批評家には鮮烈なデビューから時代に独自の世界を築いてゆく過程のこの作品に対して、真の価値を見出すことができなかったのだろう。
 私自身は大変面白く読むことができた。とても気に入っている。

<冒頭>
 快楽の動作をつづけながら形而上学について考えること、精神の機能に熱中すること、それは決して下等なたのしみではないだろう。いくぶん滑稽ではあるが、それは大人むきのやりかたというものだろう。南靖男はかれの若わかしい筋肉となめらかな皮膚のすべてを快楽のあぶらにじっとりひたしながら、そして力をこめてかれの愛するものの柔かい体、脂肪にみたされた汗まみれの中年の女の体を愛撫しながら、孤独な思考に頭をゆだねていた。

<出版社のコピー>
 快楽と不能の無限の繰返しから抜け出て、幼年時代の黄金の象徴であった天皇の現在の姿に手榴弾を投げつけて爆破しようとする少年。偏在する自殺の機会に見張られながら、自殺する勇気もなく生きてゆかざるをえない”われらの時代”。いまだ誰も捉ええなかった戦後世代の欲望をさらけ出し、性を媒介に現代青年の行きづまりを解剖して、著者の新たな文学的冒険の出発となった長編小説。
<おすすめ度>
☆☆☆☆

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