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■大江健三郎略年譜

  
四万年前のタチアオイ
講談社文庫  
定価:619円(税別)
頁数:34頁
ISBN4-06-275392-8
カバーデザイン:司修 初出:1985年第3号(6月) 雑誌『へるめす』
タカチャン       
   タチアオイというのは花の名前。

<冒頭>
   昨年、秋の終り、僕は中国新疆省の吐魯番(トルファン)の宿舎で、ふたつ夢を見た。あと百日で五十歳になるのに、肝心の準備ができていない − 濃い霧の底の、立ち枯れた牧草についたこまかな土埃が脆く凍っている斜面を登りつめ、晴れわたった空に天山山脈が姿をあらわす高地から、巨大な谷あいに入りこんで、黒や赤、そして白の楊の若枝がさかんな茂りを示す、白楊河後溝の流れにそって走り、あらためて礫漠とでもいうか粗い砂漠の広大な地平を、ひたすら沈みこむように東行する、昼の間の永い旅程のうちは思ってみなかったことだったー、自分がシルクロードを旅しているのは、永年会わぬタカチャンから、どうやって五十歳以後を生きてゆけばいいか、その仕方を教わるためで、タカチャンに巡り会った際の、問いかけの言葉はあらかじめ胸うちにある。
<出版社のコピー>
「浅間山荘」の銃撃戦と、雪深い森の若い死者たち。革命党派の課題をこえて、そこには戦後日本の精神史にきざまれた、もっとも悲劇的な惨たらしさがある。しかもユーモアの地下水もにじみ出るほどの人間的な深みで受けとめたい。文学の仕事なのだから・・・・
永く考えた後、手法のことなる架空の短篇をくみあわせて、出来事の全体に対置することにした。主題としては長篇にひとしく、同時代、あるいは同じ不幸を生きる自分の個人史も透けて見える。
<おすすめ度>
☆☆☆
SBN4-16-308780-X 文藝春秋
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